2026-01-04 13:49

125:削らない切削「ケミカルミーリング」ってなんだ?

工具を使わない、削らない切削「ケミカルミーリング」ってなんだ?


■参考URL

ケミカルミーリングから高精度機械加工への移行(PDF直リンク)

https://www.mhi.com/jp/technology/review/pdf/624/624060.pdf


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つねぞう

ものづくりが好き。工作機械メーカーで設計をしている。猫を飼っている。


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サマリー

今回のエピソードでは、ケミカルミーリング(化学的溶削)について解説し、金属を削る新たな方法としての利点を探ります。この技術は、機械加工では実現できない極薄処理や金属へのストレスを軽減するメリットを持っています。ケミカルミリングは、複雑な形状の金属を薬品で均一に削る技術ですが、環境への影響や作業の過酷さが問題視されています。技術の進歩により、薬品を使わないクリーンな加工方法への移行が進んでいることが紹介されます。

ケミカルミーリングの基本
こんにちは、つねぞうです。
デザイン・リビューFM第125回目。
このデザイン・リビューFMは、世の中の様々なもの、主に工業製品について、私の主観で勝手にデザイン・リビューをしていこうという番組です。
皆さん、明けましておめでとうございます。
2026年一発目の放送となります。
今回ですね、新春、新年にふさわしい話題を持ってきました。
題しまして、「削らない切削、ケミカルミーリングってなんだ?」ということで、何が新春にふさわしいかですね、配信を聞いていただければわかるかなと思います。
では早速行ってみましょう。
皆さん、空を見上げて飛んでいるジャンボジェット機を想像してみてください。
あれは何トンぐらいあると思いますか?
実は一番大きなクラスだと燃料や荷物を合わせて300トンから400トン近くになるんですね。
像でいうとだいたい60トンから80トン分ぐらいですね。
像で言ってイメージできるかわからないんですけど、それぐらいだそうです。
そんな巨大な鉄の塊、正確にはアルミニウム合金の塊なんですけども、なぜあんなにスイスイと空を飛べるのか。
もちろんエンジンが、ジェットエンジンがパワフルであるというのもあるんですけども、実は機体そのものがですね、私たちが想像する以上に極限まで軽量化、ダイエットされているからなんですね。
今日のテーマはそのダイエットを支える技術、その名もケミカルミーリングです。
日本語で言うと化学的溶削、化学的というのは化学ですね、化学的溶削というのは溶かして削る。
ドリルもカッターも使わずに金属を溶かして削るという、ちょっと馴染みのない不思議な切削の方法です。
今日はそんなお話をしていきます。
まずケミカルミーリングってそもそもなんだということで、今簡単にお話ししたんですけども、日本語では化学的溶削、化学的溶削、溶かして削る。
溶解のように切削の削と溶削という名前がついていますけども、簡単に言うとですね、薬品のプールに金属をつけて溶かして薄くする、そういう技術です。
普通金属を削ると言ったらどうしますかね。
技術の時間に金属だったり木材を削ったことがあるかなと思うんですけども、ヤスリを使ってゴリゴリと削ってみたり。
実際の工業製品というのは工場でマシニングセンターや旋盤という工作機械が、マシニングセンターであれば工具を刃物を回転させてバリバリと金属を削っていくんですね。
これが機械による切削です。
でもケミカルミーリングはこういった刃物を一切使わないんですね。
イメージとしては理科の実験で塩酸にアルミニウムを入れたら泡をブクブクと出して溶けちゃったと。
あの現象を究極まで工学的にコントロールしてものづくりに応用したという技術です。
このケミカルミーリングが誕生したのは1953年、アメリカの航空機メーカーノースアメリカン航空という会社が考案したそうです。
刃物で削ることが難しいならば溶かしちゃえばいいじゃないと。
ちょっと大胆な発想から生まれたんですね。
日本では略してケミミルなんて呼ばれたりもするそうです。
可愛いですね。ケミミル。
実際どういった手順でケミカルミーリングが行われていくのか、そのプロセスをちょっと説明していきましょう。
まずはステップ1。クリーニング。
まずは金属の板をピカピカに洗います。
油汚れだったり不純物みたいなものがついているとそこだけ薬品の反応が変わってしまってムラができちゃうんですね。
なのでまずクリーニングをします。
ケミカルミーリングのメリット
そしてステップ2。バスキング。
ここがポイントですね。削りたくない部分にバスキングをします。
バスク剤という薬品に強いゴムだったりビニールのような液体をこの部品全体に塗ってみたり、ドボーンとドブ付けにしてコーティングをします。
これで削りたい、削りたいというか溶かしたい金属に全身タイツを被せたような、ぐるっと覆ったような状態にします。
そしてステップ3。スクライビング。ここが一番技術がいるところですね。
この金属全体を覆ったゴムに鋭いナイフのようなもので切り込みを入れていきます。
そして削りたい部分、溶かしたい部分だけピリピリと剥がしちゃうんですね。
剥がしたところは金属の肌が剥き出しになります。
そこだけが後で薬品に溶かされるわけですね。
お祭りの型抜きだったり、シールを台紙から剥がすような、そういうイメージですね。
ステップ4。エッチングということで、いよいよここがメインイベントとなります。
巨大な薬品のプールですね。エッチング層にドボンと金属の塊をつけるんですね。
アルミニウムの場合は、強アルカリ性の水酸化ナトリウム溶液などが使われるそうです。
すると、剥き出しになった部分だけがシュワシュワと溶けるんですね。
溶けていくスピードというのは、1分間に0.02ミリ、1分間に20ミクロンですね。
とてもスピードが遅いですね。
そのくらい超スローペースで溶けていきます。
どれくらい深く削るかというのは、この1分間に20ミクロン。
削るというのが分かっていますので、ストップウォッチで時間を測るんですね。
そのエッチング層につけておく時間で、そこを判断して決めます。
最後、仕上げ。最後に残ったゴムの凍ったものを全部剥がして綺麗に洗えば完成と。
どうでしょう。すごく原始的なようで、実はすごく理にかなった方法だとは思えませんか。
じゃあそもそもなぜ溶かすのかと。
最初からそのマシニングセンターだったり、そういう工作機械で削ればいいじゃないかと。
なんでそんな面倒なことをするんだろうという疑問があると思うんですけども、
そこにはね、やっぱりそのような工法を選ぶ理由、メリットというものがあるんですね。
ケビカルミリングには機械では達成できない、真似できない得意技というものがあります。
メリット1、究極の薄さが作れると。
飛行機のボディに使われるアルミの板というのは最初は6ミリぐらい厚さがあったりするんですけども、
ケミカルミリングを使うと、なんと0.6ミリ、つまり10分の1の厚さぐらいまで均一に削り落とすことができます。
この0.6ミリというような薄さまで工作機械で削ろうとすると、その板が薄すぎますので、
刃物の力に負けてしまってベコベコにへこんでしまったり、破れちゃったりするんですね。
一方、薬品であれば優しく撫でるように溶かしますので、紙のように薄くてもそういった破れたりすることはないんですね。
メリット2、金属がストレスを感じないと。
これ、ものづくりでとても大事なことなんですけども、
刃物で加工すると金属の表面にストレスが残るんですね。
これを残留応力と言います。
このストレスのせいで、金属を削った後に、工具で削った後に板がぐにゃっと反ってしまったりということが起きてしまいます。
でも、ケミカルミリングを使えば、化学反応で表面の原子を一つ一つ剥がしていくようなものなので、金属に全くストレスがかかりません。
なので、その後に残留応力というものが残らないんですね。
メリット3、複雑なカーブも一気にOK。
ということで、飛行機の胴体ってきれいに丸みを帯びていますよね。
ケミカルミリングの利点と欠点
ああいう大きなカーブした板を機械で削るというのは結構大変なんですよね、実は。
でも、ケミカルミリングであれば、プールの薬品が表面全体に一気に触れますので、
どんな複雑な形をしていても、全部の面を同時に同じ深さで削ることができます。
今までケミカルミリングの良いところというのを紹介してみたんですけども、
反対に悪いところ、弱点というのも当然あります。
1番は横方向にも溶けちゃうことですね。
薬品というのは、まんべんなく金属に触れていますので、
マスキングをしたところから下に溶けるだけじゃなくて、
マスキングの下側にも入り込んじゃうんですね。
横方向にもじわじわと溶かしていきます。
これをサイドエッジと呼ぶそうです。
なので、それを加味して、マスキングするときにはそれを加味して、
これくらい横に溶けるだろうなと計算して、
表面のゴムの膜を切り取る大きさというものを調整しているんですね。
それは最初から考慮しておけばいいんですけども、
もっと大きな問題があって、これは環境への影響です。
このケミカルミリングを行った後の薬品というのは、
大量のアルミが溶け込んだドロドロの液体になります。
なので、それをそのまま捨てるわけには当然いけませんね。
大きな処理施設で毒性をなくして、再利用したり、廃棄物として処理したりと。
これには実際に削る作業、ケミカルミリングをする作業よりも、
大きなお金と手間がかかってしまうそうです。
また、その作業環境も過酷なんですね。
強力な薬品を使うので、人側もちゃんと防護服を着て、
換気を徹底するなどして、安全に気をつけながら作業をする必要もあります。
というところで、そういったビリット・デミリットがある中で、
クリーンな加工技術の進化
実際、こういった作業を行っている会社はいろいろ考えるわけですよ。
このままケミカルミリングを使い続けていいものか、というところで、
今やっぱり脱ケミカルミリングというところが進んでいるそうです。
なぜかというと、私たちが作っているマシニングセンターは進化してきたからですね。
何十年も前から比べると、だいぶ進化してきまして、
超高速で回転する精度の良い主軸ができてきたり、
また、コンピューターによる精密な制御、NC化されたマシニングセンターが誕生してきて、
これによって、昔であれば薬品でしかできなかった薄くて大きな部品というのが、
刃物でバリバリ、しかも環境をそこまで汚さずに加工できるようになってきたんですね。
例えば、日本の三菱重工などでも、最新の飛行機の部品作りで、
このクリーンな機械加工への切り替えをどんどん進めています。
薬品を使わないことで、キミカルミリングをやめることで、
環境にも優しく、そして加工するスピードも速くなると、
技術の進歩によってそういったものが実現できているそうです。
キミカルミリングというちょっとマニアックな技術について、今日はお話ししてみました。
普段私たちが何気なく乗っている飛行機だったり、
後、宇宙に行くロケットとかに使われているかなと思うんですけども、
そういった飛行機の羽の一枚一枚、胴体の一枚一枚というのは、
こういった薬品のプールに使って、
ミクロン単位でダイエットしてきた金属たちの駆動が詰まっていますと。
ただ、今は環境のために、よりクリーンな技術へと主役の座を譲ろうとしています。
どうすればもっと軽くできるか、どうすればもっと安全に飛ばせるかという
技術者たちの情熱によって、最新技術に受け継がれていくということですね。
次にその空港などで飛行機を見たときは、
あの薄い飛行機の裏側には、かつて薬品で溶かして薄くした、
そういった歴史があるんだなと思い出してもらえれば嬉しいです。
ということで、今日はですね、
ケミカルミリングの話をしてみました。
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