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こんばんは、ゆうこです。
このチャンネルでは、私の読書ログや日々の学びを音声配信しています。
今日は、乙一さんの『失われる物語』という短編集の中の表題作になっている『失われる物語』について話してみようと思います。
短編なので、おそらくこれから話す私の感想の中にかなりネタバレの要素が含まれると思いますので、聞きたくないという人はここまでにしておいていただけたらと思います。
もう読んだよっていう人とか、ネタバレあっても大丈夫だよっていう人だけ聞いていただけたらと思いますので、そこを最初にアナウンスさせていただきます。
この『失われる物語』というのはですね、
日々の思いを演奏で伝えることを思いつく。それは永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。
ということで、あらすじでも説明がある通り、夫婦の話である日突然、自分って言ってる夫が交通事故にあって、五感を失われて右腕の感覚だけが残るんですね。
皮膚感覚だけが残ってしまう。目も見えないし、口も話せないし、耳も聞こえない。全身どの部署も動かすことはできないんですけど、唯一右手の人差し指だけ、わずかに1センチ上下に動かすことができる。
で、右腕の感覚だけが残っているという状態になります。
それまでこの夫婦っていうのは、結婚してから結構喧嘩をする夫婦で言葉をぶつけ合って、なぜ歩み寄ることができないんだろう。でもそれでもなんとなくうまくやってきてた2人なんですね。
で、妻の方はピアニストなので、ピアノを自宅でも弾くんですけれども、その時にピアノを弾く時だけ指輪を外すんですね。
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で、自分にとって指輪っていうのは、どれだけ喧嘩をしてお互いを傷つけ合っても、妻の指にその指輪がはめられていることで、まだ自分は愛されているんだ、夫婦として成立してるんだっていうふうに思えたんですけれども、
ピアノを弾く時だけ指輪を外す妻に対して少しもやっとした感情があった。そんな中、喧嘩をした翌日に交通事故にあって、全身不遂の状態になってしまうんですけれども、
妻が右腕ですね、右手のひらに指輪のついた手で指文字をしてくれて、そこで拙い会話が始まっていきます。
今日は何日だとか、こんなことが世界で起きているよとか、そういうことを一生懸命手のひらとか腕に書いてくれて、そこだけで自分は世界と繋がることができる。
そういうところにある日、妻が右腕を銀板の代わりにして行き始めるんですよね。その時やっぱりピアノを弾く時なので指輪を外すんですよ。
指輪を外して銀板の代わりに自分の腕を使ってピアノのタッチをしていく。ここで私はなんて残酷な話なんだと思いましたね。すごいこと考えるんだなぁおついちさんって思いました。
なんで残酷だなぁって思ったかというと、最初は自分も全身不遂の夫の方もピアノを感じることで妻の思いだったり、自分の世界がより広がっていくような感覚を覚えることができたんですよね。
腕で自由に動いていく妻の指、リズミカルなタッチで動いていくっていうのを楽しんでいて、気に入る曲とかも最初のワンフレーズであの曲だっていうのがわかるようになっていくってそういう楽しみがあったのかもしれないんですけど、
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これって言葉では分かり合えなかった、ぶつかり合っていた、歩み寄れなかった自分たちだけど、自分が全身不遂になってピアノになることでしか妻と通じ合えないっていう事実を突きつけられるっていうことだなぁと思ったんですよね。
むちゃくちゃ残酷な話だなぁと思いました。
最初のうちは妻のピアノを楽しんでいたんですけど、ある時からいつもと変わらないピアノのタッチの中にも妻の感情の変化っていうのを気づけるようになってしまう。
そこに妻の苦悩を感じ取ってしまう。
自分がこの全身不遂の状態でいることが、彼女にとって、彼女の未来にとって重荷になっているっていうことをやっぱり思い知っていくわけですね。
最後、夫がどういう選択をするのかっていうのは、本を読んでもらったらと思うんですけれども、本当に残酷で悲しい物語だなぁと思いました。
いやー、最後の選択ってこういうことだよねって思ったことがあるんですけど、それを誰かと共有したいなっていう思いがありますね。
でもここまで言っちゃうともう全部話しちゃうことになるんで、今すごい頑張ってこらえてるんですけど。
なので、私はこのオツイチさん、初オツイチさんで、これまで結構有名な本出されてて図とかも書かれている方なんですよね。
一冊も読んだことがなくて、もちろんこの失われる物語にあいている他の短編集もこれから読んでみようと思いますし、暗いところで待ち合わせっていうのも読んでみようかなと思ってます。
この人のとにかく発想がすごいなぁと思うんですよね。
残酷だし、よくこんなこと考えるなぁって思います。
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この失われる物語、失われるっていう言葉の意味は受け身ですよね。
自分が自ら失うじゃなくて、誰かによって、自分ではない他のものによって失ってしまうということを意味する言葉だと思います。
それは、この交通事故がきっかけで、妻にとっては夫を失い、自分の妻としての未来を失う。
夫、自分にとっては自分の体、感覚を失うこと、妻を失うこと、自分の将来を失うこと。
そういうことを意味するのかなと思います。
失われるっていう言葉の意味には、もう一つ不完全であるという意味も含まれていると思っていて、
それは不完全な人間のことを指すのか、ピアノになりきれない自分、不完全なピアノである自分のことを指すのか、
そういったいろんな意味があるのかなと思いました。
ちょっとこれは深読みしすぎなのかもしれないですけど、
おついちさんってほんとすごい小説家だなと思います。
なんで今まで読まなかったのかな。
この前の配信で話したと思うんですけど、
私は結構自分の趣味趣向によった本をチョイスする、そういうフィルタリングをかけてしまってるなっていうのに、
スタイフの配信をしていて気づいたので、
自分が選ばなかった本っていうのをあえて手に取ってみるっていうのを最近やってみようとしていて、
その中でおついちさんを選んだんですよね。
なのでこれからもこういう新しい本との出会い、新しい価値観とか衝撃と出会っていきたいなと思いました。
ということで、すいません今日はかなりネタバレの話が入っていると思いますので、
本当に初見で見たかったという人がもし聞いちゃったら本当に申し訳ないと思います。
この失われる物語の最後のところを読んだ人がどういうふうに受け止めたのかっていうのはすごい気になるので、
なんかそこは共有してみたいなと思いました。
ということで、この配信が気に入っていただけたら、いいねやコメント、フォローをお願いします。
励みになります。
今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
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ではでは。