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配信しています。 本日は3月24日金曜日です。いかがお過ごしでしょうか。
本日お届けする話題は、 印欧祖語の故郷をめぐるブナ問題です。
昨日の放送で、 ブックとビーチ、
本とブナの関係は、ということで、
ブック・ビーチという単語の語源についてお話ししました。
2つ目のビーチっていうのが、ブナ。 植物の木のブナですけれども、これをめぐって実はですね、
印欧言語学の世界で大論争となったことがあるんですね。
ブナ問題というふうに今日は呼びますけれども、このお話です。 これがなかなか面白い話題なんですね。ぜひお聞きください。
本題に入る前に、新聴のお知らせです。 2ヶ月半ほど前になります。
1月12日に開拓者より本が出版されました。 京都大学の家井龍子先生と私、太田隆一の教授です。
文献学と英語史研究という題で出版されています。 これはですね、英語史研究のガイドブックという趣旨の本です。
英語史の入門書とか外説書というよりはですね、英語史を研究する方、これから研究してみたいなと思う方へのガイドブックという趣旨ですので、その点ですね、少し水準が高いかもしれません。
過去40年ほどの英語史研究の動向と今後の展望を整理して示す、といった内容の本となります。
この方面に関心のある方はですね、ぜひ手に取っていただければと思います。 分野ごとにおよそですね、研究の歴史がまとまっていまして、それから方法論ですね。
電子コーパスであるとか電子辞書、電子方言地図のようなツールですね。 ツールを使って研究するための方法論のようなことも1章2章採定論じています。
文献学と英語史研究開拓者より1月に一般発売となっています。 このチャプター、日本書を紹介する記事へリンクを貼っておきますので、そちらをご覧いただければと思います。
以上、新聴のお知らせでした。 今日の本題は引用祖語の故郷をめぐるブナ問題ということです。
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昨日の放送でブナを表す英単語ビーチ、 これとブックが語源的関連があるということをですね、お話ししたんですけれども、このブナを表すビーチという単語ですね。
これはですね、実はかつて引用祖語の故郷をめぐる論争の中で注目された単語なんですね。ある意味利用された単語と言ってもいいと思うんですけれども、このビーチ、ブナという何でもない木のある種類の木を表す単語なんですが、これをめぐる大論争があったというそういうお話なんですけれどもね。
このチャンネルでは英単語の語源を扱うということが多いわけですけれども、その際にですね、引用祖語、プラウトインドヨーロピーアンという、この引用祖語という言語名がですね、よく登場するんですね。
英語を含めたヨーロッパの大多数の言語はもちろん、ペルシア語であるとかインドのヒンディ語とかですね、そのあたり非常に広い一帯を覆っている言語の家族っていうのがあるんですね。これをインドヨーロッパ語族と呼んでいます。英語でインドヨーロピアンファミリーということなんですが。
これはですね、紀元前4000年ぐらいですね、今からざっと6000年ほど前には一つの言語だったというふうに考えられています。これが時を経て、東西南北に地理的に拡散していきます。
と同時にそれぞれがどんどん方言化していって、やがては何千年も経つとですね、お互い通じなくなってしまうということで、このインドヨーロッパ語族の中にいくつかの語派、言語の派閥ですね、ができます。そしてその語派の中でもさらに枝分かれしていって、最終的なこの枝の先っぽの葉っぱですね。
これが多数存在するんですが、その一つが英語であり、フランス語であり、ロシア語であり、ヒンディ語、ギリシャ語といったような様々な言語になっている。これらは大元は一つの言語だったんだというのがインドヨーロッパ語の仮説です。
ではこの6千年ほど前の大元の言語、祖先の言語ということで祖語なんですが、インドヨーロッパ祖語はどんな言語だったのか知りたくなりますよね。これは19世紀の比較言語学という分野がまさに追っかけていた一つのですね目標だったんですね。
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そして今ではだいぶ詳しくいろんなことが分かっています。このインドヨーロッパ語の発音、形態、文法のようなものが復元されています。もちろんこれは確かめようがないんですね。
当時まだ書き言葉はありませんでした。ですので基本的には理論的な復元ということになります。書き言葉として残っている証拠っていうのはゼロなんですね。そしておそらく今後も出てくることはないでしょう。
ということでそれがですね復元されたものが本当かどうかっていうのは確かめる術はないといえばないんですが、これが元の形だというふうに想定すると現在のその末裔たちの多数の言語ですね。英語とかヒンディー語とかの語形なり文法なりを最もよく説明できるというそうした素形があるんですね。
これについては研究がとってもよく進んでいるんですけれども、果たしてその言語がどこで喋られていたのかといういわば引用祖語の故郷の問題ですね。これについては様々な学説が提示されてきました。
これはもはや言語学だけの話ではなくて考古学等ですね様々な分野からの知見でですね矛盾しないエリアがですね故郷の地として提案されるんですがそれにしてもですねいろいろな学説が提示されてきました。
ヨーロッパだという説もあればいやいやむしろトルコあたりアナトリアあたりだという説もあれば現在最も有力な説で言いますと南ロシアであるとかウクライナのステップ地帯このあたりが故郷なんではないかというギンブタスという考古学者ですねの有名な説があります。
これが一般的にはよく教科書に載っていて指示されているというものなんですがもちろんこれも一つの学説有力ではありますが学説に過ぎないという点でですね皆が一致する結論というのは出ていないんですね。
ではこの故郷がどこだったかっていうのはそもそもどうやって迫ることができるんだろうかという疑問が湧くわけですね。
学者たちが考えたのはこういうことです。インドヨーロッパ祖語の単語の形みたいなものは先ほど述べたようにかなり研究が進んで復元されています。
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理論的復元ではありますがかなり説得力のある形で語彙のリストみたいなものが出来上がってるんですね。
そしてその大元の語根ですよね語源的な形を反映したそれを引き継いだ形がですね今様々な言語にインドヨーロッパ語俗に属する諸言語にですね残ってるっていうことがあるわけですね。
語形がかなり大きくですね変わってしまっている例もありますが各言語の歴史をきちっとですね記述して追いかけていくと
引用祖語のある形に由来する単語であるっていうことが割と精度高く突き止められるんですね。
とするとですね引用語俗に属する言語って非常に多いのでインドから文字通りイギリスまでですねこれだけ広くあるのでその様々な何百という言語ですよ。
この何百という言語の大多数に対応語が存在しているというような引用祖語の語根ですね。
これは最も古くからあった単語と解釈することができます。
つまり多くの言語に対応する単語がですね存在しているっていうそういう単語は最も古い時代から存在していたつまり引用祖語にあったという可能性が高いということですね。
逆に例えばゲルマン語派の中でしか共通する語根が発見されず他の語派には対応するものがないということになるとこれは大昔からあったというよりはゲルマン語派の内部で新たに生まれた単語なんだろうと解釈するのが自然です。
ですので様々な語派に共通して存在する語根ですね。これはおそらく最も古い時代からつまり引用祖語の時代からあったと一般論としてはですねあるいは確立論として考えて良さそうです。
さてこのような非常に多くの言語に共通してみられる語根をリストアップします。
この単語リストというのは言ってみれば引用祖語という最も古いレベルで存在していた単語のリストということになります。可能性としてそうである可能性が高いということですね。
そこでですねこの一覧を眺めると色々と面白いことがわかってくるんですね。例えば海を表す単語がこのリストの中に含まれていないって言うんです。
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とすると故郷の土地は海がない内陸部であるというような推測が立ちます。もちろんこれ一つだけで結論付けることはできないんですがいくつかのこうしたキーワードっていうんですかね組み合わせていくんですよ。
空間的な地位とか地理的な環境みたいなものを匂わすような単語の存在とかあるいは不在ですよね。今回の場合Cの場合不在っていうところがポイントになってるんですが。
この空間的ポジションあるいは地理的地形的環境みたいなものを表すあるいはそれを示唆するもう一つの重要な証拠と言いますか間接証拠ヒントを与えてくれるものとして動植物っていうのがあるんですね。
動植物というのは生息する環境っていうのが気候に応じてある程度限定されます。これは専門的には生物分布の話ですからあるいは気候分布の話になります。しかも昔の話ですからねかなり専門的な知識が必要とはなります。
チャプターを継ぎます。このような動植物の名前というのは陰陽祖母の故郷がどこであるかという問題に完全な答えを与えてくれずともですね示唆を与えてくれるヒントを与えてくれることにはなりますよね。
いくつかあるんですがその中でブナ英語で言うビーチの語源形に注目が集まりました。陰陽祖母にこのブナ英語で言うとビーチですがこれに相当する単語があったということですね。
昨日の放送でも述べましたがこのビーチとかブックという単語は非常に古く陰陽祖母まで遡るということが知られています。したがってこれはですね最も古い単語のリストの構成要素なんですね。陰陽祖母の語彙の構成要素である可能性が高いってことです。
そしてこれは古生物学って言うんですか。古植物学というんですかね。これによりますとブナという植物の種はですね現カリーニングラードから国会のクリミア半島ですね。ここを結ぶ線の西側であると。
ブナの生育地域は東次のということですけれどもこの線の西側つまりざっと大雑把に言ってヨーロッパっていうことになります。そしてその中心地はドイツあたりになるっていうことなんですね。こうしてブナ問題の論争が起こります。
なぜ論争が起こったかと言いますとまずですねそもそも陰陽祖母の故郷としてアジア説とヨーロッパ説という大きな2つの学説が古くからあったんですね。
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今回のブナの生育分布というのはヨーロッパ側なのでヨーロッパ説を支持する人々にとっては都合の良い仮説ということになります。つまりブナをカギとすることでヨーロッパ説の株が上がるっていうことなんですね。
しかしブナ以外にもですねいろいろ動植物の単語っていうのは含まれていてそれぞれがですねカギとなりうるんですよ。なので全体として調査しないとですね本当はバランスの取れた見方にならないのになぜブナを取り立てて重視するのかということです。
うがった見方をすればヨーロッパ説に都合の良い単語を取り上げて論点としてるんではないかというそういった疑いがあるっていうことになるわけですね。
さらにですね今では少し疑念が出されているんですけれども大きくインドヨーロッパ語族をですね西と東に分けるという考え方というのはこれは比較言語学では古くから言われている仮説で
やはりアジア説ヨーロッパ説という東と西を分けるという発想がまずあってどちらがより古いのかということに決着をつけたいという雰囲気っていうか圧力みたいなものは学会全体にあったということなんですね。
これとブナの生育地を東西に分けるこのラインですねというのは議論としていろいろ相性がいいっていうことになっているので果たしてブナがですね引用語の故郷をめぐる論争において注目されるようになったっていうことなんですね。
ある意味では実力以上の価値を付加されることになった。冷静に考えればどうしてブナにのみ注目するのっていう突っ込みは可能なんですけれども学会の論争にもやはりですねその時代時代の潮流と言いますかトレンドというものがあります。
ブナ問題によってヨーロッパ説を支持する議論が盛り上がってくるんですね。そして本来的には言語学であるとか古生物学古植物学あたりの問題だったんですけれども人類学であるとか考古学といった周辺分野を巻き込む形でヨーロッパ説をどんどん後押しする説が出てくるんですね。
さらにより限定的に言うとドイツであるというドイツ説が出てきます。そして今のドイツこそがインヨーソ語の故郷である。さらに言うと今のドイツ語こそが最も古いインヨー語の特徴を留めている。つまり最も直形の言語であるというような言説が出てきます。
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容易に想像されると思いますがこれはドイツ民族優勢論に発展しそしてついにナチズムへと流れ込んでいくことになりました。本来は純粋に言語学比較言語学の問題だったわけですがブナというキーワードを導入することによって最終的には政治的に利用されることになったということです。
戦後ドイツ説は影を潜めました。それに伴ってビーチブナをめぐるこのブナ問題もですね鎮静化した感があるんですがその後今度はですねブナ問題ならぬ鮭問題鮭ですねサーモンですこれが持ち上がってきました。
キーワードがブナから鮭に差し替わっただけであまり議論としては進歩がない。やるんであれば全体をやらなければいけない。動植物であるとか地域ある特定の地理的地域を示唆するような単語群ということで全体を調査してみてそのバランスをとって最終結論するなり議論するなりということが必要なわけなんですけれども。
どうしてもですね1単語に議論論争集約させてしまいがちだということなのかもしれません。その意味では今でもかっこつきのブナ問題というのは生き続けているのかもしれません。
最後にですねこの動植物を用いた場所特定というこの方法論というか前提そのものが実は怪しいっていうことを指摘しておきたいと思うんですね。ヒントにはなるんだけれどもこれによって何か決定的に言えるっていうことにはならないと思うんですね。
何かと言いますと単語というのは指示対象であるとか意味っていうのを変えるっていうことがしばしばあります。つまりビーチ今ではブナだけれどもインヨンソゴでも同じ植物の種を表していたという保証はないっていうことです。
例えばですねこれは動物の話ですけれどもこのヘルディオの625回ターキートルコと七面鳥の関係という回でお話ししましたがこのターキーというのはですね七面鳥ということなんですけれどももともとはですね七面鳥と外見は似ているけれども全く別の鳥をターキーと呼んでいてそれと似ているので
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七面鳥のこともターキーと名付けたというふうに同じターキーという単語でもそれが指す鳥ですね今回の場合っていうのは歴史の中で変わり得るんですよそこそこ似ていたりすると特にですのでブナの問題もですね
今ブナと呼ばれている特にヨーロッパブナのことを言うらしいんですが学名はファグスシルワティカというヨーロッパブナなんですがこれを今ビーチと呼んでるんですがインヨンソゴにあったこのビーチの語源形ですねこれが同じファグスシルワティカを指していたという保証はないっていうことです
むしろ似ているファグスオリエンターリスという別の種類の広くはブナの仲間のようなんですけれどもこれを指していたという可能性だってあるとするとですねファグスオリエンターリスですから東の方のアジア方面のブナの種があるわけですが昔のビーチはこっちのファグスオリエンターリスを指していたんだという議論はいつでもできるんですよ
そうするとですねブナをキーワードにして引用語の故郷は東側つまりアジアだというふうに主張することだってできるということです
自然科学の証拠と違って言葉というのは特に単語というのは歴史の途中で意味を変える指すものを変えるということは非常によく起こっています
ですのでそもそもの今回の議論の基盤ビーチとそれに対応する古語ですね祖語は同じ植物の種を指しているっていうこの保証がまずないっていうところから本来はスタートしなければいけないんですね
引用語の故郷をめぐる問題非常に魅力的でエキサイティングな問題ですが明確に答えを出すのは難しそうですね
エンディングです今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました
今日はブナ問題というかつて引用祖語の故郷はどこかという問題をめぐって争われた論争ということでですねご紹介しました
意外かもしれませんが比較言語学はですねいろいろと政治利用されてきたという経緯があります
一般に言葉の問題というのは政治利用されやすいんですね言語学もそちらにずるずると引き込まれていくということがですね実は少なくないんですね
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言語というものがそもそも社会的で政治的な存在であるということなんだと思います
もっと言ってしまうとですねあらゆる言語問題は政治的な観点から論じることができてしまうんですね
一見全く政治性とは関連しなさそうな音の変化みたいなことですらです
言葉を見たりあるいは論じたりする場合にはこの点は決して見逃してはいけないだろうというふうに私自身は考えています
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ほったりうちがお届けしました
また明日