人工透析を続ける患者にとって、血液を体の外に出し入れする「シャント」は命綱です。このシャントは狭くなったり詰まったりを繰り返すため、その都度「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」(K616-4)で治療されます。現行制度では、この初回治療の診療報酬が病態の重症度を問わず一律12,000点に設定されており、比較的軽い狭窄にも重い閉塞と同じ評価がされてきました。本稿は、令和8年度診療報酬改定でこの一律評価がどう見直されるのかを、改定前後の対比とともに整理することを目的とします。
令和8年度改定では、初回治療の点数を重症度に応じて2区分に分け、軽症側の評価を引き下げます。具体的には、シャント閉塞または高度狭窄に該当する場合(区分イ)は12,000点を据え置きます。一方、それ以外の場合(区分ロ)は9,840点に引き下げます。さらに、高い区分イを算定する際には、超音波検査などの画像所見による医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められます。
改定の背景:一律評価が見直される理由
今回の改定は、治療効果が病態によって異なるという事実を診療報酬に反映させるものです。経皮的シャント拡張術・血栓除去術は、シャントが完全に詰まった「閉塞」や、強く狭くなった「高度狭窄」に対して大きな治療効果を発揮します。これに対し、まだ血流が比較的保たれている軽度の狭窄では、同じ治療を行っても得られる効果は相対的に小さくなります。それにもかかわらず、現行制度はどちらの病態にも同じ12,000点を割り当ててきました。
この一律評価が、適正化(=メリハリのある評価への見直し)の対象となりました。重症度を問わない評価は、軽症例への過剰な実施を誘発しかねないという課題を抱えていたためです。そこで令和8年度改定では、重い病態とそれ以外の病態とで治療効果に差があるという考え方に基づき、初回治療の算定要件を見直すこととなりました。
改定の中心:初回治療が2区分に分かれる
改定の中心は、これまで一本だった初回治療の点数を、重症度に応じた2つの区分に分けることです。現行の「1 初回 12,000点」は、改定後に区分イと区分ロの2段階へと再編されます。区分イは重い病態を対象に12,000点を維持し、区分ロはそれ以外の病態を対象に9,840点へ引き下げられます。
区分イは、重い病態に該当する場合を対象とし、点数は12,000点で据え置かれます。対象となるのは、透析シャント閉塞の場合か、または超音波検査でシャント血流量が400ml以下もしくは血管抵抗指数(RI)が0.6以上の場合です。これらは血流が大きく損なわれた状態であり、治療効果が高いと評価されるため、現行点数が維持されます。
区分ロは、区分イに当てはまらないその他の場合を対象とし、点数は9,840点へ引き下げられます。9,840点は12,000点から2,160点低い水準であり、軽症例の評価を相対的に抑える設定です。この区分により、病態の軽い症例と重い症例とで支払われる診療報酬に明確な差が生まれます。
算定の条件:高い区分には医学的根拠の記載が必要
高い区分イを算定するには、その病態を裏づける医学的根拠を記載しなければなりません。区分イの対象は、前述のとおり透析シャント閉塞の場合か、または超音波検査でシャント血流量が400ml以下もしくはRIが0.6以上の場合です。これらいずれかの要件を満たす画像所見等の医学的根拠を、診療報酬明細書の摘要欄に記載することが算定の条件となります。
なお、3月以内の再実施(「2」12,000点)の取扱いは、対象病態と摘要欄への記載要件を含め、実質的に現行どおりです。改定後の「2 1の実施後3月以内に実施する場合 12,000点」は、シャント閉塞または超音波検査の基準を満たす病態に限り、1回を限度として算定できます。今回新たに重症度の区分が設けられたのは、初回治療(「1」)です。初回治療を3月に1回に限り算定する点も、現行と変わりません。
まとめ
令和8年度改定では、経皮的シャント拡張術・血栓除去術の初回治療が重症度に応じて2区分に再編されます。シャント閉塞または高度狭窄に該当する場合(区分イ)は12,000点が据え置かれ、それ以外の場合(区分ロ)は9,840点へ引き下げられます。高い区分イを算定する際は、超音波検査などの画像所見による医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載しなければなりません。治療効果の違いを評価に反映させるこの見直しにより、シャント治療の診療報酬は重症度に応じたメリハリのある体系へと改められます。
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サマリー
令和8年度診療報酬改定により、人工透析患者の「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」の初回治療における診療報酬が見直されます。これまで病態の重症度を問わず一律だった報酬が、シャント閉塞や高度狭窄の重症例(区分イ)は12,000点、それ以外の軽症例(区分ロ)は9,840点に二分されます。区分イを算定するには、超音波検査などによる医学的根拠の明細書への記載が必須となり、治療効果に応じた適正な評価が求められるようになります。
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