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2026-02-10 06:18

中医協が示した26の宿題|令和8年度診療報酬改定・附帯意見(案)のポイント整理

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令和8年1月30日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第646回)において、令和8年度診療報酬改定の答申書附帯意見(案)が提示されました。附帯意見とは、改定の答申に際して中医協が付す「今後の検討課題」であり、次回改定に向けた調査・検証の方向性を示すものです。今回の附帯意見(案)は全26項目にわたり、物価対応や賃上げといった喫緊の経営課題から、入院医療の体制再編、医療DXの推進、医薬品政策まで幅広い分野を網羅しています。

今回の附帯意見(案)の特徴は、大きく3つあります。第一に、物価・賃上げへの対応について令和9年度における追加措置の検討を明記した点です。第二に、急性期病院一般入院基本料の新設や病棟業務のタスクシフト/シェアなど、今回改定で導入された新たな仕組みの影響検証を求めている点です。第三に、医療DXやオンライン診療、後発医薬品の使用促進、薬局の偏在対策など、医療提供体制の効率化・適正化に関する検討課題が多数盛り込まれた点です。

全般的事項:診療報酬体系の簡素化と請求手続きの負担軽減

附帯意見(案)の冒頭では、診療報酬体系の複雑化への対応が求められています。この項目は、改定を重ねるごとに増す制度の複雑さが、患者や医療機関にとって大きな負担となっている現状を反映したものです。

具体的には、患者をはじめとする関係者にとって分かりやすい診療報酬体系への見直しが求められました。あわせて、施設基準届出のオンライン化や共通算定モジュールの活用といった、請求手続きの負担軽減策を進めることも明記されています。

物価対応と賃上げ:令和9年度の追加対応を視野に

全般的事項に続き、物価対応と賃上げに関する2つの項目が示されました。いずれも令和9年度における追加措置の可能性に言及しており、今回の改定で終わりではないことを明確にしています。

物価対応については、医療機関等の経営状況を把握した上で、実際の経済・物価動向を踏まえた令和9年度の追加対応を検討するとされました。加えて、基本料・技術料を含めた物価対応の評価のあり方についても、今後の検討課題とされています。なお、改定率等に関する資料(総-1)によると、令和8年度の改定率は+3.09%(2年度平均)で、このうち物価対応分は+0.76%です。特に病院の物価対応分+0.49%に対し医科診療所は+0.10%と差があり、今後の配分のあり方が注目されます。

賃上げについては、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工士等を含む幅広い職種で、賃上げが適切に実施されているかを迅速かつ詳細に把握することが求められました。その実態把握の上で、経営状況や経済動向を踏まえ、令和9年度の追加対応を検討するとしています。

病棟業務の効率化とタスクシフト/シェア

物価・賃上げと並ぶ重要テーマとして、病棟業務の効率化とタスクシフト/シェアに関する検証が求められています。今回の改定では、看護職員の配置基準の柔軟化やICT・AI・IoT等の活用による業務効率化が導入されました。

この新たな仕組みについて、附帯意見(案)では5つの観点からの調査・検証を求めています。5つの観点とは、職員の業務負担、医療の質、医療安全への影響、生産性向上、医療従事者の確保です。これらの検証は病棟の種別ごとに行うこととされており、今回改定の影響を幅広く把握する方針が示されました。

入院医療:急性期から慢性期まで5項目の検討課題

病棟業務の効率化に加え、入院医療に関しては5つの項目(附帯意見(案)第5~9号)が設けられました。急性期、高度急性期、救急、包括期、DPC/PDPSのそれぞれについて、今回改定の影響検証と今後の評価のあり方が検討課題とされています。

急性期入院医療については、新設された急性期病院一般入院基本料や急性期総合体制加算の影響検証が求められました。10対1急性期病棟のあり方を含め、病院・病床の機能に応じた評価の検討が引き続き行われます。

高度急性期入院医療については、特定集中治療室管理料等に係る改定の影響検証が求められました。重症度、医療・看護必要度の項目やSOFAスコア等、入院患者のより適切な評価指標や測定方法の検討が課題とされています。

救急医療については、救急外来応需体制の評価や下り搬送の評価に加え、高齢者救急の受入れ体制の検証が求められました。在宅療養を行う高齢者や介護保険施設入所者の救急搬送・緊急入院の実態把握を含め、介護保険施設等の協力医療機関の役割も検討の対象とされています。

包括期入院医療については、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟の3つの病棟類型が検討の対象です。リハビリテーション・栄養管理・口腔管理や円滑な入退院の実現に向けた評価のあり方が求められています。療養病棟等の慢性期入院医療についても、在宅医療や介護保険施設等との役割分担の観点から検討が続けられます。

DPC/PDPSについては、医療の質の向上と標準化に向け、診療実態を踏まえた更なる包括払いのあり方が検討課題とされました。

人口少数地域の医療・医師偏在対策

入院医療に続き、人口の少ない地域における医療提供体制の確保も重要な検討課題です(附帯意見(案)第10号)。今回の改定では、人口の少ない地域の外来・在宅医療提供体制を支援する評価や、外科医療確保特別加算が新設されました。

これらの施策の影響検証に加え、人口構成の地域差や病院薬剤師を含む医療従事者の偏在を踏まえた評価のあり方が引き続き検討されます。

外来医療・かかりつけ医:機能分化と質の高い医学管理の推進

人口少数地域の対策に続き、外来医療に関しては3つの項目(附帯意見(案)第11~13号)が設けられました。外来機能分化の推進、質の高い医学管理の評価、かかりつけ医機能の評価が主要テーマです。

外来機能分化については、初診料・外来診療料における逆紹介割合に基づく減算規定の見直しや連携強化診療情報提供料の見直し等の影響検証が求められています。

医学管理については、生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)や特定疾患療養管理料等の改定影響を検証した上で、診療ガイドラインに沿った質の高い計画的な医学管理が推進されるよう、提供される医療の実態に基づく評価のあり方が検討されます。

かかりつけ医機能については、今回改定の影響検証に加え、かかりつけ医機能報告制度の施行状況を踏まえた評価のあり方が検討課題とされました。

在宅医療・訪問看護:包括評価の新設と精神科訪問看護への対応

外来医療に続き、在宅医療・訪問看護に関する2つの項目(附帯意見(案)第14~15号)が示されました。在宅医療全般の質の向上と、訪問看護の評価見直しが主な検討課題です。

在宅医療については、往診、訪問診療、歯科訪問診療、訪問薬剤管理指導、訪問看護等の各サービスについて、地域の医療提供体制の実態を踏まえた適切な評価のあり方が検討されます。

訪問看護については、同一建物居住者への評価の見直しや、一連の訪問看護を1日あたりで包括的に評価する新たな仕組みの影響検証が求められました。精神科訪問看護の利用者増加を踏まえた適切な評価のあり方も、検討課題に含まれています。

精神医療・医療DX・医療技術の評価

在宅医療に加え、精神医療、医療DX、医療技術の3分野についてもそれぞれ検討課題が示されました(附帯意見(案)第16~18号)。

精神医療については、新設された精神科地域密着多機能体制加算の効果検証が求められています。地域移行・地域生活支援の充実や、総合病院精神科の評価のあり方が検討課題です。

医療DXについては、電子処方箋や電子カルテ共有サービスに加え、D to P with DやD to P with Nなどのオンライン診療の活用状況の検証が求められました。改正医療法に基づくオンライン診療受診施設の活用状況も検討の対象です。

医療技術の評価については、リアルワールドデータの解析結果等を踏まえた医療技術の継続的な再評価が求められています。特定保険医療材料の不採算品再算定の対応を踏まえた課題把握や、革新的な医療機器・検査等のイノベーションの評価も検討課題に含まれています。

歯科・調剤・医薬品:薬局偏在の解消と後発医薬品の使用促進

医療技術の評価に続き、歯科診療報酬、調剤報酬、医薬品に関する6つの項目(附帯意見(案)第19~24号)が示されました。歯科のデジタル化推進、薬局の偏在対策、後発医薬品の使用促進が主な検討テーマです。

歯科診療報酬については、かかりつけ歯科医による管理評価の見直しや歯科治療のデジタル化の実施状況の検証が求められています。

調剤報酬については、2つの項目が設けられました。1つは敷地内薬局や門前薬局、医療モール薬局に関する改定影響の検証です。もう1つは薬局の都市部偏在に関する検証であり、都市部における小規模乱立の解消と医療資源の少ない地域への配慮が検討課題とされました。

長期処方・リフィル処方については、積極的な活用策の検討とともに、ポリファーマシー対策の観点を踏まえた処方の評価が引き続き検討されます。後発医薬品の使用促進については、バイオ後続品を含めた供給状況や使用状況を踏まえた評価の検討が求められました。医薬品の保険給付については、長期収載品や食品類似薬の改定影響を検証し、供給状況や患者負担に配慮した検討が続けられます。

薬価制度等と施策の検証

附帯意見(案)の最後に、薬価制度・保険医療材料制度・費用対効果評価制度と施策の検証に関する2つの項目(附帯意見(案)第25~26号)が示されました。

制度のあり方については、イノベーションの推進、安定供給の確保、国民負担の軽減という3つの観点から、諸外国の動向も踏まえた検討が求められています。

施策の検証については、施策の効果や医療の質を含む患者への影響等を、データやエビデンスに基づいて迅速・正確に把握・検証するための方策が検討課題とされました。

まとめ

令和8年度診療報酬改定の答申書附帯意見(案)は、全26項目にわたる広範な検討課題を示しました。特に注目すべきは、物価対応と賃上げについて令和9年度の追加措置を明確に視野に入れた点、急性期病院一般入院基本料の新設やタスクシフト/シェアなど新制度の影響検証を幅広く求めた点、そして医療DX・薬局偏在対策・後発医薬品使用促進など医療提供体制の効率化に関する課題を多数盛り込んだ点です。これらの附帯意見(案)に基づく調査・検証の結果は、今後の中医協での議論や次回改定に大きな影響を与えることになります。



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サマリー

日本の医療の未来に関する26項目の課題が提示され、医療システム全体の見直しが求められています。特に、資金の配分、働き方の改善、薬局の偏在問題についての議論が行われています。

医療システムの変革
さて今回はですね、日本の医療の未来を占うような、ある宿題リストともいえる文章を掘り下げていこうと思います。
2026年の1月30日に中協、中央社会保険医療協議会が公表した次の診療報酬改定に向けた26項目の検討課題ですね。
これ単なるお役所の資料というわけじゃなくて、今後2年間であなたの医療がどう変わるのか、その設計図のもとになるものなんですよね。
えーそうなんです。この26項目、一見するとすごく専門的に見えるんですが、突き詰めていくと実は私たちの生活に直結する大きな3つのテーマに集約できるんですね。
3つのテーマですか。
はい。お金、それから働き方、そして医療システム全体です。今日はこの3つの視点からこのリストが一体何を示しているのか、深く見ていきたいと思います。
なるほど。ではまず一番身近で気になるお金の話からいきましょうか。
資料を読んで真っ先に目についたのが、やっぱり物価高と賃上げの対応です。
しかも驚いたのが、2026年度の改定だけでは不十分かもしれないというかのように、2027年度に追加対応を検討するとまではっきり書かれている。
これってかなり異例なことじゃないですか。
おっしゃる通りです。これは今回の改定がある種の応急処置に過ぎないかもしれないという認識の現れなんですね。
応急処置。
ええ。そしてその配分が非常に視差に富んでいるんです。
物価高対策として、例えば病院にはプラス0.49%の手当てがつく。
それに対してあなたが普段利用するかかりつけ医のような身近な診療所はプラス0.10%。
そんなに差があるんですか。0.49と0.10。
そうなんです。この差が何を意味するのか、そこが重要でして。
同じ物価高なのになぜこれほどの差が付けられているんでしょう。
患者からすれば近所の診療所だって大病院だって同じようにコストは上がっているはずですよね。
これでは何か不公平感も生まれませんか。
そこがまさにこの資料から読み解くべき裏のメッセージなんですね。
裏のメッセージ。
これは単なる数字の差ではなくて、政策の方向性を示唆しているんです。
つまり高度で専門的な医療を担う大規模な病院を重点的に支えますよと。
一方で地域の小さな診療所は現状維持。
あるいはもしかしたらトータも視野に入れた再編を促していると、そういうふうに解釈することもできるわけです。
なるほど。お金の配分でその医療機関の役割分担を誘導しようとしていると。
そのお金の問題は当然そこで働く人たちの環境にも直結しますよね。
資料を見るとまさにその働き方にもメスを入れようという動きが見えます。
そのキーワードがタスクシフトと業務効率化ですね。
あー聞きますね。
はい。深刻な医療スタッフ不足に対応するために、例えば看護師さんの配置基準をより柔軟にしたり、
これまでお医者さんがやっていた業務の一部を他の職種が担えるようにしたり、そういった新しい仕組みが導入されました。
そのタスクシフトって言葉聞こえはいいですけど、それって一歩間違えれば専門外のスタッフに責任が押し付けられるみたいなリスクもありませんか?
患者としては医療の質が落ちないかっていうのが少し不安になる部分です。
それも非常に重要なご指摘です。だからこそこの資料でははっきりと釘を刺しているんですね。
職員の負担、医療の質、医療安全、生産性、人材確保、この5つの観点から、この新しい試みの影響を徹底的に検証すると。
ほう、5つの観点から。
働き方と薬局の再考
ええ。この検証結果次第で、数年後の病院の日常風景がもう全く違うものになっている可能性すらあるんです。
質を維持しつつ持続可能な現場を作れるのか、その壮大な実験が始まったとも言えますね。
現場の負担を減らして質も維持する、その両立のためにはもうシステム全体の近代化っていうのも急務だと。
それが3つ目のテーマ、医療DXとか医薬品の話につながってくるわけですね。
その通りです。ここでの注目点は2つあります。
一つは、高発医薬品、ジェネリックですね。
この利用をさらに進めて医療費を抑えようという動き。
そしてもう一つが、これまであまり表立って議論されてこなかった薬局の偏在という問題に、国が本格的に向き合い始めたことです。
薬局の偏在ですか。確かに大きな病院の前にはずらーっと薬局が並んでいる光景、よく見ます。
まさにそれです。
例えばですね、あなたが大きな手術を受けて退院する日を想像してみてください。
心身ともに疲れているのに、薬をもらうためだけに病院の前の混雑した薬局で1時間も待たされる。
ありますね、それは。
一方で、自宅の近所には気軽に相談できる薬局が一つもないとか、
このアンバランスをどう生成していくのかが大きな課題として今回はっきりと示されたんです。
これは、あなたが将来どこでどんなふうに薬を受け取ることになるかに直接関わってきます。
なるほど。まとめると、この26のしくだいが示しているのは、
医療現場のお金、それから病院の働き方、そして薬局の在り方まで含めたシステム全体、
この3つの側面からもう待ったなしの見直しが進められていくということですね。
そういうことです。
そして、何より興味深いのが、全ての項目で影響を検証すると繰り返し述べられている点なんです。
ああ、確かにそうでしたね。
つまり、まずはやってみて、その結果をちゃんとデータで評価して、次の手を打つ。
このデータに基づいた政策決定への非常に強い意志がこのリスト全体から感じられるんですね。
このように医療がデータに基づいてどんどん変わっていく中で、
1つあなたに考えてみてほしいことがあるんです。
もし、あなた自身の治療の経過ですとか、今の医療システムに関するたった1つのデータを、
政策を決める人たちに見せてくれることができるとしたら、それはどんなデータですか?
そして、そのデータで何を伝えたいですか?
06:18

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