中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
みなさんこんにちは。 コミュニケーションを極めると自分が見えてくる、世界が見えてくる。
コミュニケーションの世界に携わって、はや40年以上。 コミュニケーション命、シン・田中こと田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職して約30年、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住、中川浩孝です。
田中 愼一
前回やったときの宿題ということで、緊張をどうレバレッジするかっていうか、緊張をどうマネージするかっていう話をしかけて時間が来たんで、今週ちょっとその話ができればと思います。この緊張ということで、前回もちょっと話したと思うんですけど、茶道ですね、お茶会ですね。
僕がお世話になっている、まあ僕は別に師弟関係はないんですけども、
物好きでいろいろと、鎌倉にある宗徧流っていうところなんですけども、
そこの家元と20年近くもしかしたらお付き合いしてるんですけども、
たまに家元が主催されるお茶の会に呼んでいただいて、僕自身はその作法とかいうのはですね、もう20年ぐらいやってるからプロだろって言うと全然アマで。
あの学ぼうとする意識がないんですね。ただ何がお茶会に惹かれるかというとですね、
やっぱりその自分の感度っていうか感覚というか、それが研ぎ澄まされるっていう体験を必ず得るんですね。
で一番初めてお茶会を始めたときっていうのは、鎌倉まで行って、それでだいたい4時間ぐらいかな、
そのコースっていうか設定ですね。家元のクリエイティビティーで設定された茶会があって、
その中で濃茶を飲んだり、薄茶を飲んだり、一つの作法に従いながら進めていって、場所もどんどん変わっていくわけですね。
その場所の中には庭そのものがもう一つの場所になるっていう、その場所をたしなむっていうのかな。
いろいろな場で一つの作法をやることによってお茶をいただくっていう、この流れがある意味一つの場なんですね。
いくつもの場が4時間の間に現れて、その場の中で自分が動く作法をする。
そこで言葉数は少ないですけども会話が行われるっていうところですね。
すべてのものがですね、家元を中心に動くわけですね。
家元はもう絶対的な存在で、そこにお客様が何人か入って、
いわゆるお客様の中でも主客っていって一番大事なお客様っていうのがいてですね。
ただその人は単にそのお客でいるだけじゃなくて、その茶会全体の流れを家元と一緒になってある意味ですね。
運営していく、マネージしていくっていうところだから。
まあ主客になる人っていうのはそれなりの経験と知恵を持っている方なんですけどね。
こういうところなんですね。
いつもこれを一回経験するとですね、これを始めた時の自分の感度っていう言葉を僕はよく使うんですけども。
あの感じ方、なんとかな心が動く様みたいなね、ワクワクしていくような。
そういう感じを必ずですね、終わった後を感じるんですね。
そうすると何か不思議なのは、見てる風景は来た時と同じなんだけど、
帰りがけて同じ風景を見ると、世界が変わったように見えるんです。
感じるんですね。
なんか非常に、僕の場合はなんか光り始めるって感じですかね。
高木 恵子
いいですね。
田中 愼一
光り始める。そうするとね、心がワクワクして、オッケー、これでもう明日月曜日だ、バッチリやるぜって帰っていくわけですよ、意気揚々として。
高木 恵子
元気になるんですね。
田中 愼一
元気になるんですね。ただ翌日の朝になるとすべて忘れてるんですけど、それがどう持続してくれるかっていうのがその後の僕のテーマになってるんですけども。
でもいずれにしてもお茶ってそういう場なんですね。
そこにあるのは一つの非日常っていう世界なんですね。
つまり非日常っていうことによって一挙に自分に刺激を与えて、
それを五感六感を通じて刺激を与える。
五感っていうのはもちろん動くとか、そういう作法を守るとか、いろいろなものがあるんですね。
掛軸もあれば、いろいろな道具が飾られていて、
その中で自分の動きをやりながら、こんな日常はないよなっていう非日常を経験しながら自分の感覚を磨いていく、こんなプロセスですね。
この前、数週間前に行ったときは、実は初めてだったんですけども、
そこの流派では茶席っていうのは3つ3種類あってですね。
何が一番違うかと言うと、設計がそれぞれ違うんですけども、広さが一番違うんですね。
一番広いところで、たとえば普通だったら15人くらい座れるくらいの茶室が設計されていて、
次の茶室が、基本的にはそれをもっと小さくした4畳半的な茶室。
それから一番小さくなると2畳半くらいかな、の茶室っていうことで。
これは僕も初めてだったんですけど、やっぱり空間設計っていうのも、いろいろなメッセージを人に与えるんで、
だからある意味感覚が研ぎ澄ませるのが一つの大きな要素かなっていう。
今回はそのときは、茶席というよりもお茶というよりもお茶の一つの空間設計、
つまり茶室の設計がどういう意味があるのかっていうことを学ぶための集まりだったんですね。
あのときは10人くらいのお客様がいて、
家元がいて、1回目の茶室の中に入って行く。
そこに僕と実際のその茶室を設計した職人さんの2人が、どっちかというとモデレーターみたいな、ファシリテーターみたいな仕事をするんですけども。
それで一番大きな、15人くらいでも入っても大丈夫なとこに10人入る。
まあ余裕はありますね。
でもやっぱりその雰囲気が非日常的なんで緊張感が生まれてくるんですね。
面白かったのは、そこで1回お茶を飲んで、
それで次の今度は茶室に、もっと狭い茶室、4畳半的な茶室に入って、
さらには2畳半っていう、これから行くんですけども。
その次の4畳半に入ったときっていうのが、何を感じたかっていうと、もともと緊張感があったんだけど、
空間が狭くなったっていうことだけで、緊張感、人数は同じなんですよ。
4畳半に10人くらい入っちゃう。
中川 浩孝
そうか、すごいですね、確かに。
田中 愼一
すごいね、緊張感がガーッと上がってきて。
そこを、もともと家元が仕切りをやるんですけども、
その仕切りをやりながら、僕とか職人さんから、なぜこの空間はこうなっているのか、
それがどういう影響があるのか、どういうふうに設計したその意図は何かっていうのは、職人さんが全部説明する。
僕の役割はですね、そこからコミュニケーションに繋がなきゃいけないんで。
いわゆるコミュニケーションというか、この茶道っていうものが、
どうコミュニケーションの力学と相まっているのかっていう。
それによって自分の感度っていうものが、覚醒していくっていうプロセスとどう関係するのか、
これを僕が説明するわけですね。
これを3つの部屋にやってったんだけど、さすがに2畳半は10人入れないんで。
その半分ぐらいで行くんだけども、何がすごいかというと、空間によって緊張感が変わるっていう。
実際その職人さんの話を見ると、やっぱりですね、
家元が座る場所とそこの天井の設計とか壁の設計とかを置いてあるものっていうのは全部違ってるんですね。
つまりより家元をフォーカスし、家元対お客っていう構造を作っちゃって。
家元対お客っていうのはある意味上下関係ができるんで、こっち側のお客さんは緊張がすごいんですよ。
田中 愼一
それをさらに家元が緊張感を高めるような動きをするわけです。
それによって緊張感がどんどんどんどん上がっていく。
僕が今まで出てきた茶室は緊張感がほぼ一定してたんだけど、今回はその緊張感がどんどん上がっていくっていう。
僕はファシリデーターの役割なんだけども、それでも緊張感がどんどん上がっていく。
だから空間設計のあり方、広さ、狭さ、さらには何が置かれているか、どういうところが板敷きになっていて、
どういうところがいわゆるそうじゃないかという、
そこの物の置き方設計で人間の緊張をグワッと意図的に上げちゃうんですね。
意図的に上げて、結局2畳半くらいまでになっちゃうと、もうこれニーズ入らないんで、
だいたいぎゅうぎゅうで3人ですからね。
でもそこの2畳半っていうのが、実はものすごい緊張の極めっていうところで、
普通緊張すると人間心が動揺するんですよ。
でもその空間でその動きをとっていくと、徐々にその緊張から来る動揺が、
徐々にその緊張感を楽しむ気持ちになってきて、その楽しむ気持ちがさらに強じて、
2畳半になると、より、身心一如っていう仏教用語があるんですけども、
身体の身と心って書いて身心っていう、身心一如ね、一つになるっていうのがあるんだけども、
あれはですね、相手との一体化ができるんですね。
緊張感が2畳半くらいの空間になると。
だから、昔の例えば信長がなんでこのお茶を愛したか、どう利用したかっていうのを考えたときに、
いろいろ想像できるのが、人のある意味その緊張感を使って、
緊張感をたしなむ能力っていうのを培う自分自身に対してね。
っていうメリットと同時に、人を支配するっていう、人の心を支配するっていうところに緊張感をですね、
使っていくっていう、この2つの流れがあるんだなっていうのは、僕自身の発想として生まれてきて、
その話をしたらみんなが、ああそうだって話になって、
で、基本的には緊張をどうたしなむのかっていう意味が一つ。
つまり自分自身が緊張をどうたしなむ。余裕を持つかっていう。
そうするとそれを使えるんですよ、人に対して。
相手に緊張感を与えることによって、自分も緊張感はあるけど自分は自分をたしなんでるから、
相手の心を動揺しながら、コミュニケーションの原理原則から言うと、相手の心を動揺するとチャンスなんですよ。
そこに一挙に支配という構図を作ることができるんですね。
だから茶室っていうのはある意味で言うと、緊張感を鍛える、たしなむような力をつける場でもあるんだけども、
一方では、それは自分に対してなんだけど、一方では相手に対して支配の構造を作るっていう。
つまり緊張によって相手の心が動揺し、その動揺したところにこっちがもうワンプッシュして緊張を与えることによって、
相手を支配する構造っていう。
支配する構造って言った途端に職人さんがそうなんですよって言ってですね。
相手を支配するための構造を作ってるんですかって聞き返したら、実はそういう設計になってる。
だから家元がどこに座るかっていうのが、そこに来たお客さんに対してどういう支配の構造を作るかっていうのを計算しつくした設計にしてあるんですよ。
だからこれはね、結構面白いなと思ったのは、
田中 愼一
これは僕の想像の世界だけど、信長の茶っていうのは一つね、利休と組んで作った茶なんだけども、
結構いろいろな話があって、例えば石田三成とか豊臣秀吉とか、彼らはどの空間のサイズで招待されたのかな。
基本的には職人さんが言ってたのは、たぶんこの一番でかい広間でしょうね。
なぜかって彼らは直属の部下なんでね。
もう支配の構造はできてるんで、そんな4畳半2畳半使う必要はない。
だから大きなところで十分。
例えばこれがですね、毛利輝元とかですね、いわゆるあたりになったらどこあたりかね、4畳半ぐらいかなと。
じゃあ2畳半に入れる、信長として入れる相手って誰になりますかねって議論が出てきて、
僕は即答でね、家康ですよ。徳川家康です。
なぜかというと徳川家康は一番の盟友であると同時に、やっぱり実力ともに、逆に言うと信長も落とせる。
だから基本的には家康ですよって言って、
でたぶんこの2畳半みたいなところで顔を付き合わせて2人で。
しかもその構造ってのは支配の構造っていうのを植え込むための構造になってるわけだから。
まずは支配という構造、緊張感をレバージして、家康の動揺の中でこっちのメッセージを出すことによって、
一挙に支配の構造に持ってって、支配の構造が強じるとですね、
あるいはこうじるとって言った方がいいのかな、日本語的には。
何になるかって言うと一如になるんですね。
つまり家康との一体感が出来上がる。相手も。
だからそうやってある程度緊張感を設計、しかもそれを空間設計によって緊張感を設計し、
そういう場に相手を引き入れることによって、その中で緊張感を、相手の緊張感、自分の緊張感も。
こっちも緊張しないと相手も緊張しないんですよ、基本は。
だからこっちも究極の緊張感、え?と思うような緊張感で相手に接することによって、相手に緊張感を生むことができるんですね。
自分がちゃんとその緊張感に免疫性を持ってないと。
中川 浩孝
自分も飲まれちゃいますよね。
田中 愼一
飲まれちゃう。だから自分が本当に緊張感を究極まで上げる場としてお茶をね。
茶室を。さらにはその緊張感を相手に与えるための場として。
さらにはその緊張感を相手に与えて、相手の動揺を見抜いてそこを攻めるっていう。
で、さらにはそのさらに上行って、相手と一体になるっていうね。
それによって家康をしっかりとマネージするっていうか、抑えるっていうようなことは、
僕が間接知識で得た織田信長からイメージすることができるかなっていうふうには思います。
で、それを演じたのは二畳半で、もう一人もし入れるとしては利休だったんですよね。
だから信長、利休、家康。で、基本的には家康をしっかりと引き入れちゃうっていう。
で、利休の役割は参謀というかファシリテーションですよね。
そんな感じですね。
ですから、戦略コミュニケーションって僕がやってるのは、これは利休だなと。
ファシリテーションですね。っていうのを勝手に想像しながら、ニコニコしながら帰ってきたと。
中川 浩孝
現代だったらそれって何になるんですかね。
田中 愼一
わかんないけどね。
ただ、僕としてはお茶のプロセスは使えると思うんですね。
今までも特にスタートアップの人たち、トップの人たち連れて何人か経験させて、
彼らもそれは実感するんだけど、なかなか鎌倉って遠いし、
で、社長っていうかスタートアップの人たちは特にそうだろうけど忙しいから、そういう場がなかなかない。
だから、そうですね、やっぱりもう少しそういう余裕があればね、
お茶の湯をやりながら、そういう緊張する感覚っていうのを、自ら作り出してやっていくっていうのがあると思いますね。
田中 愼一
まあ実践の場はみんな緊張するんですよ、やっぱりね。
でも緊張すると、もう緊張したらそれで終わりで、緊張をたしなめるっていうね、たしなむっていうところの能力を持っては絶えず日々、
そういう工夫によって非日常性っていうものを導入して、
自分の中に緊張感をたしなむっていう訓練をしておくっていうのが重要じゃないかなって気がします。
中川 浩孝
なかなか経験したことがないので、どういう感じになるのかなって感じがします。
田中 愼一
それからあと、そうですね。
次は何を話しますかね。トランプっていう選択肢もあるんですけどね。
彼というよりも、いわゆるイーロン・マスクも含めたトランプ現象っていうものが、
今何を意味するのかっていうのは非常に面白いなっていうのは一つありますけども。
まあもしかしたらもう1週間ぐらい見て、それを議論したほうが面白いかもしれないですね。
だからある程度それが一つと、それからもう一つはそうだな。
一つ今僕が取り組んでるのが、トップ欧米人に対するリーダーシップコミュニケーショントレーニングなんですね。
日本のそういうトップエグゼクティブに対してはもう既に確立された手法っていうのはうちは持っていて、
僕自身が開発してるんで、それでそれなりに価値出してるかなとは思うんですが、
よくあるのが、日本にいる欧米の人、あるいは日本の統括になっている欧米の人、日本語がわからない人、
そういう人にリーダーシップトレーニングをやってくれと。日本でいるトップっていうのがあって。
結構そういうときっていうのは、僕とあともう一人相棒が必要で、その相棒っていうのは日本人じゃない相棒ですね。
つまり思考回路が英語の人っていうことで。僕はやっぱり日本人だから思考回路が日本語なんですよ。
でもそういう思考回路が英語の人っていう、欧米人ですね。
英語の人っていうのは、同じ日本のエグゼクティブにやってるトレーニングを使って教えてもわからない。適切じゃない。
なぜかというと、日本人とそうじゃない英語思考回路を持ってる人たちっていうのは、
いわゆるコミュニケーションに対するリテラシーというか、コミュニケーションに対する考え方っていうんですかね、
捉え方っていうのは非常に違っていてですね。
日本人にやるときは、まずコミュニケーションって何?っていうとこから話していくんだけど、
欧米人はコミュニケーションって何?って言われると、ほぼ暗黙知の中にあるんですね。
例えばメッセージっていうと、今は日本でもメッセージっていうのは通用する言葉になりますけど、
僕がコミュニケーションの事業を立ち上げたときの25年ぐらい前は、
メッセージって言うとわからない人が多くて、キャッチコピーかとかね、タグラインかとかね、
そういう捉え方なんですね。表現。ある意味表現みたいな捉え方、メッセージっていうのは。
ところが欧米人はメッセージってわかるわけです。説明しなくても。
彼らは別に説明も頭の中にないと思います。定義も。
メッセージって言ったらメッセージっていうことで使える。
だからこの二つの対象、つまり日本人のレベルと欧米人のレベルとでは全然違う。
レベルが高い低いっていうんじゃなくて、違うんですよ、コミュニケーションっていうのは。
実際コミュニケーションって言葉は日本語ないですからね。
だからそういう意味で、日本人には日本人に対してという独特なやり方があるんだけども、
ただ教える内容は同じなんですよ、ポイントは。
ただ気がついたのが、それを今開発してるんですけども、
やっぱり教え方が重要だと。
やっぱり日本人には日本人の教え方っていうのがやっぱりあって、
欧米人には欧米人に対する教え方っていうのがあって、
じゃあその教え方をどういうものがあるのかっていうところで、
英国人なんですけども、二人でいろいろ議論してどう作るべきかって議論して出てきたのが、
やっぱり教育の教え方が違うんじゃないかと、欧米と日本ではと。
日本ではどっちかというと、いわゆる座学方式。
つまり先生がいて先生が教えるっていうのが、
一つの日本の教育の仕組みのやり方ですよね、今でも。
ところが欧米はどっちかというと、先生が教えるっていうよりも先生はあくまでコーチ。
コーチングって言葉がありますけど、コーチをしていて、
生徒たちが自らディスカッションしながら答えを学んでいくっていう、
このエンゲージメントの方法が違うんですよね。
日本の場合はもう座学だとほとんど講義形式になっちゃう。
中川 浩孝
まあそうですよね。
田中 愼一
で欧米の場合は講義からじゃなくて、
どっちかというとまずディスカッションとか。
みんなで議論しながら先生が導いていく。
コーチしていく。
コーチングしながら、これだよって言い渡す。
だから教えるものは同じだとしても、
英語で言うとエンゲージメントでしょ。
田中 愼一
考えさせるね、これが良くて、答えを出す教育じゃないんです。
今まで座学というのは基本的には答えを教えてるっていうだけの話で、
それが知識偏重に行っちゃうわけでしょ。
エンゲージメントのやり方ってすごく重要で、
僕自身は座学方式と一応スライドを作ってやるんだけども、
僕のやるトレーニングってのは、どっちかというとやっぱり考えさせるトレーニングっていう。
で、なんでそういう発想になってきたかというと、
もともとうちの娘が小学校先生で、いろいろ話を聞いてると、
コーチングやってるなっていう実感もあるし、
アメリカにいたときに子どもたちがそういう教育を受けてきたっていう。
小学校ですね、小学校レベルで受けてきたっていうのと、
それからもう一つはですね、
僕は前にホンダっていう会社にいたんだけども、
ホンダの中にワイガヤっていうカルチャーがあって、
どこから生まれたかというと、
ホンダっていうのは、本田宗一郎さんだけが作ったわけじゃなくて、
本田宗一郎さんと藤沢武夫っていう二人の創業者がいるんですね。
本田さんが研究開発、藤沢武夫が営業財務経理っていう役割分担が明確にあって、
この二人が作ってきて。
で、この二人は天才だったんですね。
ところが二人とも辞任、辞めたときに、
その下にいた経営陣のメンバーたちが不安になって、
二人の天才を我々集団でね、フォローできるのかっていう話になって、
そこである一つの風土が出来上がってきて、
それはどういう、まあ習慣と言った方がいいかな、風土かというと、
みんなでワイワイガヤガヤしながら、
企業の経営の方針を決めていこうっていうようなのがそこで生まれたんです。
で、それがその後形となって、
役員は部屋を持たないんですよね。
大部屋しかないんです。ラウンジみたいになったんです。
そこまで僕がいたときはラウンジになってた。
で、ラウンジのとこにみんな集まる、みんな
で、ワイガヤするっていう感じで。
で、それがたぶん一つの企業カルチャーになってったんですね。
で、僕もホンダに入ってから、そのワイガヤっていうのはそうだな、
やっぱアメリカに行ったときに一番使ったかな
徐々に身についていくんです、習慣として。
その習慣っていうのはどういう習慣かというと、
自分で、自分の頭だけで考えないっていう。
で、そのワイガヤを始める人っていうのは誰でもいいんです。
例えば僕なんかまだペーペーだったときに、
あいつとあいつとあいつとあいつと呼んで、ちょっと呼ぶんですね。
で呼んで、コーヒー飲みながら、実は俺困ってることがあってさってね。
今自分が深刻に悩んでいるテーマを言うんですよ。
そうすると周りの連中がですね、
で、もともと周りの連中っていうのは、
そのテーマを議論するのにふさわしいだろうなって人の人生はもう自分がやってるわけですね。
で、それが集まって、何言うかって言うと、
いや俺も悩んでるんだって自分の悩みをまず出すんですよ。
暴露する、自分自身。
そうすると人間は不思議なもんで、
自分の悩みというか自分をさらけ出すと周りがいろいろ言ってくれるんですよ。
そしてね、いやお前なにそれってなって、
いや俺これさ、だーってね、ブレストができるんですね。
でブレストが出来上がると今度何が起こるかと言うとですね、
だんだん一つの方向性が主催した自分の中に見えてくるんですね。
これだ、なぜかと言うと、自分が今一番困ってるわけですから。
課題認識が一番高いんですよ、今の段階で周りと比べて。
だから課題認識が一番高いから、みんなでブレストをやってるうちに、
いろいろなアイデアが出てきたら、これだってわかるんですよ。
課題認識が高いからキャッチできるんですよ。
そのキャッチしたやつを、今度は次に発展できるっていう方向性も見えてくるわけですよ。
で発展できるっていうところに舵を切った瞬間何が起こるかと言うと、
ケチさんが出てくるんですね。
ケチをつけるやつが出てくる。
お前なんだよ、今までブレストして自由討論してたのに、
なんでそっちの方向に持ってこうとするんだよって、
ケチをつけるやつが何人か出てくる。
そうしたときにそのケチをつけたやつを理屈で論破しなきゃいけない。
みんなの目の前で。
で、論破していくと二つの功用が出てくるんですよね。
一つの功用は自分がより確信が持てるようになる。
人間って人に教えると自分が教わるんですね、もっと。
だから自分の考え方を人に説明してるっていうことは、
論破しようとして一生懸命説明してるっていうのは、
自分に対して言い聞かせてるんですよ。
そうすると自分の理解がより進んで、より新たな方向性が見えてくる。
で自分の決めた方向性に自信を持つようになる。これが一つの功用。
二つ目の功用は、ケチをつけてる以外の人たちが、
僕が論破する姿を理屈を唱えてるのを聞いてるうちに、
徐々に僕と同じレベルに彼らの課題認識が上がってきちゃうんですよ。
そうすると面白いもんで
自分一人だけが深刻に思っていた課題がですね、
周りその他の人たちに共有されると何が起こるかというと、
いろいろな発想が生まれてくるんですよ。
これはどうなのじゃあ、これはこうだよ、いやだったらこれやったほうがいいよって。
でホワイトボードがあるとそこにですねみんなが立ち上がってどんどん絵を描き始める。
こうやってこうやってどうだって。で僕が一番主役というか中心になってるんだけど、
いやそれはこうだぜって言うと他のやつが、いやこれはこれでやれるんだぜっていう。
これはですね自分の頭だけで考えてるんじゃなくて、
ここに集まっているケチをつけたやつも含めてですね、
いろいろな発想をボカボカぶつけてくれるんですよ。
そうするとその発想がぶつかっていくと、
想定もしなかったようなソリューションが見えてくるんですね。
これ基本的に極端に言うとホンダの車作りの基本のプロセスです。
それからありとあらゆる僕なんかの行動プロセスっていうか、
全ての課題を解決するときに取る癖ですね、習慣ですね。
これがやっぱりエンゲージメントなんですよ。
徐々に人の心をエンゲージしていくファシリテーションを一番困ったやつがやる。
それをすることによって、狭い視野じゃなく、より広い視野を持つことができて、
その中でかつどこに集中すればいいかっていうのが見えてきて、
それをやっていくと今まで想定もしなかったソリューション、
つまり普通の会議でやると、だいたい想定内のソリューションしか見つからないんですよ。
ところがそのワイガヤでエンゲージメントという鍵をボーンと打ち込むと、
しかもそのエンゲージメントを、さっきケチをつけるやつをケチさんって言いましたよね。
ノリさんっていう乗せるやつがいるんですよ。
その乗せるやつは誰がやるかっていうと僕がやるんですよ。
だから乗せる、乗せる、乗せる。そうするとどんどんみんないいアイデアが出てくる。
そうすると、あ、これだ、ここだって。
だからそこはね、いわゆる乗せるっていうのは今だったらファシリテーションってことになるんでしょうね。
だから僕のトレーニング方法って実はこのワイガヤをベースにして作り上げてるんですね。
だから基本的にはエンゲージメントなんです。
エンゲージメントをどれだけ作るか、そうすると一旦動き始めると周りが一緒に動いてくれるんですよ。
だからどう人をエンゲージするかっていうのは、僕の現体験はそれが原体験なんですね。ワイガヤっていう。
田中 愼一
ただそれを一つの方向性に、みんなで一つの方向性を持っていくっていうのはどっちかというと、日本人の方が得意かもしれない。
どうですか、日頃アメリカのコミュニケーションの環境に晒されているヒロさんとしては。
中川 浩孝
どうなんですかね。私は前にも言ったことがあると思うんですけど、私はミーティングのときには、あえて別に自分の意見じゃなくても言ってみるっていうのが結構大切かなと思って。
わざと自分が思ってないことを、みんなが言わなかったからたまたま自分の意見でもないけれど、それを突っ込んでみるっていうのはたまにやったりはしますよね。
田中 愼一
いいんじゃないですか。それはもうね、すでにファシリテーターとしての領域に入りつつあるよね。
逆に質問することによって引き出すっていうのはあって。グロービスも長くやってるけど、MBAで。
あのときに1年かけて講義を作ったんですよ。7日間集中コースっていうのを設計したんですよ。1年かけて。
よくかけてくれたなと僕は思うんだけど、グロービスのトップの先生が来て、僕と一緒になって、やあこうだあーだって議論して、
かなりぶつかるシーンもあったんだけど、いいものができたと思ってるんですが、そのとき気がついたのは、コンサルって基本的には答えを出す人間なんですよ。
だから答えをどんどんどんどん出す。質問が来たら答えを出す。質問が来たら答えを出す。これコンサルの性ですね。
だから相手の話を聞く前に質問が来たら答えちゃうっていう
僕はその方式、これブリッジングっていう方式なんだけど、ある意味。ブリッジングっていう方式をずっとやってきたもんだから、メディアトレーニングで。
それのパターンなんで、そのときに先生のほうと一番の対立点はそこで。
で、先生の方は答えは言うなっていうわけね。答えは導けって言って。
じゃあ導くのにはどうしたらって言ったら答えるなと。質問しろって言われたの。
相手に質問して、相手がその質問が、自分は当然わかってるんだけども、質問して相手を誘導していくのが、気づかせるのがあれだっていう非常に、
ある意味欧米的な発想で。あそこは結構欧米的な発想で、その先生も感謝してるんですけどね。
実際1年かけて設計して、それから実際に実動しようって言うんで、1年から2年さらに、
僕が実際にやる、あの頃はオンラインじゃなくてオフでやってたんですけど、
何か合宿所みたいなのがあって、そこに泊まりかけてくるんだけど。
そこで2日間やるんだけども、そこで僕がやるでしょ。講義をね。講義っていうかセッションをわーっとやるでしょ。
全部でDay1, Day2, Day3, Day4って4つぐらいあるんだけど、Day1, Day2は1日目。2日目がDay3, Day4なんだけど。
Day1ごとにずっと一番後ろで座って見てるわけです。
でね、全部イエローカード書くの。これダメ、これダメ、これダメ、全部メモに書いて、
で終わると休み時間なくて、僕には。すぐ僕のとこに呼ばれて、
はいこれ1枚ダメ、これ1枚ずつめくりながらね、ダメ出しされるんですよ。
これ1年から2年やられた記憶があるんですよね。
中川 浩孝
すごいですね。
田中 愼一
年2回だから。わざわざ宿舎まで泊まりに来てくれるんですよ。
で、非常にそのトレーニングがですね、ファシリテーションの力をつける上では非常に役に立ちましたね。
だからやっぱり、もちろんブリッジングっていうね、相手の質問をこちらのメッセージに繋いで答えるっていう技は絶対必要なんだけども、
それだけじゃダメで、やっぱり逆に質問を利用して相手をどう導いていくかっていう2つのやっぱり技を持ってないと、ファシリテーションとかあるいはコーチングもできないと思うんですよね。
だからまあそういう意味で、面白いですね。
中川 浩孝
私さっきのところでちょっと質問が逆にあるんですけど、そのフライシュマンとして全体でも会社として持っているそのトレーニングの手法っていうのがあると思うんですけれど、
それを日本にいる外国人のエグゼクティブにトレーニングするときはその手法を使うっていうふうにおっしゃったと思うんですけど、
逆に言うと、いわゆる日本の企業のトップの人たちっていうのはそれを知らない人たち、日本流のやり方でやってきている人たちとそういう人たちは対峙しなくてはいけなくて、
今まで欧米流のコミュニケーションをやってきた人が日本に来たときにやっぱり戸惑うことっていうのも多分あると思うんですよね。
逆にそれを何かこう、日本はこうなんですよみたいなふうに教えたりっていうのもやっぱりしたりはしてるんですか?
田中 愼一
そうですね。リクエストによりますけどね。
どっちかというと、そのコミュニケーションの力学っていう、日本流のコミュニケーションの力学っていうのはある程度触れることは触れるけども、
あくまで触れるぐらいのところなんで、今の質問すごく問えてる質問なんですけど、
次のステップっていうのは、日本人のコミュニケーションに対する考え方っていうのはですね、決して劣ってるとかそういうふうには思ってないんですね。
田中 愼一
捉え方の違いだと思うんですね。
だからコミュニケーションという日本語になっていないものは、ほとんどの日本人が空気みたいなものだと思ってるんですね。
ところが欧米人はそれは一つの力学として認識してますね、間違いなくね。
ここの差だけであって、どっちが優れてるとかいうわけじゃないんですね。
ただ重要なのはリーダーシップっていうものを発揮するっていうのは、一言で言うとこれは万国共通だと思いますが、
人を動かすことなんですよね。
どんなに立派なビジョンを唱えても、どんなに立派なパーパスを唱えても、どんなに人格的に徳があっても、
人を動かせなかったらリーダーじゃないんですよ。
そうするとすべての、僕の発想はどこから来るかっていうと、人を動かすためにはどうすればいいのかっていうのが一大テーマになってくる。
40年近くどうやったら人は動くのかっていうことを一生懸命考えてきて、
そのときに出てきた結論というのが、もちろん人を動かすには武力・財力・権力っていうのもあるけど、
実はコミュニケーションっていうのを力として理解し、それを使うと、実は一番コスパが高い人を動かす力はコミュニケーションですよねっていう感じですかね。
そういう発想の中からトレーニングを作ってるんですね。
だから例えば欧米で今やってるうちのトレーニングって全部見てるわけじゃないんで、最新鋭も見てないからわかんないけど、
通常僕が知っている範囲で言うと、人を動かすとか根本的なところの発想がないんですよ。
どっちかというとテクニック的な話で終わっちゃってる。
日本人の場合はテクニック的なところだけじゃ逆にダメで、日本人向けには本質的なところからスタートして、
とにかく皆さんは人を動かせなかったらダメなんですよってところから始まるわけですよ。
じゃあ人を動かすにはどうすればいいのっていうところから始まって、武力・財力・権力以外にコミュニケーションっていうのは力じゃないの?
このコミュニケーションっていうのを力学として理解してもらいたいですねって言って、
じゃあその力学の原理原則は何かって言うんで、原理原則を教えてあげるわけです。
そのあと基本的にはそういう中で、原理原則はこうなんだけども、
そこから生ずる、我々が日々直面する課題ってありますよねってね。
でよく言うのが、例えば自分があいつにAと言ってるのに、あいつはAと受け取らずにBと受け取って、
こっちの想定外の動きをする。これ困っちゃいますよね。
でもなぜそれが起こるか知ってますか?って言うと、えーってこうなっちゃうんですよ。
そこを説明してあげるわけです。なぜかって言うのは、一人一人の人間が違った風景を見てるんですよと。
これは事実、真理です。人はそれぞれ違う風景を見ている。
違う風景を見ているから、自分がAと言ったメッセージは、あくまで自分が見てる風景に基づいてAと言ったわけだから、
相手が自分と同じ風景を見ていれば別だけど、見てなかったらBとして別のメッセージを受け取っちゃうんですよ。
これ真理なんですねって言うと、みんな、なるほどって言う。
頭ではもちろんそんなことは感じてたんだろうけども、それを言葉にすると、そうかと。
やっぱりコミュニケーションの原理原則ってそういう世界なんだっていう話とか、
あと当たり前なんだけど一番多いのは、自分はメッセージを発信してる発信してるって言ってるんだけど、
メッセージってのは相手に伝わったものがメッセージであって、自分が発信してるのはメッセージじゃないとかね。
こういう原理原則を解いていくと、非常に日本人のエグゼクティブはわかりやすくなる。
中川 浩孝
なるほどね。わかりました。だから全然日本風と日本流、欧米流が違うという話ではなくて、
その前提のところがまず日本人には伝わってないところが多いっていうことですね。
田中 愼一
だからそこを入れてやると十分理解するし。
トレーニングって言っても、毎日トレーニングやるわけにいかないから、リーダーは。
そうすると何が重要かというと、少なくともこっちで3時間あるいは5時間やったトレーニングっていうのが一つの型になってね。
でそれを後は本人の努力次第で、それをベースにしながら一つの型をベースにしながら、
日々コミュニケーションを取ってるわけですか、いろいろな人と。
日々コミュニケーションが一番の大きな悩みのはずなんですよ、間違いなく。
つまり一番の大きなトップリーダーの悩みってのは、人が動かない。これだけ。
もうここ一点集中ですよ。人が動いてくれないんですよ。
じゃあどうやって動かすかがリーダーにとっての今の一番の、今だけじゃないですけど、永遠の課題だと思うんですね。
だからそういうのを入れてやると、逆に日本人が有利なところと不得手なところっていうのは少し見えてきますよね。