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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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morningの語源
今回取り上げる話題は、morning と tomorrow の語源、についてです。
この2つの単語、朝を意味する morning と、明日を意味する tomorrow ですが、共通部分がありますね。
mor と書かれている部分なんですが、これ実際にですね、語源的に共通です。つまり、同語根ということになります。
では、どういった域札で、この共通部分が含まれているんでしょうか。
そして、朝と明日には、どのような意味関係があるのでしょうか。
まず、 morning からいきたいと思いますね。
この単語は、古英語では morgen というような発音で形でした。
これ、聞き覚えがある人がいると思いますね。
ドイツ語を勉強している人は、ドイツ語で morgen ということになるわけですね。
そして、このドイツ語の morgen を知っている人はですね、これはやはりですね、朝でもあり、名詞としての朝でもあり、副詞としては実は明日なんです。
同じゲルマン語ですから、似たような状況なんですね、ドイツ語と英語は。
では、古英語の話に戻ります。
古英語では、先ほど述べたように morgen のような発音だったんですけれども、
この gu の部分が弱まって落ちてしまったのが morgen のような形、あるいは morn で綴るような、こういう単語になってきますね。
あるいは gu の部分、 g で表される部分がですね、完全には消えずに w のような音になって、
morgen みたいになったものもありましたが、最終的には結局ですね、最後に n がつきますね。
これが残って morgen のようになりました。
現在でも実はこの morn という単語はですね、死などで使われる一種の画語ですかね、として使われることはあります。朝の意味でですね。
スコットランドの方言でも morgen というふうによく使いますね。今度はこれ明日って意味なんです。ちょっとややこしいですか。
さて、今最も普通に使われている朝の意味の英単語は当然 morning ですね。
これは morgen という、今さっき述べたこの morgen という形に ing 語尾をつけたものです。
なぜですね、ing 語尾をつけたのかということなんですが、これは対義語である evening ですね。
これに今 ing がついているからということで、合わせて一種の累推ですね。
累推によって morgen だけで十分に意味を表していたんですが、これにさらに ing を追加して evening と陰を踏ませたという形ですね。
初期中英語期にはこの ing がついた形がすでに現れています。これがですね、現代最も普通に使われる朝という意味になって存在しているわけですけれども。
ここで話の続いてのに、じゃあ evening は何なのかということなんですが、なぜ ing がついているのかというと、これは一種の名詞語尾ですね。
同名詞と考えても多いですが、名詞語尾の ing なわけですが、じゃあ even っていうのは何か。
これは現在でもあります。 eve です。クリスマスイブのあの eve です。これは前の晩ということですよね。つまり、夜ということです。
小英語では n がついてですね、even とか even のように使われたんですね。これが晩ということです。
これに今、動詞語尾の ian というのをつけて avnian という動詞があったんですね。つまり晩になるということです。これを同名詞化したという、ちょっとややこしいんですが、
ing をつけてですね、結果として evening のような形になったと。
これで、いろいろな語形性の仮定を辿った後にですね、evening で結局晩という意味になったわけなので、これと対応する朝にも ing をつけておこうということで、morning が定着したという流れですね。
すでにここまででもいろいろ複雑ですけれども、小英語の morgen という形から、一回縮まって morgen になり、それに evening に合わせる形で ing がつき morning ということです。
さらにですね、別発声の違った形が出てきます。
小英語では morgen だったわけですが、この g の音がですね、w 音に近くなって morwen のような形が生じたということは先ほど述べました。
この morwen というものから n が落ちます。そうすると morwe なりますね。
この二音節の単語で、二音節目が we のように綴られるんですが、このしんぼいんですよね。
we というのは、言ってみればしんぼいということなんですが、これがひっくり返った形ですね。
ぼいん、しんになって、これが morow となります。
綴り字で言えば、今風に言えば morow のような morow という意形が生じました。
これも結局ですね、意味は結局 morgen から来ているわけですから、当然朝です。朝という意味で morow が使われたわけですね。
現代でもやはり死ではですね、使われたりします。
さあ、ここまで来ました。朝という意味で morow が使われた。
とすると、明日を意味する tomorrow まであと一歩ですね。
tomorrowの語源と意味の変化
そう、頭に to がつけば、もう完成です。 tomorrow です。
この to は、当然、前置ですから、 tomorrow っていうのは、いわば to the morning、朝に、朝に向けてというような意味です。
そして、なぜ朝に向けてという繋がり、 tomorrow が明日の意味になるかっていうのは、これは考えてみればわかると思いますね。
夜にこのフレーズを発言すれば tomorrow 朝に、といえば事実上、夜中を跨いで朝ということと、
同義に、少なくとも、対することができるような文脈っていうのは、いくらでもあると思うんですね。
例えば同居人がですね、夜別れて、じゃあ明日ねって言うとき、普通お休み、グッドナイトって言うかもしれませんが、
別の言い方としてですね、 see you in the morning っていうのをよく言いますね。
じゃあまた朝ねっていう意味合いなんですが、これ感覚で言うと、日本語的には、じゃあまた明日ね、明日の朝にね、というよりは、じゃあ明日ね、ぐらいの意味になるわけですよ。
つまり、夜の文脈で tomorrow、次の朝に、といえば、これは明日というふうに理解できるっていうことですね。
これは非常に面白いことに、日本語でもですね、古語、古くは明日、漢字で朝と書いて明日と読ませたわけですが、これは本来は翌朝のことですよね。
ですがそれが翌日を意味するようになったことがよく知られていますが、これとつまり全く同じ仮定を経て、意味変化を経て、
英語でもですね、tomorrow、朝にという言い方が結果的に明日という意味になったっていうことです。
もちろん、ドイツ語でも同じことが起こったっていうことになりますね。
eveningとの関係
ここまで来たらついでに先ほどのevenについても言いたいと思うんですが、evenっていうのは元々は晩です。だからeveningなわけですが、朝起きてevenといえば昨晩ということになりますね。
つまり寝る直前の前のあの夕べのことということなんですが、実際にはそこから昨日の晩だけではなく、昨日全体、つまり前日という意味を表すようになりました。
なので、Christmas Eveというのは厳密に言えばですね、前の夜のことなんですが、クリスマスの前日全体を指すようになったっていうわけですね。
この点では、morningとevenの意味に関する比例関係が確認できると思います。
今回は小英語の朝を意味するmorgenという形ですね。
ここから出発して、現代にしなどを含めればいろいろと残っている単語群を紹介しました。
そしてtomorrowというわけです。
それではまた。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。