二刀流の起源
こんにちは、つねぞうです。
DESIGN REVIEW.FM 第107回目
今日はですね、科学系ポッドキャストの日の企画に参加します。
科学系ポッドキャストの人は、科学系のポッドキャスターたちが共通のテーマでお話ししましょうという企画になっております。
今回、ホストはですね、デンセカさんですね。
デンマークは世界一。
デンセカさんが考えてくれた今月のテーマは二刀流ということで、野球ファンの方なら大谷翔平選手の打つ投げるの二刀流を思い浮かべるかもしれません。
元々の二刀流といえば宮本武蔵ですね。
剣豪として知られる宮本武蔵は2.1流という流派を開きました。
これは文字通り刀を2本同時に使う剣術。
片手に立ち、もう片方に桿を持ち、攻防一体で戦うスタイルです。
当時刀というのは両手で扱うのが普通でした。
両手でというのは一本の刀を両手で握るということですね。
それをあえて片手で持って、相手はもう一本の手でもう一つ刀を持ち、それでさらに攻めると。
つまり一度にできることを増やして有利にするという発想ですね。
この同時に二つをこなすという考え方、実は現代の工作機械にも通じるものがあるんです。
工作機械の世界にも二刀流と呼べそうな機械があります。
それが二刀のマシニングセンターですね。
二刀のマシニングセンター
まず工作機械、マシニングセンターとは何かというところをお話しします。
工作機械とは金属を加工して、ある形状を加工して部品を作るための機械ですね。
その中でもマシニングセンターと呼ばれる工具を回転させて固定されたワーク材料を加工する、それがマシニングセンターです。
このマシニングセンターの中に二刀というマシニングセンターもあるんですね。
二刀流の二刀はですね、二本の刀と書きますけれども、二刀のマシニングセンターは二つの頭と書きます。
通常のマシニングセンターは一つの頭、これを主軸と言うんですけどね。
主軸、主な軸と書いて主軸と言います。
これはですね、工具が、工具をですね、回転させる部分ですね。
その一本の主軸、一本の工具で部品を削っていくのが通常のマシニングセンターなんですけれども、
これに対して二刀マシニングセンターは主軸が2本ですね。
まさに宮本武蔵の二刀流のように、主軸が2本ある工作機械、マシニングセンターというものがあるんです。
同時に2つの部品を加工できる、1台で2台分の働きをするわけですね。
例えば自動車部品のように同じものをたくさん作るとき、通常であれば2台の機械にそれぞれ人やロボットが部品をセットする必要があります。
でもこの二刀のマシニングセンターであれば、1台の中で同時に2つ加工できます。
段取り替えだったり輸送の手間というのが削減できて効率が上がるというわけですね。
ところでこの二刀のマシニングセンター、ヨーロッパではよく見かけますが、日本ではあまり見かけません。
そこはですね、文化の違いというものがあると思いますね。
ヨーロッパの製造業というのは、航空機、医療、自動車など少量多品種、高付加価値の部品を効率よく作ることが求められています。
なので、一台で複数の加工を同時にこなせる多刀の主軸、二刀とかね。
それ以上、主軸の数が3本とか4本とかそういう機械もあるんですよ。
なのでそういう二刀以上の多刀、多い頭の多刀ですね。
多刀の主軸を持った工作機械は、その工場の中をすっきりとまとめられて柔軟性を上げられるので重宝されています。
一方、日本はですね、自動車産業のように量産が得意と言っちゃ得意なので、同じ部品を大量に高精度で安定して作るためにシンプルで信頼性の高い一刀、主軸一本の機械を並べる方が向いています。
製造業の未来
仮にその機械が故障してしまっても、その一部のラインが止まるだけで済みますし、保守もしやすい。
あえて複雑にしてリスクを高めるよりも、シンプルに安定生産という文化があるんですね。
またその工作機械自体の設計哲学というものも少し違います。
ヨーロッパの工作機械は柔軟で多機能指向に対して、日本の工作機械は高精度、高剛性、長時間安定というのを目指しているような違いがありますね。
どちらかが優れているというわけではなくて、用途だったり生産現場の文化がそのまま機械の形に現れているというわけですね。
設計の立場から見ると、この二刀のマシニングセンターというのはすごい面白いですし、私も一度設計してみたいなと思うことはあるんですけども、課題も多いですね。
二刀またはそれ以上の機械、三刀、四刀の多刀の工作機械の場合、一口に多刀と言っても様々な形というか、大きく分けて二つですかね。
二つのパターンがあって、一つはその主軸、複数の主軸が完全に同期して動く場合、
XYZに主軸が動くときに完全に同じ動きをする機械と、それぞれ二刀であれば二刀の主軸が完全に別の動作、
XYZ、自由気ままに動ける、そういう二つの場合があります。
どちらにせよその機械の中に主軸が二つあるということで、一つは精度的な課題がありますね。
工作機械の精度のうち、一つはその主軸先端の位置というか工具ですね、主軸につけた工具先端の位置をしっかりとその加工する前に測定して、
ビシッとね位置を決めるという必要があるんですね。 これが多刀主軸の場合、二本の主軸が別々に動ける機械であればある程度その位置を出しやすい、
位置を合わせやすいんですけども、同じ動作をする場合、一緒に動いてしまう場合は、その二本の主軸の工具先端の位置をビタッと同じに合わせるのが難しい場合がありますね。
そこをどう合わせるかどう調整するかというところにある程度考慮が必要という場合があります。
あとは剛性の確保だったり、 熱の影響、
あと振動の影響、あとは制御ですね。制御の難しさというのもあります。 制御の難しさがあるのは、その二刀の主軸が別々に動く場合ですかね。
2つの主軸が自由気ままに動けるような機械の場合は、 それぞれ個別に制御してあげる必要があるので、ある意味機械2台分のコンピューターが必要だと。
そういう難しさがありますよね。 まあでもそこらへんのその難しさ、課題というのを乗り越えて1台分で2台分、それ以上の価値を出すと。
これはまさにその武蔵の二刀流のように発想を変えることで戦い方を変えていく機械技術の進歩なのかなと思います。
ただ、どうなんでしょうかね。最近ヨーロッパの工作機械メーカーとかですね、日本の工作機械メーカーで積極的にその多刀を出しているメーカーというのはあまり多くない印象はあるんですけどどうでしょうかね。
ヨーロッパのチロンとか ぐらいかなーって私は印象あるんですけども
流れ的にどちらに向かっているのか 多刀なのか一刀なのか
ちょっとわかんないですねこの先はですね。 今日は科学系ポッドキャストの日ということで、テーマ二刀流で宮本武蔵から工作機械の話をしてみました。
歴史上の二刀流は戦い方の幅を広げるための工夫でした。 工作機械の二刀流も生産の効率や柔軟性を高めるための工夫で生み出されたものです。
どちらも一度にできることを増やして新しい価値を生むという点で共通していますね。 機械設計という仕事はこういった発想の積み重ねで進化していきます。
二刀流のような視点の変化がこれからの製造業の未来を開けていくかもしれませんねということで、本日はここまでです。
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