英検の受験料の推移
デジタル時代の国語教育を語ろうにようこそ、パーソナリティのKasaharaです。この番組では、Google for Education認定トレーナーと認定ポーチの資格を持つ私、Kasaharaが、教育にまつわる様々な話を配信していきます。
さて、今回は大学入試シリーズの番外編として、英検の検定量問題を取り上げます。
あえて問題という言い方をします。もちろん色々な背景があることではありますが、個人的には思うところが多いので、問題と呼ばせてもらいます。
前回まで大学入試の話をしてきましたが、その中で何度か触れた英検。実は、この英検の受験料が10年間で2倍近くに跳ね上がっていることを、リスナーのあなたは知っていましたか?
今回の配信では、2015年から2025年までの英検の検定量の推移を詳しく見ていきながら、この値上げが受験生や保護者にどんな影響を与えているのか、そして大学入試との関係について深掘りしていきます。
特に、英検は前回までの配信でもお話ししたように、今や大学入試で優遇措置のある重要な資格となっていますから、この値上げ問題は単なる価格改定の話ではなくて、受験の有利不利の問題として捉える必要があるんです。
かつて2021年には、高校生が中心になってオンラインで署名運動を展開し、3万5千人以上が賛同するという事態にもなりました。
実際、私が担任している生徒たちからも、英検が高すぎて何回も受けられないですという声を聞きます。
2級を年3回受験すると約3万円近くかかりますから、兄弟がいる家庭では本当に大きな負担です。
データに基づいて冷静にお話をするつもりですので、最後までお付き合いください。
さて、ここからが本題です。
まず、具体的に数字を見ていきましょう。
大学受験に関わるのは、準2級、2級、準1級あたりなので、そのあたりの費用について紹介をしていきます。
実は今年から準2級プラスという級ができましたが、これはちょっと話がややこしくなるので基本的には今回は触れません。
また、英検には本会場受験と準会場受験といって、学校で放課後などに受験するちょっと安いバージョンやコンピューター上で受けるSCBTなどもありますが、
とりあえず今回の本放送では本会場の受験について話をしていきます。
準会場とSCBTに関してはボイシーの方でお話ししようと思うので、そちらもぜひお聞きください。
では順番に見ていきましょう。
2025年度の英検準2級の受験料は4500円でした。
それが2025年では8500円。実に9割ぐらいの増加になってますね。ほぼ2倍です。
値上げの背景
2級はどうかというと2015年度が5000円で2025年が9100円。これについても大体8割増です。
準1級に至っては2015年の6900円から2025年度は膨大を突破して1500円と52%の値上げになっています。
英検は実は2013年頃からじりじりと値上げをしていき、2020年までに準2級は6900円、2級は7400円、準1級は8400円になっていたんですよ。
そしてこの10年間で最も検定料が高かったのが実は2021年です。
準2級は前年から2300円アップの9200円、2級も2300円アップの9700円、準1級も2300円アップの1万700円と一気に2000円以上の大幅な値上げが行われたんです。
冒頭でも少し触れましたが、これに対してはさすがにたまらんということで、受験生、特に高校生から強い反発がありました。
実際にオンライン上だとハッシュタグで英検の値上げに抗議しますというようなオンライン署名が展開されていて、3万5000人以上が賛同したということがありました。
経済的な違いが学びの格差に繋がっちゃいけない親ガチャなんて言葉も流行りましたけれども、そういう訴えというのは本当に切実だと思います。
自分が高校生時代を振り返ると、今のこの受験制度では受験は相当厳しかったですね。受験費用は年出できなかったと切実に思います。
一応英検協会は翌年2022年度に一部値上げを実施しました。
準2級は7900円に、2級が8500円に、それぞれ1300円引き下げられました。
ただ、これってよく考えて欲しいんですが、調算母子みたいなところがあります。値下げされたとはいえ、2020年度から2300円値上げして1300円の値下げですから、まだ1000円も高いんですよ。
2015年と比べると、もうもっと大幅に高いままになっています。
そして2024年度にはまたしれっと値上げしているんですね。結局今の2025年ってどうなっているかというと、準2級が8500円、2級が9100円、準1級が1500円となり、ほぼ2021年と同じ水準に戻ってきて現在に至っています。
ちなみに中学生が数多く受験する3級も、2025年の段階だと2500円だったんですが、それが2024年去年から今年にかけては6400円と、なんと2.6倍、ほぼ3倍に跳ね上がっているんですよ。
これは本当に家計への負担は大きいですよね。
では、なぜこんなに値上げされたのでしょうか。
英検協会の説明では主に2つの理由が挙げられています。
1つ目は物価高騰によるコスト増です。まあどこの業界もそうですよね。
試験運営に関わる人件費だとか用紙の印刷費、物流費などが物価上昇に伴って増加しました。
特に新型コロナ禍では、会場確保や感染対策のために費用が増大したと説明されています。
だから2021年の大幅値上げはこれが理由だと一応考えられますね。
確かに2020年度以降は試験を午前午後の二部制にするなど、会場や人員コストが増えているのは間違いないです。
後で話しますが、とはいえ引っかかることはあるんです。
2つ目は試験品質の向上のためにお金がかかっているということです。
近年の英研は読む、聞く、話す、書くの4技能をちゃんと評価できるように設計されていて、
なのでそのあたりの研究費だとか採点だとかにお金がかかっているみたいです。
2016年度から2級などでライティングの筆記試験が導入されて、
大学入試への影響
2024年度からは1級から3級でライティングの問題がかなり増えたみたいなこともあって、
そういう新形式の費用も値上げの一因とされているわけです。
これらの説明って一見すると確かに合理的にも見えますし、事実そういう面があるのだと思います。
しかし受験生や保護者からは、
そうだとしてもいくらなんでも高すぎやしないかという声は根強くあるわけです。
さて、話を分かりやすくするために、ここで他の英語の試験との費用面の比較をしてみましょう。
受ける人が英検の次に多いTOEICでどのぐらいかというと、
2015年頃は5700円だったのが、2021年10月から7800円になりました。
これは37%ぐらいの値上げ幅です。
確かに値上がりしていますが、英検の8割から9割増に比べると比較的緩やかに見えてしまいますよね。
大学の留学などに関わるTOEFLはどうでしょうか。
TOEFLはそもそもの値段設定が非常に高めですし、
あとTOEFLはドル建ての料金なので円安の影響を受けやすいんです。
ただ興味深いことに、2025年4月に日本向けの料金を大幅に値下げしました。
それまで245ドルだったのが、195ドルに約20%の減額になりますね。
つまり、TOEFLのドル建ての価値自体は10年間でむしろ減っている、みたいな形になるわけです。
この比較から何が見えるかというと、英検の値上げ幅が他の英語試験に比べて突出して大きいということです。
確かに英検の受験者数はTOEFLとかに比べると3倍近く多い、圧倒的に受験者の数が多いということや、
あとは一次試験と二次試験があるということもあって、運営コストが高いというような事情はあるとは思います。
ただそれを差し引いても、この10年間で2倍近い値上げは本当に他のインフレしているものと比べても必要なのだろうかと思っちゃいますよね。
そんな邪推をさせてしまうもう一つの重要な視点があります。
それが何かというと、英検と大学入試改革との関係です。
2010年代後半から文部科学省は、大学入試で英語4技能を評価するために、英検などの民間試験を活用するということを打ち出していました。
実際にそれに影響を受けて、大学入試で英語関係の資格の活用が段々と進んでいきます。
現在では、一般入試や総合型選抜、学校推薦選抜で、質問条件として、端切りとして一定の英検の級が必要とか、英語検定資格があれば加点という大学学部が増えてますね。
典型的でわかりやすい例を言うのであれば、特典換算方式です。
例えば、今人気の東洋大学は、早い時期から英検2級があれば、当日の試験の代わりに80点換算という試験方式をとっています。
大学入試に影響を受けて、高校入試でも英検の取得級に応じて内進権に加点する自治体や私立高校があります。
つまり、英検は受けたい人が受ける検定から、受けないと不利になる検定へと性格が変わってきていると言えるんです。
以前なら、任意で自分の実力を試すためにチャレンジする試験だったのが、今や進学のために対策して受けざる得ない検定になっているという状況です。
そういう状況に値上げ問題が絡んでくるわけです。
レネッセのGTECと呼ばれるような試験も英語検定試験としてはありますが、多くの大学でほぼ例外なく利用できる試験というのがもう英検一択なんですよ。
だから受験生はこぞって英検を受けるという、そういう資格試験の過剰状態になっているんです。
受けないということが不利になるという圧が働いているというわけなんですね。
受験で英検の重要度が増してきている、外部検定試験の活用が広がっているのが2015年以降のこの10年間なんですよ。
そんな状況で、その10年間に合わせて英検はずっと値上げをしているわけです。
これってどうなんでしょうね。
もちろん英検協会が私服を肥やしているみたいな陰謀論的な話をするつもりは全くないです。
ただ、他のものに比べてそういう状況だからこそ値上げのハードルが低いように見えてしまうのはなんだかモヤモヤするところです。
結果として英検受験料は誰が負担すべきかという根本的な問題が浮上しているんです。
国なのか、高校なのか、試験を強いてくる大学なのか、
まあ誰も自分のお財布は痛めたくないから動いてくれない状況ですよね。
かつては個人の任意受験だったから個人負担が当然でしたが、
受験料上昇の背景と影響
今や受験しないと不利になるというのが明らかになっている環境なのですから、
何か支援や大学側の補助というものも必要なのではないかという議論は何回も出てきていますね。
やっぱり受験指導を自分がしていると、英検を複数回受験する生徒と、
経済的な理由で1回しか受けられない生徒に確実に合格率に差が出ているなあっていうのは感じるところです。
英検はやっぱり資格試験なので何度も受験することで慣れますし、
不合格でも次に行かせることはいっぱいあります。
でも1回9100円の2級を年に3回受けたら27300円です。
兄弟・姉妹がいる家庭ではこの負担は馬鹿にならないですよね。
英検協会もこの批判に対応しようとはしているのは事実です。
例えば本会場の受験料を値上げする一方で、
SCBTの受験料はやや下げてみたりだとか、
あとは巡回場で受験できる、料金が割安な巡回場を拡大はしたりしていますね。
これらは評価できる取り組みということはできますが、
本会場での受験料設定自体は依然として高額なままですし、
巡回場は教員が労働力を提供することで安く受験できるというわけで、
生徒を何とかしてあげたいという教員の足元を見られているようで、
なんか腹立たしいんですよね。
根本的な解決にはなっていません。
この辺りの話は分析でまたお話をしましょう。
ここまでの話を整理しましょう。
英検の受験料は2015年から2025年の10年間で約2倍に上昇しています。
その背景には試験内容の高度化や運営費用の増大がありますが、
値上げ幅が他の試験に比べても相当大きいという事実があります。
受験での活用の重要度が高くなっている今、
この値段の高さは受験生・保護者からは結構な反発があり、
教育の機械均等にもかなり関わってくるのではないかという意見はよく出されています。
一方で、教会側は付加費のコスト要因を挙げて、
教育格差と受験生の状況
何とか理解してほしいというような雰囲気なんですよね。
なので、両者がお互いに歩み寄る気配というのは感じないところです。
個人的には英検が公益財団法人として運営されている以上は、
もうちょっと受験料なんとかならないのかと思いますし、
受験料の使徒や運営コストの内訳を、
もっと詳細に分かりやすく説明してもいいんじゃないかなと思いますね。
あと、入試制度について経済格差で差が出ないように、
そろそろ英語の試験活用というものに関しては、
動いた方がいいんじゃないかなという気はしています。
英検と入試が絡まっている状況というのが、
そもそも不健全なんじゃないかなと思いますが、
それを指導したのかと考えると、
なかなかこの問題は解決しづらいんだろうと思います。
今回の配信はいかがだったでしょうか。
英検の受験料問題、知っていましたか。
もし少しでも興味を持っていただけたのであれば、話した甲斐があります。
10年で2倍という値上げ幅は、家計への負担増だけではなく、
教育格差も広げかねない重要な問題です。
特に英検が大学入試で優遇されるようになっている今、
この問題は受けたい人だけの問題ではなく、
すべての受験生の問題になっています。
受験生の皆さん、保護者の皆さんは、
この現実を知った上でどう対応するか考える必要があります。
学校の先生方も、生徒の経済状況に配慮しながら、
英検受験の指導を行わざる得ないので、かなり難しいことになっています。
そして前回の配信でもお話ししましたが、
英検準一級以上があると、大学入試でかなり有利になるケースが多いのも事実です。
その資格を取るために、年間に数万円の負担が必要となると、
やはり家庭の経済状況によっての機会の差が出るというような、そういう感触はあります。
大学受験をするのは高校生の全体の半分です。
また受験が終わってしまえば、この問題はスルーされやすいわけです。
だから表面化しづらいし、多くの受験生は苦しくても何とか我慢してクリアしてしまうんですよ。
でも、私自身がお金がなくて苦労した受験生だったので、
この受験費用が増えるような構造はスルーしがたい、そういう問題なんです。
リスナーのあなたはどう思いますか?
もし問題だなぁと共感してくださるなら、コメントとともにSNSでシェアしていただけると嬉しいです。
本日のポッドキャストの裏話は、私のVoiceで6時半から配信されています。
今日の配信を聞いてくださった方は、概要欄のリンクからぜひ続きをお聞きください。
ここまで聞いてくださりありがとうございました。
今日の配信を聞いて、何か参考になったことがあればいいねを押してもらえると、番組作成の励みになります。
また、アウトプットの一環として、ぜひお気軽にコメント欄やSNSでハッシュタグデジコクと付けてコメントをよろしくお願いします。
概要欄のメールアドレスやGoogleホームに直接コメントをいただけても嬉しいです。
この番組は毎週月曜日に1回配信されます。
次回の配信もお楽しみに。
ではまた。