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2025-10-29 07:53

透析医療の質向上へ:患者QOL重視した制度見直しの方向性

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令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、透析医療に関する検討結果がとりまとめられました。慢性維持透析患者数は約34万人で2022年から減少傾向にあり、透析患者全体の高齢化が進んでいます。この患者動向の変化に対応し、災害対策の強化、シャントトラブルへの連携促進、腹膜透析の推進、情報提供の充実、緩和ケアの実施といった医療提供体制の課題が明らかになりました。分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されています。

分科会での検討により、透析医療における5つの重要課題が浮き彫りになりました。第一に、透析患者数は減少傾向にありながら新規導入患者の平均年齢は71.6歳と高齢化が進み、日本では諸外国に比べて血液透析患者の割合が高い状況が続いています。第二に、災害対策の取組状況にばらつきがあり、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%にとどまっています。第三に、シャント閉塞等への対応として事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在し、患者への不利益が懸念されます。第四に、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、全ての患者に腎代替療法の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%です。第五に、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまり、患者の意思決定支援も十分とはいえない状況です。

透析患者の動向と治療選択の現状

慢性維持透析患者数は343,508人で、2021年まで緩徐に増加していましたが2022年から減少傾向に転じています。この患者数減少の背景には、新規導入患者数が年間約3.9万人で推移する一方、高齢化の進展により透析中止や死亡が増加していることがあります。新規導入患者の平均年齢は71.6歳、慢性透析患者全体の平均年齢は70.1歳となっており、透析患者の高齢化が顕著です。

この高齢化は治療選択にも影響を及ぼしています。腹膜透析患者数は10,585人で2021年より増加傾向ですが、新規導入患者数は2,350人で2019年のピーク(2,657人)から減少しています。腹膜透析は在宅で実施できる利点がありますが、導入には患者本人や家族の協力が必要なため、高齢化により導入が難しくなっている可能性があります。

日本の透析医療は諸外国と比較して特徴的な状況にあります。腎代替療法のうち血液透析患者の割合が諸外国に比べて高く、腹膜透析や腎移植の割合が低い状況が続いています。この状況は医療提供体制の課題とも関連しており、患者の治療選択肢を広げる取組が求められています。

医療提供体制における3つの課題

血液透析の提供体制には3つの重要な課題があります。第一に災害対策、第二にシャントトラブルへの対応、第三に腹膜透析の導入です。

災害対策については、国や地方自治体と日本透析医会が連携して取組を進めています。しかし各医療機関の災害対策の取組状況にはばらつきがみられ、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保していると回答した医療機関は76.1%にとどまっています。透析患者は定期的な透析治療を必要とするため、災害時でも治療を継続できる体制整備が不可欠です。

シャントトラブルへの対応には連携体制の課題があります。シャント閉塞等は発生頻度が高く、透析患者の入院理由としても最も多い疾患です。自院で治療している医療機関が23.4%、事前に連携している医療機関に紹介している医療機関が70.2%である一方、事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在します。事前連携がない場合、患者は迅速な治療を受けられず大きな不利益を被る可能性があります。

腹膜透析の導入には大きな課題があります。血液透析を実施する医療機関のうち、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、77.1%の医療機関は腹膜透析を自院で実施していません。実施していない理由として、対象となる患者がいないが59.5%と最も多く、次いで対応できる器具設備を備えていないためが38.6%でした。また、緊急時や入院時のバックアップ体制に不安があるという意見もあり、医療機関間の連携体制整備が必要です。

患者支援の充実に向けて

患者への情報提供と意思決定支援には改善の余地があります。全ての患者に対し、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%にとどまり、情報提供の取組をしていない医療機関が35.6%存在します。患者が自身の状況に応じた最適な治療法を選択するには、十分な情報提供が不可欠です。

通院困難な患者への対応も課題です。対応方法として、透析医療を提供する療養病床への案内が77.1%、介護施設への案内が63.9%である一方、腹膜透析の導入を含めた在宅医療への案内は5.4%にとどまっています。腹膜透析は通院負担を軽減できる治療法ですが、十分に活用されていない状況です。

緩和ケアの実施も十分とはいえません。医療用麻薬を用いた疼痛緩和を実施している医療機関は32.2%、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまっています。透析患者の高齢化が進む中、終末期や透析医療中止に関する意思決定支援を含めた緩和ケアの充実が求められます。

評価方法の見直しと今後の方向性

分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されました。慢性維持透析を行った場合2及び3の算定回数は減少傾向で、人工腎臓全体の2.1%であることから、透析用監視装置の台数や透析用監視装置一台当たりの患者数による評価方法の見直しが検討されています。

シャントトラブルへの対応では、治療施設と事前に連携していないと患者への不利益が大きいことから、事前に連携することを促す評価方法の検討が提案されました。この評価により、医療機関間の連携体制が強化され、患者が迅速に適切な治療を受けられる環境整備が期待されます。

腹膜透析を増やしていくためには、導入期だけでなく血液透析からの切り換えも促していくことが考えられます。腹膜透析は在宅で実施でき、通院負担を軽減できる利点があります。医療機関が腹膜透析を導入しやすい環境を整備し、患者に十分な情報提供を行うことで、患者の治療選択肢を広げることができます。

通院困難な患者への対応として、療養病床や介護施設を案内すると回答した割合が高い一方、地域によってはこのような対応が難しい地域もあります。分科会では、医療機関へのアクセス確保の対応も検討すべきという意見が示されており、地域の実情に応じた対応が求められています。

まとめ

透析医療は患者数減少と高齢化という転換期を迎えており、質の高い医療提供体制の確立が急務です。分科会では、災害対策の強化、シャントトラブルへの連携促進、腹膜透析の推進、情報提供の充実、緩和ケアの実施という5つの課題が明らかになりました。患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進するため、人工腎臓の評価方法を見直し、医療機関の取組を促す仕組みづくりが進められる見込みです。



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サマリー

日本の透析医療では、高齢化が進む中で患者のQOLを重視した質の向上が求められています。情報提供の不足や治療選択肢の限界などの課題が浮き彫りになっており、今後は患者中心の医療の実現が期待されています。

透析医療の現状と課題
こんにちは。ザ・ディープダイブの時間です。今回はですね、日本の透析医療について、皆さんと一緒に資料をちょっと深く見ていきたいと思います。
今手元にあるのが、令和7年度の入院外来医療に関する調査評価分科会の資料でして、透析医療の質、これをどう上げていくかという検討結果の一部です。
日本の透析患者さんって、大体34万人くらいいらっしゃるんですね。近年は少し減ってはいるんですが、でもその構造には大きな変化があって、それがあの高齢化ですよね。
まさに新しく透析を始める方の平均年齢、これがもう71.6歳。患者さん全体の平均でも70.1歳。かなり高齢化が進んでいる状況でして、これが医療提供体制に新しい課題を投げかけているわけです。
なるほど。今回はこの資料をもとに、日本の透析医療が今どんな課題を抱えているのか、それから患者さんのQOL、生活の質ですね、これを重視した今後の方向性、その辺りをつかんでいこうと。早速ですけど、まず資料を見てちょっと驚いた点が、日本の透析治療って世界的に見ても、いわゆる血液透析、病院とかクリニックでやるあの割合がすごく高いんですね。
そうなんですよ。在宅で家でできる腹膜透析とか、あるいは人員職という選択肢もあることはあるんですが、なかなかその利用が進んでいない。特に腹膜透析は実施している医療機関自体が全体の約2割、19.5%くらいしかないんですね。
2割ですか。
はい。
それは患者さんからすると、選べる治療法がちょっと限られちゃってるかもしれないということですかね。
その可能性はありますね。
しかも血液透析、腹膜透析、人員職っていうその3つの選択肢、全部についてちゃんと情報提供してますよっていう医療機関が半分くらい、51.2%っていうのもなんか気になりますね。
そうですね。情報提供が十分じゃない可能性はありますよね。全部の選択肢を示さないで、特定の治療法だけを説明しているという施設も少なくないようですし。
35.6%。
もちろん高齢だから腹膜透析は威力的にちょっと難しいですよっていうケースもあるとは思うんですが、それ以前に患者さん自身がちゃんと納得して、自分に合った治療を選べる、そういう情報提供のあり方とか環境整備っていうのがすごく大事になってきますよね。
治療法の選択肢もそうですけど、その治療を続けていくための体制そのものにもいくつか課題があるみたいですね。
例えば、災害時の備えっていうのはどうなんでしょう。
透析って定期的な治療が本当に命綱ですからね。災害時の体制ってめちゃくちゃ重要なんです。
でも資料によると、災害の時に患者さんの情報を共有するネットワーク、これにちゃんと登録してるとか、自治体とちゃんと連携してますよっていう医療機関が76.1%。
76.1%。
ええ。ということは、裏を返せば4分の1くらいの施設では、いざという時の備えがまだ万全じゃないかもしれないと。
なるほど。あともう一つ、シャントトラブルへの対応も。
はいはい、シャントですね。
血液透析のために腕なんかに作る血管の通り道ですけど、ここが詰まったりとかで入院するケースが一番多いんですよね。
最多ですね。
なのに、問題が起きた時に事前に連携してない、よその病院に紹介されるっていうケースが5.9%もあるっていうのは。
うーん、これはちょっと心配ですよね。
ええ。
事前に連携が取れてないと、いざという時にスムーズに治療を受けられなくて、結局患者さんの不利益に直結しかねないわけですから。
緊急時の受け入れも含めて、地域での連携強化っていうのがやっぱり急がれますよね。
こういう連携の問題って、患者さんの高齢化が進む中で、さらに重みが増してきそうですよね。
例えば、通院が難しくなってきたみたいな場合はどうしてるんでしょう。
資料を見るとですね、通院が難しくなった患者さんに対しては、透析ができる療養病床とか、あるいは介護施設への転院、転職を案内するってことが多いみたいです。
一方で、通院の負担を減らせるはずの在宅での腹膜透析、これに切り替えませんかっていう案内は、わずか5.4%なんです。
5.4%ですか。
自宅で続けられる可能性もあるのに、その選択肢があまり活用されていないっていうのが見えてきますね。
それから、高齢化と還元してもう一つ見逃せないのが、緩和ケアの実施率、これが低いと。
17.6%っていうのは、終末期の医療とか患者さんの意思決定をどう支えるかっていう観点から見ると、かなり大きな課題じゃないですか。
おっしゃる通りです。もう70歳を超える患者さんが大半を占める透析医療の中で、単に痛みを管理するだけじゃなくてですね、患者さんやご家族の意向をちゃんと尊重したケア、
例えば透析をもう続けないという選択肢も含めて話し合う、いわゆるアダバンスケアプランニングですね。
そういう体制づくりっていうのが、これからますます重要になってくるはずです。
医療体制の改善点
現状は、まだその体制が十分とは言えないということなんだと思います。
これだけいろいろな課題がこう見えてきたわけですけど、じゃあこれからどうしていこうとしているのか、その方向性についても触れられてますよね。
そうなんです。文化界では、これまでの、例えば治療回数とか、装置の性能がどうとか、そういう指標だけじゃなくて、患者さんのQOLですね、
これを重視した質の評価に変えていこうという方向性が示されています。
具体的には、より体に優しいと言われるオンラインHDFみたいな治療法も含めて、人工腎臓治療全体の評価の仕方を見直していこうと。
ということは、さっき課題で出てきたシャントトラブルへの対応とか、腹膜透析をもっと使えるようにするとか、そういう点についても評価の仕組みでお通ししていくみたいな感じですか?
まさにその通りです。シャントトラブルについては、ちゃんと事前連携体制を作っているかという点を評価に入れる。
で、腹膜透析については、導入しやすい環境整備とか、情報提供の充実、これを促すような評価を考えているようです。
あと、地域によって受けられる医療に差があるという問題にも、やはり対応していく必要があると指摘されていますね。
なるほどですね。今回は日本の透析医療が直面している課題、それから今後のQOL重視への転換について、資料をもとにちょっと深盛りしてきました。
患者さんの高齢化という大きな波にどう対応して、医療の質を上げていくか。まさに大事な転換期にあるという感じですね。
災害対策、連携、治療の選択肢、情報提供、緩和ケア、課題は本当にいろいろありますけど、根っこにあるのは、患者さん一人一人を中心に置いた医療をどう具体的に実現していくのかという問いなんだと思います。
今回の評価方向の見直しが、現場のより良い取り組みを後押しする力になってくれるといいなと期待しています。
さて、今回の議論を踏まえてですね、最後にあなたに一つちょっと考えてみてほしいことがあります。
多くの人が関わる医療制度の中では、ある程度標準化された治療っていうのも必要です。
でも一方で、一人一人の患者さんの生活状況とか価値観に合わせた個別化されたケアっていうのももちろん大切ですよね。
この2つのバランスを、特に高齢化が進める中で、これからどう取っていくべきなのか。
今回話題になった在宅でのケア、腹膜透析みたいな選択肢の可能性も含めて、少し立ち止まって考えてみる。そんなきっかけになったら嬉しいです。
それでは今回のThe Deep Diveはこの辺で。また次回、新たなテーマでお会いしましょう。
07:53

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