フレンチレストランで耳にした衝撃の敬語「おソース」。その裏側に迫る!!
「おソース」は単なる丁寧な言い回し?それとも……。レストランでの些細な違和感から、日本語の「敬語」と「美化語」の境界線を言語学的に解剖します。
オープニング
101号室の言語学①「おソース」との出会い
101号室の言語学② 美化語の基本ルール
101号室の言語学③ 禁忌を犯した「おソース」
ミッドナイトオフィスアワー 「お便り:日本語の乱れって気になる?」
エンディング
-------------------------------------------------------
【番組概要】
言語学者のKeiとアシスタントのもちこが日常に溢れる「ことば」の不思議を「言語学」という特殊なレンズを通じて、面白おかしく語るポッドキャスト番組。通勤中や散歩のお供に、言葉の知的探求を。
【更新】 毎週木曜夜7時
📩 番組へのお便り(感想・質問はこちらから!)
https://forms.gle/w5qM7MMryqsDV35a7
X (twitter) : @DSRroom101をフォローして、#DSR101まで!
-------------------------------------------------------
【出演者】
Kei:若手言語学者。アメリカで博士号を取得後、現在は日本の大学で働いている。専門は生成統語論、形式意味論、形式語用論。ときどき、心理言語学の研究も。ウイスキーが好き。
もちこ:Deep Structure Radio アシスタント。仮面をかぶって会社員をしているが、中身は結構やべーやつ。苦手な科目は「せいかつ」と「どうとく」。
-------------------------------------------------------
【Keiの補足】
① 本編で「醤油」を和語だと勘違いしていますが、これは語源的には漢語でした。失礼しました。ただし、歴史的な側面を見ると、和語とカテゴライズされてもおかしくない程度には古い単語でもあります。漢語に「お」が付く例についてはまた別の回で補足したいと思います。
② 「ご歓談」「ご婦人」「ご学友」などが美化語ではなく尊敬として扱われる理由として、それが表す敬意が自己言及 できるか (自分の行為やものに対して使えるか) という検証方法があります。尊敬語であれば、基本的に自身を敬意の対象にすることができないためです(例1参照)。(文頭の「*」は 日本語文として不自然であることを表しています。)
(1) * 私が昼食を召し上がった。
このテストに照らすと、(2)に示すように、「ご学友」や「ご婦人」は自分を主語にした文の述語として現れるとおかしくなるため、尊敬語である、という判断になります。
(2) a. * 私はご婦人だ。 b. * 私は彼のご学友だ。
一方で、ポッドキャスト内で注釈を入れたように、「ご」が美化語として使われる例としては、「ご飯」「ご馳走」「ご祝儀」などが挙げられます。これらは、(3) のように自分の行為の対象などとして出現してもおかしくないので、明確に美化語であるとされています。
(3) a. 私がご飯/ご馳走を食べる。b. 私がご祝儀を持って行った。
この検証方法については、Harada (1976) や 菊池 (1997) などを参照していますが、菊池 (1997) の中でも言及されているように、日本語母語話者のなかでも、(2) のような例を尊敬語として認識しているか美化語として認識しているかには差があるようです。もしかしたら、世代差等もあるかもしれません。
参考文献
Harada, Shin-Ichi. 1976. Honorifics. In Japanese generative grammar, 499–561. Brill.
菊地康人 (1997) 『敬語』. 東京. 講談社文庫
------
サマリー
「おソース」はあり?なし? 外来語に「お」や「ご」を付けないという日本語の鉄則を、フレンチレストランの現場から検証します。 言語学者Keiによるガチな説明と、もちこの鋭いツッコミで送る、知的な雑談。日常に潜む「ことばの不思議」に迫る第2回!