ボディビル競技の問題点
はい、みなさんこんにちは、こんばんは。
一般社団法人ドーピング0会代表理事の吉田です。
ゼロラジでは、アンチ・ドーピングに関する最新ニュースを、現場や私たち医療者の視点で分かりやすくお守りする番組となっております。
本日も内会の原瀬山先生と一緒にお届けしていきたいと思います。
原瀬山先生、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
はい、ということで本日はですね、ボディビル競技について取り上げたいと思います。
ボディビル競技というとですね、皆さん知っているかわからないんですけども、残念ながら違反事例が多い競技になってしまっておりまして、これはもう事実なので、事実としてお訴えしているんですけども、ちょっとね、多いということで。
今回はそのボディビル競技の違反事例の中でも、これ違反になるんだっていうことがあったので、ぜひですね、このニュースを通じて皆さんにですね、こういうこともなるんだなということで気をつけていただけたらなと思って、この話題を取り上げさせていただきたいと思います。
今回はですね、ボディビル競技の2023年案件かな。
日本アンチドーピング機構のホームページのところにですね、過去にこういう違反事例があったよっていうページがあるんですけども、そこを見ていただいたら詳細載っているので、興味ある方はぜひ読んでいただきたいなと思います。
最初にですね、今回はニュースではなくて、報告書がインターネット上にありますので、その報告書の概要というか要点を唐瀬山先生に読んでいただきたいと思います。
それでは唐瀬山先生、ご紹介をよろしくお願いいたします。
はい、それでは読ませていただきます。
これを受けて競技者に確認したところ、禁止物質の所持を辞任するに至った。
具体的にはアナボリックステロイドのテストステロン、トレンボロンと成長ホルモン類のIGF-1を使用または所持していたとされております。
というニュースで、競技者の責任としての違反が明確に確認されたということになっております。
はい、ありがとうございます。ということで、非常にレアです、このケースというのは。
まずシチュエーションがめちゃくちゃ変わっているというので、皆さんわかっていただけたかなというので、ちょっと解説を最初にさせていただきたいんですけど。
まず、このTさんという方は大会に出ているわけではないんですよ。
このTさんは、友達、知り合いの大会を応援しに行った観客であったということがまず一つですね。
で、この応援しに行って、観客として参加して、その観客が忘れ物をしたと。
その忘れ物の中に禁止物質が入っていたということで、つまり、よくある検体、おしっことか血液とかその中に禁止物質が入っていたことが原因で、あなた違反だよって言われたわけではなくて、
正当な理由なく禁止物質を持っているだけである意味でだけで持っているだけで違反になるよっていうことですね。ここがすごくポイントになります。
使ったらアウトなのはもちろんなんだけど、正当な理由なく持っているだけでアウトになるんだということは非常に重要なポイントなので、最初にお伝えさせていただきました。
本当に僕もこのニュースを最初に聞いた時は驚きましたけれども、会場で多分これを見つけたのがどなたかは存じないですが、おそらくバッグの中には財布なりいろいろあるでしょうから、それプラス何か瓶みたいなものなのかわかりませんけど、
なんだこれはってなったみたいなところを想像すると、いろいろいつものニュースとまた毛色が違う。改めてちょっとこのニュース聞くとちょっとびっくりするというか、こんなこともあったなと思いますね。
なので正直なかなかこれだけ単品で取り上げられるのは珍しいんですよね。何か複合的にやっぱり出てくることが多いので、これ単品でっていうのは非常に珍しいということで取り上げさせていただきました。
ただ使ってない、その時は倦怠取ってないから出てきてないとは思うんですけど、取ったら絶対出てくるでしょっていうものばっか取ってるんで、禁止物質みたいなやつを取ってるんですよ。なので簡単に何を使ってたのかっていうことだけ触れさせていただきたいなと思います。
禁止物質の影響
今回はですね、アナボリックステロイド、いわゆるテストステロイドってもう完全にアウトですよね。テストステロイドってもう完全に筋肉増強だな、もう典型例みたいなアナボリックステロイドだみたいなやつの典型例なんですけど、こいつと、あとこれも有名ですよねトレンボロンね。
トレンボロンもめちゃくちゃ有名で陸上選手とか結構出てきてると思うんですけど、このトレンボロンであったり、この2つテストステロイドトレンボロンはいわゆるS1カテゴリーってやつでして、カテゴリーの名前が大事っていうわけじゃなくて、アナボリックステロイドっていわゆる筋肉をつける増強作用があるやつですね。
ただ、これって筋肉の部分だけ取り上げたら筋肉はつくんだけども、こういうホルモン系のやつっていうのは全身に作用するので、筋肉だけ切り取ったらそれはもちろんいいんですけど、それ以外のところも全部プラスになるかっていうと、全くそんなことはなくて。
いくつかご紹介すると、例えば換気の障害なったりとか、あとはホルモンバランスですね。男性ホルモンを打つと、女性ホルモンと男性ホルモンって皆さん持ってるんですけど、そのバランスが乱れてしまって、それによって女性が男性化したりとか、女性が男性化したり男性が女性化したりっていうことが起こってくるっていうことで、
それが身体的な作用ももちろんありますし、精神的な作用っていうのももちろんあります。聞いたことある方いるかもしれませんが、性格が変わったみたいなことを言われる方もいたりとか。
あとはやっぱりアナボリックステロイドが原因かっていうのはもちろんちょっとわからないんですけど、ただ最近ボディービルダーの人たちの死因を調査した結果が出てまして、それによると心血管のイベントですね。
心臓の病気が起こりやすい。実際に突然死をしている方が多いっていう話は実際ありまして、実際に亡くなった方の心臓をちょっと見ますと、心筋が肥大してるっていう実際例が結構見られてまして、
なので本当に昔活躍していた選手っていうのが実はもう皆さんいなくなってるっていうケースは実際あります。なのでそういったアナボリックステロイド、いわゆる筋肉増強剤っていうのは一時期の筋肉のためにはいいかもしれないんですけども、それ以外に与える影響、全身に与える影響はでかすぎるので、絶対やっちゃいけないやつですね。
それがS1っていうところのカテゴリー。カテゴリーはあんま覚えなくていいんですけど、一応ね、薬剤師とか医療者向けにはその辺で覚えていただけたらということでご紹介してます。
続いて、ペプチドホルモンのS2ですね。これは成長ホルモンとか、さっきのですね、IGF-1とかその辺の成長ホルモン系のやつですね、この辺りが入っているものでして、
これも結局、IGF-1も筋肉のこう作る経路の一つの物質、スターターみたいな感じの物質なので、これもですね、非常に結果的には筋肉つけるみたいなところの役割で使われることもありますし、他にもですね、エリソボイチンであったりとか、そういったところはまた赤血球の方ですね、関わったりしますので、いろいろあるんですけど、
この人たちもやっぱり結局全身に与える影響が大きいので、やっぱりそこのプラスになるところだけ切り出したら、やっぱり競技にとってプラスなんだけども、それ以外に与える全身への影響っていうのを考えると、やはりリスクが高いものになってきます。
簡単に解説するつもりでしたが、結構ガッツリやってしまいました。
ありがとうございます。
本当に競技によっても、ドーピングがどれぐらい競技力を高めるかって違うと思うんですけど、
ボディビルは筋量とか見た目が評価ポイントなんで、やっぱりこういう物質の貢献度ってかなり高くなると思いますから、
やっぱり競技者にとっては非常にちょっと誘惑、強い誘惑になってしまうものかなというのは思っていますし、
その一方でやっぱり、ただ健康リスクとか、純粋に以前のテーマでもお話しした、競技としてのルールを守るっていうところ自体、競技の価値みたいなところへの理解っていうのがやっぱり、
健康とかそういう競技自体のクリーネス、理解が本当に重要だなっていうのは思うところでもあるんですけど、
とはいえこの事件から学べることっていうのが他にあるかなと思って、そのあたりもお話しいただけたらと思うんですけど、いかがでしょうか。
はい、ありがとうございます。
そうですね、ボディビルさっき触れていただいたんですけど、ボディビル自体がやっぱりどうしてもそこが筋肉の量が本当にポイントになっちゃうんですよね、評価ポイントになるのは本当に事実としてあって、
そのバルク量ですよね、筋肉量って言われますけども、そこであったり、ある意味で関わりやすい、薬が関わりやすくなってしまっている業界でもあるかなとは思ってます。
なので、その辺の水抜きって言われるやつですよね、まずなんか血管を筋肉の表面にきれいに這わせるっていうか、バスキュラリティっていうらしいんですけど、筋肉が表面にきれいにパシッと走ってるかどうかみたいな、切れてるかどうかっていうらしいんですけど、
そういう水分を本当にギリギリまで除いて、そういったことを薬で例えば抜く、水分を抜くみたいなですね、そういったところにも関わったりとかっていうことで、本当にいろんなシーンで薬を使うと楽なように見えてしまうっていうようなところはあるなって思ってて。
なので、他の競技の人たちも身を削ってるとは思うんですけど、本当にそういう削り方じゃなくて、体に本当に良くないことをしてる削り方をしてる人が多いんですよね、減量とか。
なんで、この辺りがですね、ボディビルの人たちが残念ながらアンチドーピング規則違反が多い、違反事例が多いっていうのは、そういう過酷なことをしている中で、どうしてもそれに頼らざるを得ないというか。
そういう精神的に参ってる人も多いんですよね、減量期でも。そういう人たちを何人か僕は見てきたので、なんかちょっと普通の人が至らない精神的な状態になってたりとか、いうのもなんかあるかなっていうのは思いますね。命削ってやってる人たちがいるような気がします。
学べる教訓
普通の業界とまたちょっと違うっていう。
ボディビルについて私がちょっと思うことを最初にお伝えさせていただいて。
学べることなんですけど、まずはアスリート自身がこれを知ってたかどうか。禁止物質を持っているだけでアウトになるよっていうことを知ってたのかなっていうのがまず一つあります。
なのでまず学べることとしては、やっぱり禁止物質を所持していることっていうのはあんまり目立たないじゃないですか正直。
そうですね。
ニュースにもならないし。
そういうことが実際あったので、今回のTさんの話を例にですね、こういうことしちゃいけないよっていうことを今後はこの事例を紹介することによって抑止していくっていうのがすごく大きな教訓の一つかなっていうふうには思います。
で、あとはやっぱりサポートスタッフですよね。指導者とかサポートする側の私たち含む医療者含むスタッフ側の人たちにも非常に重要になってくるかなと思います。
アスリートへの説明ももちろんですし、下手したらですよ。
これは今回は禁止物質って諸にわかる物質ばっかりだったから大丈夫なんですけど、これ選手に渡したりする可能性もありますよね。禁止物質とわかってなくて渡してしまう可能性もあるっていうなんかなんとなくわかるかな。
はい。なので、知識がないまま私たちがそういったものに関わってしまう可能性もあるっていうのもスタッフ側の立場からすると知っておいたほうがいいですし、わからないものは進めないってまあ当たり前なんですけど、そういったことをやらないといけないっていうのがこの事件、今回の事件から学べることかなっていうことですね。
ありがとうございます。本当にボディビル界隈ではもちろんアンチドーピングっていう今回のこういう物質以外でも、例えばプロテインだったりとか、いろいろなるべくいかに筋肉を守り育てていくかみたいなところに対して、栄養とかサプリ、プロテインを使っていくっていうのは本当に大事な要素だと思うんですけど、
このアンチドーピングの視点が抜けてしまうと、やっぱりその裏に健康被害っていうのが出てくることもあるし、それが本当に命に関わる重大な事態になる可能性もあるんで、今回の件はそういったところではなく、処置とか使用による違反というところでしたけど、
ボディビル競技におけるアンチ・ドーピング
その裏には本当にそういう重大なことにつながる可能性が多々あるっていうところも理解しないといけないなというふうには思いました。
はい、ありがとうございます。
あの、本当ね、さっき栄養の話も出てきたんでお伝えすると、ボディビルの人だってやっぱりこう自分たちのやり方みたいなところにすごく固執するというか、何が痛いかっていうと専門家が不在なんですよね。
その水抜きとか、その体重を落としていくときの栄養管理みたいなところで、栄養士さんが入ってないんですよね。それが多いです。実際これだけ食べて落とせるのかみたいなのが、公認スポーツ栄養士さんの学会とか行くと、ちょっとずつですけど、そういう事例が上がってきたりはしてるんですよ。
なので、やっぱりそういう介入して、栄養士さんが介入して実際に結果を出す、今までの減量と違って、楽にって言ったら語弊ありますけど、ちゃんとこう体重が落ちつつ食べれるみたいな方に持っていけたら一番理想じゃないですか。
そうですね。
ということで、今回の所持しているというこの事例ですね。Tさんの事例を元に、私たちアンチドーピングの関係者ができることっていうのをちょっと考えていきたいなと思うんですが。
一つ目は、やっぱり今回のルール。何回も同じこと言うなってことなんですけど、ルールですよね。所持しているだけでもアウトですっていうこのルールをしっかりと出しておくっていうのは非常に大事ですよね。
正直違反の例って11個の方があるので、11個の方を一個一個説明するっていう機会はあんまないと思うんですよ。できないし実際私もそれをやってますけど、やっぱりこの所持していることっていうのは、なかなか説明をしっかりできてないところもあるので、
やっぱり1回だけではなくて、何回かに分けて情報発信をするとかしていった方がいいんだろうなっていうふうには思います。
あとはその医療連携ですよね。何か発生した時ですよね。怪我したりとか治療を受けるぜってなった時に、専門家にすぐに相談できる体制を作っておくっていうのが非常に重要でして、
今回で言うと、実はJBBFとか、これはジャパンボディービルフィットネス連盟の略なんですけど、JBBFさんがやってる大会っていうのは、連盟と今イルホープさんっていう会社が一緒にやってるんですよね。
アンチドーピングの取り組みを。なので、そういったところに聞ける窓口があるので、そういったところに本当だったら問い合わせるということが必要だったりはするんですけど、
残念ながら悪いことをしてる人はそこにはいかないので、ここがネックだなとは思いつつ、相談というよりも通報窓口みたいなものがあるといいのかなみたいなは思いますけどね。
たぶんあると思うんですけどね。ちょっと僕パッと今わからないんですけど、そういったところがあると事情作用が効くっていうので、そういったところで相談できる窓口と通報窓口の2つがあるとより回るなということで、それぞれあったと思うので。
すいません、そこまで今日は確認できてなかったんですけども、また調べておきます。
アンチドーピングっていうことを担う人って薬剤師とかだけではなくて、やっぱりこう皆さんが薄く広く知っておいて、難しいものをさらに深い説明をしてもらうために薬剤師にバトンを渡すみたいなのが理想だと思うので、
今回で言うとやっぱり取り巻く、ボディーウィルダーの人を取り巻く専門家、指導者、チーム関係者の人たちにこの知識の研修とか、そういった啓蒙啓発っていうのをそういった人たちに対してもやっていかないといけない。
ある意味で、その11個のアンチドーピング規則違反の中で、やっぱり何でしょうね、なんか食わ立てるっていうのがあるんですよね。アスリートに対してこういう方法やったらいいよっていうのを食わ立てたり、悪いことね、ドーピングになるようなことをそそのかしたりとか食わ立てたりっていう。
アスリート自身も自分自身がこうやったらいいわっていうので、食わ立てることも記録が残ってそれが証拠になっちゃうと違反になっちゃうんです。何が言いたいかっていうと、周りにいる人が気づいたら止められる可能性があるじゃないですか。
だから知っておく必要があるっていうふうに考えています。なので周りにいる人たちも、その所持していることっていうのが違反になるんだっていうことをまずはインプットしておかないといけない。さらに言うと持たせないような土壌を作るためにも知っておく必要があるっていうことなんで、結局やっぱり知っといてほしいなっていうふうには思います。
ありがとうございます。今お話しいただいたところは、もちろんそのボディビルだけじゃなくて、他のスポーツにも共通する課題かなと思いますし、特に薬剤師さんの役割って非常にわかりやすいと思うんですけど、例えば競技特性であれば医師の領域だとクライミングの選手とかだと皮膚障害が起こりやすかったり、あとは陸上選手は貧血になりやすかったり。
体系の問題で言えば、どういうふうに栄養をとっていくかみたいなところは栄養士さんと相談したり、そういう各職種がもちろん色々関わりつつ、かといって自分の領域だけではなくて、広く今お話しいただいたような知識を持って、複合的に支援していく体制っていうのがやっぱり大事だし欠かせないなと思いました。
そういう意味では私たちの掲げる多職種連携というところも、やっぱり改めて大事だなっていうふうに思わせてくれるニュースかなというふうに思いますね。
はいありがとうございます。逆に言うと知ってたらこれなんだってなるし、そういうのがやっぱり一つ一つがアンチドーピングの活動に直結することなので、これは本当に知ってるだけでいいじゃないですか。
だから、なんか変なも思ってたぞっていうのでも、あれって思えたらもうそれである意味で抑止力になっているので、ぜひそこでこういう事例を通じて知ってもらうっていうのはやっぱりそういう意味ですごい意味があることだと思っているので、ゼロラジェ取り上げてお話をするということですね。
なので、講習とかでしっかり聞くのしんどいんで、ながら劇でこういうのあるんだっていうのを知ってもらえるといいなと思って、今日はこのテーマを私から取り上げてほしいということで、からさやま先生に打診をして開拓していただいて、今日取らせていただいているということでございます。
はい。
ありがとうございます。
はい、ということでゼロラジではですね、今後もこのようなちょっとレアな違反事例だったり、知られざる違反事例とかを取り上げつつ、私たち専門家、薬剤師と医師の観点でどんなふうにテーマを取り上げるんだろうみたいなですね、そういったところも知識もそうだし議論もそうだし、そういったところで何か伝えられることがあったらいいなと思ってやらせていただきますので、
栄養管理の重要性と周囲の関与
次回もまた聞いていただければと思います。
はい、ということで本日はこちらで失礼したいと思います。
ここまで聞いてくださってありがとうございました。
ありがとうございました。