1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2021-01-02 10:34

#246 「おめでとう」の言語学 from Radiotalk

「連体形」ではなく「連用形」です

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あけましておめでとうございます。志賀十五です。
本年もどうぞよろしくお願いします。ということで、
今日も志賀十五の壺をやっていこうと思います。
まあ、新年ですけど、やっぱりいつも通り言語学の話をしようと思うんですが、
せっかくなんでね、タイトルにもあるように、「おめでとう」っていうね、この言葉をちょっと言語学的に考えていこうと思います。
おめでとうって、当然、「めでたい」と関係があるなっていうのはわかりますよね。
で、「めでたい」っていうのは、「めでる」っていう動詞があって、
で、それに何々したいっていう対がついているってことですね。
で、「めでたい」になっていると。
で、それで丁寧を表すをっていうのがついておめでたい。
で、それの変化形がおめでとう。
まあ、なんとなくそれはわかると思うんですが、
じゃあこのおめでとうっていう形自体は何なのかというと、これは連用形と言われるものですね。
いわゆる国語とかで習うものですよね。
用言に連なる形と書いて連用形ですね。
で、「めでたい」っていうのは、「めでる」自体は動詞ですけど、「たい」っていうのをつけると形容詞になるので、
まあ、「めでたい」は全体で形容詞で、で、それの連用形がおめでとうになっているわけですが、
でも普通は形容詞の連体形って言ったら、「はやい」に対して、「はやく」とか、「あつい」に対して、「あつく」というふうにこの「く」っていう形が出るはずなんですよね。
でもこのおめでとうでは、「く」ではなくて、「う」っていう音が出てるんですね。
これはどちらかというと関西方言の特徴ですね。
西日本的と言ってもいいかもしれません。
早くしろというところを早押しと言ったり、
暑くなったというところを暑なったと言ったりするんですね。
これは早くとか暑くっていう「く」のついた形が元になって、関西方言の方では音変化が進んだというか起こったというふうに説明できるんですね。
つまり連用形のこの「く」という形の形、真の形が落ちて、
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早うとか暑うとなって、
特にこの早うの方はこのあうっていう母音の連続が、あうがおうっていう音に変わったんですね。
で、早おうになっていると。
日本語って母音の連続を結構嫌うんですよね。
あうっていうような母音の連続があると、長母音に変えたりすることがあります。
なのでおめでとうというのもこれと同じ変化が起こっていて、
もともとおめでたくという形だったのが、
早うの形の真が落ちて、おめでたうになって、
あうの母音連続が長母音に変わっておめでとうになっているということなんですね。
このあうの母音連続がおうになるっていうのがちょっと納得できないかもしれませんけど、
これ日本語だけではないんですよね。
英語でもあって、例えばね、自動っていう意味のおうとっていうのは auto みたいなつづりですよね。
英語でも結構 au というつづりでおうと発音するものがたくさんあって、
これはつまり、昔の英語ではあうと発音してたものが、現代英語ではおうとなっているっていう日本語と全く同じことが起こっています。
なので、おめでとうっていうのは関西方言といえば関西方言なんですね。
で、こういうね、挨拶表現というか決まりきった表現っていうのは関西方言から受け継いでいるものが多いですね。
これは当然、昔中央と言われる土地というかね、場所が京都だったためですね。
おはようもそうですね。おはやくがおはやう、おはようになってたり、
ありがとうっていうのもありがたくがありがたう、ありがとうになっているってことですからね。
割とね、挨拶表現ってこういう形容詞の連用形が使われてて、しかもそれが関西方言に由来している。
で、おめでとうもそういった類のものであるということですね。
ほいでね、おめでとうの面白いところは、形容詞の連用形が使われているっていうのもそうなんですけど、
先ほど、めでるにたいがついてめでたいっていうような言い方をしたんですが、
これはね、古語に遡ると、めずっていう動詞だったんですね。
これはね、下二段動詞と言われるものですね。
覚えてらっしゃいますかね。
現代日本語では二段動詞っていうのはなくて一段動詞しかないんですよ。
めでるっていうのは一段動詞なんですが、その先祖にあたるものは二段動詞となっています。
一段と二段って何のこっちゃってことですが、めでるの方は、
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えっていう母音しか出てこないんですね。
未然形はめでない。連用形はめでます。
終始形連体形めでる。
仮定形めでれば。命令形めでろうですかね。
っていう風に全部でっていう音しか出てこないんですけど、
昔の日本語に遡ればめずっていう形で、
すなわち二段動詞で、
二段ってことは二つの音が出てきたんですね。
えっていう音に加えてうっていう音も出てきていました。
なので古典の時代だとおそらく、
未然形はめでず。連用形めでけりかな。
終始形めず。連体形めずる。
仮定形というよりは未然形はめずれ。
命令形はめでよ。
ずっていう音とでっていう音の二つの音が出てきたので、
二段動詞、二段活用と言われていました。
細かく言うとめずではなくてめるという発音だったと考えられています。
時代が下るに従ってめるというのがずという発音に変わりました。
もっと一般化して言うと、
昔の日本語は現代日本語に比べて活用がもっと多かったんですよね。
今の日本語は三つの活用パターンしかなくて、
五段動詞とグループ一の動詞とか言われたりするもので、
日本語教育で一段動詞あるいはグループ二の動詞と、
下辺左辺という不規則動詞、これはグループ三の動詞と言われるものです。
この三種類しかないんですけど、
昔の日本語つまり古典で習う日本語だと、
四段上に下に上一下一それに加えて不規則動詞というか、
変格活用が下辺左辺な辺ら辺という風に今何個言いましたか。
九つですか。九つの活用があったんですよね。
それが時代を下るに従ってどんどん統一化されていって、
今言った目図というのももともと二段動詞だったものが一段動詞になって、
全部二段動詞は一段動詞になっちゃったんですね。
結構日本語史上大きな事件なんですけど。
下辺と左辺はそのまま不規則動詞で残っていて、
な辺とら辺、死ぬとかありというのは全部五段動詞になってしまいました。
こういう風にどんどん活用のパターンが整理されて、
現代語に近づくにつれてシンプルになっていったんですね。
これはいずれ一つになることがあるんですかね。どうだろうな。
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今んとこ割と落ち着いちゃってるとこありますね。五段動詞と一段動詞で。
ただ一部この五段動詞と一段動詞の融合というか、中和というか、
そういったものが起きているところもあって、
例えば五段動詞行くみたいなものは、
仮定形と命令形が同じ形でエラーの音が出てくるんですよね。
行けばの行けと命令形の行けですね。この二つって同じ形なんですよ。
人によっては、このルールを一段動詞、例えば見るとか食べるっていうのに適用して、
命令形を見れとか食べれっていう人もいるんですよ。
これは仮定形が見ればとか食べればなので、
その形を命令形でも使うっていう五段動詞のルールを適用して、
見れ食べれと言ってるわけですね。
こういうところを見ると、もしかしたら徐々に一つの活用パターンに収まっていくかもしれません。
ちょっとそこまで言えませんけどね。
というわけで、今日は明けましておめでとうの、
このおめでとうからいろいろ日本語の面白いところを見ていきました。
最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではまた次回お会いしましょう。
今年もどうぞよろしく。
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