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2024-03-23 10:10

『反動のレトリック―逆転,無益,危険性』法政大学出版局(1997)/The Rhetoric of Reaction: Perversity, Futility, Jeopardy.(1991)

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LISTEN to books #17

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『反動のレトリック―逆転,無益,危険性』法政大学出版局(1997):Amazon

アルバート・O・ハーシュマン:Wikipedia

 

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サマリー

アルバート・ハーシュマンの『反動のレトリック』は、フランス革命以降の進歩派と保守派の対立において、3つの逆転テーゼ、無益テーゼ、危険性テーゼが反対のレトリックとして用いられてきたと分析しています。

進歩と保守の政治的な対立
LISTEN to books、17冊目の紹介です。 今回からBGMをやめました。
ここでは、この本が何を言いたかったのか、ということを紹介する、そういう番組なんですが、
アルバート・ハーシュマン『反動のレトリック』を今日は紹介したいと思います。
ちょっと小難しい話もあるんですが、最初に分かりやすく言うと、
この本はフランス革命以降に、いわゆる進歩対保守、何か改革をしようとする時に、それに対して反動・保守というものが出てくるわけですよね。
そういう政治的な対立の中で、いろんな議論が闘わされるわけです。
その時の反対理由ですね。反対の論拠。どういう理由を挙げて反対するのか、どういう反対の仕方をするのか。
それがレトリックですね。反対のレトリックというのを3つに分類したと。
もちろんいろんなバリエーションがあるんですが、それをずっと丹念に調べて、3つに分けられると、基本的なレトリックは。
というふうに言った本なんですね。これ非常に抽象度が高くて面白い本なんですが。
それが逆転、逆効果ってやつですね。逆転、逆効果テーゼ。そして無益、やっても無駄テーゼ。
そしてそれは危険だ、危険性テーゼ。この3つだと。結局、何か改革しようとする、
これ皆さんも体験あると思うんですが、何か改革したい、現状を変えたい、前に進めたい。必ず、反対するやつがいる。
反対するやつの言い方は3パターンしかないって言ったのが、このハーシュマンの『反動のレトリック』ですね。
「反動のレトリック」には実は3パターンしかないんだという話をするわけです。
ハーシュマンは何でこんなことをやりたかったかというと、それに対してどうすれば進歩のレトリックを前に進められるのか。
進歩のレトリックは、それに対してどういうレトリックがあり得るのかってことを考えたくてこういう反動のレトリックを書いたんですね。
これとても面白いんです。わかりやすく言うとこの逆転テーゼ、無益テーゼ、危険性テーゼ。結局、反対のレトリック、反動のレトリックはこの3パターンしかないんだという話なんですね。
一つ目、それをやってもかえって悪化すると。結局、反対の結果が生まれるんだと。
3つの反対のレトリック
フランス革命で自由と解放を求めたけど、結局再び何か縛られることになったじゃないかと。不自由になったじゃないかみたいなそんな話ですね。
結局、それをやったとしてもかえって悪化する、むしろ反対の結果を生むという。これが逆転テーゼというふうに言われるものです。
それから無益テーゼっていうのは、そんなことやったって結局、無駄だよと。元の木阿弥だよと。やるだけ無駄だよ、エネルギーの無駄だよと。
何も世の中変わんないんだっていう。これやっても無駄。無益テーゼ。
もう一個が、これが一番タチが悪いんですが、それは危険だと。危ないと。近寄るなと。あの人たちに近寄るな。やめとけ、危険だと。きっと何か裏があるに違いない。これが危険性テーゼ。
結局、突き詰めるとこの3つのレトリックしか見つからなかったって言うんですよね。フランス革命以来の進歩と保守というものの政治的な対立の中で出てきた言説ですね。
それは、この3つに分類されるんだと言ったんですね。これとても面白いんです。書いてある内容はとても小難しいです。
それこそフランス革命以来のね、その時に出てきた進歩派、改革派、王党派、いろんな人たちの言説を分析するわけですから、
いろいろ小難しいというか、こねくり回したものもいっぱい出てくるんですが、これがとにかくこの3つに整理できる。
ハーシュマンの面白いところは、私が好きなところは、非常に抽象度の高いところで論理を導こうとする。
こういう立て方する人ってなかなかいないんですよね。一種の言説分析になってるわけです。
彼は結局、果たせなかったんですが、この反動のレトリックを分析することで何がしたかったかというと、進歩のレトリックを分析したかったと書いてるんですけど、結局これはやりきれずに終わってしまったんです。
ハーシュマンってどういう人かと。ちょっと紹介すると、1915年に生まれて2012年に亡くなってます。ドイツ出身の経済学者ってことになってるんですが、私からするとこの人は経済学者ではないです。
この人の人生っていうのは、もうナチス政権下でいろんなことがあったんですね。相当、政治的にもすごい体験をしてる人なんですが、そのあたりは今日は触れませんけれども、特に有名なのは、最初の初期の作品は「経済発展の戦略」とか「開発計画」ってことで、開発経済学っていうのが出発点なんですけど。これも実はかなり経済発展の戦略ってことで、
経済ってのは実は政治的な戦略で動くんだっていう話が結構、基調としてあるんですね、ベースにね。その辺の発想もそもそも面白い人なんですが、その後、一番有名だったのはこれです。Exit Voice and Loyaltyっていうね、Exit Voice Loyalty、これ聞いたことある人多いんじゃないかと思います。
退出、告発、ロイヤリティっていうことで最初翻訳されました、ミネルヴァから。これがその後、僕と同世代か、僕よりちょっと若いかな、矢野さんっていう方が、ハーシュマン研究、日本で唯一ちゃんとやってる方だと思いますが、この人が、離脱・発言・忠誠っていう形でちょっと翻訳し直したんですね。離脱・発言・忠誠。このモデルは聞いたことあるんじゃないですかね。
とにかく組織、企業や組織や国家には離脱の権利がなければならない、発言の権利がなければならない、そしてそこには忠誠っていう原理も絡むという。この3つ、離脱と発言と忠誠で基本的に成り立ってんだと、いろんな組織はね。これ町内会とかもそうです。いろんな組織はこの離脱・発言・忠誠、離脱が保障されてない組織はダメだと、発言が保障されてない組織もダメだと、
忠誠だけでいってしまう組織もダメだと、そういう話が書いてあるのがこの離脱・発言・忠誠。これ古典的名著ですよね。意外と使ってる人多いんじゃないかと思います。Exit Voice Loyalty、これを最初にやったのがこのハーシュマンですね。その後に書いたのがこれなんですね。『情念の政治経済学』ってやつなんですが、
パッション・アンド・ザ・インタレスト。このパッション・アンド・ザ・インタレストも私、大好きで、これは結局、近代以前はパッションが支配する社会だった。それが近代以降、いわゆる資本主義社会って言われるようになってからこれがインタレストが支配する社会に変わったんだと。大きく社会が大変動したんだと。
「パッションからインタレストへ」って、社会の原理が変わったんだっていうね。そのことによって殺し合いのない世界、むしろ経済的な、金が支配する世界ですね。殺し合いとかパッション、情念が支配する世界から金で解決する社会に変わったっていう、これも非常に面白い。情念の政治経済学。
そこで市場社会が、だから生まれたんだって話もするんですが、その上で、実はシフティング・インボルブメントっていう、プライベートインタレスト・アンド・パブリックアクションっていう本を今度書くんですね。じゃあそういうインタレストが支配する社会の中で、じゃあプライベートインタレストとパブリックアクション、つまり公的な行為ですね。
パブリックアクションをする人は何でパブリックアクションをするのかと。私的な利益に閉じこもる人は何で私的な利益に閉じこもるのかと。この私的利益と公的行為のダイナミズムですね。これを『失望と参画の現象学』。つまりそこに巻き込まれるのか巻き込まれないのかっていう、公的なものにね。
いうところで、どういうダイナミズムがあるのかっていうのを分析したのがこの『失望と参画の現象学ー私的利益と公的行為』。だからこれはさっきのパッション・アンド・ザ・インタレストで、インタレスト社会になったってことを前提に、そのインタレスト社会において私的利益と公的行為ってのはどういう風に絡まり合うのかっていうね。そういうことを分析した本なんですね。
その上で、今度はかなり晩年になって書いたのがこの『反動のレトリック』。逆転テーゼ、無益テーゼ、危険性テーゼ。何か改革しようと、何かことをなそうとした時には、だいたいそれに反対する連中はこの3つのパターンしか繰り返さない。
結局、逆効果になる。それは無駄だからやめとけ。それは危険だと、きっと裏があるに違いない。このレトリックを繰り返してきただけなんだってね。それに対して改革を進めようと思ったらどうすることができるのかっていうことを考えようとしたっていうね。かなり面白いですね、これね。私大好きなんですが。
それともう一個、写真の中に入ってますけど、概要欄。『方法としての自己破壊』。これはかなり自伝的な部分とか、これまでに書いた本の振り返りを、フィードバックをですね、ハーシュマン自身がやってるやつで、これ面白いんですね。
だから『方法としての自己破壊』を読みながら、今言った4冊ですか、を読んだりすると、かなり理解するのは大変だと思いますが、面白いです、ハーシュマンの議論は。ということで、アルバート・ハーシュマンについて、『反動のレトリック』を紹介しながら、こんな人がいましたよということで、実際読むかどうか知りませんけれども、紹介しておきたいと思います。
ということで、わんこが邪魔するので終わりたいと思います。Listen to Booksでした。ちょっとフットワーク軽く、どんどんどんどん10分単位でいろんな本を紹介していきたいと思います。ではまた。
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