コミュニケーションの重要性
中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
皆さんこんにちは。コミュニケーションを極めると自分が見えてくる、世界が見えてくる。コミュニケーションの世界に携わって40年以上、コミュニケーション命、シン・田中こと田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職して約30年、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住、中川浩孝です。
田中 愼一
先週の流れということで、対話力の話をここあたりでちょっと考えてみたいなと思ってます。やっぱりコミュニケーションという一つの大きなテーマをこのポッドキャスティングは持ってるんですけども、
やっぱり考えてみるとコミュニケーションの本質を極めていくと、基本的には対話力なんですよね。
対話力っていったときに、どういう対話があるのかというと、実はいくつかあるんですね。
相手との対話って普通だいたいみんな考えつくんですけども、実は相手との対話のほかに、あるいはその相手と対話する前に自分との対話っていうのがあって、
僕の頭の中では、自分との対話がなんで相手との対話の前に必要かっていうと、
コミュニケーションで一番重要なのは相手を知るってことなんですけど、
その相手を知るっていうことを一番邪魔するのが自分なんですね。
自分の思い込みとか自分の偏見とか自分の好き嫌いとか、
こういうものが相手を知るときに素直にさせないんですよ。
そうすると相手を不十分に知った上で対話が始まっちゃうと、これははっきり言って意味のない対話になりがち、逆に害のある対話になっちゃう可能性がある。
田中 愼一
だからまずは自分自身をゼロにするってよく使うんですけども、
自分とまず対話して、自分の思い込みとか好き嫌いとかそういう偏見とかですね、
そういうものをですね、なるべくなくして、相手と対話するっていうのが一つの順序として、
非常に重要なことで、相手との対話に先に入っちゃうっていうのは危険なんですね。
この自分との対話ってのは、人によってどういう感じかわかりませんけど、
僕の中では絶えずもう一人の自分がいて、そこと対話するわけですよね。
もう一人の自分がいて、これはやるぞと思ったときにもう一人の自分が、ちょっと待てよそれ本当にいいのかとかね。
いやいいんだよって一生懸命説得するわけですよ。
でも向こうもなかなか説得に応じない。
こうやってどんどんどんどんやっていくっていう、自分との対話ってそんなもんなんですね。
だから今、相手との対話って通常一番よく思いつくんですけども、その前に自分との対話があるっていう話ですね。
で、この自分との対話っていうのをやっていくとですね、もう一人の相手とやっていくと、
ニッチもサッチもいかなくなっちゃうんですよ。煮詰まってくる。
そうするとですね、実はもう一人の相手が必要になってくるわけです。
今出てきたのは相手っていう相手ね、一人。次に自分、もう一人の自分。
で、もう一つ存在が必要になってくるんです、プレイヤーが。
それがですね、基本的には、あんまり表現を気をつけなきゃいけないんだけども、一言で言うと天との対話かな。
自分やもう一人の自分を超えた何者かっていうのがいて、
そことの対話っていうのがですね、いずれ降りてくるんですよ。煮詰まってくると自分との対話が。
だから基本的には3人の相手との対話っていうのがあって、
田中 愼一
相手との対話、自分との対話、天との対話っていう感じなんですね。
自己理解と相手理解
田中 愼一
で、前平田オリザさんっていう脚本家の方が、
コミュニケーションっていうのは3人以上じゃなきゃダメなんだって話をしてたんですね。
実際その平田オリザさんとあるセッション一緒で、コミュニケーションのことを語ったときに、
彼がね、もう3人じゃないと対話が成り立たないんだってわけですよ、コミュニケーション。
田中 愼一
彼が実は作った脚本に、マルタ会談っていうのがあるんですね。
第二次世界大戦が終わって、戦勝国であるアメリカ、欧米がですね、
いわゆる敗戦国であるドイツを含めた日本、イタリアをどう処置するかっていうんで、
チャーチルとルーズベルトとスターリンが三人、ヤルタという島に行って、
会談を開いたっていう劇なんですね。
この劇見てると面白いのが、やっぱり3人いるわけです。
で、2人じゃ完全に煮詰まって、ニッチもサッチもいかなくなっちゃうんです。
ところが3人目がいるとですね、かわせるんですね。ニッチもサッチもいかなくなる状況。
面白いのは、チャーチルが実はスターリンに話してるんだけども、
実はスターリンに一見メッセージを出してるように見えるんだけど、
スターリンとの話し方、内容っていうのをルーズベルトに見せつけてね。
だから本当の相手はルーズベルトなんだけど、チャーチルはとりあえずスターリンに向かって発信してるんですよ。
でも実際の効果は、チャーチルの心を動かしてる。
それぞれやるんですよ、同じことを。
直接相手にメッセージを出す場合と、目の前に話してる相手に実はメッセージを出してるんじゃなくて、
それを見ている第三者にメッセージを出してるっていう。
で、このやりとりの中で煮詰まってこないんですね。
2人だけだと完全に煮詰まっちゃって、どっちか白か黒かになっちゃうんだけども、
3人目がいるとなんか違う要素がどんどん入ってきて、かき回されちゃうんですよ。
だから平田オリザさんが言った3人以上じゃなきゃダメだっていうのは、
まさにヤルタ会談という彼の劇なんだけども、
彼が脚本を書いた劇の中で、すごく上手く表現されてるんですね。
それと似てて、やはり2人だけの、つまり自分との対話っていうのを、
もう一人の自分だけでやってると、やっぱりそれでも煮詰まってくる。
そうするとやっぱり第三のルートっていうのを求めるようになるっていうことで、
だから対話っていうのは、基本的には相手との対話、自分との対話、
さらには自分を超えた、宗教で言うと聖なるものなんでしょうね。
あるいは宗教までいかないけども、ご縁とかね。
あるいはお天道様はとかね。
よく表現するじゃないですか、お天道様だったらもう知ってるよとか言って、
もう自分を超えた存在に対して対話を持ちかけるっていう構図。
3つの対話によって対話力、対話そのものっていうのが構築されてるっていう意味合いを、
ずいぶんかなり強く。
母親が今ちょっと入院中なんで、そういうところで結構自分の心の中に葛藤が出てくるんですよ。
田中 愼一
葛藤が出てくる中でそこを収める第三者として、
その第三のお天道様なのかわかんないけども、
そういう存在を想定するっていう働きが人間の中にあるみたいで。
だから対話っていうのはその3つの種類があるんだなっていうのがね、
一つの整理の仕方としていいのかなというふうに、まずあります。
対話っていったときにね。
だからある意味コミュニケーションの本質って本当に対話なんですね。
やっぱり双方向でいかにコミュニケーションしていくかっていう。
それは相手だけじゃなく自分、もう一人の自分というのもある。自分との対話もある。
さらに言うならば、自分とか相手を超えた聖なるものっていうか、
人それぞれそういうものを持ってるんだと思いますよ。
宗教っていうのはそれを形にしちゃってるけども、
無宗教の人だってなんかそういう存在っていうのをね、
持ってる可能性があるんじゃないかなとは思うんですね。
だからそれがまず対話の本質だって抑えるっていうのが重要かなっていうのは。
一つね、自分との対話をゴシゴシやらざるを得なかったんで、
今でもやってますけど、数週間ね。
だから母親の件があるから。
だからそういう意味で、そこに明確に腹落ち感があったんで。
そうこうしてるうちにですね、2日前かな、ある日本人のリーダーの方。
外資系の経験がある方なんだけども。
に、リーダーシップコミュニケーションというトレーニングをしてきたときに、
やっぱり対話論議になって、コミュニケーションの本質は何なんだって話になって、
やっぱり対話だよねって話になって。
で、徐々にリーダーにとって対話力がないと、これからはダメですよと。
彼女は女性の方だったんですけども、対話力ってなんなのって話になって。
どうすれば対話力ってできるのって話になったときに、
通常6つありますよっていう議論になって、お互いそれを話しながら、
対話力を高めるための原理
田中 愼一
一応腹落ちしてもらったんで。
6つっていうのはここで簡単にシェアしたいと思います。
6つの対話力っていうのは、まず基本的に6つあるんですけど、
その一つ目っていうのが、コミュニケーションの原理原則を知るっていうことがまず大事です。
コミュニケーションには原理原則があるんですよ。
例えば簡単な話で言うと、メッセージっていうのをみなさん使われるんですけども、
俺はこういうメッセージを出してるんだって言うんだけど、
あの発想は間違ってるんですね。
コミュニケーションっていうのは、自分が発信してるものがメッセージではなくて、
相手に伝わったものがメッセージだっていう。
それ聞くとね、そうだよなってみんな思うでしょ。
でもね意識してないんですよ、みんな日頃からそれを。
だからそういう原理原則がある。
例えばもう一つは非言語言語の法則で、
言語で相手にメッセージがどのぐらい伝わるかっていうと35%。
非言語で伝わっちゃうのは65%。
ほとんどの人が非言語を意識してないんですよ。
ってことは65%のメッセージは意識されずに発信されてるっていうことで、
言葉っていうのは人は意識するんですよ。
だから35%は意識されてるけど自分のコミュニケーションの。
残りの65%は無防備で言ってる。
こういう原理原則ってのはたくさんあるんですね。
少なくてもそれを知っていないとダメで。
欧米人は基本的な教育をある程度小学校ぐらいのときから、
コミュニケーションに関わるような教育を受けてるんで、
原理原則ってのは体感してるんですね。
だからそういう意味で言うと結構ね、
日本人の場合そこが弱い。
これは一つ目。
二つ目は一番重要なメッセージって大事です。
田中 愼一
でもね、メッセージ持ってても何の役にも立たないんですね。
メッセージっていうのを相手に伝わりやすい、
相手に刺さるような構造に構造化しないとダメだっていう。
その構造化能力が絶対必要なんですよ。
対話力を身につけるためには。
その構造化ができるように、相手に伝わりやすいような構造化で相手に伝えることが重要なんだけども。
田中 愼一
そうすると、それが二つ目の能力ですね。
三つ目の能力っていうのが、対話を支配するっていう。
これはどういう意味かというと、対話っていうのを必ず自分の土俵の上で対話する。
相手の土俵には絶対に乗らない。
あるいは乗せられてしまったらすぐ自分の土俵に戻ってくる。
これを自分の相手との対話を支配するって言うんですけども、
これには二つの要素が必要なんですね。
一つはさっき二番目で言った、メッセージを構造化するっていう。
構造化されたメッセージが土俵になるんですよ。
だから自分のメッセージを構造化してないと土俵がないから、
はっきり言うなら対話を支配することはできません。
だからまず自分の土俵という、つまり構造化されたメッセージを作っておかないと対話には入れないと考える。
これが一つの要素です。対話を支配するために一つの。
まず自分の土俵をちゃんと作る。つまりメッセージを構造化する。
次に、二つ目に対話を支配するために求められるものっていうのは、
ブリッジングの技法
田中 愼一
いかに相手をこちらの土俵に乗せるか、あるいは相手の土俵に持っていかれたときに自分の土俵に戻せるかという技が必要。
この技っていうのがブリッジングっていう技なんですね。
ですから自分のメッセージを構造化し、土俵を作り、
ブリッジングっていう手法を使って、絶えず相手を自分の土俵に乗せておく。
あるいは自分が相手の土俵に乗せられたらすぐ自分の土俵に戻るっていうブリッジングっていう手法があるんですね。
このブリッジングというのは簡単に言いますと、相手の質問を利用して自分のメッセージを伝えるっていう、
ここは深く話しませんけどね、そういう能力が絶対に必要になる。
これが三つ目の能力ですね。つまり対話を支配する。
で、四つ目はですね、これは先ほどの原理原則で非言語の話をしましたけれども、
田中 愼一
非言語コミュニケーションをどうコントロールするか。
ってことは、日常の自分の非言語をどう意識するか。
意識するってことはどういうことなのか。
要は言語非言語が必ず一致して同じメッセージを出しているっていうことをどれだけ担保できるか。
そこをやっぱり学ばないと、その能力を持たないとダメです。
リスク感度と発信の必要性
田中 愼一
っていうのが四つ目の能力ですね。
で、五つ目の能力っていうのが、これはリスク感度を育てるっていうことで、
今のリーダーっていうのは、これはリーダーだけじゃないんですね。
我々一人一人の個人にも言えることなんですけども、発信することが危険な時代なわけです。
今SNS等と含めて、しかも人々の価値観受け取り方がどんどん多様化しちゃってるから、
こっちがいいと思って言ったことがですね、目の前の人間に言っただけなのに、
それがどんどんその後広がっていってですね、
いろんな人にその情報が流れて、
しかもその情報を受け取った人たちが悲しむ人もいれば、
喜ぶ人もいれば、怒る人もいるっていう、これをイマジネーションできるかどうか。
リスク感度っていうのは。
だから、いわゆる自分が走ってしまったら、これがどういうふうに波及して、
誰が怒りだし誰が泣き、誰が喜ぶかっていうのをイメージできる能力っていうのをですね、
やっぱり持ってないと。
例えば最近農水大臣が辞めましたよね。
私買ったことないんです、っていう一言で。
これ、ひろさん知ってます?
中川 浩孝
はい、知ってます。もちろん知ってます。
田中 愼一
あの一言は本人は一切リスクだと感じなかったわけですよ。
でも考えてみると、その感度の無さっていうか。
だからやっぱり、自分が言ったことがどういう波及効果を持つのかっていうのを出す前にイメージする能力が必要になる。
最後は、これ特に日本のリーダーの弱点なんですけども、
ナラティブっていう、つまりストーリー性を持って語ることができないんですね。
だからほとんど聞いてると事実関係を述べてるだけなんです。
でも事実関係だけ発信しちゃうと危険なのは、
相手はそれに勝手に、自分勝手に都合のいい文脈でその事実関係を理解してしまうんで、
解釈が変わった解釈に変わってっちゃうんですよ。
ストーリー性を持たせて語るっていうのは、
こちらの文脈をちゃんと情報発信の中に組み込ませて語るっていうことなんで、
こちらの文脈がしっかり埋め込まれた発信なんですよ。
ところが普通の事実だけを述べて出しているケースっていうのは、
今ほとんどの、たとえば日本の企業のトップリーダーを見てると、
事実だけ語ってるんですよ。
そこに何のストーリー性もないから、
受け取ったほうは自分勝手な文脈で勝手に解釈すればいいわけですよ。
そういう事態がものすごく今、特に日本ですね。
ここはね、グローバルで活躍してるリーダーたちはね、かなりセンスが高い。
やっぱり自分の中にストーリーっていうのをしっかり持って、
その主役っていうのをちゃんと意味付けて、
どんなシーンでも、今自分はこういうシーンにいるんだっていうのを自分で自己暗示かけて演じるわけですよね。
うまいですよね、見てるとね。
名前はあえて言いませんけど、結構うまい人たくさんいますよ、特に欧米では。
あれはやっぱり自分の中のストーリーっていうのがしっかりできてて、
そのストーリーを毎日進化させて、
そのストーリーの主役を演じ切ってる日々。
自分一人の時でさえも演じ切るぐらい。
周りに人がいなくても。
よく人がいると演じてる人もいますけど、
ほんまもんはね、一人でも演じ切れる能力。
ここあたりができる人っていうのが。
だからその6つのね、今言いました。
1つはコミュニケーションの原理原則を知る。
2つ目はメッセージを構造化する。
3つ目が対話を支配する。
4つ目が非言語コミュニケーションをコントロールする。
5つ目がリスク感度をしっかりと育てる。
対話力の重要性
田中 愼一
それで最後がストーリー性を持って語れって。
ストーリーを語れって。こんな感じですかね。
っていう感じで、対談方式、対話方式でやったセッションだったんで。
非常に面白かったです。話をしてて。
僕の頭も整理されて、この6つなんですよねって言ったら、
非常にね、その方も腹落ちして。
で、これは単にリーダーの方だけじゃなくて、
やっぱり我々がね、個人レベルでも、
コミュニケーションをちゃんと意識することが、
今言った対話力っていうものを培っていくってことは間違いないし。
で、AIの到来でね、人間はどこで役に立つのって話が、
最近テレビでいろいろあって、いろんなところに取材してね、
AIをどこで使ってますかって言うと、AIはいかに便利かっていうのは、
みんなね、雄弁に語るんですよ。
でも、人間はどこで役に立つんですかっていうのはね、
しょぼいことしか言わないんですよ、みんなほとんど。
例えば、やっぱり飲み食いしてねーとかね。
相手との営業ですよ、営業とかね。
対面でどう営業できるか、これやっぱりAIできないねってか、
田中 愼一
そのレベルでまだ収まってるんですね。
そのレベルで収まってると人間食われちゃいますよ、本当に。
だからもっとしっかり、人間の強みっていう一つの分野は間違いなくコミュニケーションだと思うんで、
我々個人レベルでもコミュニケーションっていうのをしっかり力学として身につけるっていうことを、
田中 愼一
もっと考えたほうがいいと思うんですよ。
少なくとも、AIがですね、相手との対話はすぐできるかもしれないけど、
じゃあ自分との対話ができるようになるのか。
さらには自分を超えた、相手や自分を超えた、より聖なる存在との対話ができるのか。
っていうようなことが本当にAIにできるのか。
僕はね、できないとは言いませんが、かなり時間が、少なくとも我々が生きてるぐらいの間、
追いつかないだろうというふうには思いますけど、
今は少なくともその分野が人間が役に立つっていうのが見えてきたら、
やっぱりそこをしっかりと研鑽するべきだと思いますけどね。
中川 浩孝
ひとつ意地悪な質問していいですか。
この続きはまた次回お送りします。
お楽しみに。