00:00
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル、英語の語源が身につくラジオ、通称heldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は、
employeeの意味と用法
employee の ee って何、
という話題です。 ee と綴る、この設備辞ですね。 これ、雇われている人ということで、
最後のこの ee の部分にアクセントがあるわけですよね。 一方、通常の動作詞を表す er をつけると employer となって、これは雇う人、雇い主っていうことになりますね。
つまり反対の関係になります。 employer に対して employee ということになりますね。
ちょうど、主語と目的語っていう関係になりますね。 employee、雇うという動詞を中心において、主語となるのが、つまり someone who employs someone else という関係ですね。
これが employer というふうに er ですね。それに対して someone who is employed というふうに、受け身の関係と言いますかね。
あるいは、エンプロイの本来目的語に来るはずのその人、 雇われる方の人ですね。これを表すのに ee をつけて employee と
いうわけですね。 このように語尾が異なりますし、発音上もですね、アクセントの置き場が違う。
employer に対して employee と、明確に違いが出るので、非常にわかりやすい関係になるわけですよね。
雇い主と雇われている人。 さあ、他にもですね、このような関係というのがありまして、
appointer に対して appointee であるとか examiner に対して examinee、
payer、 payee、 trainer、 trainee などのペアも同様です。
それぞれの組で er の方が何をする人という、農動体ですね。つまり主語の役割を概にして、
一方、 ee が付くものは受動体に対応する非動作種といいますかね、ということになりますね。
語源と語の変化
この ee という設備字、これは一体語源的にはですね、何なのか、どういうところから来たのかという話をしたいと思うんですが、
まず通常のこの er ですね、何をする人、これは本来語なんです。本来形の設備字ということで、
つまり元から英語にあるものということですね。それに対して、実は ee の方ですね、何なのか、される人、これは実はフランス語から
釈用した設備字ということなんですね。 そしてフランス語ではですね、今でもこう ee ですかね、 ee にアクセント記号を付けて
e という発音になりますが、これ実は動詞の過去分詞形の設備字なんです。 英語で言うところの ed に相当しますね、これ e というわけです。
なので、いわゆる受け身の意味になるっていうことですね。 この ee というフランスの語尾ですね、これをそのまま英語が仮受けて、
例えば employee につけると employee これでいわゆる
unemployed one ぐらいの意味になるわけです。 雇われた人ということですね。
この設備字がフランス語という外国語からですね、本体と切り離されて釈用されるっていうのも、考えてみると妙なことのように思われますが、
実はこの employee という本体ですね、これ自身もフランス語から借りられていまして、ある意味セットで
釈用されてきたっていうことなんですが、後にこれを ee の部分だけ切り分けてですね、設備字として英語でも独自につけるようになったという、他にたくさん単語が生まれてきたわけですね、
ee を持つということで、もともと過去分子語尾である、フランス語のね、ということで英語でもやはり過去分子、つまり受け身ですね、の意味を持つ、
される人って言いますかね、こんな感じになるわけです。 これさらにフランス語から遡ると面白くてですね、
これラテン語の第一活用と呼ばれる動詞の過去分子形、artus という語尾ですね、これがどんどん短くなって、また母音が変質して、単にえだけになってしまったっていうのが、フランス語のこのえなんですね。
そしてこれが、ee と綴られながら英語に入ってきたっていうことなんですが、そうすると artus っていうのがもともとなんですね。
これ英語でもたくさんありまして、なんとか ate っていう時の ate これで終わる単語がたくさんラテン語から英語に入ってきまして、例えば communicate, dedicate, educate こんな単語ですね。
面白いことにこの ate が終わるものに先ほどのこの ee というフランス語由来の設備字をつけて、communicatee とか dedicatee、 educatee なんていう単語もあるので、これ語源的に言えば ate の部分がそもそもラテン語の過去分子である。
さらに語末の e ですね、あるいは ee の部分ですが、これはフランス語に由来する過去分子ということで、2回過去分子がくっついているっていう妙な例もありますね。
さて、この ee の付く a 単語は非常に多いんですけれども、実は er に比べてももちろん全然少ないんですが、
現在のee語の傾向
辞書を見るといろいろと出てきます。その中で、employee っていうのは割とよく使われる方かもしれませんが、頻度は少ないですね。あまり使われないタイプの単語が多いっていうことです。
というのは法律用語に多いからなんですね。法律の専門用語として使われることが多いっていうことで、日常的に触れる機会っていうのはそれほど多くないわけなんですけれども、数えると数百実は出てくるんですね。
そこで面白いのは、本来的には、語源的には過去分子である。だから受け身の意味になるんだ。される人って意味になるんだという説明をしたんですけれども、一旦この英語にですね、この ee 語尾が入ってきて確立して人という意味を帯び始めると、いろんなものにくっついてですね、必ずしも受け身の意味じゃない。
むしろですね、主語の意味、何にする人、つまり er と同じような意味で使われるっていうこともままあるんですね。例えば、スタンディーなんていうことがありますね。これ立見客っていうことで、つまり、スタンダーに近いわけですよ。微妙に意味は異なっていますが、立っている人ということで決して受け身ではない。
そもそもスタンドは自動詞ですから、受け身になることはできない。受け身の意味というのは、そう想像できないわけなんですけれども、これも通常のワンフースペンス立つ人という意味になりますね。
他に例えば、レフュージーなんていうのもそうですし、エスケイピーっていうのもそうですし、アプセンティーとか、アテンディーっていうのもそうですね。これそれぞれ何にする人なんですね。される人になっていないということで、受け身ではないこの ee というのが、実は増えてきているそうなんですね。
この ee 語自体はですね、古くは中英語期からあるんですが、そこそこ現れ始めるのは、近代英語になってからですね。19世紀ぐらいになると一気にですね、これ増えていきます。
そして、20世紀、21世紀にかけて、もうちょこちょこと増えてくるんですが、この割とこの最近のものですね、この100年と言いますかね、20世紀、21世紀ぐらいに新しくできた ee 語はですね、比較的この受動態ではない、する人という、どっちかというと能動的な意味を持ったタイプの語が増えてきているっていう感じですね。
増えてきているっていう傾向があるんですね。増えてきているって言っても、以前よりはこの能動タイプっていうんですか、主語タイプが増えてきているっていうことで、全体からするとですね、やはり圧倒的に、される人という従来の本来の使い方の単語の方が多いわけなんですが、少しずつ勢力を伸ばしてきているっていうのが面白いところですね。
元の語源的な過去分子という意味、つまり受け身という意味が忘れ去られたわけではないんですが、主語、能動的な意味の領域にもだんだんと進出していっている。少しずつそちらに分布を広げていっているっていうのが、まさに言葉の変化を見ているようで面白いということですね。
この動きがですね、どうもこの100年ぐらいに見られるようになってきているっていうことで、今後新しく現れるいい意語の意味ですね。これには注目していきたいと思います。それではまた。