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2026-10-09 06:07

エドスチラドリンを「医薬品の例」で扱う案|中医協第650回の要点

令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、再生医療等製品「エドスチラドリン膀胱内注入液」の医療保険上の取扱いが議題になりました。再生医療等製品は、医薬品とも医療機器とも異なる製品区分のため、保険適用のたびに「どちらの例で扱うか」を判断する必要があります。本号では、エドスチラドリンの製品概要、示された取扱い案、その判断の根拠となるルールを解説します。

結論として、エドスチラドリンは「医薬品の例により対応する」ことが提案されました。エドスチラドリンは、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する、高リスクの膀胱癌に用いる遺伝子治療用製品です。取扱い案では、薬価算定組織が償還価格を検討し、中医協総会が薬価基準への収載を審議します。この判断は、平成26年11月に中医協が了承した「製品ごとに医薬品か医療機器かを判断する」ルールに基づいています。

エドスチラドリンはBCG治療後に残存・再発した膀胱癌への遺伝子治療用製品

エドスチラドリンは、ウイルスベクターを使って膀胱内でインターフェロンを作らせる製品です。本節では、製品の基本情報、作用の仕組み、臨床試験の成績、承認条件を順に紹介します。

基本情報として、エドスチラドリンは希少疾病用の新再生医療等製品に区分されます。一般的名称は「ナドファラゲン フィラデノベク」、収載希望者はフェリング・ファーマ株式会社です。対象は、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する、高リスクの筋層非浸潤性膀胱癌です。ただし、BCG膀胱内注入療法を再び行う適応とならない患者に限られます。用法は、通常、成人に1回あたり75mL(3×10^11 vp/mL)を3カ月間隔で膀胱内に投与する方法です。

用語メモ

* 筋層非浸潤性膀胱癌:癌が膀胱の筋肉の層まで達していない膀胱癌です。

* BCG膀胱内注入療法:結核ワクチン(BCG)を膀胱内に入れ、免疫の力で癌を抑える標準的な治療です。

作用の仕組みとして、エドスチラドリンは膀胱の細胞に感染して抗腫瘍タンパク質を作らせます。エドスチラドリンの主成分は、ヒトインターフェロンアルファ-2b(IFNα2b)の遺伝子を搭載した、増殖しない遺伝子組換えヒトアデノウイルスです。このウイルスは、膀胱内に投与されると尿路上皮細胞と膀胱癌細胞に感染します。感染した細胞では、搭載された遺伝子発現構成体が核内に留まり、IFNα2bタンパク質を作らせます。感染細胞から分泌されたIFNα2bは、抗腫瘍免疫応答を強めるなどして、腫瘍細胞を死滅させると期待されています。

臨床試験の成績として、海外と国内の2つの第Ⅲ相試験で、完全奏効率が事前に定めた閾値を上回りました。2つの試験は、いずれも比較対照群を置かない非盲検非対照試験です。完全奏効率とは、尿細胞診と膀胱鏡検査(必要に応じて生検)で評価し、高グレード病変の再発が認められないなどの基準を満たした患者の割合です。この基準では、低グレード病変が見つかった場合でも、高グレード病変の再発がなければ完全奏効とみなされます。海外試験(rAd-IFN-CS-003試験)では、上皮内癌を併発したコホートにおける初回投与後3カ月までの完全奏効率が53.4%(55/103例)でした。この結果の95%信頼区間(43.3~63.3%)の下限は、事前に定めた閾値27%を上回りました。国内試験(000381試験)では、同じ指標の完全奏効率が75.0%(15/20例)でした。この結果の95%信頼区間(50.9~91.3%)の下限も、事前に定めた閾値2%を上回りました。

承認条件として、エドスチラドリンには3つの条件が付いています。1つ目は、製造販売後、一定数のデータが集まるまで全症例を対象に使用成績調査を行うことです。2つ目は、膀胱癌に十分な知識と経験を持つ医師が、本品の臨床試験成績や有害事象の知識を習得した上で、治療体制の整った医療機関で使用することです。3つ目は、遺伝子組換え生物の使用を規制する法律(いわゆるカルタヘナ法)に基づく「第一種使用規程」を守って使用することです。

取扱い案は「医薬品の例により対応」し、薬価基準への収載を審議する

エドスチラドリンの取扱い案は、医薬品と同じ流れで価格を検討し、保険適用を審議するものです。本節では、医薬品の例とする理由と、今後の手続きを説明します。

医薬品の例とする理由は、エドスチラドリンが医薬品と同様の使用方法と作用で治療効果を期待される製品だからです。エドスチラドリンは、膀胱内に注入し、体内の細胞に作用して効果を発揮します。この点を踏まえ、取扱い案は「医薬品の例により対応する」としています。

今後の手続きは、薬価算定組織による価格の検討と、中医協総会による収載の審議の2段階です。第1段階では、薬価算定組織が償還価格(保険から医療機関に支払われる価格)を検討します。第2段階では、中医協総会が、その検討結果を踏まえて薬価基準への収載を審議します。薬価基準に収載されると、エドスチラドリンは保険診療で使えるようになります。なお、今回の資料は「医療保険上の取扱い(案)」として示されたものであり、薬価基準への収載は今後の審議事項です。

用語メモ

* 薬価基準:保険で使える医薬品と、その価格を定めた一覧です。

* 薬価算定組織:新しい医薬品の価格を専門的に検討する組織です。

判断の根拠は平成26年に了承された「製品ごとに判断する」ルール

エドスチラドリンを医薬品の例で扱う案は、中医協が過去に了承したルールに沿ったものです。本節では、平成26年のルールと、令和8年1月に了承された条件及び期限付き承認製品の取扱いを紹介します。

平成26年11月のルールは、再生医療等製品を医薬品か医療機器のどちらの例で扱うかを、製品ごとに判断する「当面の間の対応」です。このルールでは、保険適用を希望された個別製品の特性を踏まえ、薬事承認の結果を踏まえて判断します。医薬品の例なら薬価算定組織が、医療機器の例なら保険医療材料専門組織が償還価格を検討します。その結果を踏まえて、中医協総会が薬価基準または材料価格基準への収載を審議します。また、知見が蓄積した後には、再生医療等製品独自の体系を作るかどうかなどを引き続き検討するとされています。エドスチラドリンの取扱い案は、このルールの「医薬品の例」の流れに当てはめたものです。

令和8年1月の取扱いは、条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品も、通常の承認を受けた製品と同様に判断することを確認したものです。条件及び期限付き承認とは、有効性が推定された段階で、条件と期限を付けて承認する仕組みです。令和8年1月14日の中医協総会では、この承認を受けた製品を医薬品・医療機器のどちらの例で算定するかについて、通常の承認と同様に薬事承認の結果を踏まえて判断すると了承されました。さらに、事例が集まるなど状況が変化した場合は、中医協総会に報告し、必要であれば取扱いの見直しを審議するとされています。なお、エドスチラドリンの承認区分は「新再生医療等製品(希少疾病用再生医療等製品)」であり、資料に条件及び期限付き承認との記載はありません。

まとめ:エドスチラドリンは医薬品と同じ流れで薬価基準への収載が審議される

第650回中医協総会では、再生医療等製品エドスチラドリンを「医薬品の例により対応する」案が示されました。エドスチラドリンは、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する、高リスクの膀胱癌に用いる遺伝子治療用製品です。今後は、薬価算定組織が償還価格を検討し、中医協総会が薬価基準への収載を審議します。この判断は、平成26年に了承された「製品ごとに医薬品か医療機器かを判断する」ルールに基づいています。今後の薬価算定と収載の審議の結果に注目しましょう。



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サマリー

中医協第650回総会の資料をもとに、再生医療等製品エドスチラドリンの保険上の扱いを解説する。エドスチラドリンは、アデノウイルスを使って膀胱の細胞に抗腫瘍タンパク質を作らせる、高リスク膀胱癌向けの遺伝子治療用製品として紹介される。国内試験では完全奏効率75%だった一方、再生医療等製品は医薬品か医療機器かに分類して薬価を決める必要があり、分類によって価格計算や医療機関の負担が変わると説明される。今回は、体内に注入して細胞に作用する特性と平成26年のルールに基づき、医薬品の例として扱うことになった。カルタヘナ法に伴う管理負担にも触れ、将来は既存の二分類とは異なる評価制度が必要になる可能性を論じている。

エドスチラドリンと高リスク膀胱癌
もし、あのタイムマシンを発明したとしてですよ。 いざ使おうとしたら、役所の窓口で
えーっと、これは自動車として登録しますか?それとも飛行機ですか? なんて聞かれる。皆さんそんな場面をちょっと想像してみてください。
ああ、それはなんというか、すごくもどかしい状況ですよね。 そうなんですよ。でも実は今、日本の医療の最前線でまさにこれと同じようなことが起きてるんです。
今回の探究では、SF映画みたいな最新の遺伝子治療が、日本のまあ、お役所仕事というか、家体制度にどう組み込まれるのかを解明していきます。
はい。今日の情報源は、日本の医療価格などを決める中医協、えー、中央社会保険医療協議会の第650回総会の資料ですね。
一見すると無味乾燥な議事録なんですけど、皆さんも一緒に読み解いていくと、最先端の科学と現実のルールの摩擦が見えてきてすごく面白いんですよね。
そうですね。特に今回の議題になっているアドスチラドリンというあの新しい治療薬、これを追っていくとその摩擦がくっきりと浮かび上がってきます。
じゃあ早速そのアドスチラドリンについて深掘りしていきましょう。 これ資料によると膀胱癌の治療薬なんですよね。
標準的なBCG療法が効かなくなった高リスク患者向けってありますけど。
はいその通りです。これまでの標準治療が効かないとなると通常は膀胱の全適室という患者さんにとって非常に重い決断を迫られる段階なんです。
全適室ですか。それはきついですね。
ウイルスで細胞に治療物質を作らせる仕組み
そこで登場するのがこの新薬です。これはあの、アデノウイルスというウイルスを運び屋として使ってですね。
ウイルスを運び屋に?
そうなんです。抗腫瘍タンパク質を作る遺伝子を膀胱の細胞に直接届けるという仕組みになっています。
ちょっと待ってください。それってつまりウイルスの運び屋を使って患者自身の細胞をハッキングしちゃうってことですか?
ハッキングですか。なるほど。
なんか自分の細胞のプログラムを書き換えて、ガンと戦うための専用工場にしてしまうようなそんなイメージを持ったんですけど。
それは非常に的を得た例えですね。外から薬を投与するんじゃなくて、体内で自前の薬を継続的に作らせるわけですから。
いやーすごい時代になりましたね。本当に。
完全奏効率75%と再生医療等製品の分類問題
しかも驚くべきは、ガンが完全に消える完全走行率のデータなんですよ。
どれくらいなんですか?
従来の基準だと、この段階の患者さんへの期待値ってわずか2%だったんです。
たったの2%ですか?
はい。それが今回の国内試験では、なんと75%という結果を叩き出したんです。
2%が75%?ちょっと信じられない数字ですね。
それって単なる改善じゃなくて、もう絶望的だった状況から暴行を残せる確率が劇的に跳ね上がったってことじゃないですか?
まさにゲームのルールが根本から変わるような画期的な技術です。
でもここからが今日の最大のポイントですよね。
これほど画期的な患者さんの細胞をこういうように変えちゃうような技術が、
なぜ政府の会議室で自動車か飛行機かみたいな議論になってるんですか?
それがですね、今の日本の制度上、こういう再生医療等製品って
従来の医薬品とも医療機器とも違う全く新しいカテゴリーになっちゃうんですよ。
枠に収まらないんですね。
はい。ただ皆さんが保険を使って治療を受けるためには、
いくらにするかという薬価を既存のルールの枠内で決めないといけないんです。
まあそれはわかりますけど、でも分類ってそこまで重要なんですか?
薬だろうが医療機器だろうが、最終的に患者に届いて値段が決まればいいじゃないかって思っちゃうんですが。
いやいや、これが皆さんの財布や日本の医療の未来に直結する大問題なんですよ。
え、どういうことですか?
例えば、医薬品の枠組みになれば、既存の似た薬の価格をベースに計算されます。
カルタヘナ法と医薬品の例での取扱い
一方、医療機器扱いになると、特殊な注入器具の開発費とか製造コストが考慮されやすくなるんです。
なるほど。分類次第で値段の計算方法が全然違うんですね。
そうなんです。もし間違った枠に押し込められて、開発コストを回収できないような安値になれば、製薬会社は日本市場から撤退してしまうかもしれません。
ってことは、今日これをお聞きの皆さんが、将来この治療を受けられなくなるかもしれないってことですか?それは困りますね。
さらに言えば、このアドシチラドリンは遺伝子を組み替えたウイルスを使うので、カルタヘナ法という環境保護の厳しい法律の対象になるんです。
カルタヘナ法ですか?
はい。単なる錠剤を扱うのとは違って、病院側はバイオハザードに近い厳重な管理体制をしかないといけません。
病院からすれば、ただの薬じゃなくて特殊な生物を扱うようなコストと手間がかかるわけですね。だから今回、中医協はこの製品をどう扱うかものすごく悩んだと。
そうです。結果的に今回は、平成26年のルールに基づいて、体内に注入して細胞に作用する特性から、医薬品の例として扱うことになりました。
なるほど。なんとか既存の枠に当てはめたんですね。
将来の第三の評価制度
普段私たちが何気なく受けている医療の裏側には、科学者たちの努力だけじゃなくて、新しい科学と古いルールを擦り合わせる、こういう地道なプロセスがあるんだなって実感しました。
ええ。画期的な技術も社会に実装するための配管がなければ誰の手にも届きませんからね。
本当にそうですね。でも、ふと考えてしまうんです。今後、皆さんの細胞や遺伝子を書き換えるような技術がごく当たり前のものになったとき、果たして私たちの社会は、これは薬ですか、医療機器ですか、という古い二元論のままでいいんでしょうか?
そう遠くない未来に間違いなく限界が来るでしょうね。
ですよね。もしかしたら、全く新しい第三の評価制度を根本から作り出す時期がもう来ているのかもしれません。皆さんはどう思われますか?ぜひ一緒に考えてみてください。
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