今回は釣人がキャッチ&リリースをする場合を想定して、現時点でキャッチ&リリースに関連して分かっているいくつかのデータのご紹介と、
これを踏まえて具体的にどうすれば魚の生存率を上げられるのかということにフォーカスしてお話をしていきます。
参照した文献についてはいつも通り概要欄に記載をしております。
さてキャッチ&リリースに関する研究ですが、これはごく短期間の生存率に関する研究はあるんですけれども、
結構分かってないことが多いですね。具体的にはまず特定の魚種に関する研究しか行われていないということと、
リリースをしたその個体自体が生きているとしても、そのリリースの前後でその個体の寿命とか、
あるいは身体機能とか、あと産卵行動ですね。ここに問題は出ないのかなんかは正直まだ分かっていないことが多いようです。
海外の場合研究対象として多いのは鮭、マス類と、あとブラックバス関連ですね。
なので前提としてこれを踏まえていただく必要はあるんですが、私が見た海外の文献ではですね、実際の検証データとして適切な道具の使用とか、
リリーステーションを踏むか踏まないかで、これは海外のマス類を対象としたものなんですけれども、死亡率が1%未満から90%まで開きがあるというものがありました。
その文献の中ではどういった要素が魚の生存率に影響を与えるのかということも書いてあったので、これからその要素についてですね、
現実的に釣り人が釣り場で意識できそうな部分にフォーカスしつつお話をしたいと思います。
まず最初にお話をしたいのは、大前提となる魚は空気中でどのぐらいまで耐えられるのかというデータです。
これ対象魚としては淡水に住んでいるブルックトラウトという魚ですね。これは海外を中心に日本も一部100年以上前に人間の手によって持ち込まれて、今も生息をしているようなんですけれども、
このマス類の魚を対象としたものです。 なのであくまで参考値ですが、空気中にさらしてから60秒以内に水中へリリースをした場合は、
すべての個体が遊泳能力の低下もなく生存した。 そして120秒でリリースをした場合は、リリース直後は遊泳能力が75%低下。
結構幅に落ちてますね。 けれどもその後3ヶ月間チェック期間を設けたようですが、この120秒でリリースをした個体も含めて全個体が生存していることを確認した。
というものでした。 なおこの実験では仮想的なファイト時間として魚を空中に上げる前に30秒間手で魚を追い回す
という行為を挟んでいるのと、 実験のブルックトラウトの大きさは30センチ弱のものを12匹ですね。
用いているようです。 実験結果には解釈の余地がありますが、一つの見方としては60秒以内なら魚がかなり元気な状態で
返すことができて、120秒の場合も生存率は今回の実験で100%なので回復可能な範囲のダメージ。
つまり3ヶ月間何も捕食せずに生存はできないと考えられるので、 リリース直後は遊泳能力が低下したんですが回復して捕食も行える
コンディションにはなったと捉えることもできるのかなと思います。 ただしもちろん留意点としてはいくつかですねありまして、まず30センチ弱のブルックトラウトを
前提にしておりですね。 ここから私の感覚になりますが、この60秒とか120秒とかいう時間は例えば根魚とか
シーバスならある程度納得感があるんですけれども、 アジやサバなどはとても1分も耐えられないんじゃないかなと思うところもあります。
また同じ魚でもサイズが小さければ当然早く弱るという傾向はあると思います。 次にその他の障害が発生したかどうか
というのはわからないということですね。 例えば他の研究ではスモールマウスバスを同じく2分間空気中に晒したところ
心臓や血管系の障害が残ったというデータもありまして、 想像以上に大きなダメージが残っている可能性はあるということです。
最後に生息環境によって水の中の酸素量が変わるので、 これは生存時間にも影響してくるだろうということですね。
特に水温が高い夏の間なんかは溶存酸素量が少なくなるので、 その分短い時間でリリースする必要が出てくる可能性が高いと思います。
参考として真水のデータですが、水温10度から水温25度に上がると3割ぐらいですね、 溶存酸素量が少なくなるというデータがあります。
なのでこれらを踏まえる必要があるという前提をありつつ、 一つの見方として60秒以内ならかなり元気な状態で、120秒の場合もなんとか生存はできる
ギリギリのラインじゃないかというところですね。 次にまた別の文献でまとめられていた魚へのダメージに影響する要素を
ただし一番大事なのは、基本はできれば1分、どれだけ長くても2分以内、漁師によってはより短い時間で水中に返すということが重要だと思います。
さて、今バーッとお話をしましたが、正直細かいところを言うとまだまだあります。
すでに今の時点でですね、これをすべて覚えて意識するというのは結構難しいんじゃないかなと思います。
なので個人的にですね、釣り人がこれなら最小限できるかなという部分をピックアップして、今からお伝えをします。
まず釣りをする前にできることとしてはですね、大型のお魚がかかる可能性がある場所は必ずランディングネットを持っていくのと、
あとランディングできる場所を把握してからポイントにエントリーをするというところですね。
それから釣っている最中にできる工夫としては、特に魚の活性が高くて数が釣れる場合というのは、
フックの形状を変えたり、返しを潰してバーブレスフック化するなどして、
ノドオークへのフッキングとかリリースに手間取ることを避けるということです。
最後に、これは意識的な話なんですけれども、今回のデータも参考にですね、
魚を水からあげてから何秒経ったのか、またいかに魚が傷つきやすいかということに意識的になるということが大事だと思います。
これは素手で魚体に触れないとか、そういうことも含めですね。
以上、細かな点はもっとあると思いますが、最低限という意味で個人的に特に重要だと思うポイントを挙げました。
私の個人的意見ではありますが、リスナーの方一人でもですね、お役に立てましたら嬉しいです。
さて今回はキャッチ&リリースと魚の生存率についてお話をしていきました。
近年の動物愛護とか動物福祉といった概念とか意識の高まりから賛否が分かれるキャッチ&リリースですが、
私も今回お話しするにあたって改めて釣りは魚にダメージを与える側面、これは否定できない趣味なので、
その側面はしっかりと受け止めた上で、だからこそせめて一匹でも多くの魚がその後も自然に帰っていけるように、
人間側の工夫として何ができるのか考え続けることが大切だと思いました。
これは非常にいろんな意見があるテーマだと思いますので、ぜひぜひ皆様のご意見とかご感想もフォームやSNS等で教えていただけたら非常に嬉しいです。
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では、お聞きくださりありがとうございました。