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2025-11-02 08:07

令和8年度診療報酬改定に向けた中長期的検討課題3選:持参薬・重症度評価・包括医療の見直しポイント

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令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会では、次期診療報酬改定に向けた評価・分析を進める中で、データ解析の技術的限界や委員間の見解相違により即座に結論を出せない課題が明らかになりました。中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である同分科会は、これらの課題について中長期的な検討が必要と判断しました。本稿では、来年度以降に実施される実態調査や厚生労働科学研究等での検討が求められる3つの重要課題の内容を説明します。

中長期的検討が必要な課題は、持参薬ルールの明確化、重症度・医療・看護必要度の在り方の整理、包括期入院医療における患者別評価の実現の3つです。持参薬ルールについては、DPC/PDPSでの公平な支払いを実現するため、医療機関間で大きなばらつきがある持参薬使用割合の統一的運用に向けた検討が必要です。重症度・医療・看護必要度については、平成20年度の導入から約20年が経過し、入院患者の高齢化や医療環境の変化に伴う指標の妥当性検証が求められています。包括期入院医療における患者別評価については、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟において、疾患・ADL・診療行為等に応じた適切な評価の実現が課題となっています。

持参薬ルールの明確化が求められる背景

持参薬ルールの明確化が必要となった背景には、DPC/PDPSにおける公平な支払いの実現という課題があります。DPCデータによると、入院中の持参薬使用割合は医療機関間で大きなばらつきが認められており、統一的な運用が行われていない実態が明らかになりました。

統一的な運用を推進するための持参薬ルールの明確化には、医療安全を確保する観点、病棟における持参薬の確認業務の負担の観点、患者が薬剤を持参する負担の観点など、多角的な検討が必要です。具体的には、当該持参薬の処方元が自院であるか他院であるかの別、予定入院と緊急入院の別、入院中の診療内容と当該持参薬の関係性の別、薬剤の特性別など、具体的な場面を想定した妥当性の検討が求められます。併せて、DPC/PDPS以外で薬剤費が包括される入院料を算定する病棟における持参薬の取扱いについても、検討を進めることが望ましいとされています。

重症度・医療・看護必要度の在り方の整理

重症度・医療・看護必要度の在り方の整理が必要となった理由は、指標導入から約20年の経過における医療環境の変化です。重症度・看護必要度は平成20年度改定で、病棟のタイムスタディ調査等の研究成果をもとに「入院患者へ提供されるべき看護の必要量」を予測する指標として導入されました。平成26年度改定では「重症度・医療・看護必要度」に名称変更され、急性期患者の医学的特性を測る目的が重視されました。平成28年度改定では医学的状況を測るC項目が加わり、平成30年度改定では病棟の看護職員の測定負担を軽減する観点から、A項目及びC項目をレセプト電算コードにより評価する「重症度・医療・看護必要度Ⅱ」が選択可能とされました。

このような経緯を踏まえると、よりよい入院医療の診療報酬評価を実現するための重症度・医療・看護必要度の在り方を検討する前提として、2つの考え方の整理が必要です。「入院患者へ提供されるべき看護の必要量を予測すること」と「急性期患者の医学的な特性を測ること」という2つの考え方をどのように勘案すべきかについて、整理する必要があります。入院患者の高齢化や、電子カルテ等のICT技術の進展、インフォームド・コンセント等患者本位の医療の普及等による病棟看護業務の変化に伴って、現在の指標が実際の病棟の看護の必要量を適切に推測できているのか、検証する必要があります。

最新の病棟のタイムスタディ調査によると、病棟看護業務の約25%を「診療・治療」が占め、約25%を「患者のケア」が占めている実態が明らかとなりました。このうち「診療・治療」の定量的評価は、診療行為のレセプト電算コードを用いて表現可能であり、A項目・C項目、医療資源投入量はレセプト電算コードを活用した評価方法となっています。「患者のケア」については、要介護度、ADL、B項目などで測定されうるが、これらの評価項目は重複があり、一定の類似性があるという分析結果となっています。特にB項目については、患者の高齢化に伴う近年の看護業務の増加を証明することに有用ではないかという意見がありますが、B項目のこうした観点での有用性の検証は、レセプトデータや診療行為情報が主体のDPCデータでは限界があることに留意する必要があります。

重症度・医療・看護必要度に関するこうした検討は、あくまで適切な診療報酬の支払いを実現する観点で行われるべきものです。しかし、測定した結果を、医療現場において入退院時の医療・介護連携の推進、病棟内の多職種連携の推進、病棟の人員マネジメントの向上等に用いることが有用である可能性もあることから、こうした観点も含め検討することが考えられます。

包括期入院医療における患者別評価の実現

包括期入院医療における患者別評価の実現が求められる理由は、患者選別による病棟機能低下の懸念です。患者ごとに医療・看護ケアの必要量に応じた適切な費用が償還されない仕組みの場合、入棟させる患者の選別を引き起こし、結果として病棟の機能の低下につながる懸念があります。

現在、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟などの主として高齢者を受け入れる機能を担う病棟には、急性期病棟のDPC/PDPSのような仕組みはありません。DPC/PDPSでは、疾患・ADL・診療行為等に応じて患者別に包括評価の支払額及び標準的な在院日数を変化させる仕組みですが、地域包括医療病棟等では基本的にすべての患者が一律の支払額及び標準的な在院日数により算定する仕組みとなっています。

こうした機能を担う病棟の、より適切な患者別の評価の実現に向けて検討を行った結果、特に地域包括医療病棟においては、緊急入院や手術の有無等による「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」に一定の違いがあることが明らかとなりました。一方で、「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」が同程度でも、高齢者のADLや要介護度は様々であり、これらに要する看護ケアの必要度は「医療資源投入量」という考え方のみでは推し量れない部分がある、という意見があることに留意する必要があります。

高齢者は、複数疾患を併存している場合が多いこと、症状が非典型的に表れやすいことから、DPC/PDPSのように「医療資源を最も投入した傷病名」を一意に定めて区分を決める支払い方式はなじみにくく、予定入院と緊急入院の別や手術実施等の客観的事実に着目した評価がよいのではないか、という意見がありました。地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟に期待される機能が連続的であることを踏まえた評価方法とすることや、高齢者の介護の必要性を反映することができる評価方法とすることも考えられます。いずれにしても、より適切な患者別の評価の実現に向けて、引き続き最新の診療データを用いた分析を行う他、別途実態調査等の実施の要否も含め、現行の評価方法の課題の明確化や妥当性の検証を行いつつ、更に検討する必要があります。

まとめ:来年度以降の検討に向けて

中長期的に検討すべき3つの課題は、いずれも入院医療の質の向上と公平な診療報酬の支払いを実現するために重要な論点です。持参薬ルールの明確化は、DPC/PDPSにおける統一的な運用を推進し、公平な支払いを実現するために不可欠です。重症度・医療・看護必要度の在り方の整理は、入院患者の高齢化や医療環境の変化に対応した適切な評価指標の確立に必要です。包括期入院医療における患者別評価の実現は、高齢者の多様な医療・看護ケアの必要量を適切に反映し、病棟機能の低下を防ぐために求められます。これらの課題について、来年度以降に実施される入院・外来医療等における実態調査や厚生労働科学研究等により、更に検討が進められることが期待されます。



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サマリー

令和8年度の診療報酬改定に向けて、持参薬、重症度評価、包括医療の問題が取り上げられています。これらは複雑な課題であり、医療体制やコスト管理に大きな影響を及ぼす可能性があります。

持参薬の課題
こんにちは。こんにちは。さて今日は、2026年度の診療報酬改定に向けて、すぐには結論が出せない、ちょっと複雑な課題が3つあるということですね。
ええ、そうなんです。中長期的な検討が必要とされていますね。はい。今回は、あなたが共有してくださった資料、令和8年度診療報酬改定に向けた中長期的検討課題3選。
これを基に、日本の入院医療が抱えるこれらの課題、一緒に掘り下げていきたいと思います。よろしくお願いします。
なぜ、持参薬、重症度評価、包括医療の評価、この3つがそんなに難しいのか、その確信に迫っていきましょう。はい。
まず最初のテーマ、持参薬ですね。ええ、持参薬。これ、入院時に患者さんが持ち込む薬ですけど、扱いが病院によってかなり違うっていうのは、ちょっと驚きですね。
そうですね。かなりばらつきがあるのが実態です。特に、DPC、DPSという支払い制度だと、その違いが費用の公平さ、ここに影響してくると。
まさにそこなんです。公平な支払いを考えると、やはり統一的なルールが必要だろうと。うーん、ルール。ただ、ことはそう単純ではなくてですね。と言いますと。
まず、医療安全の確保、これが大前提です。はい、安全第一。それから、持ち込まれた薬を一つ一つ確認する病棟スタッフの、まあ、業務負担。
ああ、現場の負担も。ええ。さらに言えば、薬を持参する患者さん自身の負担というのもあります。
なるほど。いろんな立場からの視点が必要なんですね。そうなんです。なので、例えば、どの病院で処方された薬なのかとか。
人員化、退院化とかですね。あとは、予定入院なのか、それとも緊急入院なのか。
状況によっても違いそう。それに、入院中の治療と関係がある薬なのかとか、薬の種類は何かとか、具体的な状況に応じた、誰もが納得できるルール作りが求められているんです。
うわあ、それは大変そうですね。ええ。しかもこれは、GPCPDPS被害の支払い方式の病棟、まあ、例えば、チーチ包括ケア病棟とか、そういうところにも関わる、結構根深い問題なんですよ。
なるほど。安全、負担、公平性、いろんな要素が絡み合っていて、これは確かに一筋縄では行かないわけですね。
重症度評価の見直し
その通りです。持ち込み略だけでも複雑ですが、入院医療の評価という点では、もう一つ大きな課題がありますよね。はい。
それが、重症度、医療、看護、必要度。ええ、必要度ですね。これも、もう導入から結構経っていて、見直しが必要だと。
そうなんです。これ、導入から約20年が経過してまして。20年。ええ。なので、現状に合わなくなってきているんじゃないか、という指摘があるわけです。
なるほど。特に興味深いのが、この指標が持っている、何というか、2つの目的の整理なんですね。
2つの目的ですか。はい。もともとは、看護師さんの仕事量、つまり必要な看護量を予測するというのが主な目的だったはずなんです。
ふむふむ。看護の量を測る。ところが次第にですね、この患者さんは、急性起治療にふさわしい状態なのかどうかを見極めるというか。
あたかも門番のような。ええ。そういう役割も重視されるようになってきた。この2つの目的が時に対立してしまう可能性もあるんじゃないかと。
へえ、目的が2つあるんですね。それは確かに複雑そうです。ええ。現在の指標が、患者さんの高齢化ですとか、あるいはICT、情報通信技術ですね。
これが導入された今の病棟の実態。はい。特に実際の看護にどれだけ手間がかかっているのかというのを正確に捉えられているのかどうか、ここを検証する必要が出てきています。現場の実感とのズレみたいな。そういうことです。
最新の調査なんかを見ると、患者業務の約半分が診療治療関連と患者さんの直接的なケアだそうなんですが。半分ですか。
診療治療の方は比較的レセプト情報、A項目とかC項目ですね。これで評価しやすい。はい。一方でADL、つまり日常生活の動作の解除とかそういう患者さんのケア、これはB項目とかですけど。はい。
これは高齢化で確実に業務が増えているはずなのに、今のDPCデータとかだけではなかなか捉え切れていない可能性があるんです。データだけでは見えない部分があると。
そうですね。この検討自体はあくまで公平な支払いのためのものですが、その結果というのは現場の連携のあり方とか、人員の配置とかそういったことにも影響し得る非常に重要な話です。
なるほど。現場のリアルな負担感をどう評価に反映させるかということですね。まさに。
包括医療の再評価
そして3つ目。これが包括期入院医療における患者別評価。はい。
主に高齢の患者さんが多い地域包括医療病棟とかそういうところでの評価方法ですね。ここでも課題があると。
まさにその通りでして、現在の仕組みだと多くの患者さんで評価が一律になりがちなんです。
一律ですか。
そうなると病院側としてはどうしても、より手間のかからない患者さんを選びたくなるという心理が働かねない。
ああ、いわゆる患者さんの選別みたいなことにつながる恐れが。
そういう懸念があるわけです。結果として病棟が本来になうわき、多様な高齢の患者さんを受け入れるという機能が低下してしまうんじゃないかと。
旧世紀の病棟で使われているDPC、DPSみたいに患者さんの状態に応じた評価という形にはなっていないんですか。
基本的にはそうなっていないと考えていいと思います。
もちろん調査なんかを見ると地域包括医療病棟でも、例えば緊急入院かどうかとか手術の有無とかで医療費、つまり医療資源の投入量には差が出ているんです。
ただ、費用が同じでも高齢者のADL、日常生活動作のレベルとか介護の必要度っていうのは本当に千差万別で。
確かに人それぞれですもんね。
必要な看護ケアというのは、かかった費用だけでは測れない部分が大きいんです。
なるほど。
それに高齢者の方は複数の病気、合併症を持つ方も多いので、最も医療費がかかった病名一つで分類するというDPCの考え方がそもそも馴染みにくいんじゃないかという声もあります。
うーん、確かにそうかもしれません。
だからこそ、もっと客観的な事実、例えば入院の経緯ですね。予定入院なのか緊急入院なのかとか。
はい。
あるいは手術の有無といった事実や、あるいは介護の必要度そのものを評価に取り入れるべきではないかと。そういう議論が出てきています。
なるほど。これもやはり、さらなるデータ分析とか実態調査がこれから必要になってくるわけですね。
ええ、そうですね。まだまだ検討が必要な段階です。
いやー、今回掘り下げた持参薬、重症度評価、包括期の患者別評価、どれも簡単な答えはなくて、今後の入院医療の質と、それから公平な支払いにためにじっくり考えていかなければならない、本当に重要なテーマだとよくわかりました。
ええ。そして、これらは別々の独立した問題というわけではなくて、互いに影響し合っているんですね。
と言いますと?
例えば、重症度評価の基準が変われば、当然必要な看護師さんの数、つまり人員配置にも影響するかもしれません。
確かに。
それから、包括期の評価の仕方が変われば、病院がどういう患者さんを受け入れるか、その体制自体が変わる可能性だってあります。
あー、受け入れの判断基準が変わるかも。
ええ。持参薬のルールだって、もちろんコスト管理に直結してきますし。
すべて繋がっているんですね。
そうなんです。では、あなたにとってこれらの課題解決がもし進んだとしたら、将来ご自身やご家族がもし入院することになったとき、その医療体験ってどう変わると思いますか?
自分が受ける医療がどう変わるか。
ええ。その課題同士の相互作用みたいなものを少し想像してみるのも面白いかもしれませんね。
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