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2026-10-08 06:36

在宅自己注射にバイオ後続品2剤の追加案|中医協第650回を解説

令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、バイオ後続品2剤を在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加する案が示されました。この追加の可否は、患者が自宅で注射を続けられるかどうかと、医療機関が診療報酬を算定できるかどうかを左右します。本号では、追加案の根拠と、医療機関が押さえるべき実務上の留意点を解説します。

追加案の内容は、オマリズマブBS皮下注「CT」とゴリムマブBS皮下注50mgシリンジ「F」の2剤を、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に加えるというものです。第一に、先行品が対象となっているバイオ後続品は、運用基準により品目ごとに中医協で審議される仕組みになっています。第二に、オマリズマブBS「CT」は、効能効果や用法・用量等が先行品ゾレアと同等と評価されました。第三に、ゴリムマブBS「F」は、効能効果が関節リウマチのみですが、効能効果や用法・用量等が先行品シンポニーと同等と評価されました。

1. バイオ後続品は品目ごとに中医協で審議される

バイオ後続品の在宅自己注射の対象追加は、先行品が対象であっても自動的には認められません。中医協の運用基準が、先行品が対象となっているバイオ後続品について「当分の間、個別品目毎に中医協において審議する」と定めているためです。

この運用基準は、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤を決めるためのルールです。運用基準は平成28年8月24日に中医協総会で承認され、令和5年8月23日に改正案が承認されました。在宅自己注射指導管理料(C101)とは、患者が自宅で自分に注射できるよう医師が指導・管理した場合に算定する診療報酬です。

運用基準は、対象薬剤に対して、頻回投与または発作時の緊急投与が必要な注射剤であることを前提に、主に3つの要件を求めています。1つ目は、関連学会のガイドライン等で在宅自己注射の診療上の必要性が確認されていることです。2つ目は、維持期の投与間隔が概ね4週間以内であることです。3つ目は、学会から追加の要望書が提出されていることです。

先行品が対象となっているバイオ後続品は、先行品との比較等を踏まえて審議されます。バイオ後続品(バイオシミラー)とは、すでに承認されたバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)と同等・同質の品質、有効性、安全性をもつとして承認された医薬品です。今回の2剤は、いずれも先行品がすでに在宅自己注射の対象となっています。そのため、今回の資料では「先行品との比較」「バイオ後続品の治験成績」「先行品の市販後の安全性」の3点が示されました。

2. オマリズマブBS「CT」は先行品ゾレアと同等と評価された

オマリズマブBS「CT」は、効能効果、用法・用量、主な副作用のすべてが先行品ゾレアと同じです。資料は、この同等性に加え、先行品の使用状況等にも特段の問題はないと考えられることから、対象薬剤への追加を提案しています。

オマリズマブBS「CT」は、令和8年3月に薬事承認されたヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤です。製品は、75mgと150mgのシリンジ製剤とペン製剤の計4品目です。効能効果は、先行品と同じく、難治の気管支喘息、重症または最重症の季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つです。先行品ゾレアは、平成21年に薬事承認され、令和3年に在宅自己注射の対象に追加されています。

オマリズマブ製剤は、季節性アレルギー性鼻炎への使用が、保険医が投与できる注射薬の範囲から除かれています。厚生労働大臣が定める注射薬の告示では、「オマリズマブ製剤(季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く。)」と規定されています。したがって、効能効果が3つあっても、現行の告示上、在宅自己注射として投与できるのは季節性アレルギー性鼻炎以外の用途に限られます。

オマリズマブBS「CT」の治験では、先行品との臨床的同等性が確認されました。治験は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の治療下でも症状のある特発性の慢性蕁麻疹患者を対象とした海外第Ⅲ相試験です。主要評価項目は、300mg投与時の投与12週後におけるISS7(7日間のかゆみの重症度スコア)のベースラインからの変化量です。この評価で、95%信頼区間は事前に規定した同等性許容域(-2.0~2.0)の範囲内でした。24週まで本剤300mgを継続投与した群の副作用発現割合は8.4%(17/203例)でした。先行品300mgから本剤300mgへ切り替えた群の副作用発現割合は12.5%(12/96例)でした。主な副作用は両群とも注射部位反応で、それぞれ4例(2.0%)、6例(6.3%)でした。

先行品ゾレアの市販後調査では、添付文書の記載変更を要するような問題は見つかっていません。安全性解析対象46例の特定使用成績調査では、副作用発現割合は2.2%(1/46例)でした。この割合は承認時の臨床試験の1.2%(2/161例)を上回りましたが、副作用は添付文書で注意喚起済みの非重篤な注射部位疼痛1例のみでした。特定使用成績調査Ⅰでは、副作用発現割合は10.2%(13/127例)でした。この割合は、日本人のアレルギー性喘息患児を対象とした承認時の臨床試験の26.3%(10/38例)より高くありませんでした。投与量換算表の変更後の用法・用量を対象とした特定使用成績調査Ⅱでは、副作用発現割合は6.6%(26/392例)でした。この割合は、変更前の用法・用量で投与した気管支喘息患者の調査結果(8.1%、292/3,620例)より高くありませんでした。

オマリズマブBS「CT」の追加は、2つの学会から要望されています。日本アレルギー学会は2026年(令和8年)3月16日に、日本小児アレルギー学会は同年3月26日に要望書を提出しました。両学会は、就労・就学中の世代の患者にとって通院の時間的制約や身体的・経済的負担が大きい点を、要望の理由に挙げています。

3. ゴリムマブBS「F」は先行品シンポニーと同等と評価された

ゴリムマブBS「F」は、関節リウマチに対する効能効果、用法・用量、主な副作用が先行品シンポニーと同じです。資料は、この同等性に加え、先行品の使用状況等にも特段の問題はないと考えられることから、対象薬剤への追加を提案しています。

ゴリムマブBS「F」は、令和7年9月に薬事承認されたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤です。製品は、50mgシリンジ製剤の1品目です。効能効果は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)のみです。先行品シンポニーがもつ潰瘍性大腸炎の効能効果は、ゴリムマブBS「F」にはありません。先行品シンポニーは、平成23年に薬事承認され、平成30年に在宅自己注射の対象に追加されています。

ゴリムマブBS「F」の治験では、先行品との有効性の同等性が検証されました。治験は、メトトレキサートを併用する中等度から重度の関節リウマチ患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験です。主要評価項目である第16週までの疾患活動性スコア(DAS28-CRP)の変化量は、先行品との最小二乗平均値の差の95%信頼区間が、事前に規定した同等性許容域(-0.6~0.6)の範囲内でした。投与開始から本剤を投与した群の副作用発現割合は12.4%(31/251例)でした。主な副作用は、AST増加5例(2.0%)とALT増加4例(1.6%)でした。16週以降に先行品から本剤へ切り替えた群の副作用発現割合は10.7%(12/112例)でした。主な副作用は、AST増加2例(1.8%)とALT増加2例(1.8%)でした。

先行品シンポニーの市販後調査では、長期投与における新たな安全性上の問題は認められていません。使用成績調査では、副作用発現割合は15.0%(772/5,137例)でした。この割合は、承認時の国内臨床試験の77.3%(449/581例)を上回りませんでした。長期使用に関する特定使用成績調査Ⅰでは、副作用発現割合は31.9%(107/335例)で使用成績調査より高めでしたが、承認時の77.3%は上回りませんでした。悪性腫瘍と重篤な感染症を対象とした特定使用成績調査Ⅱ(観察期間5年間)では、これらの副作用発現割合の明らかな増加は認められませんでした。ただし、承認時の臨床試験とは患者背景や観察期間が異なるため、直接の比較は困難とされています。

ゴリムマブBS「F」の追加は、日本リウマチ学会から要望されています。日本リウマチ学会は、令和7年8月22日に要望書を提出しました。学会は、関節リウマチの治療が長期に及び、患者の多くが労働者世代である点を、要望の理由に挙げています。

4. 対象に追加されても指導管理の留意事項は変わらない

2剤が対象薬剤に追加された場合も、在宅自己注射の実施には既存の対象薬剤と同じ留意事項が適用されます。医療機関は、バイオ後続品を導入する際も、厚生労働省の通知(保医発第0427002号、平成17年4月27日)に示された4つの留意事項を守る必要があります。

1つ目の留意事項は、指導管理を行う医師の要件です。指導管理は、対象疾患の診療を日常的に行い、十分な経験をもつ医師が行います。

2つ目の留意事項は、導入前の教育期間です。在宅自己注射の導入前には、入院、または週2回もしくは3回以上の外来・往診・訪問診療により、十分な教育期間を設けます。

3つ目の留意事項は、かかりつけ医との連携です。かかりつけ医と異なる医師が指導管理を行う場合は、緊急時の対応などについて、かかりつけ医と十分に連携します。

4つ目の留意事項は、廃棄物の処理です。在宅自己注射の実施に伴う廃棄物の適切な処理方法も、あわせて患者に指導します。

まとめ:バイオ後続品2剤は先行品と同等と評価され、在宅自己注射の対象追加が提案された

第650回中医協総会では、オマリズマブBS「CT」とゴリムマブBS「F」を在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加する案が示されました。先行品が対象となっているバイオ後続品は、運用基準により品目ごとに中医協で審議されます。オマリズマブBS「CT」は、効能効果や用法・用量等が先行品ゾレアと同等と評価されました。ゴリムマブBS「F」は、効能効果が関節リウマチのみですが、先行品シンポニーと同等と評価されました。今回示されたのは対応「案」であるため、最終的な取扱いと適用時期は、今後の告示・通知で確認してください。



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サマリー

中医協で示された、バイオ後続品2剤を在宅自己注射の対象に追加する案を解説します。先行品が対象でも自動的に認められず、品目ごとに同等性や安全性、学会の要望が確認されます。オマリズマブは季節性アレルギー性鼻炎を除く用途、ゴリムマブは関節リウマチのみが対象です。追加後も、医師の指導、導入前教育、かかりつけ医との連携、廃棄物処理という4つの安全管理は変わりません。

バイオ後続品が個別審議される理由
もしあなたが慢性疾患を抱えていて、やっと自宅で自分で注射を打てる、そういう便利な新薬が出たって聞いたら、すぐに使えるって思いますよね。
普通はそう期待するんじゃないかなと思います。
ですよね。でも実は医療の世界では、オリジナル薬が家で打てても、そのコピー薬は自動的にはOKにならないっていう、ちょっと不思議な壁が存在するんです。
はい。ここで非常に興味深いのは、単なる新薬の承認っていう事務的な話じゃなくてですね、患者さんの生活の質とその安全性をどう天秤にかけるかっていう、医療制度の最前線が見えてくる点なんですよ。
なるほど。ということで今回の深掘りのテーマは、中医教で示された在宅自己注射への培養後続品2剤の追加案についてです。
忙しいあなたが、その慢性疾患の治療負担を減らす最新の医療動向を手早くかつ深く理解するための時間です。
では早速この複雑なルールの裏側を紐解いていきましょう。
まず驚くのが、新しい薬が自己注射の対象になるための前提条件ですよね。
はい、そこがすごく重要でして。
オリジナルである先行品がすでに自宅で打てるからといって、後から出た薬が自動的に認められるわけじゃないっていう。
そうなんですよ。中医教の運用基準では、先行品がすでに対象であっても、当分の間は個別品目に審議するって厳密に定められているんです。
個別になんですね。それはどうしてそこまで慎重になるんでしょうか。
これはバイオ後続品っていう薬の特殊性が関係しています。
一般的なジェネリック医薬品みたいな化学合成の薬と違って、バイオ医薬品は生き物の細胞を使って作られるんですね。
なるほど。生き物がベースだから、工場で全く同じものを量産するみたいに100%同じコピーを作ることは不可能だっていうことですか。
その通りです。だからジェネリック、つまり同じではなくてシミラー、似ているって呼ばれるんです。
2剤の適応範囲と安全性
だからバイオシミラーなんですね。
その性質があるからこそ品目ごとに個別審議されるっていう厳格な壁が設けられているんです。
同等性が証明された薬でも、現場の医師たちからなる関連学会から個別の要望書が出ているかとか、安全性は本当に担保されているかとか、一つ一つ確認のステップを踏むわけです。
つまり兄である先行品がVIPルームにいるからといって、弟がカオパスで入れるわけではないと。
まさにそういうことです。
100%同じ双子じゃなくて、限りなく似ている兄弟だからこそ、身分証明書だけじゃなくて、専門家からの推薦書まで細かくチェックされるわけですね。
すごくわかりやすい例えですね。そして今回、その厳しい審議をクリアして追加が提案されたのが、オマリズマブとゴリムマブっていう2つのバイオ拘束品なんです。
ついにクリアしたんですね。
はい。でもここでまた注意が必要でして、知見で先行品と同等と評価されても、使い方が完全に同じになるわけではないんですよ。
ここからがこの制度のちょっとトリッキーな部分ですよね。
例えば、オマリズマブは機関紫前足とか慢性腎マシンには自己注射できるのに、ルールの告示上だと季節性アレルギー性鼻炎は自己注射の対象外になるんですよね。
そうなんです。
効能としては認められているのに、家で打つのはダメって、何か矛盾してませんか?
一見そう見えますよね。でもこれには明確な理由があって、季節性アレルギー性鼻炎に対する使用は症状が出る時期が限定的で、しかも重症度も変わりやすいんです。
花粉の時期とか日によっても全然違いますもんね。
だからこそ、医師の厳密な管理下で直接状態を見ながら投与することがより推奨されるケースがあるからなんです。
なるほど。安全第一ってことですね。じゃあもう一つのゴリムマブの方はどうなんですか?
こちらもですね、先行品が持っている海洋性大腸炎の効能がなくて、関節リウマチのみが対象になっています。
それはきっと、その特定の病気に対する先行品の特許がまだ切れていなかったりとか、あるいは後続品としての知見データがまだ不十分だったりするからなんでしょうか?
はい、そういう背景がありますね。
在宅自己注射を支える4つの留意事項
ただ、対象となった関節リウマチの知見データを見ると、ゴリムマブ後続品を投与したグループの副作用発現割合は12.4%と、先行品の試判後調査の範囲内にしっかり収まっているんです。
つまり、データで安全性が完璧に証明されていて、かつ特許などの条件もクリアした特定の適応症にだけ許可を出しているわけですね。
ええ、まさにそういうことです。
薬の選択肢があなたにとって増えるのは嬉しいことなんですけど、手放しで何でも自由になるわけじゃないんですね。
はい。利便性が上がっても、医療機関が守るべき4つの鉄則っていうのは一切変わらないんです。
4つの鉄則ですか?
ええ。十分な経験を持つ医師が指導すること、導入前に十分な教育機関を設けること、それからかかりつけ医としっかり連携すること。
なるほど。
そして、医療廃棄物を適切に処理すること。これらは既存のルールのまま少しも緩和されていません。
家で注射できるからといって、医師の手を離れるわけではないんですね。
生き物の細胞を使った複雑な薬だからこそ、家っていう密室で使うための安全ネットは絶対に外さないぞっていう、医療現場の強い意思を感じます。
通院負担の軽減と医療制度の未来
本当にそうですね。関連学会がこれらの薬の追加を強く要望した最大の理由は、就労や就学をしている世代の患者さんが頻繁な通院のために休んだりする身体的とか経済的な負担を減らすためでしたから。
一見するとすごく官僚的で融通が効かないように見える医療ルールの壁ですけど、実は生きた細胞から作られる薬の予測不能さから、あなたを守るための究極のオーダーメイドな安全対策だったんですね。
患者さんの生活を守るための慎重な一歩と言えますね。
では最後にリスナーのあなたに新たな問いを投げかけたいと思います。
働きながら治療を続ける現代のライフスタイルが、今後の日本の医療制度やルールをさらにどう変えていくのか。
もしかすると、ゆくゆくは自宅そのものがあなたにとっての最大の治療室になり、病院という場所の定義すら変わってしまうかもしれません。
新しい生き方が医療の常識をどうアップデートしていくのか、そんな未来についてぜひ考えてみてください。
06:36

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