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2024-02-24 26:56

読書ラジオ『風の歌を聴け』村上春樹

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風の歌を聴け (講談社文庫) https://amzn.asia/d/dvMcnzZ

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こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書ログや日々の学びを音声配信しています。
今日は、村上春樹さんの『風の歌を聴け』という小説について話してみようと思います。
1970年の夏、海辺の街に寄生した僕は、友人のネズミとビールを飲み、解放した女の子と親しくなって退屈な時を送る。
二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受け止めてやるうちに、僕の夏は物憂くほろ苦く過ぎ去っていく。
青春の一片を渇いた軽快なタッチで捉えた。
出色のデビュー作、群蔵新人賞受賞ということで、村上春樹さんのデビュー作ですね。
1970年に書かれたもの、79年に書かれたものかな。
村上春樹さんがまだ30歳の時だそうですね。
完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。
という一行で始まるこの小説はですね、短編ですね。
全体で160ページ、私が持っているのは文庫本ですけれども、すぐ読めます。
ただ一回読んで、ちょっともう一回読んでみよう。
2回読みましたね。
ストーリーとしてはですね、そんな大したストーリーでもなく、後書きに書いているような、
寄生している大学生の僕が、自分の地元に海辺の町に寄生した時の、たった何日間かのお話。
ただ、友人のネズミとビールを飲んで、そのバーで倒れていた女の子を解放したことがきっかけで親しくなって、
2人の話を聞いて、僕はまた夏休みを終えて、大学がある東京へ戻っていくという。
ただただその、本当に何日間かのお話が書いてあるだけなんですけれども、
少し過去と未来と行ったり来たりする部分もあって、少し複雑でその分厚みのあるお話になっていたりします。
村上春樹さんの作品の、本当に厳選のようなお話なんじゃないかなと思っていて、
私は今年になってから村上春樹作品を2冊、国境の南太陽の西と色彩を持たない田崎作ると彼の巡礼の都市っていう2冊を読んで、
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からのこの村上春樹のデビュー作を読んでるんですけど、
あの2冊に書いてあったことの、本当に厳選のようなものがここに書かれているんだよなと、そんな気がしますね。
まず想定が素敵なんですけれども、港の町で灯台があって倉庫があって、
そこに1人の男性が海に背中を向けてタバコを指にくわえて座っていると。
見上げるとですね、星がありますね。これは土星なのかな木星なのかなわかんないですけど。
夕暮れの時間帯なのかなと思います。
そして、絵のですね、この想定の一番上にはですね、
マイバースデー&ホワイトクリスマスという文字が書いてあって、
これがどういうことを意味するのかっていうのはこの中で出てくるんですが、
私はハルキ作品の感想を話す時にネタバレせずにうまく話すことができないので、
ネタバレ嫌だわっていう人はここまでにしていただけるといいかなと思います。
どうしてもですね、中身の本当に、
なんていうか、ネタバレせずに感想を話すのめちゃくちゃ難しいですね、ハルキ作品はね。
と思います。結構、核心の部分まで話していかないと、何を話せばいいのかわかんないし、
そこを話さなかったらもう何も話すことないんじゃないかぐらい思ってしまうので、
ネタバレある意味でいきます。
先ほどお話ししたように、この小説は完璧な文章などといったものは存在しない、
完璧な絶望が存在しないようにね、という一文で始まります。
これはですね、僕が大学生の頃、偶然知り合った作家が僕に向かって言った言葉で、
僕は何かを書くという段になると、いつも絶望な気分に襲われるようになったと。
8年間僕はそうしたジレンマを抱き続けたということから始まるんですけれども、
20代最後の年を迎える僕が語っているわけですね。29歳ですね。
今僕が語ろうと思うということで、過去の自分の話を語り始める前置きのくだりになります。
そして文章を書くということは自己療養の手段ではなく、自己療養へのささやかな試みにしか過ぎないからだ。
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これが何を意味しているのかということですよね。
また正直に語ることはひどく難しい。僕が正直になろうとすればするほど、正確な言葉は闇の奥深くへと沈み込んでいくということで、
正しいことを正しい言葉で伝える、伝えようとすればするほど難しいということですね。
そして僕は文章についての多くをデレック・ハートフィールドに学んだということで、
デレック・ハートフィールドっていうのは、ヘミングウェイだとかフィッツ・ジェラルドの時代の作家、ひぼんな作家の一人であるというふうに紹介されています。
この人はですね、1938年晴れた日に、右手にヒトラーの肖像画を抱え、左手に傘をさしたまま、エンパイアステートビルの屋上から飛び降りたというふうに話していますが、
実はこれはですね、ハートフィールドっていうのは架空の人物なんですよね。
なので、架空の人物をあたかも実際に実在したかのように書いているというところも含めて、この小説の一部分であるということになっています。
そしてこの僕はハートフィールドの影響を受けて文章を書くことに決めた。
そしてそこで、その次から本編が始まっていくんですけれども、この話は1970年の8月8日に始まって、18日後、同じ年の8月26日に終わるという、たった18日間のストーリーがこれから始まるわけです。
まず最初はジーズバーという僕の地元のバーで、ネズミと僕が語り合うところから始まっていきます。
このネズミと僕の関係なんですけれども、あるとき帰省したときに、僕とネズミでもうベロベロに酔っ払ってしまって、飲酒運転をして事故を起こすんですね。
それがきっかけで仲良くなったという、1970年ならではのエピソードだなと思いますけれども、この僕とネズミの関係性っていうのが少し面白くてですね、
途中で読み進めていくうちに、ちょっと混乱して振り返るということが何度かありました。
その一つがですね、僕とネズミ2人の会話がどちらが言ってるのかわからなくなるっていう、これわざとやってるんじゃないかと思いますね。
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割と小説っては流れだとかガイドをつけて、このセリフはこの人が言ってる、このセリフはもう一人の方のこっちが言ってるって、ある程度わかりやすくなってるものが普通だと思うんですよね。
ただこれはあえて僕のセリフなのかネズミのセリフなのか、わからなくしてるんじゃないかなと思いました。
冒頭で僕は、29歳の僕は書き手であるということを説明したんですけれども、この21歳の時の僕とネズミは、ネズミの方が小説家を志そうとしているんですよ。
そういうところもあって、あれ?このセリフはネズミなのか?僕じゃなくて?みたいな、そういう混乱する場面がいくつかありました。
もしかしたらですね、ネズミって実在しないんじゃないかなとさえ思えてきますね。
僕のもう一人の人格なのか、実在していたが大人になった僕が、21歳の時に出会ったネズミの一部分を取り込んでしまったのか、なんかそんな風にも思えてきます。
ネズミの小説には優れた点が2つある。まずセックスシーンのないことと、それから一人も人が死なないことだ。
だからネズミの小説はいい、そんな風に僕は言うんですよね。
ネズミがどういう小説を書くかっていうところも少し話があって、これはですね、結構面白いような気がしますね。
ここはぜひ読んでみてほしいなと思いました。
で、またちょっと不思議な流れがあるんですけれども、このネズミが書きたいと思う小説の中に男と女が出てくるんですけれども、最後に
人間は生まれつき不公平に作られている、誰の言葉、ジョンFケネディっていうくだりがあるんですよ。
で、そこから少し時が流れて何日か経って、僕はジェイズバーのトイレで寝ていた女性を解放して、その女性の部屋で目覚めるというシーンになるんですけれども、
この女性がですね、酔っていて記憶がないんですよね。
で、「あんた何でいるの?」みたいな話になって、で、ブチ切れてるわけです。
あの、酔っ払ってるからって女の部屋に上がり込んで一緒に寝ていくなんて、ふざけんじゃないよみたいなことを言って、
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で、「いやいやいや、手出してないし。」みたいなことを言うんですけど、まあ信じられないと。
昨日の夜のことだけど一体どんな話をしたの?まあいろいろさ、一つだけでいいから教えて。
ジョンFケネディの話、何も覚えてないわっていうくだりがあって、もうすでにここではですね、
ネズミの小説の話が僕の記憶の中に結構強く残ってるってことだと思うんですよね。
だからこれはネズミと僕の会話なのか、それを女性に持ち出したのか、実際は起きてなかった出来事の僕の頭の中だけの話だったのか、
ちょっと不思議だなぁなんて思いましたね。
そしてまた面白いのがですね、途中でラジオの放送が始まったりするんです。
すごく唐突に。
やあみんなこんばんは元気かい?僕は最高にご機嫌に元気だよ。みたいな感じで。
ポップステレフォンリクエストというラジオ番組がいきなり始まって、そのDJのセリフがワーッと流れていったりします。
なんでラジオ番組がこんなとこで入ってくるんだろうと思ったら、次の章でいきなり僕の電話が鳴って、このラジオDJの声が聞こえてくるわけです。
番組のテレフォンリクエストでかけてますと、どうやら僕の高校時代の友人、女性の友人からリクエストがあって、
僕にリクエスト曲をプレゼントしたいと。その曲はビーチボーイズのカリフォルニアガールズなんですけど、これは僕とその女の子との思い出の曲だと言うんですよね。
それは高校生の時に僕がその女の子からレコードを借りたことがあるっていう思い出があって、それを彼女が覚えていて、今21歳になってリクエストを出したということらしいんですけれども、
僕はそのレコードを返してなくてですね、次の日レコード屋さんに行ってカリフォルニアガールズを買いに行くんです。そこで解放した女性と再会するという流れがあって、意外と唐突に入ってきたラジオ番組が重要な役割を果たしていたんだと。
再会する口実のためのラジオ番組なのか、どうなのかなと思ってたらもう1回だけこのラジオDJが出てきたりしますね。そこはね、ちょっと村上春樹の作品にはちょっと見つかわしくないような胸圧のお話だったりするので、そこもぜひ読んでみてほしいなと思います。
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物語は進んでいくというか、ただただ日が流れるだけなんですけれども、この再会した女性とご飯を食べたりバーで飲んだりする程度には仲良くなっている僕がバーに呼び出されていくと、女性はジンジャイルを飲んでいたんですよね。
で、なんでジンジャイルなの?
その直前に何か会話があったわけなんですけれども、なんでジンジャイル飲んでるの?
そのつもりだったんだけど、もういいわ。
白ワインを飲むという流れがあって、ここでジンジャイルを飲んでいた彼女が、やっぱりアルコール飲むかっていう決断する場面があるんですけれども、その前段の会話の中で、どこでそういう決断をしたのかちょっとよくわからないけど、確実に彼女の気持ちが変わっている場面だったりするんですよね。
これはどういう感情の変化があったのかっていうのは未だにちょっとよくわかりません。
私の中でまだ謎の部分ですね。
時間、時系列が今だけじゃなくて過去に行ったり、冒頭未来から始まったりっていうのがあるんですけれども、過去に戻る時っていうのは、僕が付き合ったことのある3人の女性の話が出てきます。
その3番目の女性っていうのは、この21歳の夏、僕の物語なんですけれども、その年の春に自殺をしてるんですよね。
その女性の話が最後の方で結構出てきます。
彼女が死んだ時、僕はタバコを吸ってたんですよね。
この彼女に言われた一言がすごく心に残っていて、
人間の生存理由、レーゾンデートルっていう英語なのかな、これは。
存在理由っていうのをすごく強烈に意識したことがあって、それは3番目の彼女が僕に言った一言がきっかけなんですよ。
自分の存在理由っていうのは何なんだっていうのをきっかけに考え続けて、すべての物事を数字に置き換えずにはいられないという癖がついてしまった。
言われてから8ヶ月間、僕はその衝動に追い回されたんですけれども、その8ヶ月後、何をきっかけにその生存理由を数字に置き換えて考えるというのをなくしたかというと、
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それは彼女の死だったわけですね。
突然に彼女の死で、存在理由っていうものを数字に置き換えることをやめて、
でもそこで何か解決されたわけじゃなくて、僕は自分の存在理由、レーゾンデートルを見失って一人ぼっちになった。
それは彼女の死を知らされた時だった。
ここから4ヶ月後の夏の思い出なので、もっと僕は悲しんだり、心を痛めていていいんじゃないかなと思ったりするんですけれども、
この話があるまで、そしてこの話があった後も僕は割と淡々と生きているんですよね。
でもその淡々とした僕の奥底にある絶望、孤独というものが、いかに大きくて僕を捉えていたかということが逆に浮かび上がってくるというか、
そういうことを考えずにはいられない3番目の彼女の直前の自殺というエピソードでした。
この彼女とのやりとりがですね、もう1個あって、自殺をする前の秋ですね、去年の秋、2人でベッドで話をしていた時に、
この時はですね、2人で戦場に架ける橋という映画を見ていたんですよね。
で彼女は、なぜあんなに一生懸命になって橋を作るの?僕は誇りを持ち続けるためにさ、答えて。
でその後、彼女が頭の中で何考えているのか全然わからなかった。
でその後唐突にね、私を愛してると言われて、もちろんと答える。結婚したい?今すぐに?いつかもっと先によ。
もちろん結婚したい。でも私が訪ねるまでそんなこと一言だって言わなかったわ。言い忘れてたんだ。
子供は何人欲しい?3人。男?女?女が2人に男が1人。
といったところで彼女はじっと僕の顔を見て、嘘つきと言ったんですよ。
でこの後、しかし彼女は間違っている。僕は1つしか嘘をつかなかった。
であって、このやりとりの中のたった1つの嘘ってどれだったのかっていうのがわからなくてですね。
これも未だに謎なんですよね。一体何だったんだろう。
この3番目の彼女の自殺の理由っていうのは、全く言及されることのないままこの小説っていうのは終わるんですね。
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で、自殺をする理由があったのか、ないけど自殺したのか。
もしくは彼女がそれをわからないまま自殺をしたんじゃないか。
そのどれかすらもわからないわけですね。
ただこの小説って冒頭その絶望という言葉が出てくる通り、何らかに絶望したんじゃないかなと思うんですね。
でこの小説の中で絶望して死ぬという場面がもう1つだけ出てくるんです。
それが最初に話したハートフィールドっていう架空の小説家が書いた火星のお話なんですよ。
ある日宇宙をさまよう1人の青年が火星に掘られた深い井戸に潜った。
彼はその深く潜って1km以上河口をして適当な横穴を見つけてそこに潜り込み、
ひたすら道なりに歩いて行った。どれくらい歩いたのかわからない。
2時間かもしれないし2日間かもしれない。
ある日突然彼は火の光を感じた。
そこで風が彼に向かって囁いてきた。
あと25年で太陽は爆発するよ。パチン、オフさ。
25万年。大した時間じゃないがね。
君が井戸を抜ける間に約15億年という歳月が流れた。
我々には生もなければ死もない風なんだよ。
青年はこういうわけです。
ひとつ質問していいかい。
喜んで君は何を学んだ。
大気がわずかに揺れ風が笑った。
そして再び永遠の静寂が火星の地表をかぶった。
若者はポケットから拳銃を取り出し、銃口を米紙につけそっと引き金を引いた。
これは何かしらの絶望を感じて自殺をしたのか、何だったのかわからないんですけれども、自殺をする場面というのがここにも書かれている。
これは一体何だったのかというのもわからないままなんですよね。
そして僕は帰省をして戻っていくわけなんですけれども、結局この小説というのは18日間の僕の帰省の話が書いてあって、
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それを未来の僕が思い出して書くという構成をとられていて、
その中には僕がさらに過去を振り返る場面も含まれていたり、あとは架空の小説家のお話が引かれていたりする。
そんな短編で160ページしかないんですけれども、いろんな場面があってですね、ストーリーとしては単調なんですけれども、非常に読み応えのある小説でした。
謎が謎のままとして終わっているっていうのもすごく良くて、何度も読み返して多分読み返すごとに、
もしかしたらネズミはこういうふうに考えていたのかもしれないなとか、
僕の3番目の彼女っていうのはこういうことを思って自殺したのかもしれないなとか、
そんなところにたどり着かないかもしれないんですけれども、毎回そんなことを考えて、今はこう考えるなっていうのがきっとね、
この本を読む時の自分の年齢とか経験値によって結構左右されるんじゃないかなと思ったりします。
だから、本当に読んでいる時も読み終わった後もすごく味わい深いというか、いろんなことの考えが頭の中を駆け巡っていくような小説だったなと思います。
なので、きっと私はこの短編を何度も読み返すだろうなと思うし、毎回面白いと思う気がしますね。
なんでこれ読まなかったんだろう?
でも40歳になった今だから面白いと思えるのかもしれないですね。
20代とか30代前半だと、なんだこれ?ってなってたかもしれなくて、今だからこそ本当に面白いと思えるし、
本当にいいタイミングで巡り会えた村上春樹作品だったのかなぁなんて思います。
ということで今日は、村上春樹のデビュー作、風の歌を聴け!という本について話してみました。
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今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。ではでは。
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