痛み止めの飲み過ぎが頭痛を悪化させる|脳外科医が教える月10日の境界線
頭痛が起きたら痛み止めを飲む。この当たり前の対処が、頭痛を悪化させることがあります。日本では2〜3%、200万人以上がこの状態に該当するとされています。しかも、その多くが自分の飲み過ぎに気づいていません。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、痛み止めと頭痛の関係を聞きました。山本先生が伝えるのは、飲み過ぎの基準を知り、正しいタイミングで正しい薬を使うという原則です。第一に、飲み過ぎの基準は回数ではなく日数であり、複合鎮痛薬は月10日、単一成分薬は月15日が境界線です。第二に、片頭痛専用のトリプタンでさえ月10日以上で同じ問題を起こす一方、最新のCGRP阻害薬はこの問題を起こしません。第三に、薬は頭痛の起こり始めに「狙い撃ち」してこそ効きます。飲み過ぎの基準は回数ではなく日数痛み止めの飲み過ぎで悪化する頭痛には、正式な名前があります。かつては「薬物乱用頭痛」と呼ばれていました。響きが悪いことから、現在は「薬剤の使用過多による頭痛」に名称が変わっています。市販の複合鎮痛薬などを慢性的に飲み過ぎることで、かえって頭痛がひどくなる現象です。この状態にある人は、日本で2〜3%、200万人以上とされています。ただし山本先生は、実感としてはもっと多いのではないかと述べています。理由は把握のしにくさにあります。医師はお薬手帳で処方薬を確認できますが、患者が自分で買って飲む市販薬までは追えません。飲み過ぎの基準は、薬のタイプによって2つに分かれます。イブやバファリンなどの複合鎮痛薬は、月10日以上が基準です。週2〜3回のペースが、すでにこの線を超えます。ロキソニンやカロナールなどの単一成分薬は、月15日以上が基準です。2日に1回以上飲んでいれば、この線を超えます。ここで最も誤解されやすいのが、基準の数え方です。基準になるのは回数ではなく日数です。1日に3回飲んでも、1日とカウントされます。「6時間以上空けて飲んでいるから大丈夫」という理解は、この点で成り立ちません。山本先生は、これを「なかなか誰も教えてくれない事実」だと語ります。複合鎮痛薬が飲み過ぎに陥りやすい理由は、成分にあります。市販薬の裏面には、無水カフェインが高い頻度で含まれています。加えて、長いカタカナのあとに「尿素」と付く成分も入っています。この尿素系成分は海外の鎮痛薬には含まれていませんが、日本の複合鎮痛薬には入っており、依存する傾向を誘発します。よく効くと感じるからこそ、飲む日数が増えていきます。専用薬にも基準があり、最新薬にはない飲み過ぎの問題は、市販薬に限りません。片頭痛には、トリプタンという専用薬があります。トリプタンは頭痛の起こり始めに飲めば高い効果を発揮し、痛みをしっかり抑えます。しかし、そのトリプタンでさえ、月10日以上の内服で薬剤の使用過多による頭痛を起こします。基準は、複合鎮痛薬と同じです。この事実は、ひとつの矛盾を生みます。頭痛の頻度が多い人ほど、トリプタンを飲む日数が増えます。頭痛を良くするために飲んでいるのに、飲むことで余計にひどくなる。山本先生が予防治療の発信に力を入れる理由が、ここにあります。そもそも頭痛の回数を減らさなければ、この循環から抜け出せません。回数を減らす手段が、CGRP阻害薬です。CGRPは片頭痛の起こり方に関わる物質であり、これをブロックする薬が頭痛の頻度を劇的に減らします。さらにCGRP阻害薬には、これまでの薬にない特徴があります。どれだけ飲んでも、飲み過ぎによる頭痛にならないという点です。山本先生は、これを従来薬との大きな違いとして挙げています。薬は起こり始めに狙い撃つ飲む薬が正しくても、飲むタイミングが遅ければ効きません。片頭痛が大きくなってから飲んでも、まったく効かない。これは最新の薬でも同じです。ベストなタイミングは、「ちょっと痛いな」と感じる起こり始めです。山本先生は、この飲み方を「狙い撃ち」と表現します。狙い撃ちの対極にあるのが、「乱れ打ち」です。起こりそうだからとりあえず複合鎮痛薬を飲む。痛みが大きくなってからいっぱい飲む。我慢しているうちに、どんどんひどくなる。この飲み方が、飲み過ぎの状態をつくります。同じ「薬を飲む」でも、狙い撃ちと乱れ打ちはまったく違う行為です。狙い撃ちを可能にするのが、予兆の把握です。片頭痛には予兆があります。首や肩が強く凝って張ってくる。天気が変わる、雨が降る。人によっては、天気が良くなるときに起こります。自分がいつも頭痛を起こすパターンを知っておけば、予兆の段階で早めに専用薬を飲み、痛みが大きくなる前にやっつけられます。こうした情報が届いていない現状を、山本先生は大きな問題と捉えています。毎日痛み止めを飲む状態が何十年も続いた人は、なかなか元に戻りません。市販薬を売る現場にいる薬剤師や販売員は、この状態を防ぐ「ガードレール」になり得ます。しかし医師ひとりが日本中の薬局を回ることはできません。だからこそ、医師だけでなく薬剤師や販売員を含めた多くの人による啓発が必要だと語ります。まとめ:飲み過ぎに気づいても、手遅れではない痛み止めの飲み過ぎは、頭痛を悪化させます。基準は回数ではなく日数であり、複合鎮痛薬は月10日、単一成分薬は月15日が境界線です。専用薬のトリプタンにも月10日の基準がある一方、CGRP阻害薬は飲み過ぎによる頭痛を起こしません。そして薬は、頭痛の起こり始めに狙い撃ちしてこそ効きます。「自分は飲み過ぎかもしれない」と感じた方へ。手遅れということはありません。医師に怒られるのではないかという不安も、必要ありません。頭痛専門医はこうした患者に慣れており、温かく話を聞いたうえで、良くしていく道筋を一緒に描きます。頭痛治療はここまで進化しています。人生が変わる可能性のあるチャンスを、取り逃さないでください。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
月28日の片頭痛がゼロに|CGRPが変えた最新の予防治療を脳外科医が解説
片頭痛の予防治療は、長いあいだ「半分に減らせれば上出来」の世界でした。月30日のうち28日痛む患者を14日まで減らす。その限界が10年以上続いてきました。しかし今、28日をゼロにする治療が現実になっています。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、片頭痛治療に何が起きたのかを聞きました。山本先生が語るのは、片頭痛が「我慢する病気」から「解放される病気」へ変わったという事実です。第一に、変化の起点はCGRPという物質の発見であり、片頭痛の発症メカニズムがほぼ解明されました。第二に、CGRPをブロックする月1回の注射と新しい飲み薬が、片頭痛専用の薬として登場しました。第三に、これらの薬は副作用がほとんどなく、数%に軽い便秘が起こる程度です。CGRPの発見が片頭痛治療を変えた片頭痛の予防治療そのものは、決して新しい考え方ではありません。予防治療とは、痛みが起きてから薬を飲むのではなく、毎日の服薬や定期的な注射で頭痛の回数そのものを減らすアプローチです。日本でも2010年頃から、この考え方は存在していました。ただし、当時の予防薬には出自の問題がありました。使われていたのは、てんかんの薬など、片頭痛とは関係のない薬剤の転用です。「頭痛にも効くじゃないか」という発見から使い始めた経緯であり、効果はあっても限界がありました。月28日の頭痛を14日にする。その壁が10年以上動きませんでした。この壁を壊したのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の発見です。CGRPは、片頭痛が起こる原因そのものに関わる物質です。原因に関わる物質が特定されれば、それをブロックするという治療戦略が成り立ちます。片頭痛のためだけに作られた薬が、ここで初めて可能になりました。CGRPの働きは、三叉神経血管説として説明されます。顔や脳に神経線維を送る三叉神経が、CGRPを分泌します。分泌されたCGRPが脳の血管に伝わり、血管がずきんずきんと痛む。これが片頭痛の起こり方です。山本先生は、片頭痛の発症メカニズムは「まだ完全には解明されていない」とされながらも、事実上ほぼ解明されていると述べています。注射と飲み薬という2つの選択肢がある発症メカニズムが分かれば、あとはCGRPを何らかの形でブロックするだけです。ブロックの仕方には2通りあります。ひとつは、CGRPという物質そのものをやっつける方法です。もうひとつは、CGRPを受け取る受容体をブロックする方法です。山本先生は、どちらもブロックすることに変わりはなく、細かい違いより「ブロックすれば劇的に良くなる」という理解で十分だと説明しています。治療の形は、注射と飲み薬の2つに分かれます。注射は2021年から使えるようになり、日本でも広く使われています。飲み薬は、ゲパントと呼ばれるタイプの薬が2025年末以降に登場しました。注射が苦手な人にとって、飲み薬は非常に人気のある選択肢です。効き目は注射とほぼ同等であり、頭痛が劇的に減る、あるいは起こらなくなるところまで期待できます。投与のペースは、注射なら毎月1回、飲み薬なら基本的に毎日です。予防治療である以上、頭痛が多い月も少ない月も同じペースで続けます。ただし、一生続ける必要はありません。3ヶ月ほど試して効果が良ければ、一度やめてみるという調整も実際に行われています。副作用の少なさが治療のハードルを下げたCGRP阻害薬の最も画期的な点は、効果ではなく副作用の少なさだと山本先生は言います。CGRPは全身に存在する物質です。それをブロックすれば、体のどこかに影響が出そうに思えます。しかし実際には、頭痛がなくなる以外のことがほとんど起こりません。報告されている副作用は、数%の患者に起こる軽い便秘程度です。割合そのものが低く、起きたとしても便秘薬で対応できることがほとんどです。副作用がほぼないという事実が、「まず試してみよう」という一歩のハードルを大きく下げています。治療選択肢が増えたからこそ、山本先生は発信の独立性を重視しています。片頭痛治療の進歩に伴い、多くの製薬会社がこの領域に参入しています。特定の会社に寄ることは患者の利益になりません。山本先生は製薬会社からの援助を一切受けず、自分の意思で発信することを発信の前提としています。まとめ:チャンスを逃さないでほしい片頭痛は、我慢する病気から解放される病気へ変わりました。変化の起点はCGRPの発見であり、三叉神経血管説によって発症メカニズムはほぼ解明されています。CGRPをブロックする月1回の注射と、新しく登場したゲパント系の飲み薬が、片頭痛専用の治療として使えます。しかも副作用は、数%の軽い便秘程度にとどまります。山本先生は、この治療で人生が変わった患者の顔が何人も浮かぶと語ります。子どもから大人まで、多くの人が片頭痛に悩んでいます。今からでも遅くありません。頭痛が劇的に良くなれば、その先の人生がガラッと変わります。頭痛専門医にかかり、こうした治療があることを知ること。その一歩が、かけがえのない機会につながります。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
「片頭痛=片側」は誤り|脳神経外科医が明かす頭痛の見分け方
頭痛に悩む多くの人が、市販の痛み止めで我慢したまま暮らしています。この我慢は、頭痛外来にたどり着く人の少なさと、「画像に異常がない」で終わってしまう診療経験に支えられています。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、頭痛外来の診察と治療の実際を聞きました。山本先生が伝えるのは、頭痛は正しく見分ければ減らせるという事実です。第一に、診察はまず命に関わる危険な頭痛を除外することから始まります。第二に、片頭痛と緊張型頭痛を分ける決定的な違いは、痛む場所ではなく光・音・においの過敏症状です。第三に、予防治療は月15回の片頭痛を10回、5回へと減らします。診察は危険な頭痛の除外から始まる山本先生の診察は、頭痛そのものではなく、頭痛による生活の支障を聞くことから始まります。緊張して診察室に入る患者に、いきなり痛みの性状を尋ねても、実際の困りごとは見えてきません。生活の支障を先に聞く姿勢が、患者中心の診療の入口になります。生活の支障を確認したうえで、山本先生は患者を2つのパターンに分けます。ひとつは、これまで経験のない頭痛が起きて来院する人です。もうひとつは、長年同じ頭痛で困り続けてきた人です。この2つのどちらに当てはまるかが、その後の診察の進み方を決めます。前者の「これまで経験のない頭痛」では、命に関わる頭痛を念頭に置いた質問が続きます。「人生で初めての頭痛ですか」「これまで経験がない頭痛ですか」「突然の頭痛ですか」。脳神経外科医として、山本先生はこの除外を最も大切にしています。危険な頭痛の除外には、MRI検査が欠かせません。ただし、山本先生は画像に異常がないことを終着点にしません。画像に異常がなくても起こる頭痛を一次性頭痛と呼び、その代表が片頭痛と緊張型頭痛です。「ここで終わりではないですよ」という一言が、次の治療への扉を開きます。片頭痛と緊張型頭痛を分けるのは過敏症状一次性頭痛の治療では、片頭痛と緊張型頭痛の見分けが出発点になります。この2つを分ける最大の違いは、過敏症状の有無です。過敏症状は、国際的な診断基準にも含まれる条件です。代表的な過敏症状は3つあります。光の過敏は、暗いところに行きたくなる形で現れます。音の過敏は、静かなところに行きたくなる形で現れます。においの過敏は、香水や人混みのにおいで頭痛が悪化する形で現れます。3つ目のにおいの過敏は注目されにくいものの、診断の手がかりとして重要です。過敏症状を基準に置くと、「頭の片側が痛むから片頭痛」という理解は正しくないとわかります。痛む場所は、片頭痛と緊張型頭痛を分ける決定的な条件ではありません。片頭痛の患者に緊張型頭痛が起こることもあり、複数の頭痛が混ざる状態は珍しくありません。医師でも判断が難しいからこそ、山本先生は診断基準を軸に据えています。予防治療は月15回の片頭痛を5回に減らす見分けができるようになると、患者は自分の頭痛を自分で分析できるようになります。山本先生は診断基準をスライドで詳しく説明し、判断力を患者と一緒に育てます。その結果、「先月は緊張型頭痛が多かった」「今月は片頭痛が多くて辛かった」と、患者自身が言葉にできるようになります。自己理解が進んだ患者に対して、山本先生が特に重視するのが予防治療です。予防治療は、痛みが起きてから抑えるのではなく、頭痛の回数そのものを減らすことを目指します。片頭痛には専用の薬があり、治療法は大きく進歩しています。予防治療の効果は、患者自身が数えられる形で現れます。月に15回あった片頭痛が、治療を続けるうちに10回になり、5回になります。この減り方を患者が自分で実感できることを、山本先生は診療の共有目標としています。まとめ:我慢せず、頭痛専門医への一歩を頭痛は、正しく見分ければ減らせます。診察はまず命に関わる危険な頭痛の除外から始まります。片頭痛と緊張型頭痛を分けるのは、痛む場所ではなく光・音・においの過敏症状です。そして予防治療は、月15回の片頭痛を5回へと減らします。それでも多くの人が、イブやバファリンなどの市販薬で我慢し続けています。母親が我慢する姿を見て育った人もいれば、「画像に異常はない」とロキソニンを渡されて終わった人もいます。しかし、頭痛をわかってくれる専門医は日本全国にいます。我慢をやめて受診する一歩が、生活の質を大きく変え、人生が変わるような経験につながります。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
脳外科医が実践するAI活用術|知的生産を加速する3つの極意
岡大徳のポッドキャストに、脳神経外科専門医の山本俊先生をお招きしました。山本先生は、頭痛外来で患者を診察しながら、大学院博士課程でAIを活用した研究に取り組む医師です。本記事では、現役の脳神経外科医がなぜAIエージェントを使い倒し、その知見をメルマガで発信するのか、その実践と思想を伺ったインタビュー内容をお届けします。山本先生がAIをどのように活用しているのか、その全体像を3つの切り口でお伝えします。1つ目は、Claude Codeによるデータ前処理の劇的な効率化です。2つ目は、自分の脳とAIを有機的に結合させる能動的な質問の姿勢です。3つ目は、自分自身の能力を信じて伸ばすという根本姿勢です。以下、山本先生の経歴に触れた上で、それぞれを順に解説します。山本先生の経歴とAIに本気で取り組む背景山本先生は、臨床現場での豊富な経験を持つ脳神経外科専門医であり、現在は大学院博士課程で研究に取り組んでいます。医師として臨床現場でバリバリ働いた経験を土台に、頭痛外来で患者を診察しながら研究にも従事する実践者です。詳しい経歴やAIに本気で向き合う理由は、ご本人による自己紹介記事に綴られています。▼山本先生の自己紹介記事はこちら 【自己紹介】【ver0】医療現場のガチな修羅場をくぐった脳外科医が、あなたの「つらい頭痛」になぜ本気で向き合うのかAIへの取り組みの起点は、2024年以降のAIの急速な進化にあります。山本先生は進化の著しさに注目し、人間の労働や知的生産が根本的に変わると確信しました。この確信から、まず自分の研究にAIを組み込む実践者になることから始め、得られた知見を発信する活動へとつなげています。AIによる生産性向上とのファーストタッチ:データ前処理の劇的な効率化山本先生は、昨年登場したClaude Codeを初めて研究で触った時のことを次のように語られています。従来は丸一日近くかかっていたデータ前処理が、わずか30分で完了するようになりました。この時間短縮こそが、知的生産を加速させる最初の体験となったそうです。Claude Code導入前の課題は、データ前処理に膨大な時間を要することでした。PythonやRなどのプログラミング言語を学んでも、データクリーニングやCSVファイルのバージョン管理といった泥臭い作業に時間を取られていました。1つの工程を済ませるのに丸一日かかる日もあったといいます。Claude Code導入後の変化は、作業時間の桁違いの短縮です。数時間かかっていた処理が数十分単位に短縮され、機械学習のコード作成も容易になりました。コードはPythonとして残るため、自分で内容を確認できる安心感もあります。時間短縮の効果は、新たなワークフローの構築にもつながっています。山本先生は空いた時間を活用し、Codexを活用し文献調査を行い、知識管理ツールObsidianに蓄積する仕組みを構築しました。文献管理ソフトにMCPサーバーを接続し、スキルを一度実行すれば一連の作業が完了する環境を整えています。自分の脳とAIを有機的に結合させる能動的な質問山本先生が最も重視するのは、AIに能動的に質問することで自分の脳と接続させる姿勢です。AIに調べさせるだけでは、自分自身の知的積み重ねがないまま成果物だけが完成してしまいます。この問題を避けるため、質問という行為を通じてAIの知識を自分の脳に有機的に結合させることを意識しています。質問の工夫として、山本先生は3つのテクニックを実践しています。1つ目は、AIが使った分からない用語を1つも逃さず聞き返すことです。2つ目は、AIが人間に迎合する傾向をプロンプトで抑制し、聞きたくないことまで積極的に言わせることです。3つ目は、メタ認知を引き出すために、背景にある根本的なアイデアも交えて話すよう指示することです。質問の質を高める基盤は、日常的に考える習慣にあります。山本先生は通勤中や散歩中など、パソコンから離れた時間に思考を巡らせています。考えた内容はスマホのChatGPTやClaudeに投げかけて壁打ちし、自分の脳とAIが共に加速する毎日を意識しています。自分自身の能力を信じて伸ばすという根本姿勢山本先生がメルマガを通じて伝えたいのは、自分自身の能力を信じて伸ばすというAI活用の根本姿勢です。AIに依存して自分の能力が下がるのではないかという不安を抱える人は少なくありません。この不安に対し、現場の実践者の言葉で価値ある情報を発信することに意義があると考えています。メルマガ発信のもう一つの動機は、コミュニティを通じた議論の深化です。自分の考えを発信することで多様な人と交流し、意見を交わせる場を構築したいという思いがあります。SNS初心者ながら、コミュニティの力を信じて少しずつ発信を積み重ねています。今後の発信は、一般的なAI活用と医療現場での実装の2軸で展開する予定です。特に自律型AIエージェントは、患者をよくするという臨床応用の可能性を秘めています。山本先生は、自身が医療現場で実装した結果や深く考えた内容といった一次情報にフォーカスして発信していくと語っています。まとめ:AI時代の知的生産は自分の脳を伸ばすことから現役脳神経外科医の山本俊先生は、Claude Codeによる業務効率化、能動的な質問によるAIとの有機的結合、そして自分自身の能力を伸ばす根本姿勢という3つの極意でAIを活用しています。AIに任せきりにするのではなく、自分の脳と接続させながら共に加速していく姿勢こそが、AI時代の知的生産の鍵となります。山本先生のメルマガでは、頭痛治療の専門情報に加え、医療現場でのAI実装やAIエージェント活用の一次情報が発信されます。研究や知的生産にAIをどう組み込むか、その本質に触れたい方にとって、現場の実践者だからこそ語れる貴重な内容となるはずです。▼山本俊先生のメルマガはこちらから 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
脳神経外科専門医が語る頭痛外来の真実|山本俊先生インタビュー
頭痛に悩む方は日本に数多く存在しますが、その多くが市販薬での対処を当たり前と考え、専門的な治療にたどり着いていません。この現状を変えるべく、自身も片頭痛経験者である脳神経外科専門医・山本俊先生は、頭痛外来での診療と並行して情報発信活動に取り組んでいます。今回のインタビューでは、山本先生が頭痛外来を始めた背景と、専門医だからこそ伝えられる頭痛治療の本質について、岡大徳がお話を伺いました。山本先生は脳神経外科専門医として、頭痛外来を運営しています。頭痛外来では、初めて激しい頭痛を経験した患者さんと長年頭痛に悩み続けてきた患者さんの2種類に対し、それぞれに合わせた診療を実践しています。さらに、自身の片頭痛経験を活かした患者さんへの共感と、Substackを通じた情報発信により、頭痛外来に来られない方にも届く取り組みを進めています。山本先生の経歴と頭痛外来への取り組み山本俊先生は、脳神経外科専門医として臨床経験を積み、現在は博士課程に在学しながら頭痛外来を運営しています。命に関わる頭痛を数多く診てきた経験が、患者さんに与える安心感の違いとなって表れています。山本先生のより詳しい経歴については、ご自身の自己紹介記事【自己紹介】【ver0】医療現場のガチな修羅場をくぐった脳外科医が、あなたの「つらい頭痛」になぜ本気で向き合うのかをご覧ください。脳神経外科の専門性は、頭痛外来において大きな強みとなります。山本先生は臨床の最前線で命に関わる頭痛を数多く診療してきました。この経験により、患者さんに対して根拠ある安心感を提供できる立場にあります。頭痛で困っている人の多さと治療の進歩が、山本先生の活動の原動力です。現在の医療では頭痛治療が大きく進歩し、多くの患者さんを助けられるようになっています。この事実に山本先生自身が感動し、頭痛外来の開設をはじめとする幅広い活動を積極的に展開しています。頭痛外来における2種類の患者さんと診療アプローチ頭痛外来には大きく分けて2種類の患者さんが来院し、山本先生はそれぞれに応じた診療を行っています。初めて激しい頭痛を経験した患者さんと、長年頭痛に悩み続けてきた患者さんです。どちらの患者さんに対しても、しっかりと受け止める姿勢で外来を運営しています。初めて激しい頭痛を経験した患者さんには、危険な頭痛の発見が最優先となります。この種の患者さんに対しては、丁寧な問診、神経診察と画像診断が診療の命となります。画像検査で問題がなければ患者さんを安心させると同時に、なぜそのような頭痛が起きるのかについても踏み込んで説明することを心がけています。長年の頭痛持ちの患者さんには、信頼関係の構築から診療を始めます。この種の患者さんは、周囲の理解が得られなかったり、医療機関で適切な対応を受けられなかった経験を抱えていることが多いものです。山本先生は、患者さんの話をしっかり受け止める姿勢から始め、治療が大きく進歩している事実を時間をかけて伝えることで、信頼関係を築いています。信頼関係の構築には、診察の入り口に工夫を凝らしています。山本先生は、頭痛の場所を尋ねる代わりに、日常生活への影響を最初に聞くようにしています。仕事や家庭でどのような困りごとを抱えているかから対話を始めることで、患者さんの緊張を和らげ、スムーズなコミュニケーションを実現しています。自身の片頭痛経験が生んだ患者さんへの共感山本先生が頭痛外来に注力する最大の理由は、自身の片頭痛経験にあります。子供の頃にひどい片頭痛を抱え、人に分かってもらえない辛さを経験しました。この経験が、患者さんの痛みを理解できる強みにつながっています。患者さんとの信頼関係は、生のコミュニケーションから生まれます。山本先生は「本当に辛いですよね」という共感の言葉を起点に、患者さんとの関係を構築しています。1人当たり30分かけることもありますが、痛みを理解する姿勢こそが最も大事だと考えています。山本先生自身の片頭痛は、年齢とともに頻度が減少しました。男性の場合、加齢に伴い頻度が少なくなるパターンがあり、山本先生もこのパターンに該当します。一方で女性の場合は一生付き合っていくケースが多いため、「付き合っていくもの」として治療でどれだけ改善できるかを伝える診療を実践しています。情報発信活動を始めた理由と今後のビジョン山本先生が情報発信活動を始めた理由は、頭痛患者さんが自らにかける「スティグマ」を変えるためです。スティグマとは烙印を意味する言葉で、「頭痛は市販薬で対処するもの」「寝込むのは諦めるしかない」と頭痛患者さん自身が思い込んでいる現状を指します。この思い込みは、医師自身が発信しなければ変えられません。頭痛外来で待つだけでは届かない患者さんが、世の中には数多く存在します。治療を求めて来院する患者さんは助けられても、来院に至らない患者さんは助けられません。山本先生は、自ら発信することでスティグマにとらわれた患者さんにも届けたいと考えています。山本先生の発信プラットフォームには、Substackを選択しています。Xはアルゴリズムに依存し投稿が流れてしまう一方、Substackは記事を資産として積み重ねられる点が優れています。頭痛患者さんが興味を持って訪れた際に、様々な治療法を知ることができる情報の蓄積を目指しています。山本先生のビジョンは、全ての頭痛患者さんに届く大きな声を発信できる医師になることです。頭痛外来で待つだけでなく、自ら発信することで、スティグマに閉じ込められた患者さんにも届けたいと考えています。リスナーに対しては、フォローだけでも構わないので、専門医がフィルターをかけた情報を周囲にも伝えてほしいと呼びかけています。まとめ山本俊先生のインタビューを通じて、頭痛外来における専門医の役割と情報発信の意義が明らかになりました。山本先生は脳神経外科専門医として頭痛外来を運営し、2種類の患者さんそれぞれに応じた診療を実践しています。自身の片頭痛経験が患者さんへの深い共感と発信活動の原動力となり、Substackを通じて全ての頭痛患者さんに届く声を発信することを目指しています。頭痛に悩む方とその周囲の方は、専門医のフィルターを通した価値ある情報に触れることで、新たな治療の選択肢を知ることができるはずです。📩 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ 頭痛治療の最新情報や、AI時代の「脳」に関するテーマを専門医がお届けします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe