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2024-08-24 09:58

heldio #35. sing の過去形は sang か sung か?


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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は sing の過去形は sang か sung かという話題です。
この疑問ですね。標準英語をきっちり学習した皆さんであれば、当然答えはわかっているはずですね。
sing の過去形は sang であると。
sung の song っていうのは、過去分詞形ではあるけれども、決して過去形ではないということですね。
sing の活用は sing sang sung というふうに、いわゆる ABC 型、それぞれ母音が異なるというふうに覚えてきたと思うんですね。
これが確かに標準英語の基本的な活用 sing sang sung ということなんですけれども、
実は過去形に、過去分詞形と同じこの sung に相当する sung というのを実際に使うネイティブの英語話者っていうのは、これは普通にいるんですね。
つまりその英語話者にとっては活用は sing sung sung というふうに ABB 型ということになります。
これはいわゆる語用、標準英語では sing sang sung なのに、そうではなく sing sung sung などという活用をするのは語用ではないか、あるいは方言的な鉛ではないか。
どっちにしろ正しくないというふうに考えられそうなところなんですけれども、そう話は簡単ではないんですね。
これは語用であるとか、方言という話題ではなくてですね、もっと言うとこれ歴史の話題なんです。英語の歴史の話題なんですね。
1000年ぐらいの歴史があります。どういうことかと言いますと、このいわゆる母音を変えるタイプの活用を示す動詞ですね。
これはいわゆる不規則動詞というふうに言われていますが、これは比較的頻度の高い動詞に多いですよね。
これ昔から同じだったんです。1000年前の古英語の時代から、やはりこの母音を変えてですね、過去形とか過去分詞形を作るっていうのは今と同じように、今以上にもっとですね、多くの単語にあったんです。
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さあ、この古英語ではですね、実は sing ももちろんこの古英語にルーツを持つ単語なんですけれども、動詞なんですけれども、
実は古英語にはですね、2つ過去形っていうのがあったんです。これ過去形っていうのは今1つしかないので、2つってどういうことと思うかもしれません。
とりわけこの母音を変えてですね、過去形、過去分詞形を作るっていうタイプのいわゆる不規則動詞に関しては、きれいに2系列の過去形があったんです。
実は sing もそうした2つ過去形を持っているタイプの動詞だったんですね。
その2つあるって言ってもどういう形なのか、そしてそれをどう使い分けるのかというと、これ意味に違いはありません。意味は同じ過去です。2つ違う形があったんですね。
何によって変えるかというと、これは俗に単数過去と複数過去っていう言い方をするんですね。
例えば sing の場合で言えば sing これは元形ですね。元の形ですが、過去形に2つあって sang と sung という形があったんですね。
母音だけに注目しますと、要するに今回話題にしているこの sang なのか song なのか sang なのか sung なのか2つあったんです。
そして過去分詞は実は sung という今につながる形だったんです。
過去形につまり2種類当時あったんですね。 sang 系列と sung 系列。
これは単数過去、複数過去と俗に言われることから何となく分かるように、主語が単数であれば sang っていう sang 系列を使ったんですね。
そして主語が複数であれば sung で綴られる sang 系列を英語でも使ったっていうことなんです。
ただもう少し厳密に言いますと、この単数過去、複数過去っていうのはちょっとミスリーディングでですね。
というのは複数形であれば確かに複数過去と言われる2つ目のものを使うんですけれども、単数形でも2人称単数が主語の場合、
つまりあなた一人ですね。あなたの単数が主語の時には実は複数系列、第2の過去形を使ったんです。
なのでこれを単数過去、複数過去と呼んでしまうと少し誤解を招くということで、あまり意味を持たせずに数字で管理して第1過去、第2過去というほうがより混乱しないかと思います。
とにかく単数の場合は2人称に限りますが、それと複数形、全般で使われるのが第2過去ですね。
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それ以外の1人称単数、つまりIが主語の時、それから3人称単数、つまりhe、she、itというものが主語になる場合で、これが第1過去というんですが、とにかく2系列、主語に応じて母音が変わったということなんです。
つまりI sangであるけれども、they sungだったということになりますね。大まかに言うとそういうことです。
この2系列の過去形が存在しました。
ところが現代我々が知っているように、当然過去形というのは1つだけですよね。
つまり英語の歴史のどこかで、あるタイミングで、もともと2つあったものが1つに集約されたということになります。
端的にはどちらか、第1過去か第2過去かのどちらかが生き残って、もう一方のほうは消えた、消されたということになります。
じゃあどっちが取られたのかという問題なんですが、これが実に複雑な歴史がありまして、実は英語の歴史の長い間、2つ並行して走っていて揺れてたんです。
これ方言によってどちらを取るかが決まったり、あるいは場合によって個人によって第1過去をもって全体の過去形の代表とするか、第2過去をもって全体の代表とするかということで、最終的には1つに集連していくんですけれども、
これ方言によって個人によってどっちを選ぶかというのは、法則としてはまとめきれないぐらい事実上ランダムなんです。
緩い傾向があったとしても、あまりはっきりしたことは言えません。
結局、動詞ごとにどちらが取られて標準形になったかというのはバラバラなんです。非常に厄介です。
ただ、これが標準形としてどちらかが選ばれた。ただ、Singの場合はSangが過去形になったわけです。
これも近代語になってからの話で、それまでの小英語以降の中英語、そして近代語初期ぐらいまではずっと揺れてたんです。SangがSangなのかということですね。
様々に揺れを示していて、ひどいのになると、例えばWrite, Wrote, Written。これ今でははっきり現代語で標準英語としてWrite, Wrote, Writtenだというふうに定まっていますけれども、
近代語記ですね。例えばシェイクスピアの時代であるとか、その後までも様々なWriteの過去形というのがありまして、
確かにWroteもその一つだったんですが、別にWriteというのもあればWritというのもあればWriteというのもあればWritというのもあって、
しかも現在形と同じWriteというのもあったんです。つまりいろんなものが並存していたんですけれども、最終的にどういうわけか、なかなか理由は定め難いんですが、
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Wroteに定まってきた。問題のSingに関しては、近代語記までずっとSangとSangが並行して2本走っていました。
そして近代語になって標準形としてはSangが取られたんですが、一部方言であるとか個人によってはこのSungのSangというのも生き残ったということです。
現在では標準形に対する非標準形という関係ではありますけれども、いまだにSangではなくSungという非標準形の過去形も根強くネイティブスピーカーの間で、特に口語では残っています。
これは実は語用などではなく、千年の歴史を誇る非常に長いプロセスなんです。ではまた。
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