高齢化の進展に伴い、在宅医療の需要が拡大している。在宅患者ではポリファーマシー(多剤併用)や残薬が深刻な課題となっており、医師と薬剤師の緊密な連携が不可欠である。この課題に対応するため、令和8年度診療報酬改定では、医師と薬剤師が同時に患者宅を訪問する行為に対し、新たな評価を創設する。
令和8年度改定では、同時訪問を推進する新点数が医科と調剤の双方に設けられる。医科では「訪問診療薬剤師同時指導料」が300点で新設され、調剤では「訪問薬剤管理医師同時指導料」が150点で新設される。両点数はいずれも6月に1回の算定とされ、対象患者と算定要件が明確に定められている。本メルマガでは、改定の背景、両点数の概要、実務上の留意点を順に解説する。
改定の背景:在宅医療におけるポリファーマシー・残薬問題への対応
令和8年度改定における同時訪問の評価新設は、在宅医療のポリファーマシー対策と残薬対策を推進することを目的としている。在宅患者は複数の疾患を抱えることが多く、処方薬が重複しやすい。残薬の発生は、服薬アドヒアランスの低下や医療資源の浪費につながる。これらの課題は、医師の診察時に薬剤師が同席することで、処方意図の共有と服薬状況の確認が一度に行えるようになり、解消が期待できる。
医師と薬剤師の同時訪問は、これまで診療報酬上の評価がなかった。在宅医療では、訪問診療と訪問薬剤管理指導が別々のタイミングで行われることが一般的である。同時訪問を診療報酬で評価することにより、多職種連携の実効性が高まる。
訪問診療薬剤師同時指導料(医科)の概要
医科側で新設される訪問診療薬剤師同時指導料は、訪問診療を行う医師が薬剤師と同時に患者宅を訪問した場合に300点を算定できる新点数である。算定頻度は6月に1回に限られる。
対象患者は、当該保険医療機関で在宅時医学総合管理料を算定している在宅療養患者で、かつ通院が困難なものである。さらに、別の保険医療機関または保険薬局で在宅患者訪問薬剤管理指導料、もしくは居宅療養管理指導費(薬剤師が行う場合)を算定している必要がある。施設入居時等医学総合管理料の対象患者は除外される。
算定要件として、患者または家族等の同意取得が前提となる。医師は、訪問薬剤管理指導等を実施している他の保険医療機関、保険薬局、または居宅療養管理指導を実施している病院・診療所・保険薬局の薬剤師と同時に訪問しなければならない。同時訪問にあたっては、療養上必要な指導を行うことが求められる。なお、当該保険医療機関を退院した患者に対し、退院日から1月以内に行った指導の費用は、入院基本料に含まれるものとして扱われる。
訪問薬剤管理医師同時指導料(調剤)の概要
調剤側で新設される訪問薬剤管理医師同時指導料は、訪問薬剤管理指導等を行う薬剤師が医師と同時に患者宅を訪問した場合に150点を算定できる新点数である。算定頻度は6月に1回に限られる。
対象患者は、在宅での療養を行っている患者であって、通院が困難なものである。具体的には、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者(単一建物診療患者が1人の場合)、その他厚生労働大臣が定める患者が該当する。厚生労働大臣が定める患者には、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定している患者(単一建物診療患者が1人の場合)、薬局の薬剤師が行う居宅療養管理指導費を算定している患者(単一建物居住者が1人の場合)、薬局の薬剤師が行う介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者(単一建物居住者が1人の場合)が含まれる。
算定要件として、患者または家族等の同意取得が前提となる。薬剤師は、訪問診療を実施している保険医療機関の保険医と同時に訪問し、薬学的管理および指導を行わなければならない。ただし、在宅患者緊急時等共同指導料(区分番号15の3)または在宅移行初期管理料(区分番号15の8)に係る必要な指導等を同日に行った場合は算定できない。
実務上の留意点:算定要件と併算定制限の確認
両点数を確実に算定するためには、対象患者の要件、同意取得、併算定制限の3点に注意する必要がある。
対象患者の要件は、医科と調剤の双方で「通院が困難な患者」であることが共通の前提となる。そのうえで、医科では在宅時医学総合管理料の算定が、調剤では在宅患者訪問薬剤管理指導料等の算定が必要となる。施設入居時等医学総合管理料の対象患者は医科側の対象から除外される。
同意取得は、両点数に共通する算定要件である。患者または家族等から同意を得たうえで同時訪問を実施する。同意取得の事実と内容は、記録として残しておく必要がある。
併算定制限は、調剤側で特に注意が必要である。在宅患者緊急時等共同指導料および在宅移行初期管理料に係る指導等を同日に行った場合、訪問薬剤管理医師同時指導料は算定できない。算定の重複を避けるため、同日に実施する指導内容を事前に整理しておくことが望ましい。
まとめ:在宅医療の多職種連携を推進する新評価
令和8年度改定では、医師と薬剤師の同時訪問に対する新評価が創設される。医科では訪問診療薬剤師同時指導料が300点で、調剤では訪問薬剤管理医師同時指導料が150点で、それぞれ6月に1回算定できる。両点数は、在宅医療におけるポリファーマシー対策と残薬対策の推進を目的としている。算定にあたっては、通院困難な患者であることの確認、同意取得、併算定制限の3点が不可欠である。
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サマリー
在宅医療における残薬やポリファーマシーの問題に対し、2026年の診療報酬改定で医師と薬剤師の同時訪問が新たな評価対象となりました。これにより、これまで金銭的インセンティブがなかった同時訪問に対し、医師側に300点、薬剤師側に150点の報酬が新設され、多職種連携の実効性が高まります。この同時訪問は半年に一度の「戦略会議」として、計画的なチーム医療を推進し、在宅ケアの質を向上させることを目指しています。
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