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2025-12-19 05:07

【2040年問題対策】医療機関の業務DX化に200億円―厚労省が示す2つの方向性

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2040年に向けて生産年齢人口が減少し、医療従事者の確保がますます困難になることが見込まれています。この課題に対応するため、厚生労働省は第207回社会保障審議会医療保険部会(令和7年12月12日開催)において、「医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性について(案)」を提示しました。本稿では、この方向性案の概要を解説します。

厚労省が示した方向性は、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」の2つの柱で構成されています。DX化の推進では、令和7年度補正予算案で200億円を計上し、業務効率化に取り組む医療機関への支援を拡大するとともに、医療法および健康保険法上の責務として業務効率化への取組を明確化します。タスク・シフト/シェアの推進等では、業務分担の見直しや医療関係職種の養成体制確保に向けた施策を展開します。

背景:2040年に向けた医療従事者確保の課題

医療機関の業務効率化が急務となっている背景には、深刻な人口構造の変化があります。2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える一方、生産年齢人口(15歳~64歳)はさらに減少していきます。この人口減少のスピードは地域によって大きく異なるため、従来と同じ医療提供が難しくなる地域が早晩出てくると予測されています。

政府はこの課題に対応するため、本年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」を策定しました。同計画では、医療分野を含む12業種について生産性向上の必要性が高いとされ、「省力化投資促進プラン(医療分野)」が策定されました。今回の方向性案は、この省力化投資促進プランを具体化するものです。

方向性1:医療機関の業務のDX化の推進

DX化の推進は、国・自治体による支援等と、医療機関の責務の明確化の2つの観点から構成されています。なお、全ての医療機関が直ちにDX化に対応できるわけではないことを考慮し、拙速な進め方とならないよう、現場の理解を得ながら丁寧に進めることが明記されています。

国・自治体による支援等

補助金支援の拡充が、DX化推進の中核となる施策です。業務のDX化に取り組む医療機関を幅広く支援するため、令和7年度補正予算案において200億円を計上しました。この予算は、従来の試行的・先進的な取組への支援を超え、多くの医療機関がDX化に取り組めるよう支援の裾野を広げることを目的としています。業務のDX化による効果の発現には一定の期間を要するため、継続的な支援の在り方についても検討を進めます。

エビデンスの蓄積と診療報酬の見直しも重要な施策として位置づけられています。DX化を推進するにあたり、統一的な基準により労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等に関するデータを医療機関から収集・分析します。このデータ収集においては、医療機関の負担が過度にならないよう簡便な方法を検討するとともに、医療情報の標準化に留意しながら進めます。こうしたエビデンスの蓄積を行いながら、医療の質や安全の確保と同時に持続可能な医療提供体制を維持していく観点から、業務の効率化を図る場合における診療報酬上求める基準の柔軟化を検討します。

機器・サービスの透明性確保と技術開発の推進も図られます。医療機関が業務効率化に資する機器やサービスの価格や機能、効果を透明性をもって把握できる仕組みを構築します。また、業務効率化に資する新たな技術開発等を推進します。

医療機関への伴走支援体制も強化されます。都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化を図り、従来の労務管理等の支援に加え、業務効率化の助言・指導等も行うことを明確化します。地域医療介護総合確保基金を活用した支援をさらに促進するとともに、国から都道府県への技術的助言も行います。

公的認定制度の創設も注目すべき施策です。業務効率化・職場環境改善に積極的に取り組む病院を公的に認定し、対外的に発信できる仕組みを地域医療介護総合確保法に創設します。この認定を受けることで、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における人材確保面で有利になることが期待されています。認定の仕組みは透明性があり分かりやすいものとし、医療従事者の視点を入れることも検討されます。

医療機関の責務の明確化

法的な責務の明確化も、DX化推進における重要な施策です。

医療法上の責務として、業務効率化への取組が新たに位置づけられます。現行の医療法では、病院又は診療所の管理者は医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっています。今後は、これらに加え、業務効率化にも取り組むよう努める旨を明確化します。

健康保険法上の責務も併せて明確化されます。保険医療機関の責務として、業務効率化・勤務環境改善に取り組むよう努める旨を規定します。この法改正により、医療機関における業務効率化の取組が制度的に担保されることになります。

方向性2:タスク・シフト/シェアの推進等と養成体制の確保

DX化の推進と併せて、医療従事者の業務分担の見直しと養成体制の確保も進められます。

タスク・シフト/シェアの取組については、医療機関がDX化に取り組む際に、併せて実施することが求められます。単にシステムを導入するだけでなく、業務プロセス自体の見直しを進めることで、DX化の効果を最大化することが期待されています。

医療関係職種の養成体制の確保も重要な課題です。養成校の定員充足率は近年低下傾向にあり、地域差も大きい状況にあります。地域において医療関係職種を安定的に確保できるよう、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用など、地域の実情に応じた養成体制の確保に向けた検討を進めます。

養成課程の柔軟化も検討されています。医療関係職種の各資格間で可能となっている既修単位の履修免除の活用や、修業年限の柔軟化など、若者・社会人にとって参入しやすい養成課程への見直しを進めます。キャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援、セカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関するリカレント教育の在り方についても具体的な検討を進めます。

歯科分野における検討も進められています。歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲や、歯科技工の場所の在り方については、現在進めているそれぞれの業務のあり方等に関する検討会において具体的に検討を進めることとしています。

まとめ

厚労省が示した「医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性について(案)」は、2040年に向けた医療従事者確保の課題に対応するため、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」の2つの柱で構成されています。DX化の推進では、200億円の補助金支援、診療報酬上の基準の柔軟化検討、公的認定制度の創設、医療法・健康保険法上の責務の明確化など、具体的な施策が盛り込まれました。今後の審議会での議論を経て、これらの施策が具体化されていくことが見込まれます。医療機関の経営者・管理者は、この方向性を踏まえ、自院の業務効率化・職場環境改善に向けた取組を計画的に進めていくことが求められます。



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サマリー

2040年問題に対する対策として、日本の医療現場で業務効率化が進んでいます。厚生労働省は、200億円の予算を使い、テクノロジーと人の働き方の両面から新しい医療体制を構築しようとしています。

2040年問題への挑戦
さて、日本の医療が2040年に大きな壁にぶつかるという話は、あなたも聞いたことがあるかもしれないです。
高齢者人口がピークを迎える一方で、働き手がどんどん減っていく。 このままだと、あなたや家族が必要な時に、医療を受けられなくなるかもしれない。
そうですね。 今回はですね、この危機に政府がどう立ち向かおうとしているのか、その戦略の革新に迫っていきます。
手元にあるのは厚生労働省の資料で、医療機関の業務効率化に関するプランです。
これ、壮大な賭けですよね。テクノロジーと人、この2つで未来を救えるのか、その中身を一緒に解き明かしていきましょう。
これはもう、未来予測の話ではないんですよね。 政府が掲げる省力化投資促進プランを、医療現場に落とし込んだ具体的なアクションプランですから。
まさに今動いている話だと。 そうです。まさに今、日本の医療の未来を左右する設計図が描かれているというところですね。
まず驚いたのが、いきなり200億円という予算です。 これは医療のDX化、つまりデジタル技術で現場を変えようというものですよね。
はい。 でも具体的に何が変わるんでしょう。資料にある公的認定制度の創設。
これは一体何なんですか。国のお墨付きをもらうみたいな。 面白い点に気づきましたね。これ非常に巧みな否定なんです。
この認定は単に効率化してますよっていう証明じゃないんです。 国がこの病院は働きやすい職場ですよと保証してくれるようなものなんですよ。
なるほど。 そうなると人材獲得競争で圧倒的に有利になる。つまりこれは効率化を餌にしてですね、
医療業界の慢性的な人手不足っていう根本問題にメスを入れる戦略なんです。 人を集めるためのインセンティブですか。
あなたにとっても将来病院を選ぶときに、あそこの病院はスタッフを大切にしてるらしいっていう新しい基準になるかもしれません。
なるほど。でも資料を読み進めるともっと踏み込んでますよね。 医療法を改正して業務効率化を病院の責務って書いてある。
これかなり強い言葉じゃ。 強いですよね。でもそれだけ政府が本気だっていうことの裏返しでもあるんです。
本当に言いますと。 もうお願いベースでは間に合わないっていう危機感の現れですね。法的な責務とすることで経営層にこれはコストじゃなくて
病院が生き残るための必須投資なんだと認識させる。 あと戻りできないようにシステムとして変革を強制するという強い意思を感じます。
なるほど。でも最新のシステムを入れたところでそれを使う人間がいなければ意味がないですよね。
テクノロジーだけではやっぱり限界があると思うんですが。 まっさにその通りです。だからこのプランのもう一つの柱が人の問題なんです。
業務効率化への取り組み
そこで出てくるのがタスクシフトシェアという考え方ですね。 これまでの仕事のやり方をもう根本から見直そうとそういう動きです。
タスクシフトつまり業務の分担を見直すと。 それって例えばこれまでお医者さんしかできなかったことを看護師さんが担うみたいなことですか。
そういうことです。 だとしたらあなたや私が受ける医療の質に何か影響はないんでしょうか。
そうそこが重要なポイントです。 もちろん安全性と質が担保される範囲でというのが大前提になります。
まあそれはそうですよね。 DXで業務が効率化されれば専門職が本来やるべきより高度な業務に集中できる時間が生まれるわけです。
はい。 その上で誰がどの業務を担うのが最も効率的でかつ患者さんのためになるのかを再設計するわけです。
ただそもそも医療人材を育てる学校が定員割れしているという問題もありますよね。
もっと根深い問題ですね。 だからこそ社会人が学びやすいようにしたり遠隔授業を認めたりして人材の入り口そのものを広げようとしているんです。
わかりました。つまり200億円の予算と法改正でテクノロジーというエンジンを回して同時にタスクシフトや人材育成で人の働き方そのものを変革する。
この2つの車輪で2040年問題という壁を乗り越えようとこれが国の戦略なんですね。
そういうことです。そして面白いのはこれが日本の医療だけの話ではないっていう点なんです。
人口減少社会でどうやって質の高い社会インフラを維持していくか。これはもう世界中の国が直面する課題ですから。
確かに。
もし日本がこの効率化と人材確保の両立に成功すればそれは世界にとっての一つのモデルケースになり得ます。
今回のプランではDX化で労働時間や医療の質がどう変わったかデータを集めて分析するそうです。
そこで最後にあなたにも考えてみてほしいのですが、こうして業務効率を数字で追い求める中で数字には決して現れない患者に寄り添う時間とか
ケアの人間的な温かみといった価値を私たちはどうすれば守り評価していけるんでしょうか。
05:07

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