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2025-12-11 05:54

令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説|4つの視点と重点課題

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令和7年12月8日、第122回社会保障審議会医療部会において、令和8年度診療報酬改定の基本方針(案)が示されました。今回の改定は、持続的な物価高騰と賃金上昇が続く経済環境のもと、医療機関の経営安定と医療従事者の処遇改善が喫緊の課題となっています。本稿では、この基本方針の全体像と4つの改定視点について解説します。

今回の基本方針の要点は次の4点です。第一に、物価・賃金・人手不足への対応が「重点課題」に位置づけられました。第二に、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進が掲げられています。第三に、医療DXやイノベーションによる安心・安全で質の高い医療の実現が示されました。第四に、効率化・適正化を通じた医療保険制度の持続可能性向上が求められています。

改定に当たっての基本認識

今回の基本方針では、改定の前提となる4つの基本認識が示されています。これらの認識は、日本の医療制度が直面する構造的課題を反映しています。

第一の認識は、物価・賃金上昇と人材確保の課題です。日本経済は30年続いたコストカット型経済から脱却し、新たなステージに移行しつつあります。しかし医療分野は公定価格によるサービス提供が大宗を占めるため、経済情勢の変化に機動的な対応が難しい状況にあります。この結果、医療機関では全産業の賃上げ水準から乖離が生じ、人材確保が困難になっています。

第二の認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けては、生産年齢人口が減少する一方、85歳以上人口は増加していきます。この人口構造の変化に対応するため、限りある医療資源を最適化しながら、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化する必要があります。

第三の認識は、安心・安全で質の高い医療の実現です。医療技術の進歩や高度化を国民に還元するとともに、ドラッグ/デバイス・ラグ/ロスへの対応が求められています。デジタル化された医療情報の利活用やAI・ICT等の活用による医療DXの推進も重要な課題です。

第四の認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保です。国民皆保険を堅持し次世代に継承するためには、経済・財政との調和を図りつつ、現役世代の保険料負担の抑制努力が必要です。

重点課題:物価・賃金・人手不足への対応

今回の改定では、「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が重点課題に位置づけられました。この重点課題は、医療機関の経営安定と人材確保という2つの柱で構成されています。

医療機関の経営状況は厳しさを増しています。持続的な物価高騰により、人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費、委託費等といった物件費が増加しています。この結果、事業収益の増加以上に事業費用が増加し、収益が悪化している状況にあります。

人材確保も深刻な課題となっています。2年連続で5%を上回る賃上げ率となった春闘等により、全産業の賃上げ水準が高まる中、医療分野では収益悪化を背景に賃上げが進んでいません。この賃上げ水準の乖離が、医療従事者の確保を一層困難にしています。

具体的方向性として、次の5つが示されています。第一に、物件費高騰を踏まえた対応です。第二に、医療従事者の処遇改善です。第三に、ICT・AI・IoT等の利活用による業務効率化です。第四に、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進です。第五に、医師の働き方改革の推進と診療報酬上の基準の柔軟化です。

2040年を見据えた医療機関の機能分化・連携

第二の視点は、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域における医療の確保です。この視点では、地域医療構想に基づく医療提供体制の構築が中心的なテーマとなっています。

入院医療については、患者の状態と必要な医療機能に応じた評価が求められています。患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備が必要です。人口の少ない地域の実情を踏まえた評価も重要な課題です。

「治し、支える医療」の実現に向けた取組も示されています。在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能を担う医療機関の評価、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進が具体的方向性として挙げられています。

外来・在宅医療に関しては、かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価が求められています。大病院と地域のかかりつけ医機能を担う医療機関との連携による外来患者の逆紹介の推進も重要です。質の高い在宅医療・訪問看護の確保、人口・医療資源の少ない地域への支援、医師の地域偏在対策の推進も具体的方向性に含まれています。

安心・安全で質の高い医療の推進

第三の視点は、安心・安全で質の高い医療の推進です。この視点では、患者の安心・安全を確保しつつ、イノベーションを推進し、新たなニーズに対応できる医療の実現を目指しています。

患者の安全確保に関しては、身体的拘束の最小化や医療安全対策の推進が示されています。アウトカムに着目した評価として、データを活用した診療実績による評価の推進も求められています。

医療DXの推進も重要な方向性です。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進、外来・在宅医療等におけるオンライン診療の推進が具体的に挙げられています。

質の高いリハビリテーションの推進も求められています。発症早期からのリハビリテーション介入の推進、土日祝日のリハビリテーション実施体制の充実が具体的方向性として示されています。

重点的な対応が求められる分野として、救急医療、小児・周産期医療、がん医療・緩和ケア、精神医療、難病患者への医療が示されています。感染症対策や薬剤耐性対策の推進、歯科医療の充実、薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化、イノベーションの評価や医薬品の安定供給確保も具体的方向性に含まれています。

効率化・適正化による制度の持続可能性向上

第四の視点は、効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上です。高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費の増大が見込まれる中、医療資源の効率的・重点的な配分が求められています。

医薬品に関する取組として、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直しが示されています。費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価も重要な方向性です。

医薬品の適正使用に向けては、電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働が求められています。重複投薬、ポリファーマシー、残薬への対応、医学的妥当性や経済性の視点を踏まえた処方の推進が具体的に挙げられています。外来医療の機能分化と連携、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制評価も再掲されています。

今後の課題

基本方針では、今後の課題として5つの事項が示されています。これらの課題は、診療報酬制度だけでは解決できない構造的な問題への対応を求めるものです。

第一に、総合的な政策の必要性です。持続可能な「全世代型社会保障」の実現には、診療報酬制度のみならず、医療法、医療保険各法等の制度的枠組みや補助金等の予算措置を含めた総合的な対応が求められます。

第二に、物価高騰・賃金上昇への適時適切な対応です。諸経費や設備投資の増加、処遇改善への支援を、保険料負担の抑制努力にも配慮しつつ、報酬措置においても適時適切に行える仕組みの検討が必要です。

第三に、国民の納得感の向上です。診療報酬制度を分かりやすくする取組の継続、社会保障制度の意義に関する丁寧な説明、国民が議論の場へ参加する機会の確保が重要とされています。

第四に、予防・健康づくりの推進です。住民、医療提供者、保険者、民間企業、行政等の全ての関係者が協力・連携して国民一人一人を支援することが求められています。

第五に、医療DXへの投資です。医療DXは医療機関のコスト増加だけでなく、業務負担の軽減や医療の質の向上につながるものであり、国民の健康増進や地域医療連携の円滑化に寄与するとされています。

まとめ

令和8年度診療報酬改定の基本方針は、物価・賃金上昇への対応を重点課題に位置づけ、医療機関の経営安定と医療従事者の処遇改善を最優先としています。同時に、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築、安心・安全で質の高い医療の推進、医療保険制度の持続可能性向上という3つの視点も示されています。今後、この基本方針に基づき、中央社会保険医療協議会において具体的な点数設定等の議論が進められる見込みです。



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サマリー

令和8年度診療報酬改定が医療制度全体に与える影響を中心に、価格の見直しや医療体制の構築、持続可能性について解説されています。特に、患者支援のための新たな医療システムへの転換が求められています。

令和8年度診療報酬改定の概要
今回のテーマは、令和8年度診療報酬改定です。 これあのなんだか難しそうに聞こえるんですけど、でも要は国が日本の病院とかクリニックでのサービスの
肯定価格リストを見直すという話なんですよね。 これを理解するためにちょっと一つ例え話をさせてください。
医療制度全体が巨大なレストランだとしますよね。 国がそのメニューの値段をもう何年もずっと術を置いてきた。
でもご存知の通り、最近になって食材費、つまり医薬品とか、あと人件費もものすごく上がっている。 このままじゃレストランは潰れちゃいますよね。
今回の改定って、まさにこのメニューの値段を今の経済にどう合わせていくか、というすごく執拗な話なんです。
いやーその例えはすごくわかりやすいですね。 まさに医療の現場は悲鳴を上げています。
資料も見ても、他の産業ではもう5%以上の賃上げが実現してるじゃないですか。 なのに医療機関だけが物価高に全然追いつけなくて、スタッフのお給料を十分に上げられない。
結果どうなるかというと、看護師さんや技師さんがどんどん辞めていっちゃうんですよ。 これ単なる経営問題じゃなくて、あなたが夜中に救急外来に行った時に
見てくれる人がいるかどうかっていう、もうそういうレベルの話に直結してくるんです。 なるほど、ただの数字の話じゃないんですね。
じゃあその危機的な状況をどう乗り越えようとしているのか。 資料にある4つの柱、これを見ていきたいんですが、まず第1の柱が今まさに話に出た
物価賃金、人手不足への改容ですね。 これはさっきの例えで言うと、とりあえずレストランが潰れないように緊急資金を投入するみたいな、そんなイメージですかね。
ええ、まさに応急処置に近いです。 医療従事者の方の給与を上げるための減収を確保して、同時にICTとかAIを使って業務を効率化していくと。
ただこれはあくまで短期的な対策なんですね。 本当に重要なのは、この先を見据えた動き、つまり第2の柱である
2040年頃を見据えた医療体制の構築、ここなんです。 2040年ですか?随分先の話のようにも聞こえますけど、何が変わるんでしょう?
そこがポイントでして、働く世代が急激に減って、85歳以上の高齢者の方が激増します。 ああ、なるほど。
限られたお医者さんや看護師さんで増え続ける患者さんを支えないといけない。 そこで出てくるのが機能文化という考え方です。これまでの病気になったら大病院へというモデルから、
治し支える医療への転換ですね。 すみません、その機能文化っていうのがまたちょっと、具体的には僕たちの生活にどう関係してくるんですか?
ああはい、いい諮問ですね。 これはつまり、あなたの近所のかかりつけ医は、これからは風邪の診療とか健康相談、予防医療のプロになるということです。
そして、もし手術とか専門治療が必要になったら、地域の中核病院に紹介する。 要はそれぞれの医療機関が自分の得意分野に特化して、
地域全体で一つのチームとして患者さんを支える体制を作る。 無駄をなくして専門性を高めるのが狙いなんですよ。
新しい医療システムの情報
なるほど、役割分担をはっきりさせるんですね。 では、第三の柱の安心・安全で質の高い医療の推進というのは、ここでも医療DXって言葉が出てきますね。
はい。例えば、あなたが複数の病院にかかっているとして、電子処方箋が導入されれば、
飲み合わせの悪い薬が処方される危険をシステムが防いでくれるんです。 それは助かりますね。単にオンライン診療が便利になる
っていう話だけじゃなくて、デジタル技術で医療の質そのものを上げていこうという動きです。 でも、例えば高齢の患者さんとかデジタルの恩恵を受けにくい人たちもいますよね。
小さなクリニックが最新システムを導入するのも大変そうですし、かえって格差が生まれませんか? それは非常に重要なご指摘です。
まさにこの改定が直面する大きな課題の一つですね。 だからこそ、最後の第4の柱、精度の持続可能性の向上が効いてくるわけです。
持続可能性。はい、これは少し耳の痛い話も含まれます。 ジェネリック医薬品の使用をさらに進めたり、保険制度そのものの負担のあり方を見直したりとか。
つまり、使えるお金には限りがあるから、効率化できるところは徹底的にやって、本当に必要なところにお金を回せるようにしようと。
財布の紐を締めるところは締めるということですね。 おっしゃる通りです。
これら4つの柱って、バラバラじゃなくて、短期的な救済策と長期的なシステムの再設計がちゃんとセットになっているんです。
こうして全体を眺めてみると、今回の改定は単なる料金見直しじゃないですね。 これは日本の医療が病気になった人を治すという受け身の姿勢から、国民全体をいかに健康に保ち支えるかっていう、
より能動的なシステムへと哲学のレベルで変わろうとする、壮大な設計図のように見えてきました。
そして最後に、あなたが考えるきっかけになるかもしれない点を1つ。
この資料は診療報酬だけでは問題は解決できないと、法律や予算も含めた総合的な政策が必要だと締めくくっているんです。
これは国や医療機関の努力だけではもう限界があるというメッセージとも読めるんですね。
そこで、あなたに問いを投げかけたいと思います。
この大きな転換の中で、私たち一人一人が地道な健康管理や予防を通じて、この新しい医療システムを支えるために一体何ができるでしょうか。
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