サイレントレターの謎
英語に関する素朴な疑問。 なぜ知っているを意味するknowの綴字には発音されないkがあるのですか。
英単語にはknという綴字で始まる単語がかなり多く存在します。 表題に挙げたknow、知っているを意味するknowですね。それからknifeを意味するナイフ。
それから騎士。騎士道の騎士。ナイト。これもknで始まります。 それから肘のknee。それからドアノブ、ノブですね。ノブ。
いずれもknで始まりますが、このkは決して発音されません。 kがないかのように、それぞれknow、knife、night、knee、knobなどと発音されます。
これは一体なぜなのでしょうか。 knで綴られるのは、古くはknで綴られればそのままknという発音として綴られていたからに他なりません。
つまりしっかりとこのkは発音されていたということになります。 したがってこの発音が続いていれば、
いまだにknow、knife、night、knee、knobなどとなっていたはずなのです。 しかし17世紀末から18世紀にかけて、
1700年前後、今から300年前後前なわけですが、この時代にknという発音のつながりから最初のkが徐々に弱まってしまいには脱落していったという経緯があるのです。
kがそのままなくなったというよりは、実体としてはknowだったものが、最初のkが弱くなって、fknow、fknow、know、fknow、fknow、knowというように徐々にこのkの音がかすれていったような形です。
これが今からおよそ300年ぐらい前に徐々に起こっていったということです。 この発音変化がなぜかというのは非常に難しい問題です。
発音しにくいからと言ってしまうとそれまでなんですが、それまでの英語の歴史、1000年以上にわたる歴史で発音しにくくなかったわけです。ずっと発音してきたわけです。
急に発音しにくくなったということはあり得ません。もし発音しにくいんだとしても、なぜとりわけ1700年前後にそれがなくなったのかというのはよくわかりません。
したがって、もしかすると発音しにくいというのは半分あたりなのかもしれませんが、なぜそのタイミングでなのかというとなかなか説明できないという意味では、
ある意味常に発音しにくかったということを考えれば、その発音しにくいから落ちたというのは半分あたりのような気もしますし、だけど半分はずれなんではないかと思うんですね。
なかなか発音の変化というのはきれいに説明することはできません。 とにかく実態として起こったことは、1700年前後にこのケインの音がかすれてしまいにはなくなってしまったということなんです。
ところが、昔のケイクの音があった時代のつづり字、つまりケインというつづり字自体は存続しました。
というのはこのつづり字、標準的なつづり字というのは、この発音変化が起こる少し前の17世紀半ばには標準として確立してしまっていたんですね。
つまり一旦定まってしまうと、その後発音が変化したからといって、つづり字の方が連動して変化するということは起こらなかったんです。
これは発音の変化が、先ほど述べたように、起こる時は起こってしまうという、いわば自然ものなのに対して、つづり字というのはある意味では
人間の意図を持って、計画的に定めたに近い、いわば社会制度、法律のような社会制度に近いんですね。
なので、そう簡単に一旦定まってしまうと、変えるということはできない。
自然ものの発音変化に対して、つづり字の標準化というのは、かなり意図的に作った制度ですので、必ずしもこの自然の発音変化についていくということにはならないんですね。
したがって、つづり字は古い時代、発音変化が起こる前の時代の発音を反映したつづり字、経緯Nになっている。
ところが、1700年以降に発音の方は自然ものですので、変わってしまい、経緯がかすれるようにして落ちていってしまったということです。
このような経緯で、経緯Nだけではなく、例えばですね、GNで表されるものもそうです。
それから、例えば書くを意味するWRもそうです。Wが後に発音から消えていったんです。
それから、クライムなどにあるMBってありますね。あれも語末のBが後に消えたということです。
このように、後頭であるとか語末の2連続シーンにおいてはですね、その端っこにある方のシーンがですね、摩耗して消えていくということが多いんです。
一方、つづり字は、そうした2連続シーンがきっちり発音されていた時代の、昔の発音を表したまま現代に至っていることが多いので、
このような発音とつづりのギャップ、これを目字、サイレントレターと呼んでいますが、つづり字ではあるのに発音されないというですね。
これが英語に多いのは、こういった事情があるからなんですね。発音変化はどうしても起こってしまう。自然ものであると。
一方、つづり字というのはなかなか変化しにくい。昔の発音のままに据え置かれやすいと。これがこの知っているを意味するNoに、Kの発音がないのにつづり字にKが入っている、残っている、そういう歴史的な背景ということになります。
このあたりの事情につきましては、ヘログの122番、そして3675番の記事をご覧ください。