Welcome to Deep Structure Radio. この番組は、言語学者のKeiと、
アシスタントのもちこが、
言語学の面白さを広めるべく、私たちが普段何気なく使っている言葉について、言語学という特殊なレンズを通じて、面白おかしく語っていく番組です。
今夜はですね、SNS時代の新しい動詞について話していきたいと思います。早速、今夜の分析を始めていきましょう。
はい、ということで、1015室の言語学のコーナーです。今回はですね、新しい動詞、「ばえる」。こいつがね、すごすぎるんですよ。アクロバティックすぎて。
今日はそれについて話していきたいと思うんですけど、「ばえる」、アクロバティックなポイントが実は2つあります。
まずこの「ばえる」っていう動詞、元々の形は何から来ていると思います?
元々は、「はえる」だと思うんですけど、「ばえる」の原点はやっぱりインスタ映えじゃないですか。
そうですよね。インスタ映え。で、インスタ映えする写真とか物とかで、「ばえる」っていう風になってると思うんですよ。
インスタ映えっていう名詞でしたね、多分ね。
そう。で、このインスタ映えの時に、インスタハエじゃないじゃないですか。
虫っぽいですね。
一時期ありましたよね、そういうミーム。インスタ映えっていう。
ハエの絵描いてインスタに群がる人々みたいなミームあったんですけど。
で、今回そのね、「はえる」っていうのが元にあって、でもインスタとくっついたことによって、インスタ映えっていう風に音が濁ったわけですよね。
で、こういう現象を日本語文法、日本語学、言語学の中では連濁って呼んだりするんですよ。
赤羽とかがそうですよね。
そうですね。単語と単語がくっついた時に、後ろの単語の最初の音が濁った濁音になることを連濁って言うんですけど。
今言ってくれた赤羽とか、例えば花も花をいけるアートになると。
いけばな。
みたいに濁るし、あとは紙もペーパーアートこうやって折ってツルとか作りますよね。あれになると。
折り紙。
そう、っていう風に濁るわけですね。で、これを連濁って呼ぶんですよ。
で、まず映えるの何がすごいかっていうと、この元々インスタ映えっていうインスタと羽がくっついたことによって出てきた連濁を、
映えるっていう動詞にした時に、インスタ撮っちゃったのに残したままなんですよね。
インスタがいたから映えるじゃなくて映えになってたのに、そのインスタがいなくなったのに映えるに戻すことなく映えるになっている。
そう、その通りなんですよ。これってめちゃくちゃ珍しいっていうか、ちょっと不思議だなっていう風に思っていて。
そうですよね。折り紙だって折りがいるから紙なだけであって、ただの紙に戻すなら紙じゃなくて紙って言いますもんね。
だから映えるを動詞としてそのまま使いたくなかったのか、インスタ映えから来てるからそのプロセスの順番的にそういうことになってしまったのかわからないんですけど。
映えるだとどうしても草とか髪の毛とか、先に映えるで取られちゃってる感はあって、映えるも先にいるわっていうのもちょっとあるかもなとは思いました。
そうね。だから映えるのすごいポイント一つ目として、くっつけて起きるはずの連濁を起こしたのに外しても残してるっていうのがまず映えるのすごいポイント1なんですよ。アクロパティックポイント1。
なるほどなるほど。でもね、映えるってなってるおかげでその文脈だみたいにもなりますもんね。映えるじゃないんだっていう。だからきっとインスタ映えなんだっていうのを暗示しちゃうというか。
そこの意味でも残してる意義みたいなのもある気がします。
がすごく面白いなと思って見てるんですよね。
もう一つ映える面白いポイントがあって、日本語って新しい動詞を作ったりとか新しい単語を受け入れるのにすごく自由ですよね。
作れちゃいますよね。
そうそう。だから例えば、Googleが出てきた時に検索することを英語でもGoogleって言ったりしますけど、Googleっていう動詞にしたじゃないですか。で、新しい動詞は寛容なんですけど、Googleって否定形にするとどうなると思います?
ググらないで。
ですよね。ググらないですよね。さぼるは。
さぼらない。
さぼらないですよね。じゃあ、ばえるは。
ばえない。
ばえらないじゃないですよね。
ばえらないは言わないですね。日本語初心者かってなりますね。
なんか変だなって感じするよね。
ばえないですね。
でも、本来新しい動詞を作る時っていうのは、ほぼほぼ100%と言っていいぐらい、いわゆる語弾活用ってやつですよね。否定語にした時にらないの形になるやつが基本なんですよ。なんだけど、ばえないはなぜかばえないなんですよね。
あれじゃないですか、おぼろげな国語のままいきますけど、下二弾とか。
下一弾。
下一かな。どっちが古典でどっちが現代か忘れちゃいましたけど。
ばえる、ばえない、ばえれば、ばえる時、ばえ、ばえれ?
ばえれ。
下一ですね。
だからその、うの弾の語弾活用よりも下のところにいるのかなって思いました。
たぶん、おそらくなんですけど、これ活用継承しちゃった。もともとはばえる、はえるだったわけじゃないですか。
そうそう、だからその、はえない。はえるだったらね、草も生えないじゃないですか。
それの名残というか、亡霊というか。
亡霊みたいな亡霊、そうそう。なんか幽霊みたいに、その生えるの形をずっとその継承して、下一弾活用の形を守ったっていうのが。
そこは活かしたんでしょうね。
そう、なんか不思議だなと思って。その本来、ばえから新しい動詞を作ろうと思ったら、インスタばえらないがあってもよかったはずなんですよ。
なんだけど、それをしてないっていうのが、新しい動詞を作ったのに、でもそこのルールだけは守らなきゃいけないみたいな。
なんかその日本語のちょっと固くななというか、そういうところが出てきてるんじゃないと思って、すごい面白いなあって、その決闘をある意味優先したわけじゃないですか。
そうですね、なんかインスタばえするっていう、ほにゃほにゃするっていう、さへんでしたっけ。
作業変革活用みたいな。
スペシャルなするだったら。
国語だとそう習いますよね。
しないとかっていう特殊な方に行きますけど、あくまでもインスタばえするっていう、するの動詞じゃなくて、ばえの部分で独立したというか。
でも独立するときに、完全にお乳な独立の仕方というよりも、いや、ハエルにバックグラウンドあるんだよみたいな形で、そこがリサイクルしたというか、もう一回使ったっていう感じなのかなって思いました。
そうなんですよ。だからこのばえるっていう新しい動詞には、すごい、ある意味言語のダイナミズムというかが隠れてるんじゃないかと思って。
型や連濁という、昔からあるルールをある意味破ってというか、前を落としたのに残すっていうことをしつつ、でも活用系っていう観点で見ると、昔からの活用を守ってるっていう点ですごく面白いなあと思って。
伝統を大事にしてるのか、壊しに行ってるのかみたいな。
でも君自体は新しい動詞だよね、みたいな。ところがすごい面白くて、これに気がついたときには、これはぜひ1回1015室で話さなければっていうふうに思ったので、今回取り上げてみました。
ぜひ皆さんもこんな不思議なインスタ映えしそうな言語現象を見つけたら、ぜひ1015室のほうに報告していただけたらなと思います。
では今日の分析はこの辺で。次のコーナーに行ってみましょう。
はい、ということでここからはミッドナイトオフィスアワーのコーナーです。
このコーナーは大学のオフィスアワーになぞらえて、皆さんが日頃感じている言葉の疑問やちょっとした悩みにお答えしていくコーナーとなっております。
それではお便り読みを、もち子さんお願いします。
はい、ラジオネーム、翻訳はアプリに頼りきりです、さん。
けいさん、もち子さんこんばんは。
こんばんは。
突然ですが素朴な疑問です。
けいさんは言語学者という肩書きですが、やはりペラペラ喋れる言語の数も半端ないんでしょうか。
僕の勝手なイメージですが、英語はもちろんフランス語、ドイツ語、スワヒリ語みたいに10カ国語ぐらい操れるスーパーマルチリンガルなんだろうなと勝手に想像しています。
僕は英語一つでヒーヒー言ってるんですが、実際のところけいさんは何カ国語マスターしているんですか、ぜひ教えてくださいとお便りいただきました。
お便りありがとうございます。
いや、これよく聞かれる質問ですね。
はい、もう言語学者ですって名乗ると、何カ国語喋れるんですかってめちゃくちゃ聞かれるんですけど。
聞きたくはなります。
実際僕が喋れるのは残念ながら日本語と英語だけです。
あ、そんなもんなんですね。
そんなもんなんですよ。言語学者が必ずしもポリグロット、多言語話者とは限らないんですね。
もちろんすごい先生もいらっしゃって、僕の知り合いの先生とかだと本当に13カ国語ぐらい喋れるよみたいな人もいらっしゃったりはするんですけど、必ずしもそういう人ばかりじゃなくて、かなりレアケースですね、そういう人はね。
で、我々言語学者が興味を持ってるのっていうのは、人の頭の中でどういうことが起きてるかっていうことに興味があるので、必ずしもたくさん話せる必要はない。もちろん話せたほうがいいんですけどね。
知ってるほうがね、引き出しは多くなるのかなとは思っちゃいますけど。
なので僕ももうちょっと勉強したいなっていうドイツ語とかフランス語とか、そういう言語も勉強したいなとは思ってはいるんですが、なかなか手が伸びずっていうところではあります。
勉強方法みたいなのは、やっぱりその脳の仕組みとかを知ってる分、学習しやすいみたいなのはないんですか?
そうですね、脳の仕組みというよりは言語の仕組みがわかってるって言ったほうがいいかな。その文法の共通点だったりとか、実は日本語と英語ってこういうところに似てるんだよねとか、英語とドイツ語こういうところに似てるんだよねみたいなのは知っているので、そういう意味ではちょっと普通の人よりずるできるというか。
ちょっとショートカットしてというか、効率よく勉強できるかなとか、この言語とこの言語なら一緒に勉強しようかなとか、なんかそういうずる賢さみたいなのは働く?
あります。それはあります。けど必ずしも多言語話者ではないっていうのが正確な答えです。
といった感じで、今日のオフィスアワーはここまでにしたいと思います。このコーナーでは引き続き皆さんからのお便りをお待ちしております。日常で感じた言葉の疑問、僕への質問や番組の感想あるいはお悩み相談でも構いません。
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