やがてカプースチンはですね、モスクワ音楽院のピアノ科へ進学します。ここではですね、昼間は、このクラシックの理論だとか演奏技術、いろんな知識、そういったものを徹底的に勉強をしています。
そういったね、このモスクワ音楽院でのクラシックの勉強を昼間する傍らですね、実はこの夜はですね、ジャズバンドに入って、ジャズの演奏をする、そういうね、毎日を送っていたそうです。
ですから昼はクラシック、夜はジャズ、もうビタビタに音楽付けの生活をしてきたと。でもよく言われるところのクラシックに対してジャズっていうとはね、なんというか正反対のところにある音楽っていう印象をね、受けるかなと思います。
もちろん私もそういう印象を持っていたことがあるわけですけれども、わかりやすく違いっていうものをね、改めてちょっと見てみたいと思うんですが、これ専門家の方に言わせると違うよっていうこともあるかもしれません。
私の、あくまで私のね、今ある知識だとか聞いてきた経験でお話をするとですね、クラシックっていうのはこの作曲家が作った音楽、その表現方法から何からすべてがこの楽譜の中に記載されてるんですね。
だからクラシックの楽譜に対してね、音楽の記号っていっぱい学校でも習ったと思うんですけれども、わかりやすく言うとピアノ、フォルテとかね、クレシエンド、デクレシエンドとかあるんですけど、もっと細かい、いろいろなね、多様な表現方法だとか、この演奏方法についての記載があるんです。
で、それを中立に演奏をすることで、正確に演奏をすることで、その作者が表現したかった世界を表現する。
で、あくまでその演奏者というのはその枠内に立って、その上でその人の個性というか、その人の表現というものを表していくというのがクラシック。
一方、ジャズっていうのはかなりね、この演奏する人の独創性というものが求められますよね。
作曲をした人のテーマ、作曲の曲っていうものはあるんですけど、それを元に、そこからその演奏をするプレイヤーがその元になっている楽曲のコード進行何かを踏まえながら、
自分オリジナルのメロディだったりアレンジだったり、そういったものを加えることで自分の音楽性を表現する、自分の解釈を表現していく、これがジャズですから、随分と違ったものになるわけなんですけどね。
で、私がジャズを聴き始めた頃とか、よく思っていたのは、クラシックってつまんないな。
自分のこの演奏技術の幅で言ったらね、圧倒的にジャズの方がインスピレーションが必要だし、複雑なことをやっているし、ジャズプレイヤーの方がミュージシャンとして上なんじゃないかなっていうふうに思っていた時期があるんです。
で、実は私、昔サックスを習っていたっていう話をしたことがあると思うんですけれども、そこの習っていた先生との一つのエピソードの中で、ちょっと自分の中ですごく考えを改めさせられたということがありまして、
何かというと、ある時そのジャズプレイヤーの先生、今でも現場でバンバン活躍しているような先生なんですけれども、その方がたまたま私が行ったレッスンの翌日に、その先生自身のレッスンがあるっていう話をしてくれたんですね。
ああそうか、プロのミュージシャンでもやっぱり練習はするよね。で、どんな人にその練習を見てもらうのかなと思ったんです。
きっとこのジャズの先生とか自分の師匠がいてね、今でもその人のところに行くのかなとかって思っていたら違ったんですよ。
その先生が言うに、クラシックの先生のところへ行ってレッスンを受けるって言うんですよ。え?って。
よくよく聞くとね、なるほどって思ったんですけど、何かというと、クラシックの世界っていうのは、正しく音を演奏する、正しく楽譜を演奏するということにおいて、
もうジャズとは比較にならないぐらいレベルが高いし、精度を要求される。だから、このジャズを弾く、ジャズをプレイするその基礎となる部分の演奏技術っていうものを磨こうとすると、やっぱりね、このクラシックのレッスンを受けるっていうのが一番良いそうなんですよ。
なるほどなぁと。で、改めてね、その基礎的な技術、本当に基礎の基礎、間違いない、正確性みたいなものをしっかりやった上でないと、やっぱりこのジャズをプレイするっていう時にね、その力量の差というか技術力の差というのが出てくるから、
まずね、そのクラシックのレッスンっていうのは今でも欠かさずにやってるんだっていう話をね、してくれた時に、改めてね、この自分の目から鱗というか、ジャズの人の方が上手いとか、そのクラシックの方が下とかそういうことじゃなくて、違うものなんだというか、それぞれの特徴があるものなんだっていうことをね、
知ってから改めてこのクラシックっていう音楽を聞く耳が変わったというかね、見る目が変わったというか、そういうような出来事があったわけですけれども、何が言いたかったかというとですね、そういうクラシックの正確性、その基礎的な部分をしっかりと身につけたこのニコライ・カプースチンという人は、ものすごく超絶にピアノが上手いんです。
で、そういった音楽的な基礎知識だとか技術を身につけた上で、夜実践的なジャズをプレイしていたわけですから、どちらの音楽についても、ものすごく深くその技術や知識を収めた人ということが言えるんですね。
このカプースチンというのは、この音楽院を卒業した後はですね、ピアニスト兼作曲家兼アレンジャーとして活躍をしていってですね、このジャズのピアニスト、ジャズプレイヤーとしての名声を勝ち得ていくわけですね。
その後、1980年に自作のピアノ協奏曲第2番というのを演奏。その演奏を最後に公の場所での演奏というのはやめて、ここからは作曲活動に専念することを決意するわけです。
この後、今でも弾かれるようなカプースチンの代表曲、例えば八つの演奏会用エチュードとかね、そういったものをどんどん発表していくわけですけれども、
今日皆さんに紹介するその楽曲というのがまさにこの八つの演奏会用エチュードというところの中からご紹介したいと思っているんですけれども、これすごく有名なんですね。
なぜ有名かというとね、多くの人が演奏しているからですね。
日本で、わりと今のSNSの時代にこのカプースチンの演奏を有名にしている人が、墨野ハヤトさんというね、カティーンという名前で活動されていますかね。
この方は世界的にも活動を広げています。ピアニストなんですけれども、世界的有名なショパンコンクールにもエントリーをして、最高のファイナルには残れなかったんですけれども、3次予選までファイナルの一歩手前まで進んだというような方ですし、
他の国内コンクールなんかでは、金賞だとかね、たくさんの受賞歴のあるピアニストなんですけれども、現在ではバンド活動もされています。
ソロでの演奏もしているわけですけれども、インスタライブだとか、YouTubeに自身の演奏動画をあげたり、そういった活動もしていて、結構若い方にも人気の方です。
これもね、うちの妻と娘が教えてくれたんですけどね、初めカティーン、カティーンとか言ってね、何の話をしているのかなと思ったら、このピアニストの人で、イケメンでピアノができて、東大卒の頭が良くて、お家を金持ちでね、何でも持っているような感じなのに全然嫌味さがなくて、スタイリッシュでね、
もう、嫉妬の嵐を覚えてしまいそうな、そんなね、方ね。うちの奥さんとかもね、カティーンのインスタライブとかね、テレビにわだわだ映して見てるんですけど、何も何回もイケ好かねえなとか言ってね、正直思った時もありましたけどね。
演奏聴くとね、いいですね、上手だしね、遊び心がとてもあっていいんですけど、まあまあそれは良しとして。そういった方がね、この演奏しているこのカプースチンの名曲。聴いてみるとね、なんていうか、クラシックなんですけど、ジャズなんですよ。変なこと言ってます?
あの、一回聴いてみていただけるとね、すごくよくわかる。この今ご案内したですね、8つの演奏会用エチュードというのはピアノのソロ曲なんです。で、聴いていただくとね、わかるんですけど、このカプースチンという人は、このジャズを取り入れた話ずっとしてましたけど、実はジャズだけではなくて、
ポップスだとかロック、それからワールドミュージック、世界各地の音楽、こういったものも積極的に取り入れているので、ラテン音楽のリズムだったり、聴いているとロックを感じる部分があったり、むちゃめちゃポップスのエッセンスが感じられたりするんです。
で、その中にベースになっているミキの部分にはしっかりクラシックがあって、その表現の手段というかね、枝端の部分にジャズだとかロックだとかいろんなものが入っている。で、その中でもとりわけジャズっていうものを感じる部分が非常に多い。そういうね、楽曲を作ってくれてます。
で、聴いているとジャズ特有のアドリブ演奏、ソロパートのアドリブの演奏をしているように聞こえるんですよ。だから一見ね、クラシックよりもジャズよりなのかなっていうふうに感じる瞬間があるんですけど、これちょっとびっくりしたんですけど、
YouTubeにですね、このカプースチンの楽譜を画面に表示しながら演奏する動画がアップされてまして、それを見るとですね、今までアドリブで弾いているようなところ、そういう演奏箇所も実はカプースチン楽譜にね、そのアドリブのように聞こえるように作曲してるんですよ。
だから、演奏する人はカプースチンが書いた楽譜をそのまま演奏をしている。つまりこのスタイルってクラシックですよね。だけど聴くとジャズに聞こえるんですよ。
これがね、なんか新しいというか新鮮というか、私の中でとても大きな驚きだったんですけれど、なんていうか自由じゃない、決まったことをしているのにちゃんとジャズに聞こえるっていうところがね、一度皆さんも聞いていただきたい。
概要欄の方にそのYouTubeの画像を貼っておきますから、もし興味がある方は聞いていただけると。まずは耳だけで、プレイリストの方でカプースチン聞いていただいて、ジャズ味を味わっていただいた後でそのYouTubeを見ると、これって本当にアドリブじゃないのっていうようなところが見つかるかなと思います。
そんなカプースチンですけれども、カプースチン自身はどういう立ち位置でこの音楽っていうものをね、やっていたのかっていうお話なんですけれども、果たしてね、クラシックの音楽家なのか、それともジャズミュージシャンなのか。
これはね、もうはっきりとカプースチン自身が述べているんですが、「ジャズとクラシックではどちらの面があなたにとって重要ですか?」という2000年に行われた雑誌のインタビューの中で、カプースチンはこう答えております。
私にとってはクラシックの面が重要です。ジャズのスタイルはそこに色彩を添えるためにあります。私はジャズの形式というものが好きではありません。だからこそクラシック音楽からそれを採用したのです。というふうに答えています。
ようやくするとですね、カプースチンは決してジャズの音楽を、ジャズの作品を作っているという意識は全くないということなんです。あくまでクラシックの形式の中で自身の音楽を表現している。
ただ、そのクラシックを表現するための、彩るための枝端の部分、飾りの部分として、ジャズの用法を活用しているということになるわけですね。
例えば、ジャズのアドリブでよく見られるような不正和音、ちょっとね、普通の曲の中に入れると違和感があるような、そんな和音、いわゆるドミソーとかレソシーとか、そういうわかりやすいきれいな和音ではない、ちょっとした不協和音のような音をあえて取り入れたり、それからジャズのコード進行を真似てみたい。
通常あまりクラシックでは使わないようなメロディーラインを取り入れてみたい。そういったものを一つ一つを自分の中で練り上げて、そしてこの一つの楽譜の中に落とし込んでいったというのがこのカプースチンの音楽の世界ということが言えるんですね。
ですから、何も考えずに聴いていると一見ジャズに聴こえるんですけども、実は計算されたクラシック的な音楽というのがこのカプースチンの音楽の正体というふうに言えます。
ということでですね、先ほどから言っておりますけれども、今日はカプースチン、おそらくこれカプースチン自身の演奏のものだと思いますけれども、8つの演奏会用のエチュード、練習曲ですね。
から、オーパス40、プレリュード。このオーパス40というのは作品ナンバー40番ということです。クラシックの音楽というのはこの作品番号で全て管理していきますから、カプースチンも160曲ぐらい作曲したと言われておりますけれども、その中での40番目の曲ですよ。
オーパスというのは作品番号のことでね、OP.というふうに書かれるんですけど、ですからSpotifyとかね、私使ってますけど見るとOP.40、プレリュードって書いてありますね。
で、このオーパス40の曲っていうのは色々なところがあって、プレリュードっていうのは導入部分、その後ね、8つのパートで1つの曲ということになってますのでね。
続けて聴いていただけると、その曲ごとにテーマが変わっていたり、その曲から感じられるクラシック以外の音楽の匂いというかね、演奏技術というか音楽性というものを聞けるんで、
もしよかったらね、この通してアルバム聴いていただきながら、今のはロックだなとかね、今のはちょっとラテンが入ってんじゃないかなとかね、いやポップスだな、ジャズだな、いやここはクラシックがしっかり聴いているぞっていうのをね、聴いてみるのもすごく面白いと思いますのでね。
そんな聴き方をぜひぜひしてみると面白いかなと思います。
また先ほども言いましたけど、この人のね、だから超絶上手いんですよピアノが。
ですからあのすごい早弾きで複雑なピアノも弾きこなしてしまうっていうところがね、ただの作曲家じゃないなっていうところがあるわけですけども、よかったらぜひ聴いていただきたいと思います。
他にもね、たくさんこの人の作品残ってまして、カプーシチン自身の演奏っていうよりはそれ以外の方の演奏、先ほどね、カティーン、スミノさんの話もしましたけれども、いろいろなミュージシャンの方がこのカプーシチンの曲を演奏しています。
で、カプーシチンで検索をすると彼の作曲を違う人がいろいろな形で演奏している楽曲が出てきますからね。
面白いもので演奏する人が変わるとね、やっぱり雰囲気が変わってきますね。
雰囲気が変わるんですけども、カプーシチンらしさっていうのはやっぱりちゃんと感じられるっていうところでね、お気に入りのカプーシチンを見つけるというのもね、いいんじゃないでしょうか。
ということでね、私が見つけたお気に入りのカプーシチンの一つを2曲目としてプレイリストの方にご案内したいと思うわけですけれども、
それはね、フランク・ディプリン、ドイツのピアニストなんですけれども、結構ね、カプーシチンの曲をアレンジしてやっています。
この方やるときはね、結構ジャズ寄りのアレンジ、ジャズ寄りの曲なんでしょうけれどもね、それを演奏することが多いんですけれども、
2台のピアノと打楽器のためのコンチェルト、オーパス104、2番ラルゴという曲、こちらの1曲をもう1曲ご案内します。