2025-04-10 10:03

heldio #264. hospitalのhも200年前には読まれなかった?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #黙字 #綴字
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サマリー

今回のエピソードでは、hospitalのhが200年前には発音されていなかったことや、英語の発音に関する興味深い歴史が語られています。特に、ジョン・ウォーカーの辞書が英語の発音に与えた影響についても触れられています。

hospitalの発音の歴史
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、hospitalのhも200年前には読まれなかった、という話題です。
現在、hospitalというのはhという綴りで始まり、しっかりとこのhの音が発音上も出ますよね。
there is a hospital on the hill のように、hospitalという風に、今、波行音ですね。hで書かれているし、実際にそのように読まれるということです。
もちろん、この方が普通なんですけれども、英語には非常に少数ではありますが、hで書かれているにもかかわらず、このhが読まれないというものがありますね。
本当に少なくて、例えばhour、これ代表的ですね。an hourということです。
それからhonour、名誉を意味するhonourですね。それからhonest、正直な。
そしてair、これheirと書く方のairで、相続人。
この4語が基本ですね。ここからの派生語というのも含みますね。ただhourであればhourlyとなってもやっぱりhourとh、読まれないですよね。
それからhonourに対してhonorableであるとかhonest、honestyというのもそうですし、
airに対してairessといえば女性相続人ということですね。関連語はh書いて、だけど読まないということになりますが、全部合わせても非常に少ないですね。
それからですね、まれいなんですが実は起こることがあるという、こういう同じ現象が起こることがあるのがherbですね。
これあの薬草、あのherbですけれども、アメリカでは実はですね、hが読まれないことが多くてherb、herbという風に発音されることが多いです。
それからhistoricalなんていう単語ですね。これまあhistoryから来ているわけで、hは普通は読むわけなんですが、
例えばan historical study of Englishみたいにan historical、anが前に来て、hは読まれないという発音もあるにはあるんです。やや古風だったりしますけれどもね。
さあこのように多少揺れを示すものがありますが、それにしてもhで書いておきながら書かれないというのはですね、非常に少ない、まれであるということです。
このhourに代表される、hで書くけれども読まれないというこの問題については、別のところでもいろいろとお話はしています。
はっきりとした理由と言いますか、歴史的な説明をつけるということは、なかなか難しい問題だというのが、全体としてはそういうことなんですね。
ただ歴史を見るとですね、いろいろ面白い状況は出てきます。そして今回の話題なんですけれども、200年ほど遡った時代ですね、1800年前後というイメージを置きますと、
実はですね、当時の英語には今よりももっとこのhourタイプですね、つまりhで綴るのに発音されないというものが、今よりもっとあったということが確認されるんですね。
現在もそのhour、honor、honest、airなんて読み上げましたか、あるいはその関連語ということで述べましたが、それ以外にもですね、今回の表題のhospital、これもですね、hで読まれないことも結構あったようなんですね。
他にはですね、humbleというのもそうですね。現在ではもちろんhumbleというふうにhで書いてしっかりhを発音するということですが、当時はumbleのように読んでいた、つまりhospitalとかumbleのようにhなしで読まれていたということなんですね。
ジョン・ウォーカーと辞書の影響
それから他にはhumorとかhumorous、今ではhをしっかり発音するのが普通かと思いますが、当時はどうもhumor、humorousのように、まさに日本語ではユーモはユーモラスと言っているわけなんですが、このように発音されることも多かったということなんですね。
実際には当時でもですね、hの発音には揺れがあって、hospitalという発音もあったんだろうと思いますね。他にhumble、humorのような、つまり現代的な発音もあったと思うんですが、推奨されている発音と言いますかね、模範となる発音としてはhospital、umble、humorというふうにhがない発音、こちらが推奨されていたということなんです。
現在では推奨されると言いますか、規範的な発音は、この3語に関してはhを読むということになりますので、規範がこの200年の間に変わってきたということですね。
ちっちゃな変化ではあるかもしれませんが、これも英語史の面白さです。現在ではhと書いてhと読む3語なわけですから、何も問題意識を抱かないわけですね。
hospital、humble、humorですね。ところがhと似たような状況がこの3語にはあった、200年前にはあったというところです。
200年ほど前の発音、特に規範的な発音がこういう発音だったということはなぜわかるかというと、すでに当時発音を記した辞書が出版されているんですね。
なのでそこから確かめることができるわけです。問題の辞書というのは、ジョン・ウォーカーという人が編集したcritical pronouncing dictionaryという辞書なんですね。
これ1791年に出版されたものなんですが、これがもう大ヒット、英語の発音界の大ヒットメーカーと言っていいと思うんですね。
このジョン・ウォーカーによるcritical pronouncing dictionary、1791年はですね、正しい権威ある発音を求めた後半ですけど18世紀のイギリス庶民たちに確かな道しるべを与えた大人気の辞書だったんです。
初版以降ですね、なんと100版以上を重ねて人気を博したということです。
英米ではこのジョン・ウォーカーを指してですね、あまりに有名な人なんで、エロキューション・ウォーカーと呼ばれるに至りました。
エロキューションというのは有弁ってことですね。つまり発音がいいぐらいの意味なんですが、エロキューション・ウォーカーと呼ばれました。
その後ですね、大人気を博してどんどん売れ続け、この辞書はですね、19世紀末から20世紀にかけては、
イギリスの用人発音、Received Pronunciationと呼ばれる規範的な発音のある種土台、基盤みたいのを提供したということすらできるのではないか。
つまり現代の標準英語にまでかなり大きな影響を及ぼした辞書なんですね。
発音辞書と歌っているんですけれども、辞書は辞書で語義もあるんですね。
規範的な英語の発音
ところが発音の記述にうるさいと言いますか、正確さを期しているということで、実際の本のタイトルは、これ簡略版のタイトルで、
A Critical Pronouncing Dictionaryって言うんですが、当時、近代英語の本のタイトルっていうのは大抵長くてですね、非常に説明がずらずら続くんです。
実際のタイトルを省略しないで読み上げてみますね。
この辞書の狙いみたいなものまで含まれた一種の解説文なんですけれどもね。
このように、規範的な趣旨が濃厚ですね。
基本的にはイングランドの英語、とりわけロンドンの中上流階級のしっかりとした英語ですね、これを守るべきだと。
守るべきはスコットランド人であり、アイルランド人であり、そしてロンドンという言葉が出ましたが、
この場合、ロンドンの鉛を抱えた人々ということで、具体的にはコックニーというのがわかりやすいと思いますね。
規範的なロンドンのしっかりした英語の発音、これを習得すべきだということを歌っている辞書なんですね。
それからもちろん、英語を外国語として勉強する英語学習者に向けても書かれたものなわけですが、これが絶大な人気を誇ったということです。
そしてこの辞書で書くエントリーを見ますと、先ほどのホスピタル、ハンボー、ヒューマー、この辺がしっかりとH発音記号でHが書かれているんですね。
少なくとも規範的な発音としては、こうすべきだとHを発音すべきだというのがウォーカー流だったわけです。
ではまた。
10:03

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