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2024-08-17 10:00

heldio #28. 学問名は -ics か -ic か?


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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、学問名は-ics か-ic か、という疑問です。
英語で学問名であるとか、専門分野の名前を表すのに、大抵-ics という語尾がつきます。
これ、非常に多いんですね。多いので、多く挙げてみますね。
アクスティックス、エフェティックス、ダイナミックス、エコノミックス、エレクトロニックス、エフィックス、ジネティックス、リングウィスティックス、マフィメティックス、メタフィザックス、オプティックス、フォネティックス、フィザックス、ポエティックス、スタティスティックス、テクトニックス、のようにです。
このように-ics、-ics で終わるものが非常に多いわけなんですけれども、この最後の-s が取り除かれた-ic ですね。-s のない、ただの-ic で終わるものというのもあります。
こちらのほうが少数派なんですけれども、いくつか挙げてみますね。
アルフメリック、ロジック、レトリック、それから、あまりですね、学問名としては考えないかもしれませんが、
実は、マジックであるとか、ミュージックもこの手のものなんですね。
さらにですね、近年は-s が付く言い方もあるし、付かない言い方もあるというところでですね、いくつかこういう、両方可能だというものが出てきているんですね。
例えば、-s が付いた形で読み上げてみますと、ダイアレクティックス、ログマティックス、エティックス、メタフィザックス、フィザックス、スタティックスなどは-s がないバージョンというのもあるにはあるということなんですね。
これは非常に厄介ですよね。私も時によくわからなくなって、常に辞書を引いて確かめるということが多いんですが、
一体-s が付くのか付かないのかはっきりしてくれというような印象を持ってしまうわけですね。これには歴史的な事情があるんです。
そもそもこのイックというのは形容詞語尾なんですよね。本来は名詞語尾というよりも典型的には形容詞語尾ということで、無数にとれば上がると思うんですけれども、
例えばですね、形容詞として使われているイック語というのを10個ぐらい挙げてみますと、
パブリック、ドメスティック、サイエンティフィック、キャラクタリスティック、クリティック、ドラマティック、ファブリック、ロマンティック、システマティック、シンパセティックのように典型的に形容詞なんですよね。
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これは大元をたどると、ギリシャ語であるとかラテン語の形容詞を作る設備辞に遡るんですね。これを英語が釈用したということになります。
ところがこのギリシャ語であるとかラテン語という大元のイックを形容詞として作る場合に付けるわけなんですが、
ギリシャ語ラテン語ではそのまま形容詞が名詞にもなり得るんですね。特に学問名は伝統的に女性名詞として扱われるんですね。
なのでこの形容詞のイックの部分ですね。ギリシャ語ではイコスなんて言ったんですが、これを女性名詞風に語尾を変えるとですね、エーとイケーという風になるんですね。
なのでエティケーであるとかムーズケー、オプティケー、レトリケーです。それぞれわかると思います。エティックス、ミュージック、オプティックス、レトリックに相当するものなんですが、イケーという形ですね。
これで女性単数名詞という扱いになって、いわゆるその形容詞が表す学問ということですね、という意味になったと。
一方ですね、同じギリシャ語ではですね、このなんとかイコスとかなんとかイケーというこの形容詞語尾をですね、中性複数形ということですね。つまり何々に関することごとぐらいの意味です。
こういう言い方で結局何々に関する知識の集大成ということで、結局学問名になるという複数形でその学問名を表すというような言い方も一方であったんですね。
この場合イケーではなくてイカという形になりますね。
例えばフューズイケーに対してフューズイカというのも事実上同じ、今では物理学ということですが、自然科学一般ですね、を指すようになったということです。
つまり女性単数形でフューズイケーといっても、中性複数形ですね、フューズイカといっても大体似たような意味を指す。
結局物理学であるとか物理的なことごとの研究ぐらいの意味になるわけですよね。
さあこれがこのギリシャ語がですねラテン語に入ったとき、この何とかイケーというのと何とかイカというのは似てるといえば似てる語尾ですね。
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これがラテン語では同型の何とかイカというふうに釈用されました。
このギリシャ語がラテン語に釈用された時ですね。
このラテン語ではですね、このイカというのはギリシャ語と同様にですね、これ女性単数でもあるし中性複数でもあるんです。
つまり解釈によってはこれは単数形であるという方もできるし、複数形であるということも言えるんですね。
さあこのようにラテン語に受け継がれた単数としても複数としても読めるというこの何とかイカという学問名が後の諸言語ですね。
フランス語であるとかドイツ語であるとかに釈用されたときにこれ果たしてどっちなのか。
つまり英語もフランス語もドイツ語もですね、ラテン語と違ってちゃんと単数形ならこの形、複数形ならこの形、英語でSをつけるとかですね。
はっきり分かれているので、どっちの解釈かはっきりしろということがですね、形態上、語形上をしっかり表さなきゃいけないということになります。
ラテン語ではどっちでもあり得るというふうにある意味濁せるわけなんですけれども、英語とかフランス語、ロシア語に借りられる際にはですね、はっきりと単数なのか複数なのかという決定した上で取り入れるということになったんですね。
これからですね、フランス語ではドイツ語では一貫して、よし、単数形、女性単数形なんだということで取り入れるということに決まったわけです。
ところがですね、英語ではこの判断が揺れたといいますか、歴史上安定していなくてですね、1500年以前の釈用語、近代以前の中世ですね。
中世ではだいたいフランス語に習うという形ですべて取り入れたので、この時期に取り入れられたものはですね、だいたい単数形ということで、つまり英語的にはSがつかない形で取り入れているんですね。
先ほど冒頭に述べましたが、アリスメリック、ロジック、レトリック、ミュージック、マジックの類です。
なんか由来としては古そうなというか昔からありそうな学問といいますかね、専門分野の名前ですよね。
ところが16世紀以降はですね、直接ギリシャ語から取り入れた単語が多くて、その場合にはですね、どうやら複数形と解釈して取り入れたんです。
なので英語にする場合にはイックではなくイックスと取り入れるということになって、その結果これも冒頭に述べましたが、リングエスティックスとかマティメリックスとかですね、フィザックスとかこのような単語、Sがつくのが基本的にはデフォルトとなったということですね。
近代以降にある意味発展した学問というのが多いわけなんで、こちらのイックスと複数形になっている方が圧倒的に多いというのは歴史的にはわかるということになります。
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ただですね、これ複数形として取り入れたにもかかわらず、普通は学問名としては単数扱いするというまた厄介なことが英語には起こってしまっています。
ですからリングエスティックス、Sということですよね、a subjectみたいな言い方ですし、mathematics is a subjectというふうに、isで受ける、単数で受けるということになっている。
英語ではこのように非常に厄介な歴史を背負ってしまって、外して言えば伝統的な学問領域、古いやつですね、これはイックスで、近代になってから現れたものはイックスということになっているわけです。ではまた。
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