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2026-01-29 15:40

#02 「おソース」の衝撃 〜外来語と美化語の禁断の出会い〜

Kei
Kei
Host

フレンチレストランで耳にした衝撃の敬語「おソース」。その裏側に迫る!!

「おソース」は単なる丁寧な言い回し?それとも……。レストランでの些細な違和感から、日本語の「敬語」と「美化語」の境界線を言語学的に解剖します。


 オープニング

 101号室の言語学①「おソース」との出会い

 101号室の言語学② 美化語の基本ルール

 101号室の言語学③ 禁忌を犯した「おソース」

 ミッドナイトオフィスアワー 「お便り:日本語の乱れって気になる?」

 エンディング

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【番組概要】

言語学者のKeiとアシスタントのもちこが日常に溢れる「ことば」の不思議を「言語学」という特殊なレンズを通じて、面白おかしく語るポッドキャスト番組。通勤中や散歩のお供に、言葉の知的探求を。

【更新】 毎週木曜夜7時


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出演者

Kei:若手言語学者。アメリカで博士号を取得後、現在は日本の大学で働いている。専門は生成統語論、形式意味論、形式語用論。ときどき、心理言語学の研究も。ウイスキーが好き。

もちこ:Deep Structure Radio アシスタント。仮面をかぶって会社員をしているが、中身は結構やべーやつ。苦手な科目は「せいかつ」と「どうとく」。

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【Keiの補足】


本編で「醤油」を和語だと勘違いしていますが、これは語源的には漢語でした。失礼しました。ただし、歴史的な側面を見ると、和語とカテゴライズされてもおかしくない程度には古い単語でもあります。漢語に「お」が付く例についてはまた別の回で補足したいと思います。


 「ご歓談」「ご婦人」「ご学友」などが美化語ではなく尊敬として扱われる理由として、それが表す敬意が自己言及 できるか (自分の行為やものに対して使えるか) という検証方法があります。尊敬語であれば、基本的に自身を敬意の対象にすることができないためです(例1参照)。(文頭の「*」は 日本語文として不自然であることを表しています。)

(1) * 私が昼食を召し上がった。

このテストに照らすと、(2)に示すように、「ご学友」や「ご婦人」は自分を主語にした文の述語として現れるとおかしくなるため、尊敬語である、という判断になります。

(2) a. * 私はご婦人だ。  b. * 私は彼のご学友だ。

一方で、ポッドキャスト内で注釈を入れたように、「ご」が美化語として使われる例としては、「ご飯」「ご馳走」「ご祝儀」などが挙げられます。これらは、(3) のように自分の行為の対象などとして出現してもおかしくないので、明確に美化語であるとされています。

(3) a. 私がご飯/ご馳走を食べる。b. 私がご祝儀を持って行った。

 この検証方法については、Harada (1976) や 菊池 (1997) などを参照していますが、菊池 (1997) の中でも言及されているように、日本語母語話者のなかでも、(2) のような例を尊敬語として認識しているか美化語として認識しているかには差があるようです。もしかしたら、世代差等もあるかもしれません。


参考文献

Harada, Shin-Ichi. 1976. Honorifics. In Japanese generative grammar, 499–561. Brill.

菊地康人 (1997) 『敬語』. 東京. 講談社文庫

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#DSR101 #言語学 #敬語 #美化語 #生成文法



サマリー

「おソース」はあり?なし? 外来語に「お」や「ご」を付けないという日本語の鉄則を、フレンチレストランの現場から検証します。 言語学者Keiによるガチな説明と、もちこの鋭いツッコミで送る、知的な雑談。日常に潜む「ことばの不思議」に迫る第2回!

衝撃的なおソースの発見
Welcome to Deep Structure Radio。この番組は、言語学者のKeiと、アシスタントのMochikoが、言語学の面白さを広めるべく、私たちが普段何気なく使っている言葉について、言語学という特殊なレンズを通じて、面白おかしく語っていく番組です。
第2回の今回は、僕が以前出会った衝撃的な敬語についてお話ししようと思います。早速、今夜の分析を始めていきましょう。
はい、ということで、今日はですね、以前出会った衝撃的な敬語について話をしていきたいと思うんですけども。
衝撃的な敬語。
以前ですね、まあちょっとしたお祝いで、結構いい感じの、ちょっと高級なフレンチレストランにご飯を食べに行ったんですね。
で、豪勢なというか豪華な、普段本当に名前も聞き慣れないような、こう名前の料理が出てくる、まあすごい良いレストランだったんですけれども。
メニュー表を見ても、何が出てくるかわかんないみたいな。
そうそう、カモのコンフィーみたいな、コンフィーって何やねんみたいな、そういう感じの、まあ本当に良いフレンチレストランだったんですね。
で、そこに行った時に、初老のね、男性のウェイターさんが、まあ我々のテーブルについてくれて、いろいろ料理を運んできてくれたんですけど。
お魚料理かな、だったと思うんですけど、持ってきてくれた時に、こう緑のソースがこうね。
トゥトゥトゥトゥって、すごくオシャレな。
オシャレな感じで飾ってあってですね。で、フレンチ行くと結構そのお料理の説明しながら。
まあ言われないとわかんないから結構教えてくれる。
結構教えてくれるイメージあるじゃないですか。で、その初老の男性がそのソースに対して、こちらの緑のソースはブロッコリーのおソースでございますって言ったんですよ。
で、一緒に行ってた同僚と、みたいな。すごい目を丸くして、2人で、え、今おソースって言ったよみたいな。めっちゃ衝撃的じゃないですか、これ。
美化語のルール
おソース?
普段使います?ソースにおってつけなくない?
醤油にはつけるけど。
お醤油とかね。
お醤油とってとか、お塩とっては言うけど、ソースはソースだな。
でしょ?で、この衝撃感っていうのを、まあ今日はなんでこれがね、こんなに衝撃的かっていうのをちょっとお話ししていこうかなと思ってます。
今回このね、出てきたおソースとかのお、あるいは水におつけてお水とか、花におつけてお花とか、っていう時のおっていうのは、日本語の中ではですね、敬語の中でも美化語っていう風に呼ばれてるんですね。
美しく化ける語。
国語でやったことあるかもしれない。
だから、物を綺麗に言い換えるとか、丁寧に言い換えるみたいな名詞、いわゆる物の名前にくっつく敬語なんですけど。
敬語なんだ。
敬語の一部ですね。その敬語にもいろいろね、尊敬語とか謙譲語とかあるじゃないですか。
相手側とか自分側っていうよりも。
そう、物の名前につけてそれを丁寧にするっていうのを美化語って呼ぶんですよ。
丁寧にするから、なんか相手にも丁寧に話してるよねみたいなそんなイメージ。
ちょっと上品に聞かせるみたいな感じが美化語って呼ばれていて。
で、この日本語の美化語の「お」にはね、実は専門用語で選択制限って言うんですけど。
要は何につけるかっていうのがすごい違うわけですね。厳しい選択制限があるんですよ。
で、基本的にをがつけるのは、いわゆる和語、大和言葉ですね。
昔から日本語にある単語、言葉っていうのはをがつける。
だからお水とかお酒とかお箸、お魚、お塩、さっき言ってくれたお醤油とかもそうですよね。
っていうふうに和語には基本的にををつけていいんですよ。
で、これが漢語、昔中国から来た単語になると基本的には語をつけることが多い。
例えばご歓談くださいとか、あとはご婦人方みたいな。
ご学友とか。
そうだね、ご学友いい例ですね。みたいに、基本的に中国から来た単語には語をつけるっていうのが基本的なルールなんですよね。
確かにお友達だけどご学友。
そうそうそうそう。めっちゃいい例ですね。
やった。
編集中のKeiです。
ここでご夫人、ご歓談、ご学友などを漢語に語がついた美化語の例として紹介してしまっていますが、
これらは尊敬語として扱われるケースが多いことに、編集中に気がつきました。
大変申し訳ございません。
漢語に語がついて、美歌語として扱われるケースとしては、ご飯、ご馳走、ご祝儀などが挙げられます。
外来語の特異性
なぜ先ほどの例が尊敬語として扱われるかということについては概要欄をご覧ください。
それでは本編に戻ります。
もう一つ、ランクというか階層というかがあって、それが外来語。いわゆるカタカナ語だよね。
今回のソースもそうなんだけど、カタカナ語みたいないわゆる外来語には基本的にオとかゴってつけないんですよ。
実際そうでしょ。
おスマートフォンとか言わない。
おコンピューターとか言わないし。
ゴもつけないよね。
例えばゴタブレットとか言わないから。
ゴタブレット言わないし。
つかないし。
オでもゴでも嫌だなって思っちゃうかもしれない。
なので基本的には外来語にはつけない。漢語にはゴをつける。
和語、もともと大和言葉としてあるものにはオをつけるという3段階のルールがあるんだよね。
本当にごく一部外来語でもオがつくやつがいて、何か思いつく?
なんか小さい子に話す、赤ちゃん言葉じゃないけど、だとなんかおパンツとか。
あんまりきれいな例じゃなくてごめんね。
おトイレとか。
おズボンはでもなんかあれか、逆にちょっと大人向けか。
まあでもそうね、ユニクロの店員さんとかおズボンのお直しとか。
でもすごい英語っぽいなっていうよりも、やっぱりだいぶなじみのある方かなというか。
だと、そうだな、おトイレ、おパンツ。
あとはおタバコとかね。
タバコも外来語か。やっぱなんか外来語感は薄いかな。
実際当て字でも漢字で使えちゃうじゃん。
タバコだったら煙の草って書くし。
ズボンも漢字で書く人いないけど、「洋袴」って書いてズボンみたいな。
そうなんだ。
そうそうそうとかがあったりするんで、
そういう本当にもう江戸時代からあるような単語にはオつけてもいいよねみたいなあるんですけど、
ソースはすごい例外中の例外だなっていうふうに思ったんで、
僕とその同僚はめちゃくちゃびっくりして、
おソースって言ったよっていう反応したわけですね。
でも、おジュレとかおドレッシングとかに比べたら短いからなのかな。
調味料に近いからなのか、おタバスコとか言われたらえって思うけど、
それに比べたらやや許せちゃう気もするかな。
そうかもしれないよね。
で、なんでそのおソースみたいなのが出てきたのかっていうことをちょっと考えてみようかなっていうところなんだけど、
フレンチレストランとか、しかも高級なお店だったから、
サーブする側も無意識に丁寧にしなきゃみたいなのがあったのかなとかって思ったりして、
そういう文脈みたいなものがある意味日本語のルールをちょっと書き換えちゃったというか、
広げちゃったみたいな。
ちょっとオーバーライトしちゃうって言うと難しいかもしれないけど、超えちゃう。
広く適用させちゃった。
ルールを書き換えちゃうみたいなことが起きてるんじゃないかなっていうのが一つ思ったこと、それを聞いたときにね。
ホステスさんとかでも、おビールってどう思いますかみたいな、
学語の教科書であったかな、言わないでしょうって思ったんだけど、
でも悪意はないんだろうなとは思う。
なんかその丁寧にしたいなっていう気持ちなのかなみたいな感じで、
そこがよろしかったでしょうかに比べたら間違ってるかって言われるとどうなんだろうとは思いながらも、
でもそこにまでつけてくださるんだみたいな気持ちにはなるかもしれない。
だからそういうある意味その文脈がルールを超えちゃうみたいなことっていうのが、生きた言語の面白さかなあなんていうふうに思ったり、
でもやっぱりオタバスコはダメだよねみたいな、やっぱまだそこには超えられない境界があるんだなっていうのも、
ちょっと生きた日本語の面白さかなあなんて思った事例でしたね。
接客マニュアル集にOをつけていい調味料とかって別に載ってるわけじゃないだろうから。
そのウェイターさんの中のこう、しかもおソースって言おうみたいに思ってるわけじゃなくて、
ある種突散に出たというか、なんかなのかなあっていう感じはする。
だからぜひ皆さんも今度フレンチレストランに行く機会があったら、
おソースの探求
なんかそういうちょっと変な敬語と言ったら失礼かもしれませんけど、
おもてなしの気持ちと文法の格闘に目を向けてくれたら面白いんじゃないかなあと思って、
ぜひ皆さんに探していただいて、番組の方にGoogleフォームからですね、
お送りいただけたらいいなというふうに思っております。よろしくお願いします。
では最初のコーナーはこんなところで、次のコーナーに行ってみましょう。
ミッドナイトオフィスアワー
はいということで続いてのコーナーはミッドナイトオフィスアワーのコーナーです。
こちらではですね大学にオフィスアワーという制度がありまして、
学生がですね自由に研究室を訪問できるという時間が設定されてるんですけれども、
そのオフィスアワーになぞらえてですね、
こちらのコーナーでは皆さんが日々感じている言葉の疑問やちょっとしたお悩みなどにお答えしていきたいと思います。
第2回の今回もですね、初回に引き続き言語学者って名乗った時によく聞かれる質問をピックアップしてきてますので、
ぜひ楽しんで聞いていただければと思いますが、ではもちこさんお便り読みをお願いします。
はいラジオネーム真夜中の高越ガールさんからお便りいただいています。
ありがとうございます。
101号室のお二人こんばんは。私は仕事柄、人の文章をチェックすることが多いんですが、最近の言葉使いが気になって仕方ありません。
特に何でもみをつける若者言葉、わかりみとかつらみとか、あれを聞くたびに日本語が崩壊していく気がしてもやもやします。
Kさんは言語のプロフェッショナルとしてこういう乱れた日本語をどう思われますか?
やっぱりけしからんと心の中で赤ペンを入れていたりするんでしょうか?
非常に良い質問ですねこれね。まず最初に質問に対して端的に答えるとむしろ逆なんですよ。
僕らは言語学者としては常に言語の観察者でありたいというか、こういう使い方が正しい、これは間違った日本語だみたいなことは言わないようにしているというか、言わないというのが基本スタンスなんですよね。
そこに正しいも間違ってるもない。
ただただ世の中の人々がこういう使い方をするんだとか、言語ってこういうふうに今使われているんだっていうことを記述していってということがまず言語学者としての第一段階なんで、
そういう現象ほど裏に面白いルールが隠れてたりとか、面白いモチベーションがあったりとかするんですよね。
そこが研究対象になっていくので、むしろぜひ皆さんには間違った日本語、乱れた日本語をガンガン使ってほしいんですよね。
そこにこう最近の若者はみたいな気持ちだったりというのはない?
もちろん変だなって思う時はありますよ。
さすがにね。
どうしても年齢的にもね、僕大学で英語を教えたりとかしてますけど、今の大学生そんな風に言うんだとか、そういうのはあったりしますけどね。
すごい15年20年前だと、みんなヤバイヤバイ言ってるみたいなとか、ちょっと前だとなんでもエモいエモいで済ませちゃうみたいなとかは、
でもそれもなんか面白いなーみたいな目線で見ていることが多いっていう感じですかね。
そうですね。あんまりこれは間違ってるからこういうふうにしなさいみたいなことは言わないですね。
国語の先生ではないっていう。
そうそうそうそうなんですよ。こういうのは記述文法と規範文法って言ったりするのかな?なんですけど、僕らは言語学者としては記述文法、あくまで何が起きているかを記述するっていうところを重視しているので、
あんまりこうしておかなきゃいけないんだみたいなのはないですね。
このMIの話はですね、また面白いことがいろいろあるので、今後トピックとして扱っていただいたらと思います。
そうですね。もうこれだけで何かこう1回分2回分になりそうな膨らみがあると思いますので、お便りは今日は一旦この辺で。
言語の観察と意識
お便りありがとうございました。さて、そろそろ101号室の明かりを消す時間です。もち子さん、今夜のおソースの話どうでしたか?
おソース。何だろう探してみたくなりましたね。絶対にダメなラインとギリギリ許されるラインの境界線にあるものは何だというのをちょっといろんな人の話聞いてみたりとか、
あとは多分自分も丁寧に話そうと思った瞬間に意外なものにつけてる瞬間もあるんじゃないかなと思うので、ちょっとそこにアンテナ貼りたいなと率直に思いました。
なかなかいい感想を言いますね。ありがとうございます。ぜひもち子さんと一緒にリスナーの皆さんも言語の不思議に目を向けていただけたらなというふうに思います。
番組ではリスナーの皆さんから言語のバグ報告や番組の感想、質問などをお待ちしています。詳細は概要欄にあるGoogleフォームズリンクまで。番組のフォローと高い評価もポチッとしていただけると計算の研究費になります。
コーヒー代ぐらいにはなるかもしれないですね。では皆様からのお便りお待ちしております。それではまた次回お会いしましょう。
ディープストラクチャーラジオお相手はアシスタントのもちこと言語学者のKでした。
15:40

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