1. 岡大徳のポッドキャスト
  2. 総合病院精神科の役割拡大と精..
2025-10-24 06:03

総合病院精神科の役割拡大と精神科リエゾンチーム活用の最新動向【令和8年度診療報酬改定に向けて】

spotify apple_podcasts youtube

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、令和8年度診療報酬改定に向けた総合病院精神科の現状と課題が報告されました。総合病院精神科には、身体管理が必要な精神科専門治療、自殺企図関連の合併症治療、精神疾患に身体疾患が合併した患者の治療という重要な役割が期待されています。しかし、精神病床数の減少や地域偏在といった課題も明らかになりました。

本稿では、総合病院精神科が直面する3つの課題、診療報酬上の評価の動向、精神科リエゾンチームの活躍という観点から、今後の精神科医療提供体制を展望します。総合病院精神科の現状は、精神病床の減少が一般病院で顕著に進んでいます。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の届出が減少する一方、精神科急性期医師配置加算の届出は増加傾向にあります。精神科リエゾンチームは、せん妄、抑うつ、自殺企図、認知症など多様な精神疾患への介入で成果を上げており、届出医療機関数と算定回数がともに増加しています。

総合病院精神科が直面する3つの課題

総合病院精神科の医療提供体制には、精神病床の減少、救急搬送の遅延、地域偏在という3つの課題が存在します。

精神病床数は減少傾向にあり、特に一般病院での減少が顕著です。この減少は精神科病院よりも一般病院で大きく、総合的な入院医療を提供する体制に影響を及ぼしています。全病床数が400床以上かつ精神病床の割合が15%未満という、入院医療における総合性を兼ね備えた医療機関が存在しない二次医療圏が多く存在します。この地域偏在は、精神疾患と身体疾患の両方に対応できる医療機関へのアクセスを困難にしています。

救急搬送に係る時間を傷病別に見ると、精神系は他疾患と比較して長い傾向にあります。この遅延は、精神科医の対応が必要な救急患者の受け入れ先確保の困難さを示しています。精神病床を有している医療機関は精神科医の対応が必要な救急搬送患者を受け入れていましたが、こうした医療機関の減少が救急医療体制全体に影響を与えています。

地域における精神科医療の偏在も深刻な課題です。前述の総合性を兼ね備えた医療機関の不在は、患者が適切な医療を受けるために長距離移動を強いられる可能性を意味します。精神症状の重症度と身体症状の重症度・病期に応じた適切な医療機関への振り分けが困難になっており、医療提供体制の整備が求められています。

診療報酬上の評価と精神病床を有する病院の優位性

診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という対照的な動きが見られます。

総合入院体制加算の届出病院数は、急性期充実体制加算が新設された令和4年以降減少傾向にあります。この減少は、医療機関が新しい加算体系への移行を選択していることを示しています。精神科充実体制加算または小児・周産期・精神科充実体制加算の届出医療機関数は、令和5年以降横ばいで推移しています。この横ばい状態は、新規の届出が限定的であることを意味します。

精神科急性期医師配置加算の届出医療機関数は増加傾向にあります。この加算は、精神症状とともに身体疾患または外傷を有する患者の入院医療体制を確保している医療機関を評価するものです。精神科急性期医師配置加算2イの算定回数は横ばいで推移していますが、届出医療機関の増加は、総合病院における精神科医療体制の整備が進んでいることを示唆しています。

精神病床を有する病院は、それ以外の病院よりも急性期の一般病床において精神疾患への対応が可能である割合が多いという優位性を持っています。この優位性は、総合病院精神科を評価する加算の算定医療機関において、手術等を伴う統合失調症患者の入院件数が多いという結果にも表れています。精神病床を有することで、身体合併症を持つ精神疾患患者への対応力が向上し、一般病床での精神科医療提供も円滑になるのです。

精神科リエゾンチームの活躍と認知症ケアとの連携

精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関数及び算定回数は増加傾向にあり、一般病床における精神科医療の充実を示しています。

精神科リエゾンチームは、急性期の一般病床において多様な精神疾患に介入しています。このチームは、せん妄や抑うつを有する患者、自殺企図で入院した患者、認知症患者等に対して専門的な支援を提供しています。せん妄は急性期病棟で頻繁に見られる症状であり、早期発見と適切な介入が重要です。自殺企図で入院した患者への対応では、身体的治療と並行して精神科的評価と継続的支援が必要になります。認知症患者への介入では、認知機能の評価や行動・心理症状への対応が求められます。

精神科リエゾンチーム加算を届け出ている医療機関は、それ以外の医療機関と比べて多様な精神疾患に対応可能でした。この対応力の高さは、専門的なチーム体制の構築と多職種連携の成果を示しています。精神科医、看護師、薬剤師、精神保健福祉士など多職種が協働することで、複雑な精神医学的問題に対応できる体制が整っています。

精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関の60.2%が認知症ケア加算1を届け出ていました。この高い併存率は、精神科リエゾンチームと認知症ケアの親和性を示しています。認知症ケア加算やせん妄ハイリスクケア加算を届け出ている医療機関においても、認知症やせん妄に対応できるとした医療機関が多く、加算を通じた体制整備が精神科医療の質向上に寄与しています。

まとめ

総合病院精神科の現状は、精神病床の減少と地域偏在、救急搬送の遅延という課題に直面しています。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という変化が見られます。精神科リエゾンチームは、多様な精神疾患への介入で成果を上げており、認知症ケアとの連携も進んでいます。今後、精神症状と身体症状を一元的に対応できる医療機関の整備が重要であり、令和8年度診療報酬改定における評価の在り方が注目されます。



Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

サマリー

日本の総合病院における精神科の役割が拡大しており、精神科リエゾンチームは重要な役割を果たしています。診療報酬の改定により、複雑なケースへの対応が重視され、精神的ケアの必要性が高まっています。

精神科の現在と未来
さて、今回はですね、皆さんと共有させていただいた資料をもとに、日本の総合病院での精神改良、その今とこれからを一緒に見ていきたいと思います。
最近よく聞きますよね、一般の病院でも心のケアが大事だって。でも実際どうなってるんでしょうか?
はい、いただいた資料を拝見しましたけど、これは日本の特に精神改良の提供体制が大きな変化の時期にあることを示してますね。
変化ですか?
はい。具体的に見ていくと分かりやすいんですが、今日は3つポイントがありそうです。
おお、3つ。
ええ。ベッド数の問題、それから診療報酬、お金の面での評価の変化、そして精神科リエゾンチームっていう専門家チームの活躍ですね。この辺りに注目してみましょうか。
なるほど、分かりやすいですね。じゃあ早速そのベッド数の変化からお願いします。
資料だと精神科の入院ベッド、特に一般病院の中のものが減ってると。
ああ、はい。そうなんです。これ単純に考えると、必要な時に入院しにくいとかそういうことですかね。
あの、救急搬送の時間も精神系の疾患だと長引く傾向があるって話も聞きますけど。
ええ、まさにそこが一つ大きな懸念点です。ベッドの数もそうですし、あとより問題かもしれないのが地域による偏在、いわゆる地域偏在ですね。
地域偏在。
はい、あの精神疾患とあと体の病気、これを両方しっかり見れる総合的な機能を持った病院が実は少ない地域、いわゆる二次医療圏ですけど、これが結構多いんですよ。
へえ、そうなんですか。
なので結果的に患者さんは遠くまで行かないといけなかったり、あるいはそもそも精神科医が対応できる救急の受け入れ先自体が減ってきていて、搬送が遅れるとそういう構図が見えてきますね。
アクセスの問題は切実ですね。じゃあ次にお金の話、つまり診療報酬の変化、これはどうでしょう。総合入院体制加算っていう、病院全体の力を評価するボーナスみたいなものが減ってると。
ええ、その一方で精神科急性器医師配置加算、こっちは精神科の急な対応を手厚くするポイントですよね。これは増えている。これってどういう意味があるんでしょうか。
ここが非常に面白いというか、示唆に富む点ですね。これは単に増減したというよりは、国として精神疾患と身体的な問題を両方抱えているような、より複雑な患者さんへの対応力をもっと評価しますよと、そういう方向へのシフトを示していると考えられます。
なるほど、複雑なケースへの対応をより重視すると。
そういうことです。実際にデータもあって、精神科の病床を持っている病院は持っていない病院と比べると、一般の病棟でも精神疾患に対応できる割合が高いという結果が出てるんですね。
ああ、なるほど。
例えば手術が必要な統合失調症の患者さんの入院件数なんかを見ると、やはりこれらの精神科関連の加算を算定している病院の方が明らかに多いんです。
へえ、ちゃんと数字にも現れてるんですね。より専門的な体制を後押ししていると。
ええ、そういう流れですね。
そしてもう一つの大きな動きが精神科リエゾンチーム。
リエゾンチームの役割
はい、リエゾンチームですね。
このチームを置く病院もチームが実際に介入するケース、つまり加算の回数も増えているそうですね。これは具体的にはどんな役割を?
このリエゾンチームというのは、言ってみれば院内の心のケア専門部隊みたいなものです。
院内の専門部隊。
ええ。一般病棟に入院している患者さんって、いろいろな精神的な問題を抱えることがあるんですね。
例えば手術の後にちょっと意識が混乱する専門とか。
ああ、効きますね、専門。
はい。あとはまあ気分がすごく落ち込んじゃう抑鬱状態とか。
あるいは残念ながら自殺を図って運ばれてきた方とか。
それから認知症に伴ういろいろな症状。BPSDとかですね。
うーん、多様ですね。
そうなんです。そういう多様な問題に対して精神科のお医者さん、看護師さん、薬剤師さんといったいろんな専門職がチームで連携して介入する。
というのがリエゾンチームなんです。
なるほど。多職種連携が鍵なんですね。
ええ。それでここも興味深いデータがあるんですが、このリエゾンチーム加算を届け出ている病院のなんと約6割がですね、認知症ケア加算も届け出ているんですよ。
ほう、6割もですか?
ええ。これはつまり現場レベルで精神科のケアと認知症のケアっていうのがすごく密接に連携して行われているという証拠と言えるんじゃないでしょうか。
なるほど。よくわかりました。まとめると総合病院の精神科はベッドが減ったり、地域によって偏りがあったり、そういう課題はあるんだけれども、
はい。
診療報酬の仕組みでより専門的で複雑なケースに対応する方向が示されて、リエゾンチームみたいないろんな職種な連携するアプローチが広がってきていると、こういう理解でいいですかね。
まさにおっしゃる通りだと思います。体と心、これを分けて考えるんじゃなくて、一人の患者さんとしてトータルで見ていく医療の必要性がますます高まっているということですね。
この精神科リエゾンチームの広がりっていうのは、その流れを加速させる非常に重要な動きだと言えます。
今後の令和8年度の診療報酬改定でこういった体制がどう評価されていくのか、ここがこれからの医療の質を考える上ですごく大事なポイントになってくると思いますね。
なるほど。改定の行方が注目ですね。では最後にちょっと皆さんにも考えてみていただきたいんですが、こうやって一般の病院の中で精神科のケアっていうのがどんどん身近になっていくかもしれない。
そうなった時に私たちがちょっと心の調子があって感じた時に、助けを求めることへのなんていうか心理的なハードル、これはどう変わっていく可能性があるんでしょうかね。この辺りまた次回考えていければと思います。
06:03

コメント

スクロール