令和8年度診療報酬改定では、ハイケアユニット(HCU)を有する病院が担う医療機能の実績に応じた評価を行う観点から、ハイケアユニット入院医療管理料が見直されます。今回の見直しは、救急搬送件数や全身麻酔手術件数の実績要件の新設、重症度、医療・看護必要度の項目追加と基準値変更、点数の引き上げという3つの柱で構成されています。
今回の改定では、HCU管理料1が6,889点から7,202点に、HCU管理料2が4,250点から4,501点にそれぞれ引き上げられます。一方で、救急搬送年間1,000件以上または全身麻酔手術年間500件以上という病院実績の要件が新たに加わります。重症度、医療・看護必要度については、「抗不整脈剤の使用(注射剤)」と「一時的ペーシング」の2項目が追加され、基準①の該当患者割合が1割5分から2割に引き上げられます。なお、実績要件には令和8年12月31日までの経過措置が設けられています。
救急搬送件数・全身麻酔手術件数の実績要件が新設
今回の改定で最も大きな変更点は、HCU管理料の施設基準に病院の実績要件が新設されたことです。HCUの役割が重症の救急搬送患者や全身麻酔手術後患者に密度の高い医学的管理を行うことにある、という考え方に基づく見直しです。この実績要件はHCU管理料1・2の両方に適用されます。
具体的な基準値は、次のいずれかを満たすこととされています。1つ目は、救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間1,000件以上であることです。2つ目は、全身麻酔による手術件数が年間500件以上であることです。3つ目は、小児系の特定入院料の届出病床数が許可病床数の5割以上を占める病院であって、全身麻酔による手術件数が年間250件以上であることです。
これらの基準値には、医療資源の少ない地域への配慮が設けられています。「基本診療料の施設基準等」の別表に掲げる地域に所在する病院では、救急搬送件数は年間800件以上、全身麻酔手術件数は年間400件以上(小児病院は年間200件以上)に緩和されます。
この実績要件が新設された背景には、HCUを有する病院の実態があります。DPCデータの分析によると、HCU管理料1を算定する692病院の年間全身麻酔実施件数の平均値は1,922.5件、中央値は1,524.5件でした。一方、年間全身麻酔実施件数500件未満の病院も87病院存在していました。今回の基準値は、こうした実態を踏まえて設定されたものです。
重症度、医療・看護必要度の項目追加と基準値変更
2つ目の見直しは、HCU用の重症度、医療・看護必要度に関するものです。この見直しは、項目の追加と基準値の変更の2つの内容で構成されています。
項目の追加では、Aモニタリング及び処置等に「抗不整脈剤の使用(注射剤)」と「一時的ペーシング」の2項目が新たに加わります。この2項目は、基準①の対象項目にも含まれます。追加の背景には、急性冠症候群の治療後や心停止蘇生後の患者管理があります。これらの患者は、人工呼吸器の管理等を要さない場合であっても、致死性不整脈等のリスクに備えた厳格なモニタリングが必要です。しかし、現行の評価項目ではこうした管理が適切に反映されていませんでした。
基準値の変更では、基準①の該当患者割合がHCU管理料1・2ともに1割5分から2割に引き上げられます。基準②の該当患者割合は、HCU管理料1が8割、HCU管理料2が6割5分で変更ありません。DPCデータによるシミュレーションでは、基準①を2割に引き上げた場合、HCU管理料1の該当治療室割合は97.8%、HCU管理料2は100%となっており、大多数の治療室が基準を満たす見込みです。
注5の新設と経過措置
3つ目の見直しは、実績要件を満たせない場合の救済措置の新設と経過措置です。これらの措置により、基準を満たさない治療室への段階的な対応が図られています。
注5では、令和8年3月31日時点で改正前の特定集中治療室管理料またはHCU管理料の届出を行っている治療室であって、実績要件のみに適合しなくなった場合に、HCU管理料2のその他の施設基準を満たしていることを条件として、21日を限度に4,401点を算定できる仕組みが新設されました。つまり、注5は既存の届出治療室に限定された救済措置であり、新規に届出する治療室には適用されません。この注5は、実績要件の経過措置終了後も「当面の間」適用されるとされています。
経過措置は2つ設けられています。1つ目の経過措置は、実績要件に関するものです。令和8年3月31日時点で現にHCU管理料の届出を行っている治療室については、令和8年12月31日までの間、実績要件を満たしているものとみなされます。2つ目の経過措置は、重症度、医療・看護必要度に関するものです。令和8年3月31日時点で現にHCU管理料1または2の届出を行っている治療室であって、旧算定方法の基準を満たす治療室については、令和8年12月31日までの間、改定後の基準を満たすものとみなされます。
点数の引き上げ
今回の改定では、HCU管理料の点数も引き上げられています。HCU管理料1は6,889点から7,202点へ313点の増加、HCU管理料2は4,250点から4,501点へ251点の増加となります。この点数引き上げは、実績要件の新設によりHCUに求められる機能が明確化されたことに対応するものです。
まとめ
令和8年度改定におけるHCU入院医療管理料の見直しは、実績要件の新設、重症度・医療看護必要度の見直し、点数引き上げの3つで構成されています。実績要件として救急搬送年間1,000件以上または全身麻酔手術年間500件以上が新たに求められる一方、医療資源の少ない地域への配慮や注5による救済措置も設けられています。重症度、医療・看護必要度では「抗不整脈剤の使用」「一時的ペーシング」の2項目が追加され、基準①の患者割合が2割に引き上げられます。いずれの見直しにも令和8年12月31日までの経過措置が設けられていますので、届出医療機関は自院の実績を早期に確認し、対応を検討する必要があります。
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サマリー
令和8年度のHCU入院医療管理料改定では、点数引き上げと同時に、年間救急搬送1000件または全身麻酔手術500件という厳しい実績要件が新設されました。これはHCUの本来の役割を明確化し、重症患者管理の実態に即した評価基準(抗不整脈剤、一時的ペーシングの追加など)を導入するものです。既存施設には経過措置や「注5」による救済措置があるものの、医療体制の機能集約と高い実績を求める国の強いメッセージが込められており、地域医療への影響も示唆されています。
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