1. Deep Structure Radio〜 Keiともちこの言語学研究室 〜
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2026-01-29 17:20

#01 薬を飲んだら、キモくなった⁉︎

Kei
Kei
Host

「きもい」と「気持ち悪い」。一見ただの省略形に見えるこの2つの単語も、言語学の視点で見ると、実は明確な違いがあるんです。そんな日常の単語から言語の秘密に迫る第1回!


 オープニング
 101号室の言語学①「きもい」と「気持ち悪い」の違い
 101号室の言語学② なぜ「この薬飲んだらキモくなった」はダメなのか
 ミッドナイトオフィスアワー「言語学って国語や英語の授業とどう違うの?」
 エンディング

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【番組概要】

言語学者のKeiとアシスタントのもちこが
日常に溢れる「ことば」の不思議を
言語学」という特殊なレンズを通じて、
面白おかしく語るポッドキャスト番組。
通勤中や散歩のお供に、言葉の知的探求を。

【更新】 毎週木曜夜7時

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出演者
Kei:若手言語学者。アメリカで博士号を取得後、現在は日本の大学で働いている。専門は統語論、形式意味論、語用論。ときどき、心理言語学も。ウイスキーが好き。

もちこ:Deep Structure Radio アシスタント。仮面をかぶって会社員をしているが、中身は結構やべーやつ。苦手な科目は「せいかつ」と「どうとく」。

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【Keiの補足】

今回は、言語学者が行う「文法性判断」について、リスナーの皆さんに体験していただく部分をメインにしたかっため、また、私の専門である統語論・意味論の観点から、「気持ち悪い→きもい」という新語の形成にしては、内部構造の消失という形で簡易的に説明しました。

日本語の新語形成プロセスについては、音韻論・形態論の観点に基いた、窪薗晴夫先生の分析が一般的かと思います。窪薗先生の分析について詳しく知りたい方は以下の書籍をご参照ください。新書なので読みやすく、おすすめです。↓↓

窪薗晴夫 (2002)『新語はこうして作られる』東京. 岩波書店.

https://amzn.asia/d/eZU0JGH

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#DSR101 #言語学 #略語 #研究者 #生成文法

サマリー

今回のエピソードでは、言語学者のKei氏とMochiko氏が「キモい」という言葉の誕生とその意味の変化を探求している。言葉の省略や内部構造の消失が、言語使用にどのような影響を与えるかを深く掘り下げている。また、言語学と学校の国語や英語の授業との違いや、言語の脳内メカニズムについても説明している。リスナーからの質問を通じて、言語使用の理解や言語学者の役割に焦点を当てている。

言語学の紹介
Welcome to Deep Structure Radio
この番組は、言語学者のKeiと、
アシスタントのMochikoが、
言語学の面白さを広めるべく、
私たちが普段何気なく使っている言葉について、
言語学という特殊なレンズを通じて、面白おかしく語っていく番組です。
第1回の今夜は、僕たちがつい口にしてしまうあの省略形についてお話しします。
早速、今夜の分析を始めていきましょう。
はい、ということで、101号室の言語学のコーナーです。
このコーナーでは、私が興味を持った現象であったりとか、
言語表現についてお話ししていくコーナーになるんですが、
本日のテーマは、あの省略形、キモいです。
キモい。
第1回のテーマとしては、どうなんだっていう感じはあるんですけれども、
日常的によく使いますよね。
使いますね。
ついつい言っちゃうときで、え、キモ!みたいな。
言っちゃいます。
これ普通にさ、気持ち悪いの省略形だなっていうのは、
言語学の先生に聞かなくたってわかるじゃん。
そうですね、別にわかってますね。
ですよね。
当然気持ち悪いの省略形だってことは、意味が同じだろうというふうに思われてると思うんですけれども、
これ果たして本当に同じ意味なんでしょうかっていうのを、
今日ちょっと深掘りしてみたいなと思います。
まず、もち子さんに考えてほしいんですけど、
例えば、ちょっとキモカワみたいな感じのキャラがいることを想像してください。
ゆるキャラみたいな。
ゆるキャラみたいな。
でもいるじゃん、ちょっとキモいやつ。メロングマみたいなさ。
ただただ可愛いだけじゃない方ですね。いますね。
いるよね。
で、そういうやつを見たときに、え、あのキャラ気持ち悪い。
これは日本語としてOKだと思う?良くないと思う?
全然OKだと思います。
いいよね。
じゃあ、あのキャラキモいわ。
キモカワって言うぐらいだし、全然。
これもOKだよね。
じゃあ、もう一個例文のペアを見てほしいんだけど、
この薬飲んだら気持ち悪くなった。これは?
副作用かな。かわいそうにって感じ。
なんか良くはないけど。
良くはないけど。
日本語としては変じゃないよね。
状況は良くないけど、日本語は平気。
じゃあさ、この薬飲んだらキモくなった。は、どう?
その薬の方が心配かな。
そうだよね。この薬飲んだらキモくなったって言ったら、
薬を飲んだ結果、なんかこう容姿が気持ち悪くなった。
容姿が悪くなったっていう感じ。
見にくい姿になってしまったみたいな。
ハリーポッターのポリジュース薬みたいな感じするじゃん。
で、なんでこれが変なのかっていうところなんだよね。
言語学者という人種は、こういう、なんていうの、この文いいけどこの文ダメだよねみたいな判断を、
思考実験をよくやるんですよ。
内部構造の消失
これを文法性判断とか容認度判断なんて言ったりするんですけど、
こういう判断をしてもらうことによって、
この言葉はこういう意味に使ってるんだなとか、
こういう文にはこういう意味がくっつくんだねみたいな。
意味の分布みたいなのを確認していくような。
分析、もっと他のことでもできるんですけど、
その分析の一つの手段として、こういう試行実験を使うんですよ。
で、今さっきももち子さんに判断やってもらいましたけど、
さっきのこの薬飲んだらキモくなったみたいなのって、
多分日本人全員ダメだと思うんだよね。
でさ、これ何がすごいって、ももち子さんさ、
これ国語の授業で習ったことあります?
これは間違ってる文法だよって、言わん習ってないです。
だってキモいってさ、ある意味新しい言葉というか、
あんまり良くない言葉というかさ。
何ならね、国語の先生とか学校の先生からしたら、
褒められた言葉遣いではないんじゃないかな、
くらいの言葉だと思ってますね。
そうなんだよね。だからわざわざ国語の文法とかの時間に、
キモいはこういう時に使います。気持ち悪いはこういう時に使います。
習わないのに、この薬飲んだらキモくなったら絶対ダメってわかる。
これが言語の面白さなんですよね。
日本語語話者だったら誰でもさっきの例文がおかしいって、
誰も習ったことないんですよ。ないはずなのに、
わかるっていうのがある意味、言語学の一つ面白いところ。
人間の言語の面白いところなわけですね。
たしかに。日本語勉強してる方からしたらね、
キモいは気持ち悪いの省略だよって習ったら、
この薬飲んだらキモくなっちゃってって言っちゃうかもしれないってことですよね。
で、母語話者のすごいところは、それを習ってなくても知ってるっていう。
日本人間違いないですもんね。
見たことないもんね。この薬飲んだらキモくなったって言ってる日本人。
それ言ってる人はキモいかなっていう。
そうだよね。これが一つある意味言語の面白さなわけですよ。
話はちょっと問題提起に移っていきたいと思うんですけども、
もともとキモいという言葉が気持ち悪いから来てるってのは正しいんですよ。
何でも同じ言葉の省略形なのに、
自分の体調とかあるいは内面の方の気持ち悪さには使えなくなっちゃったのかっていう疑問が、
言語学者としては湧いてくるわけですよね。
これについて今度お話ししていきたいんですけども、
これの中にはですね、内部構造の消失というキーワードが関わってきます。
元々の気持ち悪いっていう単語は、それを見てもらったら分かるように、
気持ちっていう名詞と悪いっていう形容詞が入ってますよね。
キモチが悪いんでしょうね。
そうそう。今言ってくれたみたいに、気持ちが悪いって言ったらある意味文章じゃん。
文に近い内部構造を持ってるんですよ。
気持ち悪いはね。気持ちが悪いって言ってるのと一緒だから。
画が括弧になってるような感じはします。
ある意味主語である気持ちっていう内面的な状態が意味の方でもまだ生きてるわけですよね。
主語味があるというか、主語っぽいみたいな。
その気持ちが主語で、それが状態が良くないですよっていう意味が残ってるんで、内面には使えると。
自分の内面の状態が良くない。内面の気持ちの状態が悪いっていうふうに使えるわけですよね。
ところが気持ち悪いって長いからキモいにしちゃえって言って、
きっと当時のJKたちがエイヤーってやったんだと思うんですけど。
やるじゃないですか。JKたちは信語作るのすごく上手だから。
その短縮が発生した瞬間に何が起きたかっていうと、内部構造を失ったんですよ。
キモだからですか?
そう。キモっていう語根、元になるものを作っちゃったせいで、気持ちのとこがどっか行っちゃったわけですよね。
私、キモいは気持ち味があんまりないというか、キモいで一単語感がすごいあるなっていうのはあるような気がしますね。
そうなんですよ。そのキモっていうのを新しい言葉として定義してしまった結果、内部構造がなくなっちゃったんですよね。
さっきは気持ちが悪いで、中に構造があったのにってこと?
そう。構造がなくなっちゃったんですよ。構造がなくなると何が起きるかっていうと、構造なくなったんだから意味変わったよねっていうふうに、
違う意味に捉え直すっていうことが発生するんですね。
元々文章だったものは文をベースに意味が取れるんですけど、今回キモいっていう新しい単語を作ってしまったんで、もうそこには気持ちがいなくなっちゃったんで。
気持ち悪いだと本当に100%一緒なんだったら、気持ち悪いでいいじゃんってことは、きっとキモいには気持ち悪いでは表せない何かがあるんだろうみたいな推理じゃないけど、
なんかこうちょっと考えちゃうかもしれない。
そうなんですよ。なんで気持ち悪いから気持ちっていうパーツをある意味引っこ抜いちゃったわけですよね。
そうすると残ったのは純粋な悪さだけが残って、つまり対象が持つ見た目が良くないであるとか、そういうネガティブな性質だけが。
気持ち以外でも何か状態が悪いとか、見にくいとか。
どちらかというとネガティブ寄りなことを全般をさせるようになっちゃった。
構造がなくなった結果、こういうネガティブな性質を持ってるものだよねっていうのを描写するためだけの機能特化が起きたわけですよ。
それは意味が広がっちゃったのかなって思ったんですけど、むしろ特化になっちゃったってこと?
要はもともと気持ち悪いだったら文章的な意味が残ってたから、内面が気持ち悪いっていうディスクリプションもできたし、物の見た目が悪い、良くないっていう意味でも使えた。
ところがキモいになった瞬間、こっち側の対象の意味を落としちゃったので、ある種機能特化。
外面、見た目が良くないとか悪いっていうそのものの性質を説明する、ある意味その客観的な属性、赤いとか大きいとかと同じように、
そいつが持ってるその物体が持ってる客観的な属性であったりスペックであったりっていうものを描写するっていうことにある種機能特化した。
気持ち悪いは気持ちが悪いだったけど、キモいはより完全に形容詞っぽいというか、そんな理解で合ってます?
そうそう、そういうことです。完全に形容詞になっちゃって、形容詞って属性を基本的には表現するものなので、大きい赤いとかと同じ括りになっちゃったんですよ。
の結果、何が起きたかっていうと、この薬を飲んだらキモくなったが言えなくなったわけですよね。
なので、言葉が短くなるっていうのは、往々にして日本語の乱れだとかって言われたりするんですけど、単なる手抜きだったり乱れだったりということとは限らないっていうのが皆さんに知っていただけたらなと思って。
そんなふうに言語学者というのは、日々のコミュニケーションの中にある言語というものを面白おかしく見ていますので、この番組ではこんなような話をたくさんお伝えしていけたらなというふうに思っております。
ぜひフォローしていただけたら嬉しいです。では最初のコーナーはこんなところで、次のコーナーに行ってみましょう。
ミッドナイトオフィスアワー。
言語学の基本概念
ということで、ここからはミッドナイトオフィスアワーのコーナーです。大学ではオフィスアワーというですね、大学生が自由に研究室を訪問できる時間が設定されているんですけれども、このコーナーはその大学のオフィスアワーになぞらえて、皆さんが日頃感じている言葉の疑問やちょっとした悩みにお答えしていくコーナーとなっております。
初回の今回はですね、言語学者へのFAQ、よく聞かれる質問ですね、を集めてきました。それではお便り読みを、もち子さんお願いします。
はい、ラジオネーム文法アレルギーさん。染みてますね、名前から。
そうですね。
けいさん、もち子さん、初めまして。
初めまして。
タイトルに言語学とあったので恐る恐るメールしました。正直に言います。僕は学校の国語や英語の授業が大嫌いです。
先生にここは文法的に間違いだとか、この表現は乱れていると赤ペンで直されるたびに通じればいいじゃんともやもやしてしまいます。
このラジオもそういう正しい言葉遣いを叩き込まれる場所なんでしょうか。けいさんの言う言語学と学校でやる国語の勉強って一体何が違うんでしょうか。
難しい言葉抜きで教えてくれると嬉しいです。というお便りです。
お便りありがとうございます。非常に第一回からして確信をつく良い質問ですね。確かに言語学者ですっていうふうに自己紹介すると、ある意味文法のマナー講師じゃないけど、そういうふうな正しい言葉遣いを教えてくれる人みたいな。
よろしかったでしょうかとか言ったら消されるんじゃないかみたいな。
みたいな目で見られること多いんですけど、決してそんなことはなくてですね。
言語学者って何をしてるのって言われると一言で言うならば、言語に関する脳の仕組みを解き明かしたい人たちなんですよ。
要は国語とか英語の授業だと言語のルール、いわゆる文法ですよね。
とか意味っていうのを教えてもらったり、あと国語とかだとその物語を読んで、筆者の心情とかこの時の主人公の気持ちをみたいなことをやりますけど、
言語学者がやってるのはそういうことではなくて、言語っていう窓、言語の使い方であったりとか、
この言語、例えば日本語をしゃべる人たちはこういうふうに言うんだとか、英語をしゃべる人たちはこういう表現を使うんだっていう、そういう窓を通じて、人の脳の仕組みを覗き見るっていうのが一つの目標なんですよ。
じゃあどっちかっていうと、脳科学であったりとかに近い。
そうですね。まさしくその通りで脳科学っていうのがある意味一番近いところにいると思います。
ただその人の頭を割っても、どこで言語が作られているかとかってことは全くわからないので。
解剖したりはしない。
解剖したりはしない。
人々が使っている言語のデータを集めていって、その人の頭の中にある言語能力っていうんですかね、どういう能力があれば言葉を話せるようになるのかであるとか、
あるいは母語話者っていうのがどういう知識を持っているのかっていうことを探求していくっていうのが言語学の学問なんですね。
人が出しているアウトプットが言語だと思うんですけど、その出てるものから中身を探りに行く。
だからある意味バックエンジニアリングだっていう説明をしたりするんですけど、
例えば我々パソコンとかスマホを使うときにあっていうキーボードを打ったらあが出るわけじゃないですか。
いって打ったらいって出るわけじゃないですか。
それは知らなくても使えますよね。
その中身がどういうプロセスがあってあってなってるかっていうのはわかんなくても使えるわけじゃないですか。
中身見えなくても別にね、中身わかってないならスマホ使っちゃダメだよとかないですもんね。
だから言語も一緒で、我々どうしてそうなってるのか、どういう仕組みで日本語がそうなってるのかってことは知らなくても日本語話せるんですけど、
でもそれを元にこういうふうに言うとOK、こういうふうに言うとダメ。
さっきのこの薬飲んだら気持ち悪くなったらいいけどキモくなったらダメだよねみたいな、
そういう試行錯誤というかトライアル&エラーを通じて、
頭の中でこういう仕組みが働いてるからキモくなったらダメなんだよねみたいなことを探っていくっていうのが言語学者のお仕事なんです。
リスナーとの対話
なんとなく伝わりましたかね。
ちょまど 文法的に正しいとか正しくないっていうのを丸抜きつけてるわけではないっていう。
そうです。その通りなんですよ。
だから言語学者としては、どうして人が言語を話せるのかであるとか、
あるいはどうして子供は教わらなくても言葉を覚えられるのかとか、そういうことを探求していって、
人っていうものが頭の中に持っている言語のプログラム、どういうことが頭の中に入って、
どういうことが頭の中で起きているのかっていうのを知りたい人たちっていうふうに思ってくれたらいいんじゃないかなと思います。
ちょまど なるほど、わかりました。
こんな感じでお答えになってるかわからないんですけど、すごく確信をついたいい質問だったので、なかなか答えが難しかったですね。
といった感じで、今日のオフィスアワーはここまでにしたいと思います。
このコーナーでは引き続き皆さんからのお便りをお待ちしております。
日常で感じた言葉の疑問、僕への質問や番組の感想あるいはお悩み相談でも構いません。
お手先や投稿フォームは番組の概要欄にリンクがあります。皆さんのメッセージお待ちしております。
さて、そろそろ101号室の明かりを消す時間です。
もち子さん、今夜のキモいの話どうでしたか?
もち子 いや、面白かったですね。
明日からキモいって言ってる人を見たときに、何がキモいんだろう、何がキモかったんだろうってちょっと気になっちゃうなと思いました。
そう言ってもらえると嬉しいです。この番組ではですね、このような日常の言語の不思議を解明していく、そんな番組にしていきたいと思っておりますので、
ぜひリスナーの皆様にも楽しんで聞いていただけたらなと思います。
番組ではリスナーの皆さんからの言語のバグ報告、番組の感想、質問などお待ちしております。
お手先は概要欄にあるGoogleフォームリンクまで。番組のフォローと高評価もしていただけると、今朝の研究費になるそうです。
そうですね、コーヒー代くらいにはなるかなと思っています。
皆様からのお便りをお待ちしております。それではまた次回お会いしましょう。
キープストラクチャーラジオ、お相手はアシスタントのもちこと。
言語学者のKでした。
17:20

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