では、早速シブデン・ホールへ向かいます。
2023年の9月、私は電車でハリファックスに向かいました。
ハリファックスの駅からシブデン・ホールまでは、東方で約30分というふうに書かれていたんですよね。
のんびり景色を見ながら歩いていくのもいいなと思ったんですけど、
実際、イギリスでは歩道が長い道路だったり坂が多かったりして、日本の感覚で散歩していくというのが難しいので、今回はタクシーで行くことにしました。
事前に会社を調べて行ったんですが、駅を出ると何台かタクシーが停まっていたので、料金を確認して乗り込みました。
ハリファックスは結構大きな街だったので、タクシー事情はとても良かったですね。
タクシーはディスターズロードとかシブデンホールロードという名前のついた道を進んで、10分ほどで到着しました。
帰りのために運転手さんの電話番号もちゃんと忘れずに聞いておきました。
タクシーを降りてちょっと歩くと庭園に続く道があり、緩やかに下っていく階段の先に石造りの古いお屋敷。
左側に小さな塔があって、白と黒のハーフティンバー、ドラマで何度も目にした外観がそのまま目の前に現れたんです。
私はイギリスに行く直前にジェントルマンジャックをずっと見ていたので、本物だなと思って感動でしたね。
この行った日は9月の終わりで、イギリスはすっかり秋で曇り空の肌寒い日でした。
なので花とかがあまり庭園にはなかったんですけど、建物の前に四角い芝生のエリアがあったんですね。
その角にハート型の土の部分が四隅にあって、その時は何も植わっていなかったんですけど、
ここに季節の花でも植えるのかなと思って、とても可愛らしいアクセントが印象的でした。
シブデンホールは貴族の大邸宅のそういう迫力はないんですが、どこか親しみのある温かみの感じるお屋敷ですね。
入場して最初に入るのはキッチンです。
ここもドラマに何度も出てきたんですが、大きなかまどがあり、広い作業テーブルと小さな窓。
湿素だけれども、道具が手に取りやすい位置にちゃんと並んでいて、実際にこの場所で暮らしていたんだなと感じる空間でした。
石の床なんですが、それがかなりボコボコしていて、冬はここはすごく寒かったんだろうなと想像してしまいました。
ドラマでは、アンのことが大好きな使用人たちがこのキッチンで色々噂話をしていましたよね。
そういった場面が自然と重なってきて、なんだかとても不思議な気持ちになりました。
キッチンを出て小さな部屋をいくつか通り抜けると、目の前がふっと開けてグレートホールに出てきます。
最初に目を奪われるのは絵が描かれた大きな窓。
その下には気化学模様の赤い絨毯、木のパネルの壁と白い漆喰と木のパネルがボーダーのように並ぶ模様の壁が広がっていて、
そのボーダーの部分はとてもモダンな雰囲気だったんですよね。
この部屋はアンの時代に天井を高くしたようで、その高い空間に吊るされた鉄の輪のような大きなシャンデリアもとても印象的でした。
このホールに立っていると、今にもドラマでアンを演じたスランド・ジョーンズがコツコツと足を響かせながら入ってくるような不思議な感じがしていたんですよね。
私はこの部屋で特に好きだったのがあの窓です。
ここには植物とか動物、鳥、想像上の生き物とか紋章がきれいな色で描かれていて、このガラスが光を受けてとても美しかったですね。
この窓は16世紀にどこかの修道院にあったものを移設したんだそうです。
この窓は渋谷ホールよりももっと古い歴史を持っているかもしれないですよね。
北イングランドは秋から冬にかけてどんよりした日も多いので、こんな窓があったらきっと気持ちがふっと明るくなったんだろうなと思いました。
そしてこのホールの奥には2階に続く美しい木の階段もあります。
その階段のところにはラテン語でリスター家のモットーが刻まれていました。
その意味は正しく志を貫け、その両脇にはアンリスターの頭文字、彼女の人生を表しているような言葉ですよね。
カントリーハウスにはこのように架空とかモットーが建物とか部屋のいたるところに刻まれていることも多いんです。
ぜひ訪れる機会があればそういう細部を見るのもとても楽しいです。
さらにこのホールには1937年10月20日に時の国王ジョージ6世と王妃エリザベスが訪問したときの写真も飾られていました。
渋谷ホールはロイヤルファミリーとの意外なつながりもあるんですね。
そのあたりの話はまた別の回でゆっくりお話ししたいと思います。
さらに忘れてはならないのがアンリスターの日記の展示ですね。
このアンリスターの日記の実物は地域の公文書館に展示されているようですが、
この渋谷ホールにはパネルでその日記の仕組みが紹介されていました。
アンの日記は約500万語で、そのうちの6分の1が暗号を使って書かれているんですね。
その暗号というのは、ギリシャ文字とか数字とかの記号を組み合わせた、自分で作った独自の暗号で、
なんでそんなことをしたかというと、プライベートの内容をそのまま書くための工夫だったんですね。
アンは性的なこととか月経のこと、金銭の管理やハリファックスの人々への辛辣な評価とか、
自分の体の調子のことまで、かなりプライベートなことを誰にも読まれたくないことを正直に書き続けたんですね。
1832年4月29日には、私の日記はどんなに心強いことかという記述もあって、
このように暗号で自分の心を素直に書き出すことで、彼女は救われていたんだろうなということがわかりますよね。
このシグデンホールの中の一画には、彼女の日記を解読した人、女性なんですけど、そのインタビュー映像もありました。
アンの膨大な手書き文字を読むだけでもきっと大変だったと思うんですけど、
そこに複雑な暗号が混ざっているので、その苦労を思うと、
そして彼女のおかげでこういったドラマができたんだなと思うと、少し胸が熱くなりましたね。
そしてこのグレートホールの横には美しい部屋が2つ並んでいます。
こちらもドラマで繰り返し繰り返し登場していた部屋なんですが、
一つはイマです。
こちらはアンがかなり手を入れた場所で、壁の装飾を変えたり、窓を大きくしたり、床を下げたりしたようですね。
1760年代のピアノやホリゴ時計なども置かれていて、時代の空気がそのまま残っていました。
もう一つはダイニングルームです。
ここはとにかく椅子が主役の部屋でしたね。
丸いテーブルの周りに並んだ木材の背の高い椅子があったんですけど、
これが17世紀のものということで、とても美しかったですし、
大人用だけじゃなくて子供用の配置屋もあったんですよね。
豪華で可愛くて、こんなの使ってたんだっていうのでとても驚きでした。
ドラマにも丸テーブルとか同じような背の高い椅子が出てきたんですが、
これはやはり撮影用のもので、実際にお屋敷にあったものとは全く別のものでした。
この部屋はどこを見ても深い色の大木材で囲まれていて、
壁も家具も木の存在感があって、とても威厳のある部屋でしたね。
このように一回歩いただけで、まるでドラマの中に迷い込んだような気持ちになります。
でもシグデンホールの本当の魅力は、この先に続くプライベートエリアにこそ詰まっています。
次回はアンリスターが日記を書いたり、人生の決断をした部屋へ、
そして彼女の死後シグデンホールに何が起きたのか、その続きを巡っていきます。
ロイヤルファミリーとのつながりも、こちらでご紹介したいと思います。
最後に少しお知らせを、12月14日日曜日の午後、ちょっと素敵なイベントを開催します。
実は私はアート解説もやっているのですが、今回はフランス印象派の絵を見ながら、
アフタヌーンティーを楽しむ会をやります。
今回見る絵は、19世紀パリのボルジョワたちの暮らしを描いた絵なんですね。
美しいインテリアや、光に満ちた室内、上流階級の優雅な日常、
カントリーハウスとかイギリスのドラマが好きな方にも楽しんでいただける内容だと思います。
しかもアフタヌーンティーがついています。
紅茶を飲みながら、絵を眺めながら、一緒にゆったりした午後を過ごしませんか。
詳細は概要欄にリンクを貼っています。ぜひお会いできたら嬉しいです。
そして今日はもう一つお知らせがあります。
なんとダウントンアビグランドフィナーレの公開日が正式に発表されましたよね。
来年2026年1月16日です。
本当にやっと決まったということですごく嬉しいんですが、
公開まであと約2ヶ月。
おさらいをしたい方は、ぜひこのポッドキャストやブログの記事も活用してください。
それに合わせて来月の12月16日には公開まであと1ヶ月ということで、
皆さんからお気に入りの資品を集めてご紹介する特別会を作りたいなと思っています。
ぜひ概要欄のお便りフォームからダウントンアビの好きな場面を送っていただきたいです。
シーズン1からシックスのドラマでも、映画、2作品でもどれでもOKです。
泣けた場面、笑った場面、何度も何度もリピートしてしまう場面、どんなのでもOKです。
どのように書いていただいても短くても長くても形式は自由ですので、ぜひお気軽に送っていただけたら嬉しいです。
たくさんのお便りがあると、私も番組を作るのがとても楽しくなりますし、
皆さんのダウントンアイを一緒に共有できたらいいなと思っています。
お気軽に送っていただけたら嬉しいです。お待ちしています。