言語の数の概要
言語に関する素朴な疑問。 世界に言語はいくつあるのですか。
今回は英語の素朴な疑問にとどまらず、言語一般の話題。 世界に果たして言語はいくつあるのかという非常に一般的な問題を扱いたいと思います。
英語も一つの言語ですね。日本語も一つの言語です。 合わせて2言語。
他に皆さん、様々な言語名を挙げることができると思います。 フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、中国語、韓国語などをたくさん挙げられると思います。
では、これらを足し合わせていくと、果たして現代世界にはいくつの言語があることになるのでしょうか。
このような疑問を抱いたことのない方にとっては、見当もつかないかもしれません。 100個ぐらいだろうか。あるいは1000個ぐらい。
もしかして数千とか1万というレベルであるんだろうか。 というような様々な答えが返ってくる可能性があります。
実はこれ専門の言語学においても正確な数を出すことはできないんです。 もちろん概数を出すことはできます。
例えば少なく見積もる研究者は3000ぐらいかなと言います。 一方で多く見積もる研究者は1万ぐらいかなと言います。
多くの研究者はその間をとってという言い方も変ですけれども、 だいたい数千レベル6千とか7千という研究者が多いです。
実際このような世界の言語の統計を調査している エスノローグという機関によりますとウェブ上で見ることができますが、
2020年度版の数字では世界に言語は7千以上あるというカウントが紹介されています。 これも一つの参考値でしかないんですね。
ですが概数としてはだいたい数千レベルということで多くの研究者がまとまっているというのも事実です。
ですのでこの表題の問いに関する答えとしては私としては数千ぐらいですと濁しておきたいと思います。
言語数を数える難しさ
その数そのものよりも重要なのはどうして正確な数を出すことができないのか、 こちらの問題の方が実はとても重要な問題なんですね。
もしかすると皆さんの中には言語学者が時間とお金をかけて世界中を調査すれば、 そして頑張って言語を数えていけばいずれは正確な数が出るのではないかと思うかもしれません。
しかしそういうことではないんですね。いくら時間とお金をかけて調査してもやはり誤差が出ますし、論者によってかなり大きな数の差が出てくるのではないかと思うんですね。
それには理由があるんです。なぜ数えられないか。5つ挙げてみたいと思います。
まず一つはエスノローグを紹介しましたが、世界規模の調査というのは少ないために、 まだこの世界言語の統計は始まったばかりというべきで、はっきりしたことはわからないという現実的な理由があります。
これ一つ目です。二つ目、このような調査ができても実は研究者は不完全な数字しか出ないということを知っているために、
言語数を任意に切り上げたり下げたりして、外数を与えるに留まるということですね。
いろいろと複雑な事情があるということを知っているので、各論者は適当なおよその値を与えて済ませるという傾向があるということです。
三つ目、消滅する言語というのがあります。つまり死んでいく言語ですね。
そしてそれがどれぐらいの頻度であるいは速度で消滅していくかということが正確に把握できない以上ですね。
今日数えたとしても、1ヶ月後、1年後に数えたときにはまた変わっているわけですよね。
これ一つの概算なんですけれども、実は地球上から12日に一つの言語が今消滅しているという、そういう試算もあります。
12日に一つです。つまり1ヶ月後ではマイナス2とか3になっている可能性があるということですね。
こういう事情もあります。四つ目の事情は、新たに発見される言語であるとか、新たに区別される新言語として認定される言語というのがあるということです。
しかしこれはですね、地球上ある意味隅々まで調査されているわけですので、実際上はですね、独立した言語と思っていなかったものが、新たに独立した言語として認定されたようなもので、
ある種誤差の範囲内というか、これで増える言語の数というのは知れています。対して体制に影響はありません。
ここまで四つの事情はですね、それほど体制に影響を与えない重要な問題ではありません。それ以上に重要なのは最後の5点目です。これが効いています。
これによって、研究者によって3000と言ったり1万と言ったりですね、分かれるわけです。それは何かと言いますと、ある言葉、集団が話している言葉が一つの独立した言語なのか、
それとも、あるより大きな言語の方言に過ぎないのかという捉え方について、実は明確な基準がないということです。
ある言葉が言語なのか、方言なのかという、この区別の問題というのはですね、社会言語学において非常に古くて非常に新しい問題です。
そして言語学の中では解決するのは大変難しい問題なんですね。
例えば、皆さん沖縄で話されている言葉を日本語の一部と捉えて、つまり方言、沖縄方言であると捉えますか。
あるいは日本語と、いわゆる標準語とだいぶ違うということを重視して、一つの沖縄語である、琉球語であるという捉え方をしますか。
この立場によって、世界の言語をカウントする仕方が、プラス1あるいはマイナス1ということになるわけですよね。
これが世界の隅々で実は似たような問題が起こっていまして、これに対する立場次第で、言語数は3000ぐらいと過方にですね、捉える論者と、
むしろ1万ぐらいというふうに、情報に多い方に捉えるという議論があるということです。
この世界の言語の数を数えることが難しい最大の理由は、ある言葉が言語なのか、それとも言語の階級文である方言に過ぎないのか、これによってだいぶ異なるということなんですね。
これは実は純粋に言語学的な問題というよりは、実は政治の問題です。
ここが、世界の言語の数を数えるのが極めて難しい理由ということになります。
この問題に関して関心を持った方は、ぜひですね、ヘログの3009番、2270番、そして1060番の記事をご覧ください。