アン・リスターは恋人に裏切られて、心を痛めながら故郷のシブデンホールに帰ってきます。
古い屋敷を見渡して、ここを建て直してやると決意します。
彼女の行動力や黒づくめの紳士風スタイルから、地元ではジェントルマン・ジャックと呼ばれるようになります。
そんな彼女が出会うのが、近くの屋敷クローネストに暮らす女性相続人のアン・ウォーカーです。
控えめで繊細な彼女にアン・リスターは次第に惹かれていきます。
このアン・リスターが出会うのがアン・ウォーカーという2人のアンなので、ちょっとそこがややこしくなるんですが、
最初はお茶を飲むだけの友人関係の2人が、少しずつ心を通わせて、やがて恋に落ちていきます。
この恋が、このドラマの大きな軸になります。
ただし、19世紀のヒリス社会です。
女性同士の関係はありえないこと。
アンは愛する人と堂々と生きるという信念のもとに、偏見や噂、そして家族や権力者たちの反発と戦っていきます。
シーズン1では、アンが恋と事業の両方に奮闘します。
単行経営をめぐって、ライバルのローソン兄弟と対立したり、アン・ウォーカーの心の不安と向き合ったりします。
本当にその起業家と恋物語のような展開になっていきます。
そしてシーズン2では、2人が秘密の結婚式をあげて始まる夫婦生活です。
一見ハッピーエンドのように見えて、ここからが本当の試練。
衆院の目、家族の反発、過去の恋人との再会。
2人は多くの壁に直面していきます。
ここまでがドラマの大まかな流れです。
でもこの物語がすごいのは、2人の恋愛とか、アン・リスターのビジネスのドラマだけじゃないんですね。
アン・リスターという女性を取り巻く家族や、そして彼女が背負っていた土地や時代そのものこそ、この作品の深い魅力があります。
ここからはその背景を少し見ていきたいと思います。
まずは主人公のアン・リスターの家族からです。
アンが生まれ育ったシブデンホールは、代々続く地主の家系でした。
お父さんのジェレミーは、お台場だけれどもどこか頼りなく、妹のマリアンとは価値観が合わず、いつもぶつかっていました。
唯一心を通わせていたのが、おばのアンです。
彼女もね、アンという名前なんですね。
彼女はアン・リスターの理解者であり、人生の相談相手でもありました。
でもそれ以外の家族は、アンの生き方、男性のように装って堂々とビジネスをして、女性を愛する姿を理解できなかったんですよね。
そのためにアンにとって、家は守るべき場所であると同時に、ちょっと生き苦しい場所でもあったんです。
次に、アン・リスターが愛するアン・ウォーカーの家族です。
隣の屋敷、クローネストの霊場、アン・ウォーカーは、莫大な財産の相続人だったんです。
でも彼女の家族は、その財産を守ることばかりに目を向けて、彼女自身の幸せとか心の弱さを理解しようとしませんでした。
特に、彼女のお姉さんが訪れたスコットランドの親族たちは、アン・ウォーカーの意思を無視して、家の名誉のためとか、正しい結婚をと、彼女を縛りつけようとしたんですね。
そんな中で、アン・リスターという自由に生きる女性の姿は、彼女にとってまるで光のように映ったんだと思います。
次は、アン・リスターの地主としての凄さです。
アン・リスターは単なる異端児ではなかったんですよね。
彼女は当時、洋服社でも有数の実業家でした。
土地を調査して、そこに石炭が眠っていると分かると、自分の手で炭鉱を掘って、採掘権を交渉して、不正を働く男性たちと真正面からやり合いました。
しかもそのやり方がとても戦略的で、法律や経済、土地所有の制度を熟知していて、男性社会のルールを理解して自分を有利に動かしていったんですね。
女性の力を使って、というのではなくて、まさに知識と知恵で戦う女性だったんです。
彼女の日記には、この土地を誰にも奪わせないぞという決意を感じる言葉が溢れています。
彼女にとって土地とは家計の象徴であると同時に、自分の生きる証でもあったんですね。
最後は、アンが大変だった理由です。
彼女が生きたのは1830年代です。
女性には財産を自由に扱う権利も、政治に参加する権利もほとんどなかった時代ですね。
そんな中で、男たちと同じようにビジネスをして、恋愛をして、自分の生き方を隠しませんでした。
つまりアンリスターは、時代の常識と自分の本当の姿の間で、常に戦っていたんです。
彼女の愛は、当時の社会から見たら決して存在してはいけないようなものだったんですが、
でもアンは、愛に性別はないと信じて行動しました。
それがどれほど孤独で勇気のいることだったかと思うと、
その強さと同じくらいの痛みを抱えていたんだなと思います。
私がこのジェントルマン・ジャックを見て思ったのは、
炭鉱事業の戦いもとてもすごかったんですが、
他にも鉄道の時代が来るということを見据えて、地元の人々の意識を変えようとしているところもすごかったですよね。
本当に戦犬の命があるんだなというところですね。
たくさんの旅を通して、新しいことを学んで、自分の糧にしていく姿です。
最初にご紹介した言葉にもそれが出ていたかと思うんですけど、
当時、女性の生き方が制限されている中で、こんな生き方をした女性がいたんだなということに本当に驚きました。
彼女の強さと、時に見える孤独や苦しみにすごく胸を打たれました。
でも同時に、私はちょっとだけ、アンは本当にアンウォーカーを愛していたのかなと思ったんですよね。
愛というよりも、どこか彼女を利用しているような、そういうふうにも感じてしまったのが正直な感想です。
さて、今日はドラマ「チェントルマンジャック」をお届けしました。いかがでしたか?
このドラマは、ユーネクストやアマゾンプライム、アップルTVなどで視聴できます。
さて、最後に少しお知らせを、12月14日日曜日の午後に、ちょっと素敵なイベントを開催します。
私はアート解説もやっているのですが、今回はフランス印象派の絵を見ながら、アフタヌンテを楽しむ会を開催します。
今回鑑賞する絵は、19世紀パリのブルジョアたちの暮らしを描いた絵ですが、美しいインテリアや光り満ちた室内、上流階級の優雅な日常の絵が登場します。
カントリーハウスやイギリスのドラマが好きな方ならば、楽しんでいただける世界観ではないかなと思います。
そしてアフタヌンティーがついています。紅茶を飲みながら、絵を眺めながら、ゆったりとした午後を過ごしませんか。詳細は概要欄にリンクを貼っています。ぜひお会いできたら嬉しいです。
さて次回は、今日ご紹介したドラマ、ジェントルマンジャックのロテ地巡りです。
私は2年前にアンディスターが実際に住んでいて、ドラマのロテ地にもなっていたシグデンホールに行ってきたんですね。
そのことについてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみに。