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2025-10-23 07:58

ポリファーマシー対策の診療報酬評価、算定率16.7%の課題と改善方向を解説

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令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、ポリファーマシー対策と薬剤情報連携に関する検討結果が報告されました。この報告では、退院時の薬剤情報連携における評価の不均衡、ポリファーマシー対策の診療報酬評価の低活用、今後の制度改善の方向性という3つの重要な課題が明らかになりました。

退院時の薬剤情報連携では、保険薬局への情報提供は診療報酬で評価されているものの、医療機関への情報提供は評価対象外となっています。ポリファーマシー対策の評価では、薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が全体の16.7%にとどまり、薬剤調整加算の算定回数は令和5年時点で全国で月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算の算定回数は令和6年8月でわずか13件という極めて低い水準です。分科会では、回復期での対応強化、外来患者への評価拡大、質重視の評価への転換が提言されました。

退院時の薬剤情報連携における評価の課題

退院時の薬剤情報連携において、薬剤師の関与は質の高い指導につながるものの、連携先による評価の格差が課題となっています。

薬剤師が退院時の薬剤指導に関与する施設では、退院処方薬のみならず入院時持参薬なども含めた質の高い説明・指導を実施した割合が高くなります。この関与により、患者は退院後の薬剤管理について適切な情報を得ることができます。

しかし、この情報連携の評価には大きな格差があります。保険薬局への薬剤情報連携は、退院時薬剤情報連携加算として診療報酬上の評価対象となっています。一方、医療機関等に対して薬剤情報連携を実施しても、情報連携元である医療機関における退院時薬剤情報管理指導料等の評価の対象となっていません。

この評価格差は、実際の算定状況にも表れています。退院時薬剤情報管理指導料の算定回数は令和5年時点で月当たり約27万件であるのに対し、退院時薬剤情報連携加算の算定回数は令和4年時点で約1万件(10,386件)にとどまっており、大きな格差があります。退院時薬剤情報連携加算を実施していない施設は63.8%にのぼります。実施していない理由としては、他の業務負担が大きいこと、情報提供文書の作成にかかる労力が大きいことが上位を占めました。また、情報提供先の薬局がわからなかったこと、情報提供文書は医療機関宛に出すことが多いため対象外であることなども理由として挙げられました。

退院時薬剤関連情報連携における実施項目では、急性期・高度急性期病院から最も提供されていた項目は「退院処方一覧」でした。次いで「入院時持参薬や退院処方以外に継続服用が必要な薬剤に関する情報」、「入院中に変更となった処方に関する変更理由」が多く提供されています。連携先については、薬局の割合が最も高く62.1%であり、続いて医療機関が26.6%となっています。

ポリファーマシー対策の診療報酬評価の実態

ポリファーマシー対策の診療報酬評価は、算定医療機関・算定回数ともに極めて低い水準にとどまり、制度の実効性が課題となっています。

薬剤総合評価調整加算の算定医療機関は、病院全体の16.7%にすぎません。この加算は、患者の入院時に持参薬を確認し、関連ガイドライン等を踏まえて慎重な投与を要する薬剤等を確認するものです。その上で、医師、薬剤師、看護師等の多職種による連携の下で薬剤の総合的な評価を行い、処方内容の変更を実施します。

薬剤調整加算の算定回数は、令和5年時点で全国で月当たり約2,680件という低い水準です。この加算は、薬剤総合評価調整加算の算定要件を満たした上で、退院時に処方する内服薬が2種類以上減少した場合、または退院日までの間に抗精神病薬の種類数が2種類以上減少した場合などに算定できるものです。薬剤総合評価調整加算の算定回数が令和5年時点で月当たり約7,790件であることを考えると、実際に減薬まで至るケースは約3分の1にとどまっています。

薬剤適正使用連携加算の算定状況は、さらに深刻です。地域包括診療料・加算等の算定患者が入院・入所した場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係る連携を行った場合の評価ですが、令和6年8月における算定回数はわずか13件でした。

算定が進まない理由は複数あります。薬剤適正使用連携加算を算定していない理由としては、「当該加算の存在を知らなかったため」が最も多く、次いで「内服薬の種類数を減らすことが困難である患者が多いため」が多い結果となりました。

薬剤総合評価調整加算を算定していない理由としては、「入院期間中に2種類以上の減薬を実施することが難しいため」が最も多くなっています。入院中に2種類以上の減薬を実施することが難しい理由として、「入院期間が短いこと」が43%、「処方の変更に対する反応を確認しながら1剤ずつ減量する必要があるため」が41%を占めました。

病院におけるポリファーマシー対策については、他職種から病院薬剤師に対する期待が大きい反面、実施が困難な状況があります。急性期では在院日数が短く十分な介入ができないこと、また人手不足で対象患者の抽出や検討する時間を確保できないことなどから、病院薬剤師が十分に取り組めない場合が多くなっています。

今後の改善に向けた方向性

分科会では、回復期での対応強化、算定要件の見直し、質重視の評価への転換という3つの改善方向が提言されました。

回復期での対応強化については、急性期病棟での限界を踏まえた意見が出されました。急性期病棟では、在院中に減薬してその後の経過を確認することは困難であり、回復期以降の病棟で対応すべきであるとの意見がありました。また、回復期病棟等での薬剤情報連携の状況についても示してほしいとの意見があり、その評価を検討すべきではないかとの意見が出されました。

算定要件の見直しについては、現状の要件が厳しすぎるとの指摘がありました。薬剤適正使用連携加算の算定回数は極めて少なく、算定要件が厳しすぎるのではないかとの意見が出されました。現状では入院・入所患者を対象とした評価となっていますが、他院にも併せて通院する外来患者について、処方内容、薬歴等に基づく相談・提案を他院へ行った場合には、評価の対象としてはどうかとの意見がありました。

質重視の評価への転換については、薬剤数だけでなく対策の質を評価すべきとの意見が出されました。ポリファーマシー対策について、薬剤数ではなく、ポリファーマシー対策が適正に実施されているか、質を評価すべきとの意見がありました。「抗コリン薬リスクスケール」や「高齢者施設の服薬簡素化提言」等を踏まえ、検討すべきとの意見が出されました。

まとめ

ポリファーマシー対策と薬剤情報連携については、退院時の情報提供先による評価格差の解消、ポリファーマシー対策の評価制度の実効性向上、回復期での対応強化と質重視の評価への転換が求められています。薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が16.7%、薬剤調整加算が月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算が月13件という低い算定実績は、制度の抜本的な見直しの必要性を示しています。分科会での議論を踏まえ、今後の診療報酬改定において、これらの課題に対する具体的な改善策が検討されることが期待されます。



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サマリー

ポリファーマシーと医療機関間の薬剤情報連携には、現在いくつかの課題や改善策があります。特に、診療報酬の活用が進んでいない状況や、質の評価への移行が見込まれ、今後の方向性について議論されています。

ポリファーマシーの問題と現状
はい。こんにちはさあ、ザ・ディープダイブです。今回はですね、あなたから共有いただいた資料に基に、日本の医療におけるポリファーマシー、つまり多剤副用の問題ですね。
この対策と、あと医療機関同士の薬剤情報の連携、これについて深掘りしたいと思います。
何で必要だと言われているのに、なかなか活用が進んでないのか、それからどんな改善策が今話し合われているのか、このあたりをあなたと一緒に探っていければなと。
ここでまず注目したいのが、この問題のねじれみたいなところなんですよね。
ねじれですか?
はい。ポリファーマシー対策とか情報連携って、まあ必要だよねっていうのはみんなわかってるはずなんですけど、実際の活用度が驚くほど低い。
特にその関連する診療報酬、インセンティブですよね。これがほとんど機能してない。このギャップがすごく問題を象徴しているかなと思いますね。
なるほど。ではまずその情報連携の方から見ていきましょうか。退院時の話ですね。
退院する患者さんのかかりつけ薬局、ここに情報提供すると評価される。でも、転院先の病院とか、普段かかっている別の診療所への情報提供は、これ評価の対象外なんですよね。
そうなんです。そこがちょっとアンバランスで。
この差が数字にもはっきり出てますよね。薬局への提供が約27万件。他の医療機関への連携は約1万件。ということは、6割以上の施設がやってないということですか。
そういう計算になりますね。その理由を聞くと、現場からは他の業務も大変だしとか、文書作るのが手間だとか、連携先の薬局がそもそもわからないとか、そういう声が上がってるんです。
ただ、これ単に手間の問題だけってわけでもないんですよね。
どう言いますと。
つまり、こういう現場の負担感とか、制度のアンバランス差が、結局医療の分断、病院と診療所、あるいは救急と回復機みたいな、そこの情報共有がうまくいかないことに繋がってるんじゃないかと。
ああ、なるほど。特にたくさんの薬を飲んでる高齢者の方なんかは、治療の継続性とか安全性に影響しかねない、そういう話ですね。
診療報酬の課題
まさに。で、次にそのポリファーマシー対策そのものに目を向けると、これはこれでまた状況が深刻なんですよね。
深刻。具体的に数字を見ていきましょうか。まず、入院時に持ってきた薬を確認して、他職種で処方を見直す、いわば入り口でのチェックですね。これに対する評価、薬剤総合評価調整加算。
はい、それです。
これを算定している医療機関が全体のたった16.7%。
16.7%。そうなんです。非常に低い。
低いですね。
ええ。で、さらに実際に薬を減らすっていう具体的な成果ですね。これに対する評価が薬剤調整加算。
ええ。
これが1月あたり約2680件。
月に2680件。
ええ。ちなみに見直し自体は月7790件くらい行われてるんですよ。
あっ、見直しは結構されてるんですね。
そうなんです。でも実際に減薬につながるのは、そのうちの3分の1程度っていうことですね。
うーん、なるほど。
で、さらに衝撃的なのがその次で、退院時にかかりつけ医と入院してた病院が連携して減薬を進めましょうっていう評価。薬剤適正使用連携加算。
はいはい。連携の加算ですね。
これが、なんと月にたったの13件。
13件ですか?月に。
ええ。月平均で13件。
いや、これは精度はあるけど、もうほとんど使われてないって言ってもいいレベルですよね。
そう言っても過言ではない状況ですね。で、なんでこんなに低いのかっていう理由なんですけど、まあそもそもそんな加算があるのを知らなかったっていう声も結構あるらしくて。
ああ、まず知られていない。
それに加えて、やっぱり現場の実情として入院期間が短すぎると。
はい。
短い入院期間の中で2種類以上の薬を減らすのはなかなか難しいというのがあるんですね。
なるほど。特に旧世紀の病院だといろいろ検査したり治療したりであっという間に退院みたいなことも多いですね。
そうなんです。治療が優先されますし、薬を減らした後の営業を慎重に経過観察する時間的な余裕がない。
だから今の制度の2剤以上減らすっていうこの結果指標が、そもそもこの旧世紀の現場の実態とちょっと合ってないんじゃないかという可能性はありますよね。
なるほどなるほど。そこで改善の方向性としていくつか議論されているわけですね。
改善策と質の評価
一つはその旧世紀ではなくて、もう少し入院期間が長めで状態も落ち着いていることが多い回復期の病棟、こちらでの取り組みを強化してはどうかと。
そうですね。回復期であれば患者さんの状態変化をより丁寧に観察しながら薬の見直しを進めやすいだろうという考え方です。
ふむふむ。
それに加えて厳しすぎる算定要件、例えばその2剤以上っていう縛りを見直すとか、あとは入院患者さんだけじゃなくて外来で複数の医療機関にかかっている患者さん、そういう方々の連携を評価する仕組みも検討されてはいますね。
ああ、外来での連携評価、それも重要そうですね。そしてもう一つ、これは大きな転換点になりそうだなと思ったのが、質を評価するという視点。
ああ、それすごく大事なポイントだと思います。
今まではどっちかというと何剤減らせたかっていう数の話だったのが。
そうなんです。これはすごく本質的な問いかけで、評価すべきは減らした薬の数なんですか。それとも処方全体の適切性なんですか。
適切性。
例えばですけど、抗コリン薬リスクスケールみたいなツールがあるんですね。
はい。
そういうのを使って薬のリスクを評価して、そのリスクをどれだけ低減できたか、つまりポリファーマシー対策の質そのものを評価しようと、そういう動きが出てきてるんです。
なるほど。単なる数合わせじゃなくて、より患者さんにとって臨床的に意味のある評価を目指そうという方向性なんですね。
ええ、そういうことですね。
よくわかりました。では、ここまでの話をまとめさせていただきます。
今回は、まず退院時の薬剤情報の連携で評価に偏りがあるという実態を見ました。
そしてポリファーマシー対策、これは必要性が叫ばれているにもかかわらず、関連する診療報酬が驚くほど活用されていないと。
その背景には、現場の負担感とか、救世機病院の入院期間の短さ、それから現行制度が結果、つまり原薬の数を重視しすぎているという課題が見えてきましたね。
そうですね。改善策としては、回復期での対応を強化すること、算定要件をもっと柔軟にすること、そして今お話しにあったように、数から質へ評価の軸を変えていくこと、これが検討されているということでした。
はい、その通りです。
それでは最後に、いつものようにあなた自身につながる問いかけをさせていただければと思います。
はい、こうした制度的な課題ですとか、あるいは量より質へという医療全体の流れ、これを踏まえた上でですね、患者としてあるいはご家族の立場として、あなた自身のまたはご家族の副薬内容について、医師や薬剤師ともっと建設的に話し合ったりとか、
あるいは医療機関同士の情報連携をこちらから促したりとか、そういうためにどんな働きかけができるでしょうか?具体的にどういう質問を投げかけてみると有効だと思いますか?ちょっと考えてみていただけると嬉しいです。
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