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2025-12-20 05:34

長期収載品の選定療養が見直しへ|特別の料金が2倍になる可能性

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中央社会保険医療協議会(中医協)は2025年12月17日の総会で、長期収載品の選定療養について見直し案を提示しました。この見直しにより、長期収載品を希望する患者が支払う「特別の料金」が現行の2倍以上に引き上げられる可能性があります。本稿では、中医協総会資料に基づき、見直し案の内容と背景を解説します。

見直し案の要点は3つあります。第一に、患者の負担水準を長期収載品と後発医薬品の価格差の2分の1以上とする方向で検討が進んでいます。第二に、医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合は、引き続き選定療養の対象外となります。第三に、この見直しは医療保険制度の持続可能性確保と保険給付の公平性を目的としています。

長期収載品の選定療養制度とは

長期収載品の選定療養制度は、後発医薬品の使用促進を目的として令和6年10月に開始されました。この制度では、後発医薬品が存在する長期収載品(先発医薬品)を患者が希望する場合、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1を「特別の料金」として患者が負担します。

特別の料金は保険適用外であり、患者の全額自己負担となります。ただし、医師が医療上の必要性を認めた場合や、後発医薬品の在庫がない場合などは、選定療養の対象外となり特別の料金は発生しません。

制度開始後の状況

後発医薬品の使用割合は、制度開始により大幅に上昇しました。令和6年10月の制度開始を境に、後発医薬品割合(数量ベース)は86.6%から90.1%へ約4ポイント上昇しました。その後、令和7年3月時点では90.6%に達しています。

選定療養の対象となったレセプト件数は約368万件で、全体の4.9%でした。特別の料金の分布をみると、1,000円未満が90.0%、2,000円未満が98.3%を占めています。多くの患者の負担額は比較的少額にとどまっている状況です。

対象医薬品の価格差についても分析が行われました。選定療養の対象となっている1,006品目について、1剤当たりの価格差4分の1の分布をみると、100円未満が908品目(90.3%)を占めています。200円未満では942品目(93.6%)となり、大半の医薬品で価格差は小さいことがわかります。

患者が長期収載品を希望する理由

患者調査では、長期収載品の処方を希望した理由が明らかになりました。郵送調査では「使い慣れた薬を使いたいから」が最も多く39.1%でした。一方、インターネット調査では「ジェネリック医薬品の使用に不安があるから」が最も多く30.0%でした。

この調査結果は、長期収載品を希望する患者の動機が、習慣や心理的な不安に基づくケースが多いことを示しています。医療上の必要性以外の理由で長期収載品を選択する患者に対し、より強いインセンティブを設けることで後発医薬品への切り替えを促す余地があると考えられています。

見直し案の内容

見直し案では、患者の負担水準を価格差の2分の1以上とする方向で検討されています。現行制度では価格差の4分の1が特別の料金となっていますが、これを引き上げることで後発医薬品の使用をさらに促進する狙いがあります。

具体的な負担額の変化を試算すると、以下のようになります。長期収載品の薬価を1錠20円、後発医薬品の薬価を1錠10円とし、1日4錠・25日分を投薬した場合(自己負担割合3割)で計算すると、現行の価格差4分の1では特別の料金は250円です。これが価格差2分の1になると500円、価格差4分の3では750円、価格差全額(1分の1)では1,000円となります。

見直し案の検討にあたっては、医療上の必要がある場合の除外が前提となっています。長期収載品を使用する医療上の必要がある場合や、後発医薬品の在庫状況等を踏まえて後発医薬品を提供することが困難な場合については、引き続き選定療養の対象外とされます。

見直しの背景と考え方

見直しの背景には、複数の政策課題があります。第一に、医薬品のライフサイクルの観点があります。先発品企業は後発品上市後には市場から撤退し、後発品企業に安定供給等の役割を譲るという姿が目指すべき方向とされています。

第二に、医療保険制度の持続可能性の確保があります。現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を図るため、長期収載品から後発医薬品への切り替えを促進する必要があります。

第三に、保険給付の公平性の問題があります。長期収載品と後発医薬品は同一の有効成分を同一量含み、効能・効果、用法・用量が原則的に同一です。しかし、医療上の必要がなくとも長期収載品を使用する被保険者に対しては、より多くの保険給付がされています。後発医薬品を使用する被保険者との間での保険給付の公平性を考慮する必要があるとされています。

中医協での主な意見

前回の中医協総会(令和7年11月14日)では、委員から様々な意見が出されました。患者負担の引き上げに慎重な意見として、患者が長期収載品を希望する理由や治療上やむを得ない理由の有無など、実態把握を求める声がありました。また、小児や慢性疾患を抱えている方、低所得者等への配慮を求める意見もありました。

一方、引き上げに積極的な意見も出されました。患者調査で特別の料金が2倍〜4倍になれば後発品に切り替えるとの回答が一定程度あったことから、価格差の全額負担が妥当との意見がありました。また、医療保険制度の持続可能性確保の観点から、長期収載品の保険給付の在り方を見直すべきとの意見もありました。

安定供給への懸念も示されました。後発医薬品の需要増に伴う供給停止により、医療現場に負担がかかっているとの指摘があります。見直しの結果として後発医薬品の需要が高まり、安定供給に影響を及ぼさないかについても考慮が必要とされています。

まとめ

長期収載品の選定療養の見直し案は、特別の料金を価格差の2分の1以上に引き上げる方向で検討が進んでいます。この見直しは、後発医薬品の使用促進、医療保険制度の持続可能性確保、保険給付の公平性確保を目的としています。ただし、医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合は引き続き対象外となり、安定供給への配慮も求められています。具体的な割合については、予算編成過程を経た上で取りまとめられる予定です。



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サマリー

政府は長期収載品の選定療養に関する新たな見直し案を発表し、自己負担が増加することが予想されています。この制度の変更は、医療の公平性と持続可能性に関わる重要な議論を引き起こしています。

選定療養の見直し
ずっと信頼してきた主治医が出してくれる、いつもの薬。ありますよね。
もし来年から、そのいつも通りを選ぶだけで、自己負担が倍以上になるかもしれないって言われたらどうでしょう。
今日は、あなたのその習慣とか、まあ安心感に、政府が新たな値札をつけようとしているみたいな、そんな話です。
まさに、手元にあるのが、2025年12月17日の中医協、中央社会保険医療協議会で出た資料でして、
いわゆるジェネリックがある薬について、あえて先発品を選んだ場合のルール、選定要要ですね。
この見直し案が、単なる制度変更じゃない、もっと大きな問いを投げかけてるんです。
この選定要要っていう制度、令和6年の10月に始まったばかりですよね。
そうなんです。まだ始まったばかりで。
ジェネリックとの価格差の4分の1分は追加で払えば、まあ慣れた先発品を使えるっていう。
その通りです。で、この資料を見るとですね、この制度、実はもう結構な成果を上げてるんですよ。
あ、もう成果が出てるんですか。
ええ。開始からわずかな期間で、ジェネリックの使用割合が86.6%から90%以上に、約4ポイントも上がったんです。
4ポイントってこれ、ものすごいジャンプですよね。
大きいですね。
正直これだけ見ると大成功じゃないかって思っちゃうんですけど、もしこれほどうまく機能してるんだったら、なんで今さらに負担増を急ぐ必要があるんですかね。
そこなんですよ。そこが今回の議論の確信で、その答えは、じゃあなぜまだ10%の人は追加料金を払ってまで先発品を選ぶのかっていうそこの部分に隠されてるんです。
ああ、なるほど。理由ですか。
ええ。調査データが非常に面白い。郵送調査だと、使い慣れた薬を使いたいから。
まあ、わかりますね、それは。
で、ネット調査だと、ジェネリックの使用に不安があるからがトップなんです。
不安ですか。
つまり、医学的な必要性というよりは、習慣とか心理的な不安、これが決め手になってるケースが多いと。
なるほど。ってことは、これって経済とか医療の問題っていうより、なんだか一種の信頼とか、あれはマーケティングの問題なんですね。
まさにおっしゃる通りです。何十年というブランドの歴史が、その薬の箱とか錠剤の打勝ちに、ある種の愛着とか安心感を作ってきた。
はいはい。
そして政府は今、その心理的な結びつきをお金で、つまり金融的なレバーで断ち切ろうとしてるわけです。
うわぁ、なるほど。だから今の穏やかなお願いレベルじゃ、人の心までは動かせないと。
そういう判断なんでしょうね。
だとしたら、次の手はもっと強い突き放しになると。具体的にはどう変わるんですか。
案として出ているのは、患者負担を価格差の4分の1から2分の1以上に引き上げるというものです。
2分の1以上。ちょっと抽象的ですね。例えば、僕が飲んでる薬で考えるとどうなるんでしょう。
仮に先発品が1錠20円、ジェネリックが10円だとします。
制度の影響と議論
いい例ですね。その場合、1ヶ月分の追加負担は、今の4分の1ルールだと250円です。
250円。
これが見直し案の2分の1になると500円。
倍になるわけですね。
ええ。で、将来的にもし全額負担になれば1000円です。
もちろんお医者さんが医学的に必要と判断した場合は、これまで通り対象外ですけどね。
なるほど。でも正直こうも思うんですよ。私はずっと真面目に保険料を払ってきたんだと。
長年使って安心できる薬を選ぶ権利くらい、ペナルティなしであっていいんじゃないかって。
それこそがこの制度が直面している根本的な対立点なんですよね。
うーん。
そして政府が言う3つの大義名文。
医療保険制度の持続可能性、保険給付の公平性、医薬品産業の未来。
これらは結局1つの大きな思想にまとまるんです。
1つの思想ですか。
はい。それは公的医療保険がそもそも何を保証すべきかっていう、その定義自体を変えようとしているっていうことなんです。
保険の定義ですか。
ええ。保険の役割は医学的に最善の結果を保証することなのか、それとも最も費用対効果の高い結果を保証することなのか。
ああ、なるほど。
医学的な差がない個人の好みまで保険を適用するのはやめて、その分本当に必要な新薬とか治療に財源を回すべきだと。
そうか。これは単に数百円の負担が増えるっていうミクロな話じゃないんだ。
僕たちの保険というものに対する考え方の根幹に関わる話なんですね。
その通りです。
ですから中共でも意見はあわれてます。
低所得者への配慮を求める慎重な声もあれば、いっそ全額自己負担にすべきだっていう意見もある。
結構両極端なんですね。
ええ、それにジェネリックの需要が急に増えた場合の安定供給っていうものすごく現実的な課題も横たわっていますし。
本当に複雑な問題ですね。これはもう単に薬の値段の話じゃない。
ええ、だからこそあなたに最後に投げかけたいというはこれなんです。
この問題は結局個人の選択の自由と制度の公平性、このバランスをどこで取るべきかという話につきます。
もしあなたがこの国の医療の形を決める立場なら、私たちの税金で賄われる保険は、どこまで個人の安心感という価値にお金を払うべきだと考えますか。
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