2025-10-15 13:22

113:「NSKが軸受のカーボンフットプリントを公表」の何が凄いのか

「NSKが軸受のカーボンフットプリントを公表」とニュースが8月に出て、一部業界に激震が走りました(大袈裟?)


これの何がすごいのか?簡単に説明してみます


■参考URL

NSKが「業界初」となる軸受のカーボンフットプリント報告書を公表(MONOist)

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/spv/2508/14/news018.html


■プロフィール

つねぞう

ものづくりが好き。工作機械メーカーで設計をしている。猫を飼っている。


■文字起こしLISTEN

下記で文字起こしが読めます。

https://listen.style/p/designreviewfm


■番組へのお便りはお気軽にフォームよりお送り下さい!

https://forms.gle/yi27jVHA2kBi7Vpj6


Podcast アプリなどでレビューしてくれると大変励みになります!

Xアカウント: @tsunezo_works

■番組内で「OtoLogic」様の素材を使用しています


サマリー

NSKは業界初の軸受けに関するカーボンフットプリント報告書を公表しています。この報告書では、製品のライフサイクルにおけるCO2排出量が明示され、環境価値の明確化が図られています。NSKが鉱山設備向けの特殊な軸受けのカーボンフットプリントを公表することで、業界全体のカーボンフットプリントの透明性向上が期待されています。また、今後の部品選定において、カーボンフットプリントが重要な要素になる可能性があります。

NSKのカーボンフットプリント公表
こんにちは、つねぞうです。
デザイン・リビューFM第113回目。
このデザイン・リビューFMは、世の中の様々なもの、主に工業製品について、私の主観で勝手にデザイン・リビューをしていこうという番組です。
8月にこんなニュースがありました。
NSKが業界初となる軸受けのカーボンフットプリント報告書を公表。
日本製工NSKは、2025年7月28日、本年3月に開発した鉱山設備向けの軸受けのカーボンフットプリントCFP自主算定値をカーボンフットプリント算定報告書内で7月28日に公表したと発表した。
同社によれば、同社によれば、軸受けのカーボンフットプリント報告書公表としては業界初であるというニュースですね。
もうちょっと中身を読んでみますと、
NSKは、鉱山設備の修繕コスト低減やCO2排出量削減を進めており、本年3月分解できるようにすることで、業界で初めてリコンディショニング・修復による再利用に対応した高負荷容量の大型塩水軌の軸受けを開発した。
今回発表したカーボンフットプリント算定報告書では、同製品のライフサイクル全体でのCO2排出量の算定項目を明示し、信頼性の高い情報発信を目指した。
同報告書は環境省によるカーボンフットプリント表示ガイドのカーボンフットプリント表示の基本原則に沿って開示していると。
国内では、2025年2月に環境省がカーボンフットプリント表示ガイドを公表するなど、カーボンフットプリント開示への機運が高まっていると。
カーボンフットプリントにて製品の環境価値を明確化することで、新たな市場ニーズの開拓に寄与する可能性があるということで、ついに出たかと。
カーボンフットプリントの概要
ようやくこういう取り組みが出てきたかという感じですけれども、そもそもカーボンフットプリントとは何かという方もいるんじゃないかなと思いますので、ちょっとそこを簡単に説明しようと思うんですけども、
カーボンフットプリントというものはですね、製品だったりサービスの原材料調達から使用、廃棄、リサイクルに至るまでの過程ですね。
製品のライフサイクル、製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガス、グリーンハウスガスですね。
GHGと書いてありますけれども、この温室効果ガスの排出量を温室効果をもとにCO2の排出量に換算した値を示します。
これによってですね、どの製品、どのサービスのCO2排出量が多くて、どれが少ないかという見える化が可能になると。
CO2排出量の多さが見えることで消費者はですね、よりCO2排出量の少ない製品サービスを選ぶことができるため脱炭素社会の実現に寄与しますというものですね。
その製品がどれだけCO2を出してますかというのがカーボンフットプリントということです。
例えば工作機械の製造工程でどのくらいCO2を排出しているかを計算しようとするとしましょう。
そのためにはその工作機械の組み立てだったり、その中で使っている部品を加工するために必要なエネルギーに加えて、それぞれその使っている部品の製造で排出されたCO2を計算して、それを合計してあげる必要があると。
その部品の材料になる金属、いものとかですね、アルミ、いろんな金属はですね、海外からの輸入に頼っている部分もありますので、その排出の計算で考える範囲というのは日本国内だけではないです。
さらにその工作機械を使うことを含めて環境への影響を考えたいのであれば、その工作機械で使う、必要な電気の量とか、あとエアですね、工作機械につなぐものといえば電気とエアですので、そのエアの量というものをはっきりと明示するとか、
あとその機械を実際に使っている時間、加工する時間というのを条件として設定することになります。こういったそのカーボンフットプリントを原材料の調達から排気リサイクルに至るライフサイクル全体を考えて評価することをライフサイクルアセスメントと言いますね。
もうちょっと詳しく説明してみると、原材料の調達、生産、そして流通販売、そして使用維持管理、最後に排気リサイクルというそれぞれの工程、ライフサイクルがあるんですけども、原材料の調達の中でも原材料を、例えば鉱山とかで鉄鉱石だったり、そういったものを採掘するときのCO2排出だったり、
それを運ぶとき、輸送するときのCO2排出、それを精錬して金属にするとき、そしてできた金属の製品をまた輸送するときというのはそれぞれの各工程を全て見ていかないといけないと。
そのライフサイクルで出すCO2を大きく3つに分けることができて、それをスコープ1、スコープ2、スコープ3と言うんですけれども、スコープ1っていうのは生産ですね、ライフサイクルの中の生産、実際にそれを作るとき、生産で直接出すCO2のことをスコープ1と言います。
これは科学的な工程で出てしまうCO2だったり、生産するにあたって自社の中で石炭を燃やして電気を作るとか熱を作るとかということを直接やっているのであれば、そこの石炭を燃やすときに出るCO2ですね。これがスコープ1。
スコープ2はこれも生産のときに間接的に出すCO2。例えば他社から供給された電気だったり蒸気、熱ですね。こういったものを使うことで間接的に、その供給されるもとでは電気を作るためにCO2を出していたり、蒸気を作るためにCO2を出していますので、そういったものを使うことで間接的に出すCO2。これがスコープ2ですね。
スコープ3というのは生産以外のライフサイクル、原料調達から生産を飛ばして、それの流通販売、そして使用維持管理、最後の廃棄、リサイクルがスコープ3と呼んでいます。
この製品のカーボンフットプリントを計算するためには、スコープ1、スコープ2、スコープ3、すべてのデータが必要になるんですけども、スコープ1とスコープ2というのは自社の中でやっていることなので比較的計算しやすいんですね。値が出しやすいんです。
ただ、スコープ3というのは自社でやっていない部分ですので、そこのサプライチェーンからデータをもらう必要があるんですね。なので、結構データをくれと言っても、そんな値知らないよ、わからないよということが多くて、実際そのスコープ3のデータを計算するというのが結構難しい状況になっています。
そこで先ほどのニュースに戻るんですけども、NSKのニュースに戻るんですけども、軸受けというのは産業の米と呼ばれていますようにたくさんの機械に使われています。例えば自動車では1台あたり100個から150個の軸受けが使われているそうです。
私たちが作っている、私の会社で作っている工作機械にもですね、たくさん軸受けが使われていますね。主軸を回転する部分ですね、主軸を回す部分、あとはボールネジ、送り軸を動かすボールネジを支える部分、そしてそのボールネジを回すモーターにもね、サーボーモーターの中にも軸受けというのが入っています。
NSKのカーボンフットプリント公表
あとはATC、オートツールチェンジャーですね、工具を交換するような装置だったりAPCというパレットを交換する装置などの、やっぱりそういった部分には回る部分、回転する部分というのが必ずといっていることがありますので、そういった回転する部分には必ず軸受けが入っています。合計するとどれくらいでしょうね。
ざっくり数えると、大小合わせて50個以上は多分使っていると思いますね。自動車よりは少ないかもしれないですが、50個以上はその軸受け、工作機械の中でも使っていると思います。なのでその軸受けのカーボンフットプリントが分かれば、その部分については計算できるわけですね。
今回のニュースになっているのは、鉱山設備で使われている特殊な軸受けのカーボンフットプリントを公表していましたよという話で、普段我々がその工作機械で使っている比較的一般的な軸受けのカーボンフットプリントはまだ公表されていないんですね。ただ近いうちに出てきてくれるんじゃないかなと、近いうちに公表してくれるんじゃないかなと期待しています。
それに続いて他の購入してくる部品についても、各メーカーさんがカーボンフットプリントをカタログに載せるようになれば、今まで部品を選定するときに性能、コスト、納期、QCDで選んでいたところにカーボンフットプリントも加わるようになるんじゃないかという話になるんですね。
ここで問題になるのが、カタログに書いている値というのはリアルタイムで更新されないことですね。あくまで計算値というものになってしまうと。今この目の前にあるベアリング、目の前にある部品のカーボンフットプリントはいくらなのかというのは分からないわけです。
部品を作っているメーカーさんが努力をして生産中に出すカーボンフットプリントCO2の量を減らしたとしてもそれがすぐに反映されないんですね。逆もしかりで何かの理由でCO2を出す量が増えてしまってもそれも反映されないという問題があります。
そこに関してはブロックチェーンの技術を使ってその部品1個1個それぞれのカーボンフットプリントの値を管理できないかという取り組みがいろんなところで考えられているようですね。
あと違う問題としてそのカーボンフットプリントの算出方法がメーカーによって異なるということもあって結構自分たちの自分たちに有利な計算をしたりということも今現状あるそうで先ほど話したようにそのカタログに書いてしまったときにそれをそのメーカーAとメーカーBとメーカーCがあったとしてそれぞれ値が違ったとしてそれを比べるときに
Aの方が一番カーボンフットプリント少ないからAを選ぼうという風にここになっていくとするとその書いている値が公平に比べられるものであればいいんですけどその算出方法が間違っちゃうとカタログの値は小さいんだけど現実同じ方法で計算してみると実はBの方が少なかったとかそういうことが発生してしまうわけですね。
なのでそのカーボンフットプリントの算出方法も公平になるようにしっかりとねそのこういうふうに計算してくださいねというふうな取り組みそれを決めましょうという取り組みも今行われています。
そういう状況ですのでそのまだ工作機械1台あたりのカーボンフットプリントはいくつですよと言えない段階ですねそういうふうに公表しているカタログに書いているメーカーはまだいないと思います。
ただこういった問題が解決していて各部品のメーカーでもそれぞれ一個一個ねカーボンフットプリントの値がわかっていて自社の中であればスコープ1スコープ2であれば出せますので近い将来そういったカタログにね機械の性能仕様の一つとしてカーボンフットプリントの値も書かれる時代が来るんじゃないかなと思っています。
ということで今回ですねNSKが時空系のカーボンフットプリントを公表の何がすごいのかという話をしてみました。
このポッドキャストへの質問などお便りは概要欄のGoogleフォームからお待ちしております。
またXでハッシュタグデザレーFMをつけてポストしていただけると探しに行けます。
そしてこのポッドキャストがいいなと思ったら各ポッドキャストアプリでのフォローそして高評価つけていただけると今後の励みになりますのでぜひぜひお願いいたします。
ではお疲れ様でした。
ご安全に。
13:22

コメント

スクロール