アクティブラーニングと評価の難しさ
デジタル時代の国語教育を語ろうにようこそ、パーソナリティーのKasaharaです。
この番組では、ICTを活用した国語の授業実践に関する話題を中心に、
Google for Education認定トレーナーと認定コーチの資格を持つ私、Kasaharaが、
教育にまつわる様々な話を配信していきます。
職員室のスタッフ同士で行われる教育談義のようなものだと思って、ゆるっと聞いてください。
前回までのシリーズ、アクティブラーニングの配信では、
主にどうやったらアクティブラーニングに取り組むことができるのかということを中心にお話をしてきました。
前回までの内容を聞いていただくと、
とりあえず授業の中でアクティブラーニングをやってみようとした時に、
どうやったらいいのかということはわかるんじゃないかなというふうに思います。
ただ、アクティブラーニングの難しいところは、やってみたら終わりではないということです。
アクティブラーニングをやった後に、子どもたちから出てくる成果物をどう評価して、
子どもたちに戻していくのかということがとても難しいのです。
評価が難しいといえば、最近研究会に参加していると質疑応答の場面で、
よく、「評価はどうするんですか?」という質問が聞こえてきませんか?
これは現場の先生方が実際に活動的な授業に取り組むようになったからこそ増えている質問なんだろうなぁとは思います。
実際どうやって子どもたちから出てきた成果物を扱えばいいかって迷いますよね。
評価については人によって評価に関する考え方の前提にズレがあったりするので、
相談しようとしてもなかなかうまくいかなかったりといろんな面でハードルがあります。
ただ評価とは、結局子どもたちにその授業でどのような力をつけてほしいのかということそのものであるので、
評価の種類とその混乱
できればやらせてみてから考えるのではなく、やる前にちゃんと自信を持って言えるようにしたいところです。
さて、本題に入っていきますが、まず評価に関することを話すことが難しい理由をお話ししておきます。
それはアクティブラーニングがうまく理解されないで議論が空転しているのと同じで、
要するに一言で評価と言ってもイメージが人によって微妙にその時々でズレてくるんですよね。
例えば評価について有名な考え方としては、アメリカの心理学者のブルームという人の考えた3つの評価の考え方があります。
いわゆる寸断的評価、形成的評価、総括的評価というものです。
名前を正確に覚える必要はないんですけど、評価をどうする?という議論をしている時に、
この3つのうちどれについて話しているの?というズレが起こる時が結構よくあるんですよ。
いわゆる寸断的評価というのは、学習に入る前の子どもたちの力を判断するために行う評価のことですね。
アクティブラーニングの文脈で言うのであれば、次にやる授業を行うために、とりあえず生徒に何かちょっとしたものを書いてもらって、
その結果によって次にやる内容を決めてみようかなみたいな、そんな判断を行うための評価のことです。
アクティブラーニングの評価という話をする時に、寸断的評価が混乱した形で入ってくることはそんなに多くないかなという気はします。
ただ、残りの形成的評価と総括的評価は完全に議論する時に混同されて、ややこしいことになってしまってます。
そもそも形成的評価と総括的評価の違いがあることを知らないで議論しているみたいなケースもあるので、
完全にイメージがずれたまま議論が進んで、よくよく確認してみたら、「えー、それってそういうつもりだったの?」みたいなことになりがちなんですよね。
じゃあ、形成的評価と総括的評価って何が違うというと、分かりやすいものからいきましょうか。
今の学習指導要領になって、学校の成績は各観点のABCとそれをまとめた1から5の数字で表底が出されるようになっています。
いわゆる通知表で渡される成績がこれですね。
通知表のように学期なり学年なりのすべての学習活動の成果をまとめて、
つまり総括して評価として出したものを総括的評価というふうに言うわけです。
逆に通知表には載らないけれども、生徒の学びのフィードバックとして行われる授業ごとなどに行われる評価のことを形成的評価という言い方をします。
観点別評価の挑戦
授業はその授業や単元の目標に向かって学習を進めていくことになりますが、
その学習の過程で子どもたちの成長の在り方にはばらつきがあるわけです。
そういうばらつきを個別に見とって、その授業なり単元なり学年なりの目標に到達できるように、
授業者から子どもたちに行われる評価、フィードバックが形成的評価だと考えてもらうとわかりやすいんじゃないかなと思います。
総括的評価が通知表の評定、形成的評価が授業や提出物へのフィードバックと思うと、おそらくイメージは共有しやすいと思います。
ただもちろん厳密にはこの説明には正しくないところもありますし、
あと2つの評価は見方によっても同じ評価がコロコロ変わることもあるんですよね。
例えば、ある学期の総括的評価と出された観点別評価の通知表の数字であっても、
年間の生徒の学習という観点で考えるのであれば、
一学期の総括的な評価であっても、それは結果的には二学期三学期に向けての形成的な評価になるわけで、
こういうようなことも混乱しやすい原因なんだろうなというふうに思います。
そして、議論の混乱に拍車をかけているのが、今の学習指導要領から小中高全てで行われるようになった観点別評価なんですよ。
かなり勘違いされた形で受け止められていて、どうやったら良いか分からないみたいな話になっていて、
その結果、かえって校舎の転生でどうにか力技でつけてしまおうみたいな意見が強くなってしまっていることなどもあって、
評価について考えることを面倒くさがらせる、そんな原因になっているような空気を個人的には感じます。
観点別評価というのは、知識技能、思考判断表現、主体的に学習に取り組む態度の3つの観点から子どもの成果を評価しようとするやり方なのですが、
前提としては、国立教育政策研究所の指導と評価の一体化のための学習評価に関する資料というものが出ているので、それを参考に一応考えられるようにはなっているものです。
ただ、この資料も万能ではなくて、当然書かれている事例の数も多くはないので、
そこに書かれている内容を噛み砕いて自分で理解して、他の授業に応用していかなければならないものなんです。
ただやってみると、やっぱりこの資料だけだと、どうしたらいいんだろうという風になってしまうことも多いんですよね。
いや、自分一人で全ての授業を教えられるのであれば、個人的には書いてあることを参考に評価計画のめどというのもつけられるかなという風には思うんですが、
これを何人もいる他の先生と価値観を擦り合わせて評価を作っていくというのがとても難しいです。
教科書の指導書も観点別評価がクセものになるということはわかっているので、かなり気を使って資料を作ってくれてはいるのですが、
どうしても教室の実態に基づいて評価を行われるものであるので、指導書の資料もふわっとしていて、
肝心なところでは意見が分かれてしまいそうだなーっていう感じに書かれているんですよね。
なんでこんなに観点別評価が揉めるかというと、まさに改善しましょうと話題になっている思考判断表現と主体的に学習に取り組む態度の部分についての評価の仕方が教員同士で全く折り合いがつかないことにあるんですよね。
誤りがあることを分かった上で単純化していってしまうのであれば、まさにアクティブラーニングの学習の成果の部分を客観的にみんなが納得できる形に評価することが難しいなーというふうになってしまっているわけです。
例えばアクティブラーニングの活動の成果としてレポートを書きました。
でもそのレポートってどうやって評価するのか、誰が見ても納得できるような成績の付け方になるのか、なんで彼がAで私がBなの?と言われたときに答えられるのか、そういうことに神経を尖らせている先生が多いだろうと感じます。
個人的な意見としては、単元の目標、到達するべき姿がはっきりしているのであれば、見ればわかるでしょ?くらいの気持ちではいるのですが、まあそれでは説明したことにはならないので、もう少しちゃんと理論武装が必要となります。
そういう理論武装の必要として、いや、そういう言い方もあまりよくはないんですが、挙げられるものとしては、アクティブラーニングとセットで言われるようになったこととして、ルーブリックを用いたパフォーマンス評価というものがあります。
ちなみにルーブリック評価という言葉も時々見かけるのですが、ルーブリックは評価基準の評のことなので、ルーブリック評価という言葉の並びはなんだか違和感がありますね。割とよく見かけるのですが、個人的には言わないかな?
話を元に戻すと、このパフォーマンス評価の方法をもう少し詳しく勉強すれば、観点別評価で混乱していることも、アクティブラーニングの評価をどうするのかという話もだいぶ見通しが良くなるんじゃないかなというふうに思っています。
逆向き設計の重要性
じゃあ、どうやってパフォーマンス評価について学ぶのが良いかというと、個人的には京都大学の西岡かなえ先生のご著書がたくさん出ていますので、明治図書のもので十分だと思いますので、そちらを買ってもらって読むのがいいのかなというふうに思います。
具体的な事例も多くて、主導案も示されているので、それが一番わかりやすいかなというふうに思っています。
西岡先生のパフォーマンス評価の考え方は、逆向き設計と呼ばれる理論に基づいているので、評価を考えることがそのまま授業をどうやって組み立てるのかということにもなってきます。
ちなみに何で逆向きなのかといえば、普通は教材があって、指導の方法がそれで決まって、それからどこまでできるようになるかなみたいなことを考えて授業を作るらしいのですが、逆向き設計だと、まず最初に到達するべき目標を決めて、
じゃあそれができるようになったというのは具体的にどのような証拠があるのかということを考えて、さらにそこから授業でどうするのか、そのために何を使うのかを考えていくというような考え方なので、ゴールから逆算するという意味で逆向き設計というわけです。
アクティブラーニングって活動だけやらせればよいみたいな誤解を受けることがあるのですが、逆向き設計の考え方に基づいて授業を考えていくならば、最初に到達したいものがあるわけなので、活動を目的にしてやっておけばいいって感じの授業は減らせるんじゃないかなとは思いますね。
だからアクティブラーニングの授業作りを本格的に考えるならば、逆向き設計論は避けては通れない気がします。
もし本格的に逆向き設計論やパフォーマンス評価を勉強しようと思ったら、まず足掛かりとしては京都大学のeフォーラムに掲載されている情報を見てもらうのがいいかなというふうに思います。
実際に研修会などもやっているので、それも分かりやすくてよいですね。
自分もコロナ禍の頃にオンラインで3ヶ月だったかな?連続受講をして、みっちりそれで勉強しました。
概要欄にリンクを貼っておきますので、興味のある方は見てください。
概要欄にリンクを貼っておきますので、興味のある人はご覧ください。
評価について話し出すとかなりややこしくなるのですが、それでもちゃんと考えるべきものだと思っています。
評価、生徒の見取りをどうするかということをちゃんと考えないと、結局ペーパーテストのような客観的っぽく見えることに評価を丸投げしがちになっちゃうんですよね。
でも観点別評価だからパフォーマンス評価をしなければならないんでしょう?みたいな中途半端な理解のされ方で、なんちゃってパフォーマンス課題が横行しちゃっている現状も結構問題かなというふうに思います。
なんちゃってパフォーマンス課題だとか、なんちゃって評価は生徒を知らけさせて学びから遠ざけます。
だからそもそもそういう評価をやっていたら、授業はうまくいかないで、自分で自分の悩みの原因を増やしてしまっている、そんな現状になってしまいますよね。
評価を雑に考えている人は少なくないのですが、子供にも意味のある言葉を返せるようにしていきたいものですね。
今回の配信はいかがだったでしょうか?
今回はとても難しい課題であるアクティブラーニングの評価という話をしてきました。
なんちゃって評価が出回りすぎちゃってるなというふうに思いますし、
例えばルーブリックをやらせておけば、なんか評価できてるっぽくなっているみたいな状況というのは困ったなというふうに個人的には思っています。
アクティブラーニングの評価に手間をかけすぎると持続可能ではなくなってしまいますから、
ある程度合理的にチャッチャッチャッとつけられるような工夫は必要になるとは思います。
ただ、合理か合理か言いすぎると結局めんどくさいパフォーマンス評価はやらないで、
ペーパー試験をやらせてそれに辻褄を合わせるような評価の仕方になっちゃうというのも見てきていることなので、
そういう安易になりがちなのは良くないなというふうに思っています。
アクティブラーニングをやることでいろんなことが試されているのは生徒だけではなくて、学校や先生もそうなのかもしれないですね。
学校や先生が大切にしている価値観の根本的なところを変える必要はないとは思いますが、
自分がこり固まらないで今の生徒を見とるためにも、アクティブラーニングの学び直すというものはこれからも必要になるのではないでしょうか。
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この番組は毎週月曜日に1回配信されます。
次回の配信もお楽しみに。ではまた。