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2025-10-15 07:48

意思決定支援の診療報酬要件化後の実態調査:医療機関の指針策定は8割達成も残る課題

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令和6年度診療報酬改定では、人生の最終段階における適切な意思決定支援を推進するため、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた指針の策定が入院料の通則に規定され、原則としてすべての入院料の算定要件となりました。改定後の令和6年11月時点で、入院・外来医療等の調査・評価分科会は医療機関における実施状況の調査結果をまとめました。本稿では、この調査結果と分科会で示された今後の課題について報告します。

調査結果から、意思決定支援の指針策定は着実に進展しているものの、地域全体での情報共有と多職種連携に課題があることが明らかになりました。入院料の算定要件となった指針策定は80.3%の医療機関で完了し、定期的な見直しも70.5%の医療機関で実施されています。一方、地域包括診療料等の届出医療機関における指針策定率には病院と診療所で大きな格差があり、病院84.0%に対して診療所は19.6%にとどまりました。さらに、分科会では地域での情報共有プロセスの評価、患者本人の意思決定を尊重する評価の在り方、多職種間の認識一致という3つの重要な課題が提起されました。

入院料における意思決定支援の実施状況:8割の医療機関が指針策定を完了

入院料の算定要件となった意思決定支援の指針策定は、令和6年11月時点で8割の医療機関において完了しています。調査では、指針を作成している医療機関は80.3%でした。この指針は、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、患者本人の意思決定を支援するプロセスを定めたものです。

指針策定だけでなく、定期的な見直しも重要な要件となっています。調査では、定期的な見直しを行っている医療機関は70.5%でした。指針は一度作成すれば終わりではなく、医療現場の実態や患者ニーズの変化に応じて継続的に改善していく必要があります。定期的な見直しの実施率が策定率よりやや低い点は、今後の改善が求められる領域といえます。

令和6年度診療報酬改定では、意思決定支援の指針策定を原則としてすべての入院料の算定要件としました。この要件化の対象から除外されたのは、小児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院医療管理料、小児入院医療管理料、児童・思春期精神科入院医療管理料を算定する病棟のみを有する医療機関です。これらの病棟では、患者の特性上、人生の最終段階における意思決定支援の在り方が成人とは異なるため、別途の配慮が必要と判断されました。

経過措置として、令和6年3月31日時点で入院基本料等の届出を行っていた病棟については、令和7年5月31日まで指針の作成基準を満たすものとみなされます。この経過措置により、医療機関は時間的余裕を持って指針の策定と院内体制の整備を進めることができます。

地域包括診療における意思決定支援の実施状況:病院と診療所で大きな格差

地域包括診療料・加算、認知症地域包括診療料・加算においても、令和6年度診療報酬改定で意思決定支援の指針策定が要件に追加されました。これらの診療報酬は、複数の慢性疾患を有する患者に対して、継続的かつ全人的な医療を提供することを評価するものです。患者の価値観や生活背景を踏まえた意思決定支援は、このような包括的な医療提供において不可欠な要素となります。

令和6年11月時点の調査では、指針を作成している病院は84.0%であった一方、診療所は19.6%にとどまりました。病院と診療所の間には64.4ポイントという大きな格差が存在しています。この格差の背景には、診療所における人的リソースや体制整備の困難さがあると考えられます。診療所では医師数が限られており、指針の策定や院内教育に割ける時間的余裕が少ないという実情があります。

定期的な見直しを行っている医療機関については、病院67.5%、診療所51.2%でした。指針策定率と同様に病院と診療所で差がありますが、策定率ほどの大きな格差ではありません。診療所において、一度指針を策定した医療機関では、比較的高い割合で見直しが実施されていることがわかります。

地域包括診療料と地域包括診療加算の届出医療機関に限定すると、指針策定率はそれぞれ70.1%、41.5%でした。地域包括診療料の届出医療機関では7割が指針を策定している一方、地域包括診療加算の届出医療機関では4割程度にとどまっています。地域包括診療加算は主に診療所が算定する加算であり、前述の診療所全体の傾向と一致しています。

分科会で示された今後の課題:地域連携と多職種連携の強化が鍵

入院・外来医療等の調査・評価分科会では、調査結果を踏まえて今後の課題について議論が行われました。分科会での評価・分析に関する意見からは、意思決定支援をさらに推進するための3つの重要な方向性が示されました。

第一の課題は、地域全体での切れ目ない情報共有の推進です。分科会では、入院時における自院以外の施設からの医療・ケアの方針についての情報提供の有無について、改定前と大きく変化がないことが指摘されました。この状況を改善するため、意思決定支援とアドバンス・ケア・プランニングの情報提供に係る一連のプロセスについて評価を行うべきとの意見が出されました。患者が医療機関や施設を移動する際に、それまでの意思決定支援の内容が適切に引き継がれることが重要です。

第二の課題は、患者本人の意思決定を尊重する評価の在り方です。分科会では、患者本人が意思決定の主体となることから、医療機関が個別にアドバンス・ケア・プランニングに係る指導を行うことを押し付けるような評価は行うべきではないとの指摘がありました。意思決定支援は、医療者が一方的に進めるものではなく、患者本人の意思や価値観を最大限尊重しながら、必要な情報提供と対話を通じて行うべきものです。診療報酬上の評価も、このような本質を踏まえた設計が求められます。

第三の課題は、多職種間の認識一致です。分科会では、アドバンス・ケア・プランニングに関して、多職種間での理解の不一致がある場合があるため、多職種間の認識一致を目指していくべきとの意見がありました。意思決定支援は、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、医療ソーシャルワーカーなど多様な職種が関わる取組です。各職種がアドバンス・ケア・プランニングの目的や方法について共通の理解を持ち、チームとして一貫した支援を提供することが求められます。

まとめ:指針策定の進展と残された課題への対応

令和6年度診療報酬改定により意思決定支援の指針策定が入院料の要件となり、令和6年11月時点で8割の医療機関で指針策定が完了しました。一方、地域包括診療における診療所の対応状況には課題が残り、地域全体での情報共有と多職種連携の強化が今後の重要な方向性として示されました。分科会で提起された3つの課題に対応することで、患者本人の意思を尊重した質の高い医療提供体制の構築が期待されます。



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サマリー

令和6年度の診療報酬改定に伴い、入院医療における意思決定支援の指針が策定されているが、地域の診療所ではその普及に大きなギャップがある。分析によれば、情報共有、評価の在り方、そして多職種間の認識の統一が現在の課題として挙げられている。

入院医療の進展
こんにちは。今回はですね、人生の最終段階で自分の意思をどう医療に反映させるか、 その意思決定支援というテーマについてです。
特に令和6年度の診療報酬改定でこのあたりがどう変わってきているのか。 厚生労働省の調査結果を見ながら、ちょっと深掘りしていきたいと思います。
これ、将来あなたやご家族がもしもの時にどう意思が尊重されるか、 その現在地を知る良い機会になるかなと。
早速ですが、中身を見ていきましょうか。 まず、今回の改定で大きく動いたのが、やっぱり入院医療の現場ですよね。
多くの入院療で、この意思決定支援に関する指針、 ルール作りみたいなものが必須になったと。
これ、ちょっと驚いたんですけども、令和6年の11月時点でも、 対象の医療機関の80.3%がこの指針を策定済みだそうですね。
そうなんです。数字だけ見るとこれは大きな前進と言えますよね。 大事なのは、この指針がただ形式的にあるんじゃなくて、
厚労省のガイドラインに基づいて、患者さん本人の意思をどう支えるか、 そのプロセスを定めているという点なんです。
なるほど。プロセスを定めると。
さらに言えば、策定した施設の7割以上、70.5%ですか、 これが定期的な見直しも行っていると。
これはやっぱり、1回作って終わりじゃなくて、 原画に合わせてちゃんと変えていこうという姿勢の表れだと思いますね。
もちろん、小児とか、終産期の特定のICUなんかは対象外ですし、 令和7年の5末までは経過措置もあるんですけどね。
それでも全体としては、体制整備は進んでいる方向かなと。 入院の方はかなり進んでいる印象ですね。
地域診療所の課題
一方で、フランからお世話になることが多い地域の診療所、 いわゆるかかりつけ医みたいなところではどうなんでしょう?
実はですね、そこにかなり大きなギャップが見えてきてるんですよ。 ギャップですか?
はい。病院での指針策定率が84.0%に達しているのに対して、 診療所だとわずか19.6%にとどまっているんです。
えっと、19.6%。 病院と比べると64ポイント以上も差があるわけですね。
そうなんです。
これはかなり大きな差ですね。 どうしてここまで違うんでしょうか?
背景としては、やはり診療所の多くが限られたスタッフで運営されていて、 こういう新しい体制を整える余裕がないという現実があるんだと考えられますね。
ああ、なるほど。
特に地域包括診療療とか、そういう複数の慢性疾患を持つ患者さんを 継続的に見ていく仕組みがありますよね。
ああいう場面では、患者さんの価値観とか人生観を踏まえたケアプランがすごく大事になるんですが、 その担い手であるはずの診療所で、ちょっと対応が追いついていないと。
うーん、それは課題ですね。
ただですね、ちょっとだけ希望というか見直し率を見ると、 病院が67.5%で、診療所は51.2%。
あっ、見直し率はそこまで極端な差はないんですね。
ええ、策定率ほどの差はないんです。
ですから、一度その指針を作った診療所では、 比較的ちゃんと見直して改善しようという動きはあるようなんですね。
なるほど、策定のハードルは高いかもしれないけど、 一度そこをクリアすれば前向きに取り組むところも多いと。
今後の課題
では全体として見た時に、今後の課題というのはどんな点が挙げられているんでしょうか。
専門家の文化会でも議論があったようですが。
はい、大きく3つも点が指摘されていますね。
まず第一は、地域全体での情報共有を もっと進めましょうということです。
情報共有ですか?
ええ、例えばあなたが病院で一生懸命 終末期の希望を伝えたとしても、
退院して地域のクリニックに移った時に、 その情報がうまく引き継がれないと。
ああ、それは困りますね。
そうなると、また一から説明しなきゃいけない、 なんてことが実際にあるわけです。
調査でも、入院時に他の施設からの 情報提供があったかどうか、
改定前後であまり変化がなかった という結果も出てまして、
これでは切れ目のない支援というのは なかなか難しいですよね。
アドバンスケアプランニング、ACPに関する情報が 施設を超えてスムーズに共有される仕組み、これが急務です。
確かに、それは本当に誠実な問題ですね。
情報が途切れるのは本人も家族も大変です。
2つ目の課題は何でしょうか。
第2に、評価の在り方ですね。
評価。
はい。この支援の目的は、 あくまで患者さん本人の意思決定を尊重すること、ですよね。
ええ。
ですけど、評価の仕方によっては、 医療機関側がこういう指導をしましたよっていう、
まあ、形式的な実績作りの方に行ってしまって、 本人の意思がないがしろにされかねない。
ああ、形だけになってしまうと。
そういう懸念があるわけです。
どうすれば、そのプロセスだけじゃなくて、 本人の意思がちゃんと主体となった質の高い支援、
そのものを評価できるのか、という点が問われています。
なるほど。支援が境外化しないための評価ですね。
難しいけど大事な視点です。
そして3つ目は。
第3が、多職種間の認識の統一です。
多職種間ですか。
お医者さんや看護師さんだけじゃなくて、 ソーシャルワーカーとかケアマネージャーとか、
いろいろな専門職が関わりますよね。
その全員がアドバンスケアプランニング、 いわゆるACPですね。
将来の医療やケアについて事前に話し合って、 本人の意思を尊重した計画を立てる、
このプロセスについてちゃんと共通の理解を 持っている必要があるということです。
ACPという言葉自体も、 まだ広く知られているとは言えないかもしれないですよね。
そうなんですよね。
現状では職種とか担当者によって、 そのACPへの理解度にちょっとばらつきがあって、
チームとして一貫した支援が必ずしも 提供できていないんじゃないかという指摘があります。
なるほど。チーム内での足並みを揃える必要があると。
今回の話をまとめると、 入院医療での意思決定支援のルール作り、
これは大きく進んだんだけど、 一方で身近な診療所での普及はこれから。
そして地域全体で見ると、情報のバトンタッチの問題とか、 本人の意思をどうちゃんと評価するか、
そしてチーム内での共通認識、 こういったより本質的な課題がまだ残っているということですね。
これは本当に私たち一人ひとりが、将来いろんな医療機関とか 介護サービスを使う可能性を考えると、他人事じゃない話ですね。
まさにおっしゃる通りです。 指針の策定率といった数字は、ある意味スタートラインに立ったということを示しているに過ぎないなのかもしれません。
本当に大事なのは、その指針が現場でどう活かされているか。
つまり患者さんと医療チームの間で、その不安とか希望も含めて、 本当に意味のある対話はどれだけ生まれているかということだと思うんです。
対話の質ですか。
そしてこういう数字にはなかなか現れにくい対話の質とか、相互理解の深さみたいなものを、
私たちはどうやって評価して、そして地域全開で育てていけばいいのか。
形式的な整備のその先にある、この問いにどう向き合っていくか。
これが私たちに残された、より本質的な課題と言えるのかもしれませんね。
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