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2026-10-29 05:42

テロメライシン注の薬価は1瓶約310万円|食道癌の遺伝子治療が保険適用へ

令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回)で、再生医療等製品「テロメライシン注」の保険適用が議題になりました。テロメライシン注は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない食道癌に使う遺伝子治療用製品です。本号では、この製品の特徴と薬価が決まった仕組みを、資料「総-3」をもとに解説します。

テロメライシン注の算定薬価は、2mL1瓶あたり3,102,489円です。この薬価は、比較薬「デリタクト注」の1クール薬価をもとに算定されました。算定では、有用性加算(Ⅱ)・市場性加算(Ⅰ)・先駆加算の3つが、各10%ずつ上乗せされました。上乗せの根拠は、放射線療法との併用で一定の効果が認められたことと、希少疾病用・先駆け審査の指定です。

テロメライシン注はどんな製品か

テロメライシン注は、腫瘍の中で増えて腫瘍細胞を溶かす、遺伝子組換えウイルスの製品です。製造販売元はオンコリスバイオファーマ(株)、成分名はスラタデノツレブです。製造販売承認日は令和8年6月8日、薬価基準収載予定日は令和8年8月13日です。また、テロメライシン注は世界で最初に日本で承認されました。

作用の仕組み

テロメライシン注の正体は、遺伝子を改変したヒトアデノウイルス5型です。このウイルスは、hTERTという遺伝子のプロモーター(遺伝子のスイッチ)の制御下で増殖に必要な遺伝子が働くよう改変されています。hTERTを多く発現する腫瘍細胞にウイルスが感染すると、ウイルスが腫瘍内で増殖します。増殖したウイルスは腫瘍細胞を溶かし、抗腫瘍効果を示すことが期待されています。

対象となる患者

テロメライシン注の効能・効果は、「根治切除及び化学放射線療法の適応とならない食道癌」です。つまり、根治を目指す手術の適応がなく、抗がん剤と放射線を組み合わせる治療の適応もない患者が対象です。

使い方

テロメライシン注は、放射線療法と併用して使います。通常、成人には1回あたり1mLを、上部消化管内視鏡で見ながら腫瘍に直接注射します。投与間隔は概ね2週間で、合計3回投与します。腫瘍の大きさや数に応じて、1回あたり2mLまで増量できます。

臨床試験で示された効果

テロメライシン注の効果は、国内第Ⅱ相試験(OBP101JP試験)で検討されました。この試験は、比較対照を置かない非盲検試験で、目標症例数は37例です。対象は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない、cStageⅡ・Ⅲの局所進行食道癌患者です。

試験の方法

試験では、テロメライシン注を内視鏡下で病変全体に行き渡るよう、5~10か所に分けて注射しました。放射線療法は、初回投与の3日後に始めました。放射線の量は1日2.0Gy(グレイ)で、週5日、約6週間続けました。

試験の結果

試験の主要評価項目は、局所完全奏効率(L-CR)です。L-CRとは、食道の病変(局所)で完全奏効が得られた患者の割合です。投与開始後24週までのL-CRは41.7%(36例中15例)でした。投与開始後18か月までの評価では、L-CRは50.0%(36例中18例)でした。

薬価はどのように決まったか

テロメライシン注の薬価は、「類似薬効比較方式(Ⅰ)」で算定されました。類似薬効比較方式とは、効き方が似た既存の製品の価格を基準に、新製品の価格を決める方法です。算定は、令和8年7月10日の薬価算定組織で検討されました。

比較薬はデリタクト注

テロメライシン注の比較薬には、第一三共(株)の「デリタクト注」(テセルパツレブ)が選ばれました。デリタクト注は、悪性神経膠腫(脳腫瘍の一種)に使う、遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型の製品です。デリタクト注とテロメライシン注は、「腫瘍細胞選択的殺細胞作用/抗腫瘍作用」という薬理作用が共通しています。また、両者はどちらも注射剤です。

1クールあたりの価格をそろえる

テロメライシン注とデリタクト注は、投与回数が異なります。そのため、薬価は1クール(一連の治療)あたりの価格をそろえる方法で計算されました。

テロメライシン注

* 投与方法:2週に1回、計3回

* 1瓶の薬価:3,102,489円(2mL1瓶)

* 1クールの薬価:9,307,467円(2mL1瓶×3回)

デリタクト注

* 投与方法:4週に1回、6回まで

* 1瓶の薬価:1,431,918円(1mL1瓶)

* 1クールの薬価:8,591,508円(1mL1瓶×6回)

計算の出発点は、デリタクト注の1クール薬価から、市場性加算(Ⅰ)と先駆け加算に相当する額を差し引いた額です。この額とテロメライシン注の1クール薬価(2mL1瓶×3回)を合わせた結果、加算前の価格は2mL1瓶あたり2,386,530円になりました。

3つの加算で30%上乗せ

加算前の価格2,386,530円には、3つの補正加算が各10%ずつ、合計30%上乗せされました。この結果、算定薬価は2mL1瓶あたり3,102,489円になりました。

* 有用性加算(Ⅱ)10%:既存の治療方法では効果が不十分な患者群で、放射線療法との併用により一定の効果が認められたためです。また、副次評価項目である嚥下障害(飲み込みにくさ)のスコアに改善が認められたためです。

* 市場性加算(Ⅰ)10%:テロメライシン注が、希少疾病用再生医療等製品に指定されているためです。

* 先駆加算 10%:テロメライシン注が、先駆け審査指定制度の対象に指定されているためです。

その他の算定上の扱い

テロメライシン注は、世界で最初に日本で承認されました。そのため、外国価格はなく、外国平均価格調整も行われません。また、テロメライシン注は「革新的新薬薬価維持制度」の対象と判断されました。主な理由は、希少疾病用再生医療等製品に指定されていることです。一方、費用対効果評価の対象には該当しませんでした。

市場規模の予測

テロメライシン注の市場規模は、ピーク時で年間22億円と予測されています。この予測は、収載を希望したオンコリスバイオファーマ(株)によるものです。ピークは10年度目で、その年度の投与患者数は241人と見込まれています。

まとめ:標準治療の適応とならない食道癌に新たな選択肢

テロメライシン注は、令和8年8月13日に薬価基準へ収載される予定です。テロメライシン注は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない食道癌に、放射線療法と併用して使う遺伝子治療用製品です。算定薬価は2mL1瓶3,102,489円、1クール9,307,467円です。この薬価は、デリタクト注を比較薬とし、有用性・市場性・先駆の3つの加算を各10%上乗せして算定されました。加算の根拠は、放射線療法との併用で一定の効果が認められたことと、希少疾病用・先駆け審査の指定です。

参考資料:中央社会保険医療協議会 総会(第654回)「総-3 再生医療等製品の保険適用について」(令和8年8月5日)



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サマリー

食道癌向けの遺伝子治療用製品、テロメライシン注の仕組みと薬価を解説する。遺伝子改変したヒトアデノウイルス5型が、Hタートを多く持つがん細胞内で増殖し、細胞を破壊する。内視鏡で腫瘍に直接注射し、放射線療法と併用することで、18か月時点の局所完全奏効率は50%と説明される。薬価はデリタクト注を基準に、有用性・市場性・先駆の各加算が10%ずつ上乗せされ、1クール約930万円となった。年間の対象患者数はピーク時でも241人と予測され、希少疾患向けの開発を支える制度として価格設定の意味が語られる。

テロメライシン注の仕組みと投与法
人類の敵であるウイルス。 そのDNAをプログラミングし直して、富士の病に立ち向かう930万円の武器に変えるとしたら。
これ、リスナーのあなたも驚くと思うんです。 そうですね、かなりインパクトのある数字とコンセプトですよね。
今回のディープダイブでは、令和8年8月に薬科が決定した食道癌の新しい遺伝子治療用製品、テロメライシンチューに関する資料を徹底解剖していきます。
はい、よろしくお願いします。この1クール約930万円という価格の裏には、最先端の科学と医療制度の緻密な計算があるんです。
まずちょっと整理させてください。 これってただの薬じゃなくて、遺伝子を改変したウイルスなんですよね。
おっしゃる通りです。テロメライシンチューの正体は、遺伝子を改変したヒトアデノウイルス5型というものなんです。
アデノウイルス? それでどうやってがん細胞だけを狙い撃ちにするんですか?
なんかスマート爆弾みたいな感じですか?
スマート爆弾というよりは、そうですね、ポイントはHタートという遺伝子にあるんです。
Hタートですか?
はい、これをがん細胞を延々と増殖させる不死化のスイッチだと考えてみてください。
なんだか厄介なスイッチですね。
このウイルスは、そのHタートが大量に存在する細胞の中に入り込んだ時だけ、自らを増殖させるスイッチが入るように設計されているんです。
なるほど。つまり単に外部から攻撃する爆弾というより、トロイの木馬のようなアプローチってことですよね?
まさにその通りです。がん細胞の工場に潜り込んで、相手が持つ不死身のスイッチを利用してウイルスのコピーを大量に作らせる。
そして内側から破裂させるってことですよね。なんかウイルスをハッキングしてがんを食べるパックマンに変えたみたいですごいです。
非常にわかりやすい例えですね。実際の治療では内視鏡を使って腫瘍に直接注射します。
直接打つんですね?
ええ。さらに放射線療法と併用することで、その破壊力を高めるんです。
治療効果と患者の生活の質
なるほど。資料を見ると、投与開始後18ヶ月での局所完全走行率、いわゆるLCRが50%とあります。
これって文字通り半数の患者さんで局所の腫瘍が完全に消えたってことですか?
はい。その解釈で間違いありません。さらに意義深いのは、これが既存の治療が受けられない患者さんへのデータだという点です。
根治雪女や化学放射線療法が適用外になった方への新たな希望というミッションがここで生きてくるんですね。
ええ。それに患者さんにとって切実な塩化障害、つまり食べ物を飲み込みにくくなる症状のスコアも改善されています。
それは大きいです。再び自分の口で飲み込めるようになるっていうのは、はかり知れない価値がありますよね。
そうなんです。生活の質の向上がデータとしてしっかり示されています。
デリタクト注を基準にした薬価算定
ただそれだけ複雑な遺伝子操作と内視鏡での高度な手技が必要となると、1クール930万円という価格もなんだか納得できる気がしてきました。
それがですね、実は単純な製造コストや手技の複雑さだけでこの価格が決まっているわけではないんですよ。
え?違うんですか?
ええ。ここからが日本の医療制度の面白いところでして。
類似薬庫。つまり似たような薬と値段を合わせるってことですか?
そういうことです。まず聞き方が似ている既存の脳腫瘍の薬、デリタクトチューを基準にベースの価格を設定します。
なるほど。基準があるんですね。
はい。重要なのはその後でして、このテロメライシンには3つの特別な加算が載っているんです。
加算っていうのはボーナスみたいなものですか?
ええ。既存治療が効かない患者への効果を示した有用性加算、希少な病気を対象とする市場性加算、そして世界に先駆けて承認する先駆加算です。
なるほど。3つもあるんですね。
はい。これらがそれぞれ10%、合計でなんと30%もベース価格に上乗せされているんです。
ちょっと待ってください。10%ずつ上乗せってかなり大きな額ですよね。
1人の治療に約930万円保険適用されるとなると、医療費の負担として本当に持続可能なんですか?
希少疾患治療の費用と制度の意義
そこは非常に鋭い指摘ですね。精度の持続可能性は常に議論の的になります。ただ、ここで全体像を見る必要があるんです。
全体像ですか?
ええ。資料の予測によると、ピーク時である10年目の対象患者数は年間わずか241人なんです。
年間たったの241人。想像以上に少ないですね。
そうなんです。もしこれらの加算システムがなければ、製薬企業は莫大な開発費を回収できません。
ああ、なるほど。誰も希少疾患の薬を作らなくなっちゃうんですね。
その通りです。つまり、この価格設定は単なる利益の保障ではなくて、少数の患者さんを見捨てずにイノベーションを促進するための国からの評価と報酬のシステムなんです。
なるほど。市場原理だけでは救えない241人のために、社会全体で開発を後押しするシステムがこの30%の加算に込められているわけですね。
ええ、まさにそういうメッセージだと言えます。
ありがとうございます。今回の資料を通じて、本来は人間に感染して脅威となるウイルスが、プログラミング次第で少数の命を救う強力な武器に変わることを学びました。
本当に科学の進歩には驚かされますね。
ええ、そこでリスナーのあなたに最後に問いかけたいと思います。現在私たちが脅威や厄介者だとみなしているものの中で、視点やアプローチを少し変えるだけで人類最大の武器に生まれ変わるものは次に何だと思います
か?ぜひ考えてみてください。
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