マシニングセンターの基本
こんにちは、つねぞうです。
DESIGN REVIEW FM 第91回目、始めていきましょう。
今回は、【ものづくり系ポッドキャストの日】の企画に参加させていただいています。
【ものづくり系ポッドキャストの日】とは、
ものづくり系製造業系のポッドキャスターたちで、
共通のテーマでお話ししましょうという企画です。
これはですね、【ものづくりのラジオ】の支部長さんがホストをしてくださってまして、
今回のテーマは【駆動】ですね。
力を与えて動かすこと、それが駆動。
機械が動く駆動、行動の動機も駆動、ドリブン。
駆動を軸に、ものづくりの話をしちゃいましょう。
ということで、このデザインリビューFMでは、
あまりひねらずにですね、
マシニングセンターの駆動方式について、
ざっくりとお話ししてみようかなと思います。
まず、マシニングセンターとは何か説明しておきましょう。
マシニングセンターとはですね、工作機械の一種で、
工具を主軸と呼ばれる部分で回転させて、
主に金属、他には樹脂とかセラミックみたいな場合もありますけれども、
そういった固いものをですね、削って形を作っている機械ですね。
ボールネジについて
そんなマシニングセンターの主軸、
または加工するものを取り付けるテーブルという部分があるんですけれども、
そういった部分を正確に動かすことで、
欲しい形に加工していきます。
その正確に動かすため、駆動させるために、
どんな仕組みを使っているのか、
大きく分けると3つの仕組みが使われていることが多いです。
1つ目がボールネジ、
2つ目がリニアモーター、
3つ目がラックピニオンですね。
このボールネジ、リニアモーター、ラックピニオンの3つ、
それぞれ簡単に説明していきたいと思います。
まずボールネジですね。
どんな構造かというと、
ボルトとナットを思い浮かべてもらえれば分かるかなと思うんですけれども、
例えばナットを手に持った状態でボルトをクルクルッと回していくと、
1回転回すたびにボルトの山1つ分進んでいくのがイメージできるでしょうか。
その仕組みを利用しているのがボールネジというものです。
大体その名前を呼ぶときはボルトの部分をネジ、
ナットはナットですね。そのままナットと呼んでいますね。
そしてネジとナットがボルトナットのように金属同士の接触だと、
摩擦力がどうしても大きく効率が悪くなってしまいますので、
その摩擦力を小さくしてスムーズに動かすために、
ボルトとナットの間にボール、高級ですね。
パチンコ玉って言ったら分かりやすいですよね。
そういうボールを入れているのでボールネジと呼ばれています。
このボールネジの設計をするときに、
まず一番最初に決めること。
一番重要な肝となる値はリードですね。
リードをいくつにするかということです。
リードとはさっき説明するのに使ったボルトとナットの話の中の
ボルトの山一つ分、このネジのギザギザがあると思うんですけど、
そのギザギザ一つ分の距離がリードですね。
リードというのはネジを一回転回したときに
ナットが進む長さのことをリードと言います。
一般的な工作機械マシニングセンターなどにおいて
ボールネジを回転させるのはサーボモーターです。
そしてこのボールネジのリードがある意味原則比のような意味を持っていまして、
ナットを早く動かしたい。
それはすなわち主軸だったりテーブルを早く動かしたい場合はリードを大きく取りますし、
速度よりも水力、ナットが軸方向に押す力とか、
あとは位置決めですね。ナットの位置の位置決め精度を重視するときは
リードの値を小さく取ります。
このリードをいくつにするかというところが
機械の性能を決めてしまうと言っても過言ではないでしょう。
なので工作機械マシニングセンターやターニングセンターのカタログを見ても
リードまで書いていないことが多いと思いますね。
そもそもボールネジで動かしているかどうかというところも書いていないかなと思うんですけども、
そこら辺のリードとかは本当に各工作機械メーカーのノウハウの部分となっていると思います。
ただある程度その機械の仕様から推測することはできまして、
まず制限としてサーボモーターの最高回転数があります。
そのモーターのサイズによって違うんですけども、
2000rpm、3000rpm、4000rpmとかそれぐらいのオーダーですね。
2000回転から4000回転、1分間に回りますよと。
それがサーボモーターの最高回転数です。
ここではちょっと計算しやすく3000rpmとしておきましょう。
そして機械の最大送り速度、早送り速度であることが多いと思いますけれども、
これはカタログにありますよね、重要なスペックですのでカタログに書いていると思うんですけども、
これが例えば60mph、1分間に60m進むよと、そういう仕様ですよとしましょう。
ここまでわかればあとは計算するだけですね。
サーボモーターが1分間に3000回転回って、
結果60m、60,000mm進むんですから、60,000÷3000で20ですね。
なのでリードは20かなと推測できるわけですね。
あとはボールネジの設計の肝というか大事なところとして、
ネジとナットの間にさっきボールが入っているよと言いましたけれども、
そこに隙間、ガタガタがあると正確に位置を決めることができません。
ボールネジの回転を止めたのに、ナットの部分でカタカタしてしまうと。
なので隙間がなくなるようにボールに余圧をかけるということをしています。
ちょっとそこの先の話は専門的になりすぎるのでここでは説明しませんけれども、
気になる方はボールネジメーカーのカタログを見てみたり検索してみると出てくるかなと思います。
そしてマシニングセンター、ターニングセンター、複合加工機のほぼ80%から90%ぐらいは
ボールネジで動いていると思ってもらって良いと思います。
リニアモーターの利点
では残りの10%から20%の工作機械、マシニングセンター、ターニングセンターなどは何を使っているのでしょうか。
それが2つ目のリニアモーターですね。
ボールネジではその求める仕様を達成できませんという場合にリニアモーターが選ばれることがあります。
リニアモーターカーとかリニア新幹線というのをイメージしてもらうとちょっと分かりやすいかなと思うんですけれども、
非接触で動力を伝えるモーター、リニアモーターですね。
NS、NSと磁石がバーッと並んでいて、その上をコイルと呼ばれるモーター部分がある隙間を持って動くと。
そういう仕組みとなっています。
リニアモーターを選ぶ理由がいくつかあるんですけれども、
ボールネジでは達成することができない仕様を実現するために選ぶ理由一つ目は高精度の加工のためですね。
さっきボールネジの説明のときにネジとナットの間にボール、高級が入っていて、
そのガタをなくすように余圧をかけているという話をしましたけれども、
やはりそのガタをゼロにするというのはやっぱり難しくてですね、
プラス送り、マイナス送りで切り替わるとき、右に動いていて一回止まって左に逆の左に動くとき、
そのときにですね、どうしてもそのガタの影響で位置がずれてしまいます。
それをバックラッシュとかロストモーションと言います。
ロストモーションはまた異名が違ってくるんですけども、
一方リニアモーターはですね、そのボールネジのような物理的に接触する部分がありませんので、
バックラッシュがないんですね。
なので、高精度な位置決め、動作をすることができるということで、
高精度な部品が加工できるというわけです。
そしてリニアモーターを選ぶ理由2つ目。
速い速度で動かしたいとき。
ボールネジの場合に速く動かしたいときにはリードを大きくすれば良いという話を先にしたんですけども、
リードを大きくしすぎてしまうと軸方向に押す推力が小さくなってしまいますので、
動かしたい主軸とかテーブルの重量を押せなくなってしまうということが起きてしまいます。
また同時にリードを大きくしすぎると位置決めの精度が悪くなってしまうという副作用もありまして、
機械の使用を満たせないということがあります。
一方、リニアモーターはある意味速度は無制限なので、
速く動かしたいときにはリニアモーターが選ばれるということがありますね。
そしてリニアモーターが選ばれる3つ目の理由としてはストロークが長い場合。
ストロークというのは機械を動かす距離ですね。
機械を動かす距離、長さを長くした場合はリニアモーターを選ぶことがあります。
ボールネジの場合、ボールネジのネジをどんどん長くしていく必要が出てくるんですけれども、
ネジが長くなれば長くなるほど、ネジ自身の重さ、自重でネジがたわんでしまいます。
マシニングセンターの駆動方法
そしてそのたわんだ状態でネジを回転させてしまうと、
縄跳びのようにブワンブワン振れてしまうんですね、ボールネジが。
縄跳び現象と一体するんですけれども、
ブワンブワン、ネジが振れてしまって最終的に壊れてしまう、そういうことが起きます。
そのボールネジの縄跳び現象が発生する限界の速度を危険速度と言うんですけれども、
その危険速度よりも小さい回転数で使ってくださいねというのが、
ボールネジの使用書に書いてあったりするんですけれども、
ボールネジが長くなるとその危険速度が下がってくると。
すなわちゆっくりとしか回転させることができなくなる。
ということはですね、ナットを動かす速度というのもゆっくりになってしまうんですね。
長い距離を動かしたいのにゆっくりにしか動かせないと、
どうしてもその位置決めのための時間がかかってしまいます。
そうすると大きい部品を加工するのに時間がかかってしまうと、
困ったなという時にリニアモーターを選ぶということですね。
ボールネジの場合でもその危険速度を回避する方法がありまして、
多くの場合そのボールネジというのはネジを回転させて、
ナット側は回転しない、そういった使い方をしているんですけれども、
それを逆にするんですね。ネジは回らないように固定しておいて、
ナット側を回転させることでナット自身が動くと。
そういうナット回転という使い方もあります。
ただどうしても機構が複雑になってしまうので、
なかなか使われていることは少ないんですね。
ちょっと古い大きい機械とかであるかなと思うんですけれども、
なかなか見ることはないです。
ということで、3つリニアモーターを選ぶ理由をお話ししてきましたが、
リニアモーターでいいじゃん、みんなリニアモーターを使えばいいんじゃないの?
と思ってしまうかもしれませんが、やはりデメリットもありまして、
まずコストが高いんですね。かなり高い。
磁石が高いんでしょうね。レアアースを使っているので、
磁石が高いというところでリニアモーター自体のコストも高い。
あとはどうしてもそのリニアモーターのコイル、
モーターの部分を冷却する必要があります。
なので油を流して冷却するんですけれども、
その油を冷やすためのオイルコントローラーも用意しないといけないと。
これもコストが上がってしまいますね。
モーターのコストが高いというところで、
機械の価格も上がってしまうところで、
本当に必要な機械でしか使えないというわけです。
棒のネジで達成できない仕様をどうにかしたいよ、
でも値段もそんなに上げたくないよというときに
後方に上がってくるのが3つ目のラック&ピニオンですね。
名前の通り、ラックとピニオンで構成される駆動の仕組みとなっています。
ラックという刃が切ってある部品がありまして、
棒状の、なんて言えばイメージできますかね、
まっすぐに伸ばした歯車。
丸い歯車があって、
それをスパッと半分まで切って、
それを一本に伸ばしたような状態。
ノコギリのようにギザギザの刃が並んでいるような部品なんですけれども、
そういうラックという部品とピニオンですね。
ピニオンは歯車そのものですね。
そのラックとピニオンを組み合わせて、
刃を噛み合わせてピニオンを回転させると、
一刃ずつ送っていくと、進んでいくと。
そういう仕組みがラック&ピニオンです。
ラックを動かないベース側に並べて、
動く側にサーボモーターと原則機とピニオンが乗っている場合と、
逆に動かないベース側にピニオンがあって、
動く側にラックを張っている。
そういう両方の場合があります。
リニアモーターのように積極的な冷却が必要ないですし、
ボールネジのように危険速度もありません。
サーボモーターを使うので最高回転数の制約があって、
あとは必要なトルクによって原則比とか、
ピニオンの端数、ピニオンの直径ですね。
その選択とかで出せる速度が決まってくるんですけども、
主にボールネジを使う場合よりも、
速度を出すことができると思います。
デメリットとしては、歯車の構造を使っていますので、
どうしても動きにムラというか、
一歯一歯の変動が出てきてしまうんですね。
それを軽減させるための色々な方法があるんですけれども、
そこはやっぱりノウハウになる部分なので、
ここではお話しできないんですけども、
マシニングセンターの使用ですね。
どういったものを加工するかというところによっては、
十分使える機構となっています。
以上、ボールネジ、リニアモーター、ラックピニオンの
3Dプリンターとベルト駆動
駆動方式を簡単に説明してみました。
今、私の隣でバンブーラボの3Dプリンターが動いているんですけども、
ひょっとしたらちょっと音が聞こえてしまっているかもしれませんが、
この3Dプリンターはベルト駆動を使っていることが多いですね。
固定された部分にモーターがあって、
モーターの先端にプーリーがついていて、
そこにベルトがかび合っていると。
モーターを回すとそのベルトが動く。
先にヘッドとかテーブルがついていて、
そのベルトの動きに合わせて動くと。
そういう構造をしているのが多いと思います。
工作機械、マシニングセンターの主要な軸で
ベルト駆動が使われているということは、
ちょっとないかなと思いますね。
見たことありませんね。
補給類、周りの構造、
例えばATCマガジン、
ATCマガジンというのは工具をたくさん収納しておく部分なんですけども、
そういうところの機構では使われているのは見たことがあります。
ということで、今回ですね、
ものづくり系ポッドキャストの日、
テーマ駆動に合わせてひねらずにですね、
マシニングセンターの駆動方式について話してみました。
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