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2025-01-19 09:26

heldio #183. 卵を巡るキャクストンの有名な逸話

#英語史 #英語学習 #英語教育 #古ノルド語 #中英語方言 #キャクストン
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、eggs alien 卵を巡るキャクストンの有名な逸話、という話題です。
昨日2021年11月29日の放送では、egg 卵は、古ノルド語からの釈用語、という話題をお届けしました。
そこでお話ししましたように、egg というのはイングランドの北部方言で、南ではa という形が使われていた。
複数形は、北部ではegges という風にes、現代の複数形のsがついたやつですけれども、それに対して南部ではalien という風にren のような語尾がつくんだと。
これは現代英語で、child に対してchildren という風にren がつくのと全く平行的な現象で、a に対してalien という形で、南部では卵の複数形はalien だったわけですね。
北部ではegges、南部ではalien という形だったということを紹介したんですが、実はこの北部と南部の方言の違いっていうことになりますかね。
卵の言い方、とりわけ複数形の言い方についてだいぶ違っているという、この方言差をめぐって、実は英語史上非常に有名な逸話が残されているので、今日はこれを紹介したいと思うんですね。
中英語の原文で紹介したいと思っていまして、読み上げようと思うんですが、やはり文字があった方がわかりやすいかと思いますので、
私のラジオと平行して、私のブログですね、ヘログ、連動して扱っていますので、2021年11月30日ですね、本日の記事、記事番号で言いますと4600番、こちらを参照しながら聞いていただくとよりわかりやすくなるかなと思います。
さあ、原文を見る前にですね、概要、この逸話の背景みたいなことを少しお話ししておいた方がわかりやすいかなと思いますが、この逸話はですね、キャクストン、ウィリアム・キャクストンという人が書いているもので、ではこの人は何者かということなんですが、実は英語史上、あるいはイングランド文化史上、名前を残している偉人と言いますか、非常に有名な人なんです。
このウィリアム・キャクストンですね、1422年ぐらいにイングランドのケントに生まれたようで、大人になると商人としてですね、海外で活躍した、ベルギーのブルージュですね、今ブルージュと呼ばれている地域に30年以上滞在して、この一帯ですね、フランドル地方とかオランダあたりの一帯の商人の頭領として、
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長らく活躍していたというところなんですね。
そして時代がですね、印刷の時代に入ります。
カッパ印刷が発明されて、これをですね、この技術をキャクストンを学ぶことになるんですね。
そして学んだ後に1460年代後半からですね、海外の作品を英訳、英語に訳して、印刷術を学んだ上で、それを印刷に付すということを行ったわけですね。
そして1475年には、彼自身が英訳した、The Requiel of the Histories of Troy、これを印刷したという人なんです。
これ史上初の、つまり英語史上初、英語という言語が印刷物に付された、印刷に付されたという瞬間ということで、この1475年は英語文化史上非常に重要な年ということになっているわけですね。
キャクストンはその翌年にイングランドに戻って、ウェストミンスターに自分の印刷所というのを設立するんですね。
これイングランド初の印刷所ということになります。
そして後に、その後ですね、精力的に様々な英語テキストをですね、印刷に付すことになります。
調査のカンタヴェリ物語も印刷していますし、ジョン・ガワーのConfessio Amantisという有名な作品、それからサートマス・マロリのLe Morte d'Arthurの死という大作をですね、著名な英文学作品を数多く印刷していますし、自らも海外の作品を翻訳して印刷している。
1491年にロンドンで亡くなるまでに100本ほどの印刷物を世に出したということで、英語文化史上非常に重要な人物、これがウィリアム・キャクストンという人なんですね。
この人がですね、1490年、最晩年と言っていいと思うんですが、この年にですね、エネイドスという作品の英訳、これを出版することになるわけですね。
これはかの有名なアエネイスです。ローマの主人バージル・ウェリギリウスですね、の書いた序詞誌ですけれども、これを英訳したものを世に出したわけですね。印刷したということです。
序文にですね、この逸話が載っているんです。話の内容、アエネイスの話の内容とは全く関係ないんですけれども、当時のイングランドですね、後期、中英語期にあたるんですが、その方言事情と言いますかね、国内の方言事情について述べている箇所です。
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概要としてはこんな話なんですね。イングランドの北部出身逃亡式、ある商人がですね、イングランド南部のテムズ川で船を停留させて、丘に上がって、ある農夫の奥さんに食事を求めたという時の話なんですけれども、商人はですね、卵を食べたくて、エッゲスを所問したわけです。
ところが奥さんは、この単語を理解できない。エッゲスって何だということですね。フランス語なんてわからないという言い方で答えるんですね。ところが商人もですね、自分はフランス語なんかできない。なんでわかってくれないんだということで怒り出すという時に、第3者がやってきてですね、この商人が言っているのは、このエッゲスというのは南部方言、つまり奥さんが理解する南部方言でいうところのエイレンに相当するんだと。
つまり卵を欲しがっているに過ぎないんだからと解説してあげて、一見落着といったような、そういう逸話なんですね。それぐらいですね、北部方言と南部方言で開きがあると。
鉛がお互いきつすぎる。そして標準語というものがない、出来上がっていないということに対して、印刷家であるウィリアム・キャクストンはですね、この状況を嘆いているというような、そんな下りなんですけれどもね。
さてここまで背景を前置きすればですね、これから中英語の原文を中英語の発音でこの逸話の部分を再現しますが、なんとなくわかるところはわかるんじゃないかと思います。では音読してみたいと思います。
いかがでしたでしょうか。これをですね、ブログ上の文字、原文を書き言葉で書いた文字に直すと、割と理解できると思うんですね。変なスペリングが多いですけれども、現代語に程近いと言いますかね。
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そして背景を知っていれば、この原文もおよそ読むことができるのではないかと思いますので、読解にチャレンジしてみてください。これがおよそ600年前の英語の姿だということになります。それではまた。
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