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2025-02-26 10:00

heldio #221. heart の綴字と発音

#英語史 #英語学習 #英語教育 #綴字と発音の乖離 #正書法 #音変化
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サマリー

今回のエピソードでは、英単語「heart」の綴りと発音の関係について考察しています。この単語の歴史的な変化や、他の単語との関連についても触れられています。

heart の綴りと発音
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、heart 心臓を意味する単語ですね。heart の綴字と発音、という話題です。
この単語は h-e-a-r-t という風に綴りまして、これで heart を読むわけですね。
ちょうど、おじか、おすのしかを意味する別の単語、h-a-r-t と綴りますが、これと全く同じ発音になるわけですね。
つまり、a-r-t と綴られるかのような発音を、この心臓、心の heart も、こういう発音を持つということですね。heart、heart という発音になります。
この綴り字と発音の関係っていうのは、実は珍しいんです。
e-a-r ですね。この3文字のつながり、これ普通はですね、これ単体で単語としてもありますよね。
これ ear っていう、耳を意味する ear ということになりますが、これが普通なんですね。
ところが、この心臓、心という単語では、a-r-t と綴るかのような heart という発音になる、そういうことなんですね。
e-a-r この部分に注目したいと思うんですけれども、先ほどの耳ですね、ear、それから h を最初に加えて hear ですね。
これはまあ ear と読むので、わかりやすい、比較的よくあるパターン、組み合わせなわけですけれども。
もう一つはですね、 e-r と綴るのと同じような発音ですね。
昨日の放送で、聞くを意味する、hear, heard, heard の活用の謎について取り上げましたが、
この原型の方は hear ですから ear となっていますね。
一方、過去、過去分詞の方は同じように e-a-r という綴り字を持つんですが、
この部分はあたかも e-r であるかのように e-r と読むわけですね。
heard, heard というふうになります。
つまり全体としてですね、この e-a-r という繋がりですね、
これは三つの発音に対応する可能性があるということです。
一つは hear, ear ですね。
二つ目がその hear の過去形である heard, heard っていうつもり、
そしてもう一つが今回の話題となっている心臓、心を意味する heart ですから
ということになりますね。
e-a-r であたかも a-r と書いたかのような、つまり heart の発音をするものっていうのは非常に稀で、
他にはですね、heart の後ろに h をつけてですね、
これ暖炉の床の意味ですね。
これも e-a-r と綴っておきながら a-r であるかのように発音する数少ない単語の一つです。
もう一つはですね、あまり使われませんし古風な響きを持ちますが、
心臓の歴史的変遷
ハークン、ハークンっていうのがありますね。
これ何々耳を傾ける、傾聴するということですけれども、
h-e-a-r-k-e-n ということで、ハークンというふうに発音します。
これは実はですね、 h-a-r-k-e-n という綴り字もある通りで、
この h-a-r-k-e-n こっちの方がとてもわかりやすい綴りと発音の関係になるんですが、
もう一つの綴りとしてはですね、今述べたような h-e-a-r-k-e-n というのがあります。
この綴りはですね、e が聞く、耳を傾けるということで、これ here と似ているので、
それに引っ張られて h-e-a-r と、この here と同じ部分が綴り字上は出てくると。
そういうことなのだろうと思います。
e-a-r と綴って a-r かのように発音するのは、今述べた3語ぐらいですね。
heart これが一番よく使います。そして hearth それから harken ということですね。
他に固有名詞、人名なんかでは、例えばですね、 discard やとか carny なんていうのも e-a-r で綴られるようなものがありますが、
一般的に使うものとしては非常に数少ない、稀な例ということになりますね。
では、なぜこんな綴り字と発音の関係になっているのか。
heart これを参照しながらですね、歴史を紐解いてみたいと思います。
もともとこの単語は、古英語ではですね、ヘオールテという発音だったんですね。
そのままの綴りです。ヘオールテということで h-e-o-r-t-e ということですね。
ヘオールテという形でした。
これがですね、中英語記になりますと、最初の eo というこの母音の繋がりが単純化して e になります。
つまり、ヘルテ、ヘルテとなりますね。
h-e-r-t-e ぐらいになります。ヘルテということです。
そして、この er で表される l っていう音ですね。
l という音の繋がりは、中英語記も後半の14世紀末あたりにですね、
l が r という発音に変わるんですね。
a という母音が、r が後ろにある環境で、少し下の位置が下がると言いますかね。
r という発音になります。
l が r に変わっていくんです。
そしてですね、今この r という発音を持っているものですね。
例えば、典型的に ar で綴られるわけですが、
dark, darling, far, star, starve, yard という単語ですが、
これ今でこそ ar で綴られて、とても分かりやすい発音、 r という発音になっているんですけれども、
これいずれもですね、中英語記までは er で綴られて l と発音されていたんですね。
つまり derk, derling, fer, ster, sterve, yerd のように発音されていたんです。
それが l が r になったことによって、中英語後期にはですね、今に繋がる
dark, darling, far, star, starve, yard となったわけです。
同じようにですね、中英語の最初ではですね、
hert という発音だったこの心を意味する単語も、同じように l が r になりましたから、
hart になったんですね。
これが現在の発音 hart の起源と言いますか、中英語後期の形なんですね。
ところが、先ほど読み上げた dark, darling, far, star, starve, yard とは、
発音が r に変わったことによって、つづり字も連動して ar と書き換えたわけです。
もともと er だったものですね。
ところが、この心臓を表す単語に関してはですね、
hert が hart と発音は変化したにも関わらず、
つづり字は旧来のまま e r という形で残ったんですね。
さらにややこしいことに、実際あの現代のこの hart のつづりは e a r なわけですよね。
これが今日の問題だったわけなんですが、この e r と e a r というのは、
しばしばですね、混同されてと言いますか、混用されていたんですね。
それで実際に中英語記でもですね、
h e r t このあたりのスペリングが一番多かったんですが、
別途ですね h a r t という、現代の標準的なスペリングと同じものも使われていたということなんですね。
そしてこれが現代に結局伝わることになった、残ることになったということです。
発音としては l から r に変わったと。
そして多くの単語はこの発音の変化に連動して、つづり字も e r から a r に変えた。
ところが一部のどういうわけか抵抗した、そのつづり字を変えることに抵抗した単語っていうのがあって、
その一つがこの問題の hart だったわけです。
その際に結局現代まで受け継がれたのは、
一般的な e r の方ではなく e a r という、どちらかといえばマイナーな方が取られたということなんですね。
これについてはなぜということはわかりませんが、他に hart であるとか、先ほど言った理由もありますが harken もこのタイプになっているわけです。
実際ですね、発音は l から r に変わったのに、つづり字は末置き、 e r のままというものもちょこちょこあるんです。
これは主にイギリス発音なんですが、店員の clerk、町の名前で derby、軍曹 sergeant、
これは e r で綴られながら、あたかも a r のように発音される、これも数少ないイギリス英語ですが単語の一つです。
それではまた。
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