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2024-12-18 09:56

heldio #151. なぜindustryには産業と勤勉の意味があるの?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #意味変化 #産業革命
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜindustryには産業と勤勉の意味があるの、という話題です。
インダストリーというのはタギ語ですね。典型的に第一の意味は産業というふうに辞書を載っていると思うんですね。ところが第二の意味として勤勉。
これもよく出てくる大事な語彙として、これを覚えておかなければいけないということで、このインダストリー、これはタギ語であるということなんですね。
産業というのは仕事ですね。仕事というと勤勉ということなんで、接点はありそうだなということはわかるんですが、
明らかに異なる語彙、意味ですよね。これがどのような接点でこのようにタギ語化してきたか、そしてどっちが最初だったのかというような、
歴史的な語源と語の意味の発達という観点から、このインダストリーという語に焦点を当てて、今日はお話したいと思います。
さあ現在の英語におけるこの2つの語彙とその使い方について確認しておきたいと思うんですね。
まず第一の意味は産業、工業ということで、例えばheavy industry、重工業であるとか、the steel industry、鉄工業のように使うわけですよね。
それから第二語彙としての勤勉という意味がありますね。これは例えばa man of great industry、非常な勤勉家という言い方ですね。
それからこんなことわざもあります。poverty is a stranger to industry、稼ぐに追いつく貧乏なしということですが、つまりpoverty、貧乏とindustry、勤勉というのは無縁であると。
つまりindustry、勤勉に働いていればpovertyなんてことはありえないというような、そういうことわざなわけですよね。
接点としては先ほども言ったように、勤労、仕事、労働ということがどうやら接点になりそうなんですけれども、どうしてこのように語彙が2つにタギゴ化してきたのかということですね。
ちなみにこの2つの語彙の覚え方というのも変ですけれども、形容詞形が異なりますね。産業、工業の方はindustrialという形容詞です。
これもindustrial revolution、産業革命ということですので、これを覚えればいいですね。
もう1つの勤勉の意味での形容詞形はindustriousということです。industrial workers、勤勉な労働者というふうに使うわけですね。
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つまり名詞では形が変わらず2つの語彙を掛け持っているんですが、形容詞形になるとそれぞれindustrialとindustriousで分かれるので、この辺は注意しておく必要がありますね。
さあ、このindustryの語源を遡ってみますと、これはラテン語に行き着きます。industriaということなんですね。
これは何かというと、indというのが英語のinと一緒です。窃盗時、それから前置のin、中にということです。
indoというのがそれですね。その後にstriaというのがありますが、これがstruereという動詞です。
これは建てる、buildぐらいの意味ですね。建てる、作るということで、structureとかの、あるいはconstructとかのstructと語源が一緒です。
つまり、中に作る、中に建てるということで、内部で作るということ。これ、人間の個人の内部ということで、個人的な自己計算であるとか、知識、技能を磨く、修養するというような意味で用いられたんですね。
職人としては、そこに技能とか器用さ、腕が達者であるということになるので、実はindustriaというラテン語の単語の原義は、そもそも器用さであるとか、腕、技術ということなんですね。
つまり仕事なんです。そこから、現代の勤勉という意味が出てくるということで、勤勉と産業という2つの大きな意味があるとすると、もともとは勤勉から始まっている。技が達者な、器用なという、いわゆる職人用語だったわけですね。
実際、この単語がフランス語経由で英語に入ってきたのは、15世紀後半なんですけれども、当時の意味、つまり最初の意味は、英語でのindustriaの最初の意味は、ラテン語由来の勤勉、器用さ、勤勉さという、そちらの方の意味がスタートだった。これ、非常に重要ですね。
現代では第2語義、2つ目に重要な語義というふうになっていますが、もともと歴史的にはこっちの方が最初だったということ。これが重要です。15世紀というとまだ中世です。中世の終わりですけれども、この頃の勤勉さって何のことかというと、職人としての自分の職業について器用であることというのが原義、もともとの意味なわけですよね。
例えば農民だったら、漁師から独立して、どうやって農業をうまく経営できるか、自立できるかということで、これ、ある種の器用さということになります。時間の管理術であるとか、そういったものが器用さということになりますね。それが当時の発想でいうところの勤勉だったわけです。
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ところが近代に入ると、基本的に分業とか協業というのを旨とする社会に変わっていきますね。典型がまさに産業革命で、工場なんかができて、そこで労働者は働くわけですよ。勤勉というのは、むしろ独自性を発揮して、領主から独立して、自分の才格で一攫千金を狙うということではなくて、むしろみんなに合わせて時間内に決まった仕事を、ちゃんと自分の部分を、
正確にこなすという、これが勤勉の意味になったんですね。つまり同じ勤勉という言葉、あるいは英語で言うとインダストリーでも、中世と近代では、それが指す能力といいますかね、これがどうも変わってきたというところ。
現在でも勤勉な、勤勉さという意味はあるわけなんですけれども、勤勉それ自体の性格が変わってきたというのは、これは言葉の問題を超えて、社会の問題、文化の問題ということで非常に面白い問題だと思うんですね。
いずれにせよですね、このインダストリーというのは勤勉、その意味はどうであれ、勤勉というハードワーキングぐらいの意味からスタートしたわけなんですね。それが16世紀以降、つまり近代にどんどん入ってくるとですね、個人的な職業と結びつけられていた業費だったのが、先ほど言ったように工場であるとかですね。
つまり集合的な願意を得て産業、工業という集団としての社会としての仕事というように意味が発展していくんですね。これがまさに第2の語義である、この歴史上の順番で言うと第2の語義である産業ということですね。
現代ではこれが一番重要な第1の語義となっていますが、歴史的には実は第2の派生的な語義ということだったんですね。この新語義が16世紀ぐらいに出てくるんですけど、本格的に用いられるようになったのは、実は18世紀のことなんですね。18世紀も後半です。つまりこの時期何があったかというと、例の産業革命ですよ。
この産業革命という歴史用語こそですね、もうちょっと後にできて、振り返って作られた歴史用語なわけなんですが、現象としてはやはりですね、この18世紀後半、これがこのIndustryという語の用法の上でターニングポイントとなっているということは間違いありません。
もともとこの単語はですね、ラテン語だったわけで、それをフランス語を経由して英語に入ってきたと言いましたが、そのフランス語でも状況は似ています。この時期にどうもですね、このIndustryの指す意味がですね、この器用さとか勤勉さということから産業という、現代でいうところの第1の語義に移行していったということなんですね。
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18世紀後半のまさに時は産業革命の時代だったということです。
さあ、この産業革命、Industrial Revolutionという用語ですね。これは歴史用語として1840年に英語では初出します。1848年にJohn Stuart Millによって導入されたと言って大体いいですね。さらにそれがですね、後に著名な歴史学者Arnold Toynbeeによって広められたということで、歴史用語として確立した。
それではまた。
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