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中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル、仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
こんにちは、コミュニケーションの修羅場を人生のチャンスと思い込んでいる田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPR、コミュニケーション業界に転職して、はや四半世紀、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住、中川浩孝です。
ジャニーズのクライシス対応
田中 愼一
今週のテーマというよりも、今燃えてる、炎上してるクライシスのケース、ジャニーズの月曜日に記者発表をして、
周りの印象としては、僕もそうなんですけど、それなりに覚悟を示した、廃業という言葉が出てくるぐらいに覚悟を示した会見で、なかなかやったなと。
っていうふうに思ったら、次の日ぐらいに、記者のNGリスト、いわゆるブラックリストを実は作っていたっていうことが報道されて、それはNHKだったと思いますけどね。
実際の記者会見のときに、よくあれ撮ったなと思うんだけども、担当者たちがみんなリストを持って、いかにも外から見ても、あ、写真がついてて、リストになってるっていうのがわかるような、僕もその映像を見たけども。
それが基本的には、昨日のトップニュースとして7時のNHKに流れたんですよ。
そうしたら、ほとんど報道番組は、それをトップラインで放映し、今日に至っては午前中から各バラエティのショーで、これが全部報道されて、SNSも盛り上がっちゃってて。
これはね、何て言えばいいのかな。あまりにも、僕もクライシスずっと長年やってますけども、王道を外したやり方だなっていうかね。
僕も、うちにはクライシスを専門にしてる舞台もあるんですけども、もうはっきり言うと、下手すると25年ぐらいかな、僕はクライシスに結構取り組んでるんですけども、
その中の基本的な原則っていうのは言行一致なんですね。つまり語っていることはしっかりと行わなきゃいけないんですよ。
要するに言っていることと実際やっていることが不一致だっていうのが、実はクライシスのときの一番だいたい失敗する例なんですよ。
中川 浩孝
一番やってはいけないことですよね、確かに。
田中 愼一
やってはいけないんですよ、これ。で、一生懸命そういうふうに不一致っていうふうにメッセージが受け取られないように、そこをしっかり担保するのが、クライシスマネジメントを専門にしてる会社の大きな役割なんですね。
我々なんかは、とにかく言行不一致っていうことで、少なくとも今回のケースを見ていると、今週の月曜日の記者会見はそれなりに立派にやってたんですよ。
ジャニーズ側の覚悟も伝わってきたし、若干一社一問とかね、2時間っていう限定を設けたのはあれは間違いだと思うんだよ。
でも少なくともジャニーズのトップの方々っていうのは、前向きにね、なるべくオープンにオープンにっていうメッセージを出してたわけですよ。
だから覚悟もあると同時に、オープンにとにかくやっていきたいっていう姿勢が見えたんですね。
だからそこが一つの評価。覚悟しただけじゃなくて、オープンにやっていきたいっていうね。
だから評価されたと思うんだけども。
実はその裏でNGリストを使ってたってのは、オープンというメッセージとは逆のメッセージなんですよ。
こいつには当てないとかね、この記者には。
そこに不一致があるわけですよ。
そうするとこれがどんどんどんどん、ある意味マスコミからするとこれはね、おいしいですよね。
だからやっぱりNHKとしても、よくあの映像を撮ったと思うけども、担当者が脇に抱えて、その中身が本当にね、写真も見えるぐらいにあるわけですよ。
だからあれはね、やはりやってはいけない。
しかもそのNGリストがだいぶいろいろな人たち、オペレーションにかかってる人たちに配られてるんですよね。
NGリストの問題
中川 浩孝
それはまずいですね。
高木 恵子
それが不思議。
田中 愼一
だからそこはね、ああいうNGリストっていうのを仮に作った場合ですよ、もし。
それはもう限定した人だけに渡す。
もっと言うならば、もう一枚限りトップの人以外は見ないとか、あるいはアナウンス。
中川 浩孝
しかもNGって書いてあるのがないですよね。
だってもしもバレてしまったというか、もしも誰かに見られてしまったときに、言い訳のしようがないじゃないですか。
田中 愼一
しようがないんですよ。
だから我々がなんでクライアント会やNGリストを作るって、クライアントの方は要求するわけですよ、やっぱり。
でもそれはね、ダメだってね、明確に言わないとクライアントのためになる。
なぜかというと、一枚コピーが増えるごとにリスクが増える。
中川 浩孝
その通りですよね。
田中 愼一
今、たぶん今回のケースもそうだけど、内部からそういう情報が外に出てくるんです。
高木 恵子
本当にそうですよね。
田中 愼一
クライシスのときはそれが一番怖いんですよ。
だからほとんどの話した書類とかそういうのっていうのは管理が厳重で、
焼却する、戻す、渡さない、そういう手続きを踏まないと、こういうふうに表にどんどん内部からもどんどん流れていくっていうことで。
話によるとかなり前からリストっていうのは情報として流れてたっていう話も聞いたことがあるんで、
たぶん月曜日にあって、既に火曜日あたりにはもう既にそういう話が回ってて、
NHKは大したもんで月曜日にそれ撮ってるんですよね、映像として。
あれだからもしかしたらNHKはその頃からもう掴んでたのかもしれないですね。
中川 浩孝
なるほどね。
田中 愼一
だから結構怖い話で、絶対やっちゃいけないことですよ、これ。
だからそういうのが、でも我々普通に生活して個人レベルでも、企業に限らず個人レベルでも何か失敗しちゃったときってあるじゃないですか。
で、ああって言って、少しでも言い訳するともう根がなるんですよ。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
あれはね、面白いもんで。
だからそういうときはね、本当ね、どんな一種の個人にとってはクライシスのようなシーンは、まずですね、覚悟を決めること。
で、言行一致で話すこと。
これがね、すごく重要だと思いますよ。
ここあたりっていうのは今結構ね、いろいろパワハラとかハラスメントが増えていく中で、しっかりとメッセージを伝えていく相手にっていうのがますます重要になってきてるんで。
だから特に何か失敗したり、何か個人にとってのクライシスが起きたときっていうのは、
まずはもう起こしちゃったのは自分だから覚悟し、言い訳は言わず、あとは言行一致でね、話していく。話したことはちゃんと実行する。
そこの不一致を起こした瞬間に周りの信用を圧倒的に失いますから。
中川 浩孝
そういう意味では言行一致って本当広報の基本というか、今回のクライシス対応だけではなくて、常にそうだと思うんですけれども、さらにクライシスのときにはさらにさらに重要になるってことですね。
田中 愼一
さらに、さらに。実は今回のジャニーズのクライシスは若干違うっていう縁もあるんですけども、
例えば大きな事故とかそういうものが起きたときに、大体必ず原因を追求されるんですよね。原因はどうなんですか。
でもね、事故が起こって大体記者会見を開くっていうのは、かなりもう2、3時間以内には開くぐらいが目処なんだけども、
そういうときに何が起こるかというと、原因は何ですかって言われたってわかんないわけですよ。
だから、いや原因はわかりません。いやあなたは人が死んでるんですよ。原因はわかりません。
この繰り返しでだんだん記者の方々も心得てて、それをどんどんしつこく責めることによって、話し合いをしてる人を激情させてね、激怒させて、その怒ったシーンをカメラで撮る。
っていう動きになっちゃうんですよ。でも、原因は語れないんですよね。わかんないからまだ。
ただ、行動は語れるんですよ。
つまり、その原因を追求するために、実際この事故が起きてから、どういうステップでその原因を究明してきたのか。
今日に至るまで。さらには、今現在どういう活動を行うことによってその原因を究明しているのか。
さらには、これからどういう方向で進めていって原因を究明するのかっていうのは、行動は語れるんですよ、いくらでも。
行動と原稿の一致の重要性
田中 愼一
だからそういうときは行動を語れっていうのを言うわけです。
もちろんその行動が実際に実行されなきゃダメですよ。後々チェックされるから当然だから。しかも嘘の行動は言えない。
だからよくこちらのお客さんにお願いするのは、起きた、いったい何時の時点でこれを認識したのか、この事故か事件か。
認識した後の今に至るまでの行動を全て分析してもらうんですよ。
そこに少しでも至らぬ点があると、それはカバーできるかできないかっていうのを見渡して、
カバーできないと判断したら、もうこれは認めたほうがいいと。
できなかったっていうのをはじめから、そこはもう認めるというようなね、そういう作業をしていくんですけど。
それによって、何か起こった瞬間にも絶えずその後、実際の記者会見までの間の行動を細かくしっかりと理論づけておく。
行った行動は全てなるべくエビデンスとしてしっかり確認することと、
行っていないようなことを行ったって嘘はつかない。
いずれバレるんですよ、この話って。
特に今の世界、ネットの社会になると、企業って物事を隠せなくなってるんです、もう。
個人ならまだね、個人ならまだ自分が本当に黙ってりゃあれだろうけど、
会社ってのは組織構造でみんな動いてるわけだから、何か動きは全ての社内で伝わるわけですよ。
そこからどんどん漏れていくと、あんなこと記者会見で言ったのに、実は全然あれ嘘の話だったんだっていうのがまたワーッと来る。
こういう世界になるんで、いかにそこの言行一致っていうものがクライシスにとってはすごく重要だっていうのは、
まさに天国と地獄ですよ。月曜日と今回の水曜日が報道されたのは。
まさに昨日の7時のNHK放送の前までは、天国だったわけですよ、ある意味。
強化されて、経済界からもう一歩前進したっていう評価を得てたのが、
次のその7時以降から真逆の世界に入っちゃって、これはね、辛いと思いますよ、クライアントも。
高木 恵子
結局、なぜこのPR会社を選んだんだって、
結局はその経営陣たちの、やっぱりこの経営陣で本当に会社を立て直せるのかっていうところに行き着いちゃうじゃないですか。
だからもうなんか本当に負の連鎖ですよね。
田中 愼一
本当に負の連鎖。非常にいい形で第三者委員会が発表し、調査結果を。
それを受けて、廃業というまで覚悟し、発表し、オープンな感じでっていうところを、
逆に誰がそこを仕切ったのか僕は知りませんけども、
報道されてるのは、そこの企業の名前が出てるけども、
本当にそうだったか、あるいはクライアント自身がそれを求めたのかね。
あるいは今のところそういうことは一切求めてないっていう発表になってるけども、
でもそこあたりっていうのは結構ね、やっぱりかなりごちゃごちゃしちゃってしまってるんでしょうね。
ここに対する対応は難しいと思いますよ、結構。
高木 恵子
でもそこで、実際に事前の打ち合わせのときに、NGリストみたいなリストを実は見てたらしいんですよ。
東山さんも井ノ原さんも、要は取締役、ミーティングに出てた取締役全員が見ていて、
こんなリスト作っちゃダメでしょって言ったらしいんですよ。
きちんと皆さんに質問を当てるようにしないといけませんよ。
田中 愼一
それが常識です。
高木 恵子
そこまできちんと言ったらしいんですよ。
だからスマイルアップ側の会社の経営人たちは、経営人とか取締役の人たちは、一応そのリストの存在は知ってたと。
田中 愼一
でも基本的にはダメですよって言ったんですよね。
高木 恵子
言ったんだけれども、結局そこがだから、そのエージェンシーはでもやっぱりそれを持ち歩いたり使ってたわけですよね。
だからそもそもそこが本来の会社だったら、もっとこんなの今ここで破棄してくださいとか、
もうこれ以上ブラックを見せたくないんだからきちんとやってくださいって本来の企業のトップだったら、
もうそこをしっかりそのミーティングで抑えるわけじゃないですか。
田中 愼一
抑えますよね。
普通のいわゆる大手企業というか経済界の主なトップは、もうそこは方針が決まってんだったら、
それはやめろっていうのを指示しますよ。命令しますよ。
高木 恵子
だからそれが結局、ダメですよとは言ったけども、そのエージェンシーが結局、
まあそのエージェンシーも悪いのかもしれないけれども、それをやっぱり持ってたっていうこと自体が、
クライシスへの第三者的な視点と社外取締役の重要性
高木 恵子
そもそも取締役、トップの経営陣たちがそもそもこの会社を立ち直せられるのかっていう、
またそこにだから行き着いちゃいますよね。
田中 愼一
まあそうでしょうね。
要するに、いろいろな有識者の人が今テレビに出て話してるけど、ある意味逆に間違った方向を言う人もいて、
つまり、クライシスのときはね、自前でやるべきだっていう発想を言ってる人もいて、
アウトソースすべきじゃないっていうわけですよ。
これは非常にミスリーディングな発想で、正直企業はクライシスのために毎日毎日活動してるわけじゃないんですよ。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
稼ぐ、さらには社会貢献するで動いてるわけですよ。
で、そういう途上でこういうクライシスが起こるんですね。
そうすると、彼らは基本的にはプロじゃないんですよ、クライシスの。
で、クライシスっていうのは第三者視点を取り入れないと、社内だけでやっていると完全に煮詰まって、
で、どんどんどんどん墓穴を掘るっていうのは、これが実態なんですね。
中川 浩孝
確かに。
田中 愼一
だからクライシスほどね、第三者的な視点を入れなきゃダメなんですね。
で、その第三者視点っていうのは、例えばそういう専門のね、クライシスをやってるエージェントを入れたり、あるいは社外取締役ですよね。
社外取締役がそこを指摘して指導するとか、
よくあるケースはその社外取締役が、我々みたいなところ(ここでは広報専門エージェンシーのこと)を指名して、それでこう一緒になって入っていくような形。
だから基本的には結構これミスリーディングで、クライシスは企業のトップの専門領域じゃないんですよ。
企業のトップの専門は経営だから、一つ方針を決めたらそれをしっかりと実施させる。
これがポイントだから、そういう意味でいうと、いろいろな有識者がいろいろな発言してるけど、結構ミスリーディングだなと。
だからそういうのが僕にとっては逆に心配かなというふうには思いますね。
中川 浩孝
でも本当に今回のことをPR会社の方、コンサル担当の会社が提案したんだとしたら、なかなか困ったことになりますけども、
そこも本当なのかっていうのは誰もまだわからないので、何とも言えないですよね。
田中 愼一
まあね、実際は何とも言えないけど。
高木 恵子
でもだからコンサル会社がきちんと謝罪文を出してるんですよ。
中川 浩孝
もう出してるんですね。
高木 恵子
もう一回最初はなんか、うちは外資系だから、本国に確認。
田中 愼一
グローバル認証を取らないと何とかって言ってました。
高木 恵子
そうそう、何とかって。最初は変な回答してたんですけど、さっきだから夕方、きちんと自分たちの否を認めて、
記者会見を円滑に、やっぱりスムーズに運営するためにこういうリストを作ったんだ、みたいな。
なんかそういう、ちゃんと謝罪文みたいなのを出してましたよ。
田中 愼一
なるほどね。
中川 浩孝
でも起こってしまってからになってしまうと、それが一番きれいな、
元ジャニーズの会社を守るためには一番それが最善な回答だよねっていうことで、
それを作ったって思われてもなんかおかしくなくなってしまうので、
そこが難しいですよね。もう一回起こってしまったことなので。
田中 愼一
まあそうですよ。一旦怒ったから、もう色眼鏡で見られるんですよね。
だから今の内容でも、会をスムーズにっていうところがもう言い訳になっちゃってるってみんな思うんですね。
被害者意識から当事者意識への転換
田中 愼一
で、あと人によってはね、うがった見方をすると、これは逆にジャニーズの方が指示して、
エージェントの責任にしろと言えと、いうふうにしたっていうふうに考えるやつも出てくる。
中川 浩孝
そうですよね。そうすることで、これはクライアントがハッピー、ハッピーというか最終的には良い方に世間から思われるようにするのであれば、
私たちが今回は悪役になりましょうっていうことにしたっていうストーリーにしたっていうふうに思われても、
田中 愼一
今の状態ではもう仕方ないですよね。仕方ない。だから、とにかく色を塗られるんですよ、クライアントってのは。
一挙に色を塗られて、一番失敗するケースは自分たちがどう塗られてるか分かんないと。
そうするとチグハグなメッセージ出しちゃうんですね。
しかも加害者として見られてるんでね。加害者として見られてるっていうのは、発信が変わらなきゃいけないんですよ。
加害者として見られてる人と、加害者じゃないとして見られてる人、あるいは被害者だと見られてる人。
それぞれどう見られてるかによって発信するもののメッセージは変わってきちゃうんですよ。
だからその適切なメッセージっていうのがあるんですよね、それぞれの場合において。
そういうところをちゃんとアドバイスできるのは、やっぱり日頃からいろいろなクライシスの経験があって、
単に一つの企業だけじゃなくてね、あらゆる企業のケースを培っている蓄積したエージェンシーっていうんですか、
っていうのがやっぱり絶対的に必要になってくるんですよね、クライシス。
だから、いずれにしても今回のケースっていうのは、全国を巻き込んだ、やっぱりさすがジャニーズの影響力っていうかをありますけど、
結構我々、学ばなきゃいけない点っていうのはあると思います。
高木 恵子
そうですね。
田中 愼一
コンサルっていうのは必要なときは厳しいことをクライアントに言わなきゃいけないんですよね。
中川 浩孝
なるほどね。
高木 恵子
いやー、本当にね、これが、なんか次から次となんかこう、ちょっと。
田中 愼一
来ますね。
高木 恵子
ねー、なんか。
中川 浩孝
まだまだ続くんですかね、これはやっぱり。
田中 愼一
いやー、続きますね。
今日も、まあいずれにしても今はこれが旬だけど、ジャニーズ
今日何人と話したかな、記者は。
まー何人と話したかな、ごめん。
あーねー、ちょっと驚く対応でしたよね、今回は。
高木 恵子
ねー。
田中 愼一
非常識なこと、よくなんでそういうのが起こっちゃったのかっていうのは知りたいですね。
中川 浩孝
知りたいですね、確かにね。
田中 愼一
事実を知りたいですね。
どうしてこういうことが起こっちゃったのかっていうのは、これ憶測ベースだから、我々だったね、所詮はね。
だから憶測だけども、あれなんでっていうのは非常に不思議でしょうがないですね。
中川 浩孝
第三者委員会を立ち上げていただいて、ぜひ。
原因究明を。
高木 恵子
もうだからなんかやっぱりちょっとこう、このジャニーズ帝国ってもうおかしいですよね。
なんかもうその帝国になっちゃってたから、もうなんかおかしいことがみんなおかしいって思わなくて。
中川 浩孝
そういうことですよね。
経営者としての資質と覚悟の重要性
高木 恵子
もう時間があまりにも長いから、それが当たり前の世の中みたいなものになったから、
もうみんな感覚がおかしくなっちゃってるんじゃないですかね。
その関係者になればなるほど。
中川 浩孝
そうですね。
そうかもしれない。
彼らの常識になってしまっている部分というかね。
田中 愼一
まあ確かにそれはあるでしょうね。
でも、なんだっけな。
芸能関係やってる記者とはいろいろ話したんですけど。
記者じゃないな。
基本的にはよく知ってる人間の話なんだけども。
芸能とかああいうところっていうのは、結構やっぱりブラックリストを作る。
で、クライシスの時なんかブラックリスト必ず作るんだっていうのもある有識者がテレビで語ってましたよね。
当たり前だっていうような発言してた人もいたけど。
まあ確かにそうなんだけど、でも芸能で起こるリスクっていうのとクライシスっていうのと、
企業社会で起こるクライシスっていうのは全然質が違ってて。
高木 恵子
そうですね。
田中 愼一
芸能のリスクってほとんど、今回のジャニーズの時はちょっと特例だけども、
普通スキャンダルとか、なんかそういうことが中心なんで、
その企業が潰れるっていうようなものじゃないわけですよ。
中川 浩孝
確かに。
田中 愼一
でも我々日頃からやってるのはどっちかっていうと企業のクライシスなんでね。
そうすると下手すと潰れるか潰れないかっていうね。
で、そこでの感じからするとやっぱり、なんていうのかな、
絶対NGリストなんか作っちゃいけないっていうのはもう即分かるはずなんですよね。
中川 浩孝
なるほどね。
田中 愼一
だからちょっとそこが業界によってそのクライシスに対する感度っていうのは違うんだなっていうのはちょっと感じましたね。
中川 浩孝
それで今回の件を普通のそういう個人のスキャンダルと取り違えてしまったっていうことですかね。
田中 愼一
そういうことでしょうね。
とは全然違うわけで。
でも少なくとも、
ジャニーズ側の、あの二人の東さんと井上さんのね、月曜日の会見を見てて、
その前の会見から比べるとガラッとね、意識が変わったっていうのは感じましたね。
要するに、前の会見の時はまだジャニーズの名前残すようなニュアンスを少し残してて、選択肢の一つとして残すっていうようなニュアンスの話をしてたのが、
今回はもう明らかにもう消すと、やらないっていうところになったんだから、
多分その間に意識改革とか変容とかトランスフォーメーションっていうんですか、意識の。
それは間違いなく起こってますね。
だからそこなんかは僕はしっかりやった感じはあるんだろうけども、
だから非常に残念ですね、この最後のこの味噌をつけたっていうのはね。
中川 浩孝
そこはあれなんですかね、1回目の会見、9月の会見の世間の世論というか反応を見て、
ああいう結果に結局なったっていうことですよね。
田中 愼一
世論とか、まあそうでしょうね。特にスポンサーからの反響。
このままじゃダメだぜっていうのをだいぶいろんなところから指摘されたんじゃないですかね。
だからやっぱりそういうときっていうのは、いろんなところから聞く耳を持つって大事ですよね。
とにかくクライシスになるともう逃げたい逃げたいとかね。
もうとにかく離れたい離れたいとか。
基本的には特に大きな企業なんかそうなんですけど、ある大きなクライシスが起こると、
だいたい一番被害者意識を持つのはトップのCEOなんですね。
なんでこの時期にこんなこと起こしやがって現場はとかね。
取引先は何をやっとったんだとかね。
もうね、全部ね、被害者意識の塊でね、人のせいにするんです。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
で、そこに往生際が悪く諦めがつかないと、
その当事者意識のまま記者会見とか取材に応じちゃう。
被害者意識のまま。
中川 浩孝
そう、「私も被害者なんです。」的なことを発言してしまった方もいらっしゃいますね。
田中 愼一
私が被害者ですって言った有名な方いらっしゃいますけど、
とにかくそれ言った途端もうアウトなんですね。
だから一つ重要なそういう企業間におけるクライシスの時っていうのは、
トップの意識の変容を起こさせないと、
つまり被害者意識から当事者意識にトランスフォームさせないと、
どえらいことになるんですね。
高木 恵子
確かに。
田中 愼一
で、そこである意味さっきけいこさんが言っていたトップとしての資質っていうんですか、
経営者としての資質っていうのは実は問われてきてて、
で、いろんな経営者のなんていうのかな、
仕草というか動きっていうのを見てると、
優れた経営者って、
はじめ被害者意識はもちろんみんなと同じように持つんだけど、
諦める。
自分を諦めるっていうメンタリティーに持っていって、
で、覚悟を決めるっていう。
人間って一度諦めないと覚悟が決まんないんですよ。
もうダメだって思わなきゃダメです。
もう俺は終わりだって言っちゃうね。
そのぐらい思った方がいい。
終わりだと。
そうするとね、覚悟っていう地平が見えてくるんですよ。
高木 恵子
確かに。
田中 愼一
その覚悟が決まると一挙に当事者意識が逆に出てくる。
で、面白いのに、覚悟が決まって当事者意識が出てくるとね、
実はもう一つ見えてくるのが、
クライシスはもうピンチばっかりなんですよ、周りが。
そのピンチの先にチャンスが見えてくる。
高木 恵子
あー、なるほど。
田中 愼一
だからね、本当にこの人すごいなと思う経営者って、
初めはすごい被害者意識を持つんだけど、
まず自分を諦める。
で、自分を諦めることによって覚悟が決まる。
覚悟が決まることによって当事者意識が出る。
で、当事者意識が出ることによって、
ピンチをチャンスに変える覚悟
田中 愼一
ピンチの先にチャンスを見て、そこに突っ走るんです、なと。
これはね、すごい。
中川 浩孝
ピンチをそれこそチャンスに変えられたっていうこと自体が、
経営者としては、本来的には将来に評価される話になりますよね、
どう考えても。
田中 愼一
まさにそうだと思いますよ。
これは、そういう覚悟を決めるって、
なんでピンチがチャンスに見えてくるかっていうと、
時間軸の設定が変わってくるんですよ。
覚悟が決まってないとね、
明日まで、今日まで、今なんとかして、
こんな話になっちゃうんですよ。
中川 浩孝
その通りですね。今回のジャニーズが今後、
例えば10年後、20年後に存続できるかっていうことを考えたときに、
ジャニーズを残すべきなのか、名前を残すべきなのか、
会社を残すべきなのかっていうことを考えるっていうことですよね、やっぱりね。
田中 愼一
そうですね。だから時間軸がですね、
より長期に、だから今だけじゃなくて、
来週だけじゃなくて、
これから3年、5年っていうタームで、
見れるようになると、
先にこれがあってのが見えてくるんですよ。
これはね、不思議なんだけど、これがね、実は現実で、
だからステップがあって、
まずは被害者意識を持つ。
これはね、やっぱり被害者意識を持たなきゃダメみたいでね、一旦は。
やばいって感じさせなきゃダメなんですよ。
俺やばいって。
俺やばいと思わないと、諦めた時のね、
反動が弱くなるんですよ。
中川 浩孝
なるほど。
田中 愼一
やべえって思って、
次に今度そのやばいっていう被害者意識を忘れてもう諦める。
で、諦めて覚悟が決まると当事者意識が出てくる。
当事者意識がしっかりしてくると、時間軸がフレキシブルになってくる。
中川 浩孝
なるほどね。
田中 愼一
より長い時間でこの問題を見るようになる。
そうすると時間軸が増えるってことは、長くなるってことは、よりチャンスがあるわけですよ。
中川 浩孝
はい。面白い。
田中 愼一
それが見えてくる。
こういうプロセスです。
だからこれをね、トレーニングでやると面白いと思う。
中川 浩孝
面白いですね。
自分と会社の問題を切り分ける
中川 浩孝
あともう一つちょっと思ったことがあるんですけど、
こういう、私経営者ではないので、どういうふうに考えるのかなって、
経営者の人たちがどう考えるのかなっていうのがすごい興味ポイントとしてあって、
それは個人としての私と、会社のエグゼクティブなのか社長なのかとしての私っていうのが多分あると思うんですけど、
そこってどういうふうに切り分けて考えているのかなっていうのはちょっと思ったんですよね。
今おっしゃったように、この自分やべえっていうのは自分やべえなのか、会社やべえって感じるのか、そこって結構なんか実は違うことだと思うんですよね。
田中 愼一
これはね、全然違うと思います。
まずは自分やべえ。これは人間の差がしょうがない。自分が一番可愛いから。
で、次に会社やべえでしょうね。でも会社やべえっていうのも実は自分やべえと繋がっている。
中川 浩孝
もちろんそうですけどね。
田中 愼一
要するに、やべえこれ取り締まり。だからあの、欧米のトップって、クライシスが起こるとすぐ自分が陣頭指揮取るんですよ。
で、なんでかっていうと、一番怖い存在がボードだから、役員会だから。
で、ほとんど生え抜きいないから、外のボードメンバーだからみんな。だから即刻クビになっちゃうじゃないですか。
だから、ある意味パフォーマンスじゃないけれども、俺は先頭切ってやってるってのを見せなきゃいけない。
中川 浩孝
そうですよね。
田中 愼一
日本の場合はそれがないじゃないですか。社外重役が増えたとは言っても、まだまだ数少ないし、
社長をクビにするほどの権限っていうのは、少なくとも今の日本の企業の役員会ってそれほどないですよ。
高木 恵子
そうですね。パワーバランスがやっぱり違いますよね。
田中 愼一
だから結構そういう意味では、なんていうのかな。欧米の方はもう自分やべえが先頭するでしょ。
中川 浩孝
なるほどね。面白いですね。
田中 愼一
で、日本の方はどっちかというと自分やばいもあるけれども、ちょっと周りに迷惑かけるっていう日本人的気質があるから、
会社やばいって考えるけど、でも会社やばいけど俺は大丈夫だなとかね。
甘えがあるから。そうすると本当にもっとやばくなるんだけど、いずれにしてもそういう自分やばい、会社やばいっていうのはこれを分けて考えるべきだと思う。
中川 浩孝
そうですよね。
田中 愼一
ただ実際にはそれが混合して入り乱れるんですよね。
中川 浩孝
そうですね。またそれこそ家族経営の会社でずっと何代も続いてきましたっていうのと、また普通の大きな会社とはちょっと違いますよね。
田中 愼一
そこは企業やばいと自分やばいっていうのが一緒になっている可能性がありますね。
中川 浩孝
そうですよね。そこを分けて考えるというのは大切ですよね。
田中 愼一
だからクライシスというのは色々学べるんですね。やっぱり学ぶというかコミュニケーション。
中川 浩孝
本当ですね。これはちょっと。
田中 愼一
やっぱり有事のコミュニケーションというのをマスターすればですね、平時のコミュニケーションというのは楽。簡単て言ったら怒られる
やっぱりクライシスはあれですね、やっぱり究極のテーマです。
中川 浩孝
うん、なるほどね。面白い。