令和8年度診療報酬改定では、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携を推進するため、急性期入院医療の評価体系が大きく見直されます。個別改定項目「Ⅱ-1-1 患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた、医療提供体制の整備」の①~④は、いずれも病院の機能に着目した評価を強化する内容です。この記事では、これら4項目の全体像を解説します。
見直しの柱は4つあります。第1に、救急搬送件数や全身麻酔手術件数などの実績を施設基準に組み込んだ「急性期病院一般入院基本料」がA・Bの2区分で新設されます。第2に、重症度、医療・看護必要度にA/C項目の追加と「救急患者応需係数」の新設が行われ、評価方法が大きく変わります。第3に、総合入院体制加算と急性期充実体制加算が統合され、「急性期総合体制加算」として5区分に再編されます。第4に、特定機能病院入院基本料がA・B・Cの3区分に再編され、病院の役割に応じた点数差が設けられます。
① 急性期病院一般入院基本料等の新設
急性期病院一般入院基本料は、病院の急性期機能を救急搬送件数や全身麻酔手術件数などの実績で評価する新たな入院基本料です。従来の急性期一般入院基本料が病棟単位の看護配置や重症度、医療・看護必要度で評価してきたのに対し、今回は病院全体の機能を施設基準に反映させる点が大きく異なります。
急性期病院Aは1日につき1,930点で、高い急性期機能を持つ病院を評価します。体制要件として第二次救急医療体制等の設置と24時間の画像診断・検査体制が必要です。実績要件は、救急搬送年間2,000件以上かつ全身麻酔手術年間1,200件以上であり、いずれも満たす必要があります。看護配置は7対1、平均在院日数は16日以内です。
急性期病院Bは1日につき1,643点で、地域の急性期医療を担う病院を評価します。実績要件は4つの選択肢から1つを満たせばよい点が大きな特徴です。救急搬送年間1,500件以上、救急搬送年間500件以上かつ全身麻酔手術年間500件以上、人口20万人未満の医療圏で搬送件数最大かつ年間1,000件以上、離島医療圏で搬送件数最大のいずれかを選択できます。看護配置は10対1、平均在院日数は21日以内です。
精神病棟向けにも同様の枠組みで入院基本料が新設されます。経過措置として、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟の既存届出に対する猶予措置が設けられているほか、令和9年3月31日までは介護保険施設からの搬送を含めた全搬送件数を実績に算入できます。
詳細は、【令和8年度改定】急性期病院一般入院基本料が新設|A・Bの2区分と施設基準を解説をご覧ください。
② 重症度、医療・看護必要度の見直し
重症度、医療・看護必要度の見直しは、A/C項目の対象治療等の追加、救急患者応需係数の新設、B項目測定の柔軟化の3点が柱です。これらの見直しにより、従来の「基準該当割合」は「割合指数」に変更されます。経過措置は令和8年9月30日までです。
第1の見直しは、A項目・C項目の対象治療等の追加です。A項目「専門的な治療・処置」のうち「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」にカルフィルゾミブ等の薬剤が追加されるほか、C項目では「救命等に係る内科的治療」「別に定める検査」「別に定める手術」の3区分で対象が拡充されます。内科系症例の適正評価を進めることが狙いです。
第2の見直しは、救急患者応需係数の新設です。病床あたり年間救急搬送受入件数に0.005を乗じた数(上限10%)が基準該当割合に加算されます。割合指数は「従来の該当患者割合+救急患者応需係数」で算出されるため、救急搬送受入件数の多い病棟ほど割合指数が高くなります。シミュレーションでは、救急搬送数が多く手術なし症例の多い病棟で約9.2ポイントの上昇が見込まれています。
第3の見直しは、B項目の測定日の柔軟化です。毎日測定しない場合のルールとして、入院初日から4日目までの各日、5日目以降は7日ごとに1回以上、退院日の測定が認められます。測定日以外は直近の測定結果で代替できるため、看護師の事務負担が軽減されます。
詳細は、【令和8年度改定】重症度、医療・看護必要度の3つの見直しポイント|救急搬送加算・A/C項目追加・B項目測定をご覧ください。
③ 急性期総合体制加算の新設
急性期総合体制加算は、総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合して新設される5区分の加算です。旧2加算の施設基準が多くの点で重複しながら別々に運用されていた課題を解消し、「総合性」と「集積性」を一体的に評価します。
新設される5区分には、入院日数に応じた3段階の逓減制が導入されます。加算1は14日間合計5,500点(7日以内530点、8~11日290点、12~14日210点)で、最も高い総合性と集積性が求められます。加算2は14日間合計4,660点、加算3は4,240点、加算4は3,390点と設定されています。旧制度では総合性の高い病院(旧総合入院体制加算1:14日間合計3,640点)が手術実績重視の加算(旧急性期充実体制加算1:4,240点)より低い評価となる逆転現象がありましたが、新制度ではこれが解消されます。
加算5は、人口20万人未満の地域への配慮を目的とした新設区分です。14日間合計2,760点で、地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料に関する届出制限が一部免除されます。人口の少ない地域で救急搬送を最も多く受け入れている病院が、拠点的な機能を適切に評価されるための受け皿となります。
詳細は、【令和8年度改定】急性期総合体制加算を新設|5区分の点数・施設基準を解説をご覧ください。
④ 特定機能病院入院基本料の見直し
特定機能病院入院基本料は、全88病院に適用されていた一律の評価から、A・B・C(いずれも仮称)の3区分に再編されます。この見直しは、特定機能病院の承認基準が「基礎的基準」の有無に応じて3類型に変更されることに連動しています。
特定機能病院A(仮称)は、基礎的基準を満たす大学病院本院が主な対象です。一般病棟7対1の点数は2,146点(現行1,822点、+324点)に設定されます。特定機能病院B(仮称)は、ナショナルセンター等が主な対象で、7対1の点数は2,136点(+314点)です。特定機能病院C(仮称)は、A・Bに該当しないその他の病院が対象で、7対1の点数は2,016点(+194点)です。A区分とC区分の差は7対1で130点になります。
3区分の違いは個別の施設基準ではなく、承認要件の類型に基づくものです。A・B・Cの正式名称や具体的な省令の条文番号は、令和7年度を目途に公布される関係省令で確定する予定です。
詳細は、【令和8年度改定】特定機能病院入院基本料がA・B・Cの3区分に再編|点数と施設基準を解説をご覧ください。
まとめ
令和8年度改定における急性期入院医療の見直しは、病院の機能に着目した評価の強化が共通する方向性です。急性期病院一般入院基本料の新設により、救急搬送件数や全身麻酔手術件数の実績が入院基本料の施設基準に組み込まれます。重症度、医療・看護必要度には救急患者応需係数が導入され、救急搬送受入件数の多い病棟の評価が改善されます。急性期総合体制加算では、総合性と集積性の一体評価と人口の少ない地域への配慮が実現されます。特定機能病院入院基本料は、承認基準の3類型化に連動して点数差が設けられます。各医療機関は、自院の救急搬送件数、手術件数、届出状況を改めて確認し、新制度のもとでどの区分・基準に該当するかを早期に検討することが重要です。
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サマリー
令和8年度診療報酬改定では、急性期入院医療の評価が病院の機能と実績に焦点を当てて大幅に見直されます。救急搬送数や手術件数に基づく「急性期病院一般入院基本料」の新設、救急患者応需係数の導入、そして「特定機能病院入院基本料」の3区分化により、病院間の機能分化が明確化されます。これにより、地域医療の拠点病院への配慮と同時に、医療機関の経営や現場の意思決定に大きな影響を与えることが予想されます。
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