近藤正海の紹介
中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
皆さんこんにちは。コミュニケーションを極めると自分が見えてくる。 そして世界も見えてくる。
コミュニケーションの世界に携わって40年以上。 コミュニケーション・命。 シン・田中こと、田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職して約30年。高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住中川浩孝です。
田中 愼一
俳優の近藤正臣という、皆さんご存知だと思うんですけど、彼が今月20日にNHKのBSで放映されたんですけども、1年かけて作り上げたドキュメンタリー、ドラマっていうか、ドラマじゃないな、映像っていうか。
偶然なんですけども、SNSをやってるうち、いろいろ変なものが出てきてガタガタしてですね、あちこちのボタンを押してたら、
突然、いわゆる番宣っていうんですか?番組の宣伝っていうか。
しかもかなりシリアスな感じの盤線でですね、出てきて、「あ、なんだこれ?」って言ったら、
近藤正臣の非常に暗い顔が映ってて、
後ろに郡上八幡の写真があって、彼が今住んでる場所らしいんですけども、
そういうシーンで、内容をパッと見たら、そこの作ったNHKのディレクターの言葉が添えてあって、
基本的には、孤独で一人郡上八幡で生きている近藤正臣の話っていうことで、1年実際かけて。
もともと近藤正臣本人も別に乗り切りは全然なくて、
いや、俺はもう話さないよというような感じだったらしいんだけども、
とりあえずそれでもいいかっていうことになって、1年かけて映像を回してたんですよ。
で出来上がったドキュメンタリーで、これもまたご縁かなと思ってですね、これ見るといいよって。
僕も年がどんどんいく上で、そういう境遇に似たようなとこに行っちゃうのかなと思いながら、見たんですよ。
見たらこれがですね、実に面白いって言ってたら怒られちゃうのかな。印象深くて。
この1時間の番組なんですけども、一番初めから最後は1時間っていう。
基本的には1年間っていう、実は映像の変化なんですね。
その中で、皆さんにもちょっと見てほんと、もしご興味あれば見るといいと思うんですけども、
1年間で近藤正臣の心がですね、変わってくるんですよ。
で、一番初めのシーンなんか見てると暗くなってくるんですけど、
生活の変化
田中 愼一
本当に暗いシーンしかなくて、一番初めは食事をしてる一人でね。
要は自炊してるわけですね、一人で。
年はもう82か84ぐらいになってて。
奥様が基本的には1年ぐらい前に亡くなられて、
少なくともこの映像が始まったときは1年前に亡くなられた段階だったのかな。
もうすでに一人で基本的には1年過ごしていて。
で、実は7,8年ぐらい前に郡上八幡に引っ越してきたらしいんですね。
もう俳優やっても、まあやるんじゃなくて、
より生活をシンプルなところに行こうっていうんで、空気のいい郡上八幡っていう。
田中 愼一
ある意味、俳優業はほとんどやらないっていう格好で行ったみたいなんですが。
でも結局そういうことで、今一人で自炊もして、ちょうど食べるとき。
食べるのもですね、あんまりおいしそうに食べないわけですけど、仕方なく食べてる。
食べてるあれもですね、パンに蜂蜜つけて食べてるっていう感じなんですよ。
そういうシーンから始まっていくんですね。
で、それから徐々にいろいろ本人の話してることや生活パターンや、
それから実際自分で料理を作って、買い物行って、
それから徐々にいろいろな地域の人と、まあ7,8年いますからね、
地域の人とのつながりがあって。
で、もともと釣りがすごく好きだったんだけど、
まあ今は釣りはそのときはもう、はっきり言ってもうやめてて。
まあどっちかというと、外にも出なくなったりして、
結構悪循環的な感じになってたっていうシーンが連続して起こるんだけども、
それが徐々に周りのいろいろな地域の人たちとの出会いとか、それからお祭りとか、
それからあと撮影をされてるっていうことで、
そこに対していろいろな問いかけをやったり、
自分がどういうことを言ったかっていうのを、たぶん撮影した後も見たり、
まあいずれにしてもそういうことをやっていたら、
徐々に彼の心が回復していくわけですよ。
で、そこには唯一の脇役としてね、彼が主役だとしたら脇役として、
大きな黒と白の猫が一匹大きなのがいるんですよ。
これは奥さんと一緒に探してきて、
近藤正臣が選んだ一番売れ残りそうな猫っていうことで、
それはかわいそうだったんでそれをやってて、
その猫は結構大きくて、いろいろそばになついていくっていう感じで、
徐々にそういうところから地域の人たちとの出会いとか始まったり、
あるいは、ディレクターとの質疑応答っていうものを聞きながら、
徐々に心のほうがですね、
だから一番初めってのはほとんどパンに蜂蜜をつけてかじるぐらいでね、
まるごとにかじるっていうシーンから始まって、
最後のシーンっていうのがですね、
正月の元旦の日、猫と一緒に、彼は一人ですよ、一人と。
お雑煮を作ってるんですよ。
餅を焼いて、お雑煮の野菜を入れる野菜、それからおつゆを作って、
そこで出てきたその一時の食事っていうのが、元旦の食事ですから、
普通はわいわいみんなやってんだけども、本当に一人と猫一匹。
座って、目の前にある料理っていうのはお雑煮と、
それから、魚のあれで、歯ごたえのいい、
高木 恵子
カズノコ、カズノコ。
田中 愼一
大きなカズノコがボンと置いてあって、
あとお茶だけなんだけども、これが元旦の朝食で、一見ね、孤独そうで食べてるんだけど、
実は隣で猫が見ながら、非常においしそうに食べるんですよ。
これはね、非常に一番始まりのシーンと終わりのシーンの違いで、
本人その中で、1年前はもう食欲も何もないって言ってたのが、おいしいと。
食欲が戻ってきたという一言ぐらいが最後のシーンなんですけども、
その1時間の中で出てくる映像を見ていくと、徐々にそれが変わってくるんですね。
それが、例えば、いろんな地域住民との対話の中で、
さらにはディレクターとの質疑応答の中で、
それから自分自身が今どういう気持ちになっているのかっていう。
で、過去を語って、ある意味自分との対話がどんどん進んでいくんですね。
それが結局、一人であることは変わらないんですよ、別に状況として。
で、やってることも変わらないんですよ。
でも逆に1年経ったら、いわゆる本能というか煩悩というか、欲?
つまり、1年前までは生きるつもりはないぐらいの感じになっていた人が、
新たな気づき
田中 愼一
最後、自分でお雑煮を作って、カズノコを買ってきて大好きだったんで、
それを元旦の正月の食事として、美味しそうにボリボリ食べる。食欲があって。
で、食べ終わった後は、いやー食欲が出てきたんだよって言って。
一言彼が言った言葉っていうのが、
老いるってことは、何々ができなくなることなんだけど、
つまり日々ね、できないことが増えていくらしいんですよ。発見する。
でも、できないことを知るっていうのは、ある意味それを発見であると。
だから、老いるっていうのは、ある意味、彼の言葉で言うと、
一生懸命生きるのではなく、彼が言ったのは軽く生きる。
で、そう言いながら美味しそうにお雑煮とカズノコを食べる。
っていうような、境地が変わったって言うんですか、1年で。
非常に、初めの方は、ある意味我慢しながら、一種の苦行なんですよ。
食欲もなく、食べたくもないものをかじって、
周りに誰もいなくて一人で猫一匹付き合ってっていうところから、
徐々に苦行から新たな境地に移動していくんですね、1年で。
それが象徴的に、今言った一番初めの場面から一番最後の場面で、
自分から一生懸命料理を作りながら楽しそうになる程度。
で、それを食べたいっていう欲求が出てきてるんですね。
そういうのが全部非言語でどんどん映像だから見えるんですよ。
そういうのが非常に良かったなっていう。
このタイトルが、近藤正臣、郡上八幡一人暮らしっていうのがタイトルですね。
よくある番組ってのが、年取っても80代でも懸垂が何回もできるとかね。
一方的にあんまり軽薄な番組が多いんですよ。
これから高齢化社会を迎えるにあたって。
でもこれはですね、この番組はそういう軽薄さがなくて。
けいこさんの言葉で言うと品がある。
あのね、ひろさんね、けいこさんがいじめられてて。
高木 恵子
そんなこと言ってますか。
田中 愼一
品がないと言われやすいんですよ。
高木 恵子
そんなことは言ってないですよ。
田中 愼一
でもこの番組は非常にドキュメンタリーはお勧めします。
品があります。
変な楽観論とか、こととかそういうのではなく。
中川 浩孝
まあね、ありますよね。ドキュメンタリーとかって、もん切り方の切り口だったりすることは確かにありますからね。
高木 恵子
あとやっぱりね、近藤さんってすごく有名な俳優さんだったっていう。
全盛期がある中での、その方の今のね、こういったドキュメンタリーっていうのがまたすごいいいですよね、きっとね。
田中 愼一
ある意味聞く耳を持つっていうね。
しかもそこには彼のあれがないんですよ。
近藤正臣の自己表現
田中 愼一
なんていうか、これドラマだと多分俳優心が出て、演じるとかそういうのが出てくるんだけど。
これ完全ドキュメンタリーで、彼はもうやる気もないし。
でもそれでも良ければね、映したきゃ映しなっていう態度でスタートしたから、そこに図るっていうかね。
計算がないってことですよね。
ありのままの自分をそのままをたらけ出してるって感じで。
言い方がわりと僕なんかね、これ彼の最高のね、実は究極の演技じゃないのかと。
高木 恵子
確かに確かに。
田中 愼一
そこにはからいもなく、計画もなく、意図もなく、本能もなく。
だからそういう中でこの1年間の映像っていうものが凝縮した1時間の番組っていう感じがあって。
そこからなんていうのか、品がいいんですよ実に。
品が悪い高齢者向けの、高齢者にこれからなる人たちに入っての、
ああいう品のない番組を多く放送してるっていうのが最近気がついてたんだよね。
それに比べて非常に考えさせられる番組ですよね。
ぜひとも見るといろんな解釈ができるんで。
高木 恵子
そうですね。見てみます。
中川 浩孝
でもその1年間、そのドキュメンタリーのチームがいなかったらまた全然違うことになってた可能性もありますよね。
田中 愼一
と思いますよ。面白いですよね。
だってそのチームがいたから、いろんな人との取材とか言うんで、より外に出てって、
引っ込み思案になってたところから、やっぱりその取材のおかげで広がってきたっていうのがあるんで。
そのチームというか、ディレクターたちが何をやったかっていうと、
いわゆる近藤正臣自身の自分との対話を促進してあげたんですよね。
自然との対話
田中 愼一
周りでいろいろな仕掛けをしながら。本人たちはそんな仕掛けをやってるとは思う気持ちはなかったのかもしれないけど、
偶然取材をし1年間映像を作ったっていうのが、
近藤正臣自身の中で対話をもっとより促進し、いろんな面でそれが心をトランスフォームしていったっていうものなんだと思いますね。
だから非常に見てて、いろいろな解釈はあるし、
決していいなというだけじゃなく考えさせられるなっていうのも十分あるし。
これ見てウキウキするなんて話じゃなくて、これ見て気持ちが高ぶってるのか下がってるのかわかんないけど、
なんとなくシーンと考えてしまう。
中川 浩孝
私もちょうど似た構成でなんですけど、NHKワールドって海外放送というのがあるんですけど、
栗原はるみさんって料理研究家の方。彼女も旦那さんを数年前かなんかに亡くしてしていて、それのドキュメンタリーをちょうど本当にやってたんですよ。
やっぱりすごく落ち込んでしまって、食べるのも食欲もなくなっちゃうみたいな中で、
やっぱりでもこのままじゃいけないっていうことで、ちょっと一人用のおいしいスープを作るっていうところから始めるみたいな。
それをシェアしていく。他の人にもやっぱりもっと一人でもおいしいものを作った方がいいですよっていうのを紹介していくみたいな。
感じでポジティブになっていくみたいな感じのお話をちょうどドキュメンタリーでやっていて、
それを見てそれもすごく、ちょうど父親母親の年齢層になってくる人たちなので、
やっぱりそういう意味では、うちは父親母親両方健在なので大変助かっているんですけど、
これで片方もしもいなくなってしまうようなことがあると、やっぱりバランスが崩れたりするんだろうなと思ったりしたので、
それを見て考えるところがたくさんありましたね。
田中 愼一
場所が引き立てた理由としては、その場所が郡上八幡という自然の中で作ってて、
いろいろな意味で自然との対話っていうのもずいぶんやっていて、
ちょうど別荘というか建物のベランダみたいなところがあって、
目の前が下に川が流れてたり、いろいろ自然の動きっていうのも感じるし、
あと柿、果物の柿ね、あれの木があって、
猿がいついちゃったらしくて、
猿がこの柿を食べるんだけど、
なんかね、かじってもう捨てちゃうっていうもったいないことをしてるって、
近藤さんが怒ってて、
でも最後のシーンでは、だんだん柿が少なくなってくると、
猿は最後の芯まできちんと食べるそうですね。
っていうところで近藤正臣がすごく喜ぶ。
その一つの事象に対してものすごく声を張り上げてね、
これなんだよ、やっとわかってくれたんだよなんて言いながらね、
猿の連中はとか言ってね、
あのやるとか、さまざまなシーンがあって。
だからそれは、郡上八幡という一つの環境の中でね、
起こったというのが、よりドラマを引き立ててるって感じでしたね。
だからそういう意味で言うと、
日本の自然って非常に対話しやすい自然だなって感じましたね。
僕もよく伊豆に行くんだけども、
やっぱり伊豆に行った時ってのは何がすごいかって言うと、
やっぱり木々に囲まれた、
アフリカにはない自然ですよね。
僕はアフリカに育ったから、アフリカの自然とかもよく聞くんだけども、
日本の自然ってのは独特ですよ。中国にもないと思うな、自然って。
韓国にはあるのかもしれないけど、すごく日本の自然っていうのは、
今、ヒロさんの背景図。
こんな感じ。でもこれはどこですか、場所は。
中川 浩孝
どこでしょうね、わからないです。
田中 愼一
少し荒っぽいとこがあるから、日本じゃないのかな。
日本ではないでしょうね。
中川 浩孝
多分日本じゃないかもしれないですね。
田中 愼一
アメリカっぽいな、これ。
でもね、日本はしっとりとした雰囲気がある。
だから面白かったですよね。
中川 浩孝
今回は少し短めですが、この辺で。
後半はまた次回お送りします。どうぞお楽しみに。